🎬「007ノー・タイム・トゥ・ダイ」は★★★

 色々と観たい映画があったのですが、もう半世紀以上観続けてきた「007シリーズ」の最新作(25作目)「ノー・タイム・トゥ・ダイ」を観に行って来ました。15年間、主役を演じてきた6代目ボンド役のダニエル・クレイグの最後の作品(5作目)ということだったので、他の作品を押しのけて最優先したわけです。

 で、感想はと言いますと、「長過ぎ」でした。最初の15分ぐらいはお葬式場のコマーシャルや次回上映作品の宣伝などを見せ付けられますが、3時間も椅子に座っていなければなりませんでした。前の座席の人は、その間、2回もトイレに駆け込んでいました(笑)。3時間では、集中力が途切れます。それに、マシンガンで無暗に敵を殺し過ぎます。そういう無意味な戦闘シーンを好むのは血気盛んなお子ちゃまぐらいで、人生の酸いも甘い知った大人世代にとっては「もう勘弁してくれよ」と叫びたくなりました。

 とはいえ、最初の「ハラハラドキドキ」シーンは、本当に息をもつかせぬ圧巻の迫力で、スタントマンを使っているのか、いないのか分かりませんが、度肝を抜かされました。

 あまり、内容を明かしてしまうと怒られるので触れられませんけど、6代目ボンドのダニエル・クレイグの卒業作品になっておりました。クレイグが6代目に就任した作品「007 カジノ・ロワイヤル」は2006年公開です。当時、38歳。彼は身長178センチで、歴代ボンド役の俳優がいずれも185~190センチだったことから、体格の見栄えが落ち、5代目ボンド役のピアース・ブロスナンのようなハンサムではなく、公開前は、さんざん非難と批判を浴びたようでした。でも、いざ蓋を開けてみたら、歴代ボンドの中で最高の収益を上げたとか。私も、最初はイメージ的にゴリラ顔(失礼!)のクレイグがボンドには相応しくないと思っていたのですが、あんな身のこなし方が素早くで格好いいボンドはピカイチで、歴代ボンド役の中では、ショーン・コネリーに次いで素晴らしかったと言いたいですね。

 ダニエル・クレイグは私生活では、あのレイチェル・ワイズと再婚していたとは知りませんでした。ボンドを引退しても、また新たな新境地を開くことでしょう。

劇場先着何名様かにプレゼントされた「007」のキーホルダーです。中国製でした(笑)。

 この007映画のもう一人の主役はボンド・ガールですが、前回の「007スペクター」(2015年)の続きになっているので、再びマドレーヌ役のレア・セドゥでした。フランスの女優なので、フランス語も出てきます。監督は、日系米国人キャリー・ジョージ・フクナガで、作品の中で、日本の興収を意識したのか、日本の領海付近や能面など、ジャポニズムが登場します(笑)。

 ボンドの敵役サフィンを演じたラミ・マレックは、後で解説を読んで知ったのですが、「ボヘミアン・ラプソディ」(2018年)でフレディ・マーキュリーを演じていた、あの彼だったんですね。気が付きませんでした。さすが、名役者さん。

  「ノー・タイム・トゥ・ダイ」 は、新型コロナの影響で何度も公開が延期され、そのお蔭で、「新兵器」のはずが流行遅れになってしまい、何度か撮り直しを行っていたことが、業界紙に出ていました。想像するに、その一つは、高級腕時計「オメガ」じゃないかと思われます。映画公開日前日には、新聞で全面広告が打たれていたからです。

 映画は製作費が高いので、ビールとかウイスキーとか、ある特定の商品を映画の中でわざわざ登場させて製作費を賄う手法です。

 

価格破壊と技術革新でDVDが安く買えるように

 大学ではフランス語を専攻したこともあり、若い頃は、明治の人みたく「西洋かぶれ」でした。見るものも、聴くものも、つまり、美術も音楽も、泰西絵画やロック、クラッシック音楽一辺倒でした。年を取ると、雪舟や光琳、若冲、北斎などの方が遥かに好きになってしまったのとはえらい違いです。

 やはり、日本人は、「侘び寂び」に落ち着くものなのでしょう(笑)。

 それでも、若い頃、実現できなかったものは、いまだに尾を引いています。例えば、ズバリ、オペラ鑑賞です。泰西絵画は色んな国に旅行して、美術館で直接、見ることができましたが、オペラとなると、そう簡単にチケットも手に入らず別です。クラシック音楽なら、何とかCDを買い揃えて、バッハでもモーツァルトでもベートーヴェンでもブラームスでも、かなり聴くことができましたが、やはり、オペラの場合、CD音源だけ聴いていてもピンときません。

