予想が裏切られた時、深い情報処理が起こる=「英語独習法」

東京・西武池袋線東久留米駅西口に建つ手塚治虫の「ブラック・ジャック」と助手のピノコ像 手塚治虫は晩年の10年間、東久留米市に住んでいました

クレマチス Copyright par Keiryusai

 今井むつみ著「英語独習法」(岩波新書)の中で、楽しみながら英語を学習する方法の一つとして、映画の「熟見」を挙げております。

 今井氏の場合は、お気に入りのダニエル・クレイグ主演の007「スペクター」(2015年)を一つの見本として取り上げています。「セリフの一言一言にまったく無駄がなく、限りなく短く端的に言う。それが本当にカッコよい。特にボンド役のダニエル・クレイグの話す英語にしびれてしまった」とべた褒めです。(彼女はDVDを購入し、全編のセリフを覚えてしまったらしい!)

 この映画の主題歌も素敵ですが、今井教授は最初、何度も聴いても、歌詞の Could you 〇〇〇〇 my fall? の〇の部分が聴き取れません。日本語字幕では「落ちる僕を支えてくれるかい?」となっている。そこで、ネットで歌詞を確認したところ、〇の部分はbreak だったといいます。勿論、break は簡単な単語で、初級者でも熟知している単語なのですが、大体「壊す」とか「断ち切る」といった意味でインプットされています。今井教授は「支える」という字幕に引っ張られて、主に「断絶する」などを意味し、「支える」とは真逆を意味のbreak だったとは予想も付かなかったと告白しております。

 このようにして、映画で英語学習する場合、今井教授は、まず、日本語字幕で何度も熟見することを勧めています。聴き取れなかった単語やフレーズは、後で英語字幕で確認していきます。大抵は予想もしなかった単語が表れて、驚きます。今井教授は「この経験が語彙の増加につながる」と力説します。「予測が裏切られたとき、最も深い情報処理が起こり、記憶に深く刻印される」と心理学者らしい発言をしています。

 ですから、先ほどの予想もつかなかったbreakは「もう忘れることはないでしょう」と今井氏は語っています。

 このほか、いっぱい「予想を裏切られた」例が出てくるのですが、あと一つだけ。日本語字幕で「質問が…」というジェームズ・ボンドのセリフが、英語では「Humor me.」となっていた驚きです。詳細は、本書を読んでもらうことにして、humor ユーモアの名詞は知っていても、動詞として使うという驚きで、このフレーズも著者の記憶として刻印されたことが書かれています。

スズラン Copyright par Keiryusai

 さて、私も映画007シリーズは大好きで、大抵の作品は見ているので、真似して勉強しようかと思っていますが、気になっていたのは最新作です。新型コロナの影響で、何度か上映延期になっていたことは報道で知っていましたが、お蔭で、「撮り直し」をしていることまで知りませんでした。

 最新作「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」は、もともと2019年4月に公開される予定でしたが、監督が降板したことで製作が遅れ、2020年4月公開延期を決定。それが運の尽きで、新型コロナの世界的影響で映画館が封鎖となり、興行収益が見込めなくなったことから、公開予定日が2020年11月から2021年4月へ再々延期、さらに2021年10月と延期が続いています。

 そのせいで、作品内で使われているスマートフォンや高級腕時計や服などのブランド品の型が古くなってしまい、最新モードへの撮り直しを余儀なくされてしまったというのです。IT業界の世界は日進月歩ですからね。

 これには「へー」と思ってしまいました。これらのブランド品は、「広告費」として映画製作費の中に組み込まれていることは業界人の常識です。まさか、スポンサーも古い製品を売るわけにはいきませんからね。

 

「007 スペクター」は★★★★

Paris

何を隠そう、とは言っても、別に隠す必要もないのですが、私は映画「007シリーズ」の大ファンで、大人げもなく(笑)小学生の時から観ております。全作を観ています。もっとも、子供の時は、映画館には行けませんから、テレビで見ていましたが。

けれど、確かに全24作を観ています。そして、細かい内容は全部忘れています(笑)。でも悲観してはいけません。また、新たに、新鮮な気持ちでビデオを観られるという特権を持つことができるということですから(笑)。

扨て、今鳴り物入りで、ロードショー公開中の最新作「スペクター」を観てきましたよ。

ジェームス・ボンド役は、やはり、初代のショーン・コネリーがあまりにも恰好良すぎて、ナンバーワンだと思いますが、6代目のダニエル・クレイグもなかなかのものです。第4代ティモシー・ダルトン、第5代ピアース・ブロスナンとハンサムが続いたので、クレイグはどう見ても、真逆(失礼!野性的と書けばよかった)。あまり期待していなかったのですが、彼の第1作の「カジノ・ロワイヤル」と観ると、何か一番ボンド役にふさわしいような、人間味を感じて、すっかりファンになってしまいました。