ドビュッシー:歌劇「ペレアスとメリザンド」(フィリップス)CD 6000円

 何と言っても、日本人にとってオペラの敷居が高く、手が届かなかったのは、その価格です。今でこそ、新国立劇場が出来て、以前より安くはなりましたが、世界最高峰のウィーン・フィルの「引っ越し公演」ともなると10万円以上は覚悟しなければなりませんからね。

 オペラは、舞台は諦めて映像を見ることにすると、かつてはビデオかレーザーディスクでした。それが、当時でもかなり高い。安くても8000円とか1万円とかでした。

ドビュッシー:歌劇「ペレアスとメリザンド」(グラモフォン)DVD 1980円

 そしたら、本当に吃驚大仰天です。今では、オペラのDVDがCDよりも安く買えるんですね。上の写真の ドビュッシー:歌劇「ペレアスとメリザンド」(グラモフォン)、ピエール・ブーレーズ(1925~2016年)指揮、ウェールズ・ナショナル・オペラ管弦楽団のDVD(1992年録画)が何と、たったの1980円 だったのです。

 このDVDは、銀座の山野楽器で購入したのですが、そのきっかけは、映画の「METライブビューング」の新聞広告でした。METとは、勿論、ニューヨークのメトロポリタン歌劇場のことです。演目に「カルメン」「椿姫」「セヴィリアの理髪師」などが並び、「いっちょ、全部、観てみるか」と思ったのです。鑑賞料金は3200円、「ワルキューレ」は4200円となっていました。私は歌舞伎も映像版で見ても抵抗はないので、早速、観に行こうと思いました。

 それと並行して、NHKラジオの「まいにちフランス語」応用編で「たずねてみよう、オペラ座の世界」を今年1~3月に放送、7~9月に再放送されて聴いておりましたが、他にも今まで鑑賞したことがない「くるみ割り人形」や「ジゼル」「ホフマン物語」なども取り上げられていて、是非とも一度観たくなり、色々と、ネットで検索していたのです。

 そしたら、このドビュッシーのオペラ「ペレアスとメリザンド」のDVDがわずか1980円で販売していることを知ったのです。 私がかつて購入していた「ペレアスとメリザンド」の「音しかない」CDが、1993年頃、初めてCD化されたフルネ指揮、コンセール・ラムール管弦楽団による名盤(1953年録音)とはいえ6000円もしましたからね。

 実は、ドビュッシーは私の学生時代の卒論のテーマの一つでしたが、「ペレアスとメリザンド」のオペラを一度も観ることができなくて、それでも偉そうに論文を書いていましたからね(苦笑)。

モーツァルト:歌劇「フィガロの結婚」(グラモフォン)2DVD 2970円

 結局、コロナ禍で映画館に足を運ぶのも面倒臭くなり、通販でオペラのDVDが、昔のCDよりも安く買えることを知って、今、少しずつ、購入し始めています(笑)。先日、今度はモーツァルトの「フィガロの結婚」を買ってしまいました。カール・ベーム(1894~1981年)指揮のウイーン・フィルで、フィガロがヘルマン・プライ(1929~98年)、スザンナがミレッラ・フレーニ(1935~2020年)、伯爵がフィッシャー・デイスカウ(1925~2012年)、伯爵夫人がキリ・テ・カナワ(1944~)という私の学生時代は雲の上の人のような存在だった歌手が演じています。(気が付いたら、今では殆ど亡くなってしまい残念です。もう映像でしか見られません)

 とにかく、デフレか何か知りませんが、価格破壊と技術革新に驚きながら、私はその恩恵を受けています。若い頃は、オペラがこんなに安く、簡単に観られるとは思ってもみませんでした。長生きはするものです。

福井のソウルフード「ソースカツ丼」と「越前おろし蕎麦」

 「何で、そう毎日、ブログを書き続けるのですか?」

 「そこに山があるからです」

 何か、あと余命幾ばくも無い菅義偉首相の記者会見みたいになってしまいましたが、今日もネタがないので、郷土料理企画と致しましょう。銀座の郷土ランチです。

 本日は、今でもフランスで博士論文執筆で一生懸命に頑張っているAさんのことを思い、彼女の故郷、福井県にしました。銀座には1丁目に「食の國 福井館」があります。大雨の中、速足で行って来ました。

 福井県といえば越前であり、越前だと蟹ですか。あ、それで話は終わってしまいますね。福井の最大の名所旧跡は道元の開いた永平寺かもしれませんが、やはり、私は戦国武将の朝倉義景を思い浮かべます。織田信長に滅ぼされた悲劇の武将ですが、天下統一の野心がなく、優柔不断なところが自らの身を滅ぼした感じです。朝倉氏の一乗谷城跡は、日本の100名城にも選ばれているので、いつか、一度は行ってみたいと思っています。

 ついでに、私は城好きですから、高校時代に大変お世話になった英語の大庭先生の故郷である越前大野城と、現存する日本最古の天守閣を持つ丸岡城にも行きたいです。長生きしなきゃいけませんね。

銀座「食の国 福井館」まん福セット1220円

 さて、「福井館」です。店の奥に「イートイン」コーナーがありました。今、コロナ禍なので、5席ぐらいです。何をしようかなあ、と考えましたが、結局、朝倉義景も食べたかもしれない「越前おろし蕎麦」と「福井のソウルフード」と、ここで自称している「ソースカツ丼」の2種類が入った「まん福セット」を注文しました。(郷土館の食事は、最初にレジで食券を買うことは、先日の「しまね館」で学習しました。)

「越前おろし蕎麦」 というのは大根おろしに鰹節をまぶした冷やし蕎麦と簡単に言えるかもしれませんが、古風な味でした。いつ頃から名産になったのか知りませんけど、やはり、古風な味なので、勝手ながら、朝倉義景も食べていたことにしましょう(笑)。

  「ソースカツ丼」 は、極薄いとんかつがソース漬けで揚げられているので、調味料をかけることなく、そのまま食すようです。Aさんとは、福井県の食べ物について、蟹以外は、あまり詳しく話をしたことはありませんでしたが、名産なんでしょうか。私はむしろ、若狭から京都に鯖街道がつながっている通り、越前は「鯖寿司」が名産かと思っていました。でも、ここのイートインでは残念ながらメニューにありませんでした。(お弁当はあるようでしたが)

 その代わり、「チカッペカレー」という地元の人しか分からないネーミングのカレーがありましたが、ちょっと勇気が出なくて、今回は注文しませんでした。

 「福井館」の人たちは皆、感じが良かったので、食事が終わって、郷土名産品を少し覗いてみました。実は、気に入ったものがあれば、越前焼でも買おうかなあ、と思ったのですが、これも残念ながら、置いていませんでした。銀座より遥かに広い南青山にある「福井館」の方にはあるようでした。(確か、南青山にはAさんと一度、一緒に行ったことがあります。越前焼のことを知らず買いませんでしたけど)

 何しろ、越前焼は歴史があり、平安末期に始まったらしく、一時衰退したものの、戦後に復活し、「日本六古窯」の一つに選ばれているぐらいですからね。

 私は以前、福井県の地酒である「梵」の滑らかな味わいが気に入って愛飲したことがあったので、越前焼は、その「梵」に合った御猪口がいいかなと思ったのです。うーむ、そう書いているうちに、「梵」も越前焼の御猪口も急に欲しくなってきました(笑)。

 

 

🎥「キネマの神様」は★★★★★

 菅義偉首相は今月末でお辞めになるようですね。昨日、急に爆弾発言されて周囲を驚かせました。小生も、このブログの8月10日付で退陣勧告したせいなのかしら?ーんなわけないですね(笑)。…でも、「新型コロナ感染防止に専念するため」という理由で自民党総裁選に出馬しない、という弁明もおかしなものです。コロナ対策は、首相という職掌があればこそ出来る専権事項なんですから。やはり、総裁選の前に衆議院を解散することなく人事改革(二階幹事長更迭)するなどの奇策が奏功せず、結局、自分の放った手裏剣がブーメランのように自分に返ってきて自滅したということなのでしょう。

 さて、当初は観るつもりがなかった山田洋次監督作品「キネマの神様」を観て来ました。8月6日に封切で、もう公開1カ月近く経ち、自宅近くの映画館の上映時間が遅すぎたりしたので、川口市にまで行って観てきました。この映画館は久しぶりで、案内では「JR川口駅から歩8分」と書かれていましたが、大型モールの3階にあり、道にも迷ったので、15分以上掛かりました。

 何で観る気になったのかといいますと、ウマズイめんくい村の赤羽村長が、この映画を随分褒めていたからでした。「切ないがいい余韻が残る」と…。そういうもんですかねえ?

 最初、私が観る気がしなかったのは、山田洋次監督の助監督時代の話で、映画黄金時代の懐古趣味みたいなものだと誤解していたからでした。それに、新型コロナで亡くなった志村けんの代役が沢田研二というのはどう考えても変。かつて同じ芸能プロダクションだったナベプロが裏で動いていたのかなあと詮索したくなったからでした。(素人さんには関係ない話=笑)

 で、結論を先に言いますと、やられました。矛盾だらけで、作り物だということは十分承知しておきながら、涙腺が弱いもので、涙が出てきてしょうがありませんでした。

アリオ川口3階 「七輪焼肉 安安」牛カルビ・ロースセット900円 安い!