「スペクター」はよかったですよ。難癖つければ、もう少し短くしてもいいかな(つまり間延びするシーンがあったということ)と感じましたが、まあ満足な出来でした。最初から、荒唐無稽なフィクションだということは分かっていても、ハラハラドキドキ。どんな銃弾の嵐を浴びても007は死なないですからね(笑)。

最初の「つかみ」のメキシコの「死の祭り」(確か)のシーンは、どうやって撮ったのか、凄いアクションで度胆を抜かれてしまいました。

どう考えても、本物の祭りに潜入して撮影できるわけがなく、要するに多分、あれだけ多くのエキストラを集めたということでしょう。もしかしたら、CGかもしれませんが、とにかく「製作費をかけているなあ」と圧倒されました。

これから観る皆さんに遠慮して内容については、触れないことにしましょう。

ただ、一点だけ、気になったことがありました。それは、「食事する場面」が一つもないということです。もちろん、お決まりのドライ・マティーニなどお酒を飲むシーンはありますが、レストランが出てきても、食べ終わった後、何か食べ物を美味しそうに、もしくは淡々と食べるシーンがないのです。それに舞台となっている場所が、砂漠のど真ん中だったり、雪深い山奥だったりして、コンビニがあるわけでなく(笑)、「どうやって食糧を調達するのだろう」と思ってしまいました。

かつての007シリーズも食事のシーンは出てきたでしょうか?全作観ても、私は忘れています。読者の皆さんの中には小生より「マニア」がいることでしょうから、コメントでご教授ください。

最後に、ボンドガールは、昨年観た「アデル、ブルーは熱い色」に主演したフランスの女優レア・セドゥーでした。彼女がボンドガールに抜擢されたというゴシップ記事を昨年読み、是非観たいと思っていたのですが、やはり、良かった。ボンドガールにピッタリでした。

007シリーズが続いているのも、product installation(確か)と言って、車や時計などの小道具に製品を忍ばせて、「宣伝費」として莫大な製作費の穴埋めをしているからでしょう。今回もボンドは、オメガの時計に、トム・フォードの高級スーツをばっちり決めてました。あ、宣伝の尻馬に乗ってしまった!(笑)

「007 カジノ・ロワイヤル」

紫竹ガーデン

007の最新作を見てきました。これでも、私は、こと007に関しては年季が入っていて、初代のボンド役のショーン・コネリーから40年くらい見続けてきました。今回の6代目のボンド役のダニエル・クレイグが素晴らしいというので、半信半疑で見に行ったのですが、噂に違わず、合格点でした。撮影時には恐らく37歳くらいだったでしょうが、21世紀のボンドにうってつけでした。

「カジノ・ロワイヤル」は1953年の作品で、原作者のイアン・フレミングのシリーズ第一作です。従って「殺しのライセンス」00(ダブルオー)を持った秘密諜報員の誕生秘話が明かされています。

今まで、見てきたジェームズ・ボンドとは違って、精神的肉体的「弱さ」が全面的に出て、あまりにも人間的なので驚いてしまいました。これまでのボンドは、冷酷で不死身の超人的過ぎて、ちょっと面白みに欠けていました。今回の人間的なボンド役のダニエル・クレイグは、ぴったりはまっているのです。撮影では、なるべくCGを使わずに、生身でスタントマンを使わないところがすごかったです。

もちろん、ボンドガール、ヴェスパー役のフランス人女優エヴァ・グリーン(常緑という意味になるので可笑しい。芸名なのかしら?)の美しかったこと。非常に魅力的でした。と書いて、何と、つまらない感想しか書けないものか自分でも情けなくなりますが、あまり、内容を書いてしまうと、これから見る人にはつまらなくなってしまいますからやめておきます。

この映画には、いろんな製品が登場します。ソニーのパソコン「VAIO」とデジカメ「サイバーショット」、そして何と言ってもソニー・エリクソン社製の携帯電話が、これでもか、これでもかとさりげなく登場しますが、この映画は「ソニー映画」だったのですね。腕時計はスイスの「オメガ」でしたし、サングラスはイタリアの「ペルソル」、「ハイネケン」ビールも出てきましたね。

こういうのを、英語で product placement というそうです。「製品配置」もしくは「製品紹介」と訳せばいいのでしょうか。意訳すれば「商品宣伝」ということです。観客にそれとなく、見せて、買わせるという、絶大な効果をもたらすのです!こういうのって、サブリミナル効果ではないでしょうか?でも、ボンド車のアストン・マーティンは、欲しくても誰でも買える代物ではありませんけどね。