 最初は何ともなかったのに、舞台になった撮影所近くの食堂「ふな喜」で働く若き日のヒロイン淑子(永野芽郁)の母親(和服姿で縁なし眼鏡)が出てきた時、「あれっ?」と胸を締め付けられてしまったのです。演じていた女優は広岡由里子ですが、どう見ても松竹映画の小津安二郎監督がよく使っていた杉村春子(1906~97年)にそっくり。もしくは、松竹・蒲田撮影所の大看板女優だった栗島すみ子(1902~87年)に雰囲気が似ていたからでした。

 杉村春子は「文学座」の大御所看板女優ながら、映画にも多く出演し、小津監督の代表作「東京物語」「晩春」「麦秋」などに出ており、私の好きな成瀬巳喜男監督の「流れる」にも出ています。栗島すみ子は、往年の大女優で1937年には既に引退しましたが、成瀬監督の説得で、杉村春子も出演した「流れる」(1956年)に出演し、19年ぶりにスクリーンに復活した女優でした。私はこの「流れる」が脳裏にあったので、ヒロイン淑子の母親が登場した時に、杉村春子か栗島すみ子ではないかと思ったわけです。

 これは、恐らく山田監督の演出ではないかと思われます。「キネマの神様」に登場する銀幕女優桂園子(北川景子)は、どう見ても原節子を思わせます。また、具体的には登場しませんが、「小田監督」というのは「小津監督」がモデルなのでしょう。この映画は、松竹キネマ合名社の設立と蒲田撮影所が開所した1920年から100年ということで、「松竹映画100周年記念作品」を銘打っておりますから、明らかに、過去の監督や俳優たちへのオマージュとして捧げられた映画だったことが分かります。

 それを思うと、荒唐無稽なストーリーはともかく(原作者の原田マハさん、すみません)、過去と現代を行き来するこの映画を観ながら、これまでの映画人たちの「活動写真」に命を懸けた情熱が伝わり、涙が止まらなくなってしまったのです。

 志村けんの代役を務めた沢田研二(73)は、見事に「ダメ親父」を演じきったと思います。昔のアイドルですから、本来なら躊躇するはずですが、志村けんの「東村山音頭」まで唄うぐらい徹底していました。

 赤羽村長さんじゃありませんが、切ないですが、心地良い余韻が残る映画でした。

🎬「孤狼の血 level 2」は★★★

 コロナ感染拡大が止まらず、過去最多(昨日20日は、全国で2万2586人)を更新しているというのに、久しぶりに映画を観に行って来ました。特に観たい映画があったわけではありませんでしたが、夏休みなので、現実離れした明るく元気になれるような映画が見たいと思いつつ、結局観たのはヤクザ映画でした(苦笑)。

「孤狼の血 level 2」(1974年生まれの白石和彌監督作品)です。3年前の役所広司主演の「孤狼の血」を観てしまったので、その続きのつもりで観てしまいました。宣伝費も製作費と同じぐらいかけているようです。新聞で全面広告を打っておりました。(これは、ある映画関係者から聞いた話です)

 前作から3年後の平成〇年。広島の裏社会が舞台で、伝説の刑事・大上(役所広司)亡き後、その遺志を継いで、若き刑事・日岡(松坂桃李、1988年生まれ)が今度は主人公となります。前作では、日岡は、大上の後をついて失敗ばかりしていた新米刑事でしたが、今では、大上に代わって、警察権力を使って、暴力組織 を取り仕切り、ベンツを乗り回すほどです。しかし、そこに、出所してきた組長上林(鈴木亮平)によって、再び抗争の火蓋が切られ…。

 1983年生まれの鈴木亮平さんは、東京外国語大学英語専攻卒で英語がペラペラのインテリさんで、大河ドラマ「西郷どん」では主役の西郷隆盛を務めましたが、今回は、絵に描いたようなおっとろしい悪魔のような悪役です。全身の俱利伽羅紋々は、背筋が凍るほど…と書きたいところですが、彼の耳は宇宙人のように見えました(失礼!)。ですから、ヤクザ映画の様式美のような型にはまった悪役だというのに、現実味を感じることができませんでした。

 「日本人の俳優は、ヤクザ役をやると、誰でもピカイチになれる」とよく外国人識者に揶揄されますが、その罠にはまった感じでした。鈴木亮平さん、眉毛を剃って凄味が倍増しましたが、そこまでやらなくても…といった感じで、醒めてしまいました。

近くの映画館の会員になりました(会費年間500円で1回100円割引になるのでお得でした)。映画館と同じテナントに入居しているインドネシア料理店「スラバヤ」のランチ「ナシゴレン・セット」1220円

 女優戸田恵梨香さんと結婚された松坂桃李さんは今や絶好調なんでしょうね。彼が扮する日岡刑事も、あそこまでナイフで刺されたり、銃で撃たれたりすれば、普通なら死んでいるはずなのに、すぐ回復してピンピン飛び跳ねている。まあ、それが、フィクションの世界ですから、黙ってエンターテインメントとして楽しめばいいんですけどね。

 原作が1968年生まれの柚月裕子さんということで、女性だということで前回は吃驚しましたが、やはり、残念ながら、元読売新聞記者の飯干晃一(1924~96年)原作「仁義なき戦い」の方が、組織を現場で取材していたせいか、その緻密さとハラハラドキドキ感の面では及ばない感じました。これは、あくまでも個人の感想ですが。

サントロペ…嗚呼、マリー・ラフォレさん、貴女でしたかぁ…

 学生時代は1日、16時間ぐらい音楽を聴いてましたが、最近はほとんど聴かなくなりました。一番の大きな理由は、単に流行についていけなくなってしまったからです(苦笑)。

 先日、小林克也さんの「ベストヒットUSA」というテレビ番組で、ジョーズ・ハリスンを特集しているというので、本当に久しぶりに見てみたら、目下、全米ベスト20入りしている曲もミュージシャンも一人も、一曲も知らない。それ以上に、ほとんどの曲が今、大流行のラップなので、少しも心に響かない、というか、逆に、聴いていて腹が立ってきました(失礼!)

 やはり、人間、若い頃に聴いた音楽がその後の人生を支配してしまうんですね。

 今、かろうじて聴いている音楽番組は、土曜日午前9時からNHKーFMラジオで毎週放送されている「世界の快適音楽セレクション」というゴンチチが司会する番組です。藤川パパQ、湯浅学、渡辺亨という当代一の音楽評論家が選曲する番組で、ポップスだけでなく、クラシック、ジャズ、ラテン、ボサノヴァ、シャンソン、カンツォーネ、映画音楽、戦前のディック・ミネ、戦後の植木等…とジャンルに拘らず、幅広く音楽を聴かせてくれるところが素晴らしい。私なんか、学生時代みたいに、(当時はカセット、今はMDに)録音して聴いています。

 録音するのは、大変失礼ながら、自分の好みではない音楽や、実にくだらないゴンチチの長い会話(の一部)を消去するため(ごめんちゃい)と、勿論、気に入った曲を何度も聴くためです。年を取ると好き嫌いがはっきりしてくるものです。若い頃のように「何でも聴いてやろう」という気概がなくなります(笑)。私が特に嫌いな音楽は、金属的な電子テクノ系の曲とか、何度も何度も同じフレーズを繰り返す軽薄な曲などです。逆に、好きな曲は、落ち着いたムードのあるジャズ、最近ではエラ・フィツジェラルドとかフランク・シナトラとかヴォーカルにはまっています。あとは、1960年~70年代のロック(番組では、ルー・リードやフランク・ザッパなどマニアックな曲をかけてくれます)やボサノヴァなどです。

 クラシックも、私自身は「全て聴いてしまえ!」と30歳の頃に一大決心して、モーツァルトを中心に、「三大B」のバッハ、ベートーヴェン、ブラームスからショパン、チャイコフスキー、マーラー、スメタナ、ドビュッシー、ラベル、ラフマニノフ、ストランビンスキー、ショスタコーヴィチ、それに現代音楽のグバイドゥーリアやアルヴォ・ペルトに至るまで、何千枚もCDを買い、幅広く聴いてきたつもりだったのですが、この番組の音楽選者の評論家の皆さんはさらに、その上を行っていて、ラジオではまずかけないスカルラッティとか、バッハ、ヘンデルならまだしも、私自身は名前と写真だけは音楽室だけでしか知らなかったグルックまでかけてくれるのです。実に勉強になりますよ(笑)。

 さて、昨日かかった曲は本当に、本当に懐かしい曲でした。「サントロペ…サントロペ…」と繰り返すフレンチポップスです。私が子どもの頃、よくラジオでかかっていたので1960年代初めの頃の曲です。サントロペとは、カンヌやニースと並ぶ南仏のリゾート地です。子どもながら、この曲を聴いて、「いつか行きたいなあ」と憧れたものです。

 日本に入って来る海外ポップスは、戦後はアメリカと英国にほとんど駆逐されてしまい、まず、北欧や東欧やアフリカの曲はないし、ドイツの曲さえほとんど聴かれませんでした。辛うじて、1960年代は、異色にもフレンチポップスだけは頑張っていた気がします。例えば、フランス・ギャルの「夢見るシャンソン人形」(作詞作曲は、天才シャルル・ゲンズブール)とか、シルビー・ヴァルタンの「アイドルを探せ」(作詞はシャルル・アズナブール)などです。その一連の流れで「サントロペ」もラジオでよくかかっていたと思います。

 そして、この「世界の快適音楽セレクション」という番組のお蔭で、この「サントロペ」という曲の正体が、あれから60年も経って私は初めて分かったのです。唄っていたのは、何と、アラン・ドロンの「太陽がいっぱい」で共演した女優のマリー・ラフォレだったのです。しかも、この曲は、彼女が主演した映画「赤と青のブルース」の中で歌われた曲だったんですね。1961年公開の映画ですから、私は勿論、劇場で観ていないし、テレビでもやってくれなかったと思います。少なくとも見ていません。

 「何を今さら」と仰る方は多いかと存じます。「そんなことも知らなかったの?」と。

 …はい、知りませんでした。昔は、音楽を知る手段は、レコードを買うか、ラジオぐらいしかなかったでしたからね。子どもの頃は、まず、レコードなんて買えるわけないし、コンサートなんかに行けるわけありません。テープレコーダーやカセットも当時は安易に買えたわけではないので、ラジオで流れる曲を一生懸命聴いて、それでお終い。(だから、当時は、リクエスト番組が多かったんでしょうね。)

パリ・シャンソンキャバレー「オウ・ラパン・アジル」

 その点、今の人たちは本当に恵まれていますね。今、書いてきた「赤と青のブルース」も「夢見るシャンソン人形」も検索すれば、簡単に聴けるわけですから。しかも、動画が見つかれば、彼らが、演奏したり唄ったりしている姿さえ見られます。その点、昔は、歌手と曲の名前とジャケット写真だけでしたからね(笑)。後は、想像するしかありません。

 だからこそ、子どもだった私も、「サントロペ」を聴いて、声だけで想像をたくましくしたものでした。それ以上の「情報」が得られるなんて夢のまた夢。それ以上のことを知ることができるなんて、考えもつきませんでした。

 さて、そのマリー・ラフォレは、惜しくも一昨年の2019年に80歳で亡くなりました。その当時に、この「サントロペ」のことを既に知っていたなら、悲しみはもっともっと深まっていたと思います。

メダルかじった、はなおかじった

 何と言っても、オリンピックは番外編の方が面白いのです(笑)。

 名古屋市の河村たかし市長が8月4日に表敬訪問した五輪選手の金メダルをかじったことで、国内外で批判が高まり、市長は謝罪しましたが、海外では「市長が新型コロナウイルス対策を訴えるボードの前で、マスクを外してメダルをかんだ」(ロイター通信)と、皮肉を込めて報じられ、世界に大恥を晒しました。

 金メダルをかじられたのは、ソフトボール日本代表で、名古屋市出身の後藤希友選手で、同選手が所属するトヨタ自動車までもが抗議声明を発表する事態に発展しました。

 しかし、東京五輪組織委は「メダル製造で瑕疵(かし)があった場合のみ無償で交換対応するが、それ以外は対象外です」とし、たとえ、河村市長の歯形が付いたとしても、交換しないからねえーといった意味を込めて?、わざわざ声明を発表するほどです。ウイルス感染も心配なのになあ…。

 河村市長は「宝物を汚す行為で配慮が足りなかった。後藤選手には申し訳なかった」と陳謝しましたが、こんな市長を選んだのも名古屋市民ですからね。恐らく、この陳謝で、一件落着で終わることでしょうけど、河村さんが公費ではなく、自腹で弁償してあげれば一番スッキリすると思います。組織委は、有償なら交換してくれるんでしょ?

築地料亭「わのふ」ランチ「親子丼」1000円

 「メダルかじった」市長、と聞いて、「はなおかじった」先生を思い出しました。花岡実太と書きます。1966年に放送されたドラマ「忍者ハットリくん」に出演していた強烈な個性の先生で、よく、同僚の先生や生徒から「鼻をかじった」先生と呼ばれるので、いつも「鼻をかじった、ではにゃく、わたすは、花岡実太だ」と、東北のズーズー弁で反論するのがお決まりのパターンでした。

  「忍者ハットリくん」 は藤子不二雄原作の漫画を実写版ドラマとしてNET(今のテレビ朝日)系で放送されたものでしたが、私は子どもだったので、よく見たものですが、内容については、この「はなおかじった」先生のことしか覚えていません(笑)。

 今は便利な時代で、すぐ検索することができ、この花岡実太先生役を演じていたのは、谷村昌彦(1927~2000年)という俳優で、山形市出身だったんですね。喜劇役者としてスタートしましたが、時代劇からヤクザ映画まで幅広く出演していました。夏目雅子主演の「鬼龍院花子の生涯」や黒澤明監督の遺作「まあだだよ」にも出ていたこともすっかり忘れていました。

 谷村昌彦さんは、恐らく、もう若い人は誰も知らず、すっかり忘れ去られた俳優さんなんでしょうけど、昔の俳優さん、特に脇役の方は、今より遥かに個性的で強烈な印象を残したものでした。悪役の上田吉二郎なんか、いつも子分たちに「ムハハハハ、馬鹿野郎、早くやっちまえ」とハッパをかけて主役を食っていましたし、「悪魔くん」のメフィスト役などに出ていた吉田義夫なんか、本当にアクが強そうだった。.品川隆二は、近衛十四郎(松方弘樹、目黒祐樹の父)の「素浪人 月影兵庫」の焼津の半次役で滑稽な印象がありますが、その前に出ていた「忍びの者」では、石川五右衛門役をやったりして本当に怖かった。。。

 その点、今の主役級の俳優さんは、誰とは言えませんけど、偉大な俳優の二世、三世ばかりで、残念ながら、コマーシャルばかり出ているせいか、宣伝マンに見えて、魅力に欠けますね。雷に当たったような痺れるほどカリスマ性があった俳優は松田優作辺りが最後かなあ、と思っています。

 

ワクチン狂詩曲第108番=そして銀座・諸国民芸品店「たくみ」へ

 Covid-19ワクチン2回目を巡って、最近、私の周囲では色んな話を聞きます。勿論、「何ともなかった」という人もいますが、よくない話が多いのです。

築地「天辰」のっけ定食 1200円

 例えば、会社の同僚のA氏は、先週土曜日に2回目のモデルナを接種したのですが、その日の夜に39度近い高熱が出てダウン。日曜日も熱が引かず、月曜日も体調が良くなかったので、会社を休んだほどでした(火曜日に回復)。

 健康自慢のB氏の場合、2回目のファイザーで、それほど重くはなかったのですが、翌日は酷い倦怠感に襲われて、何もやる気が起きなかったといいます。

 Cさんもファイザー2回目で、打って4~5時間後に腕が痛くなり、12時間後の翌日には39度近い熱が出て、1日では下がらず、解熱剤カロナールを飲んで、やっと抑えたとか。「やっぱり、体内に衝撃あるワクチンなんだね」と知らせてくれました。

銀座「デリー」よくばりカレーランチ1120円

 何か、モデルナもファイザーも関係なく、副反応があるようです。私も今週土曜日の24日に2回目のモデルナを打つので、髷を切って、白装束を着て会場に向かうつもりです(笑)。

 とはいえ、私の住む地方自治体では、国家から配給されるモデルナ・ワクチンの供給が途絶え、26日以降の接種を延期するなんて言っております。私の場合もどうなるか分かりませんが、延期された人たちにとっては、「えーー、怒るでよおーー」でしょうねえ。

銀座に異様な雲?いえいえ飛行機雲でした

 さて、銀座に民芸運動の作品を販売する「たくみ」というお店が8丁目にあることを知り、昼休みに初めて足を運んで覗いてみました。

 民芸運動の中心人物、柳宗悦については、白樺派の人ぐらいで、ほとんど知らなかったのですが、昨年、彼の著作「南無阿弥陀仏」(岩波文庫)を読んで、初めて浄土思想とは何たるものかを理解することができ、人生の恩人と感じるようになり、彼の民芸運動について再度、関心を持たざるを得なくなったわけです。

 銀座には「のれん会」があって、一番有名なのは、「銀座百点」という小冊子を出している「銀座百店会」です。逆に言いますと、この小冊子ばかり読んでいると、「銀座百店会」に加盟していない銀座の名店を知らないことになります。

 民芸のお店「たくみ」を私が知ったのは、「銀座15番街」という小冊子からでした。「銀座百店会」に加盟していないか、加盟できないお店の「のれん会」だと思われます。と思って、HPを見たら、銀座15番街とは、「昭和41 年(1966年)、銀座7 丁目・8 丁目の店舗が中心となり会を発足させた」とのことでした。

銀座・民芸品店「たくみ」

 猛暑の中、早速、この「たくみ」に行って参りましたが、私も大好きな河井寛次郎先生の焼き物が一点、鍵のかかったガラスケースに入っておりまして、値段も100万円也でした。

 ムフフフフ、手が出ないことはないのですが、さすがに「即断即決」とはいかず、何も買わずにすごすごと帰って来ました。

 ただ、会津の民芸品「赤べこ」が、私がネットで買ったものより安く売っていたので、「なあんだ。ここで買えばよかった」と、地団駄も踏んできましたよ。

🎬仏映画「デリート・ヒストリー」は★★★★★=フランスらしい辛辣な風刺

 本日7月14日はパリ祭。フランス革命から232年という中途半端な年ではありますが、フランスでは盛り上がっていることでしょう。

 昨晩は、久しぶりに面白いフランス映画を観ることができました。「デリート・ヒストリー」というタイトルだけでは、全く内容が想像つかず、全く期待していなかったのですが、実に面白かった。現代のスマホ社会を痛烈に、辛辣に風刺した、ハリウッドではとても作れない力作、佳作、会心作でした。

 それもそのはず。昨年のベルリン国際映画祭での銀熊賞(審査員特別賞)受賞作でした。昨年の東京国際映画祭の上映作品でもあり、ネット公開されましたが、コロナ禍でいまだ劇場公開はされていないそうです。私自身は、日仏会館を通じて、ネット配信で観ました。ネタばらしは反則ですが、ネット等で公開されている粗筋ぐらいなら良いでしょう。 

 ベルギー国境近いフランス北東の低所得者向け地域に暮らす男女3人が主人公。ネット社会に踊らされ、いずれもお金の問題で悪戦苦闘。我慢の限界に達した彼らは、無謀な報復作戦を決行するが…。便利なはずのネット情報機器が格差社会に及ぼす弊害を描く社会派コメディー。

仏映画「デリート・ヒストリー」左からコリンヌ・マジエロ、ドゥニ・ポダリデス、ブランシュ・ギャルダン

 まあ、そんな内容です。ブノワ・ドゥレピーヌBenoit Delepineとギュスタヴ・ケルヴェンGustave Kervernによる監督、脚本。私は初めて聞くお名前ですが、お二人のシナリオが実に自然体で、現実にあり得ないことなのに、観客にあり得るように信じさせる力があって素晴らしい。

 主役は、離婚したばかりで、自らのハチャメチャな行動で騒動を巻き起こすマリー役のブランシュ・ギャルダンBlanche Gardinと、娘が学校でネットいじめを受けて悩みながら、コールセンターの女性に一方的に好意を抱くベルトラン役のドゥニ・ポダリデスDenis Podalydes、そして、乗客の評判を気にするネット配信タクシーの運転手、クリスティーヌ役のコリンヌ・マジエロCorinne Masieroの3人。大変失礼ながら、いずれも初老に近い中年後期の俳優で、魅力がある美男美女とは言えません。かつてのフランス映画と言えば、アラン・ドロン、カトリーヌ・ドヌーヴに代表されるように美男美女があれこれした、というイメージが強かったので、演技派俳優たちの熱演には感動しました。彼らはフランス本国では超有名人なんでしょうけど、私は知らなかったなあ。なかなか味がある名優でした。

 とにかく、いかにもフランスの伝統らしい風刺が盛り沢山です。現代の時事ニュースをふんだんに取り入れた内容で、AI(人工知能)やネット投稿拡散の脅迫、「黄色いベスト運動」(ジレ・ジョーンヌ Gilets jaunes)や社会福祉詐欺なども出てきます。これらはフランス国内だけが抱える問題ではないので、日本人が観ても納得します。特に、主人公たちが「くそったれ、GAFA!」と叫ぶ辺りは、結局、ドン・キホーテのような無謀な結果に終わりそうですが、「なあんだ、何処の国でも、ネットやスマホによる弊害に苦しんでいるんだなあ。ハリウッド映画が言えないことをよくぞ言ってくれた」と拍手喝采したくなります。

 でも、社会風刺コメディーなので、あれこれ考えず、観て笑い飛ばせばいいと思います。

 フランスでは、作られる映画の7~8割は、パリが舞台になっているそうで、このように地方を舞台にした映画は珍しいといいます。でも、21世紀になり、案外、何処の国でも世界の名作、傑作映画は地方都市が舞台になるかもしれません。

談志が愛した銀座の中華料理店

 落語家の立川談志(1936~2011年)が亡くなって、今年でもう10年になるんですね(行年75歳。命日は11月21日)。時間の流れの速さには卒倒しそうです。

 その談志師匠が贔屓にしていた中華料理店が銀座にあるというので、ランチに行って参りました。北京料理「東生園」という店です。場所は、泰明小学校の近くで、ちょくちょく行っていた蕎麦屋「泰明庵」の斜め向かいといったところにありました。

 灯台下暗し、です。

 やっぱり、グルメは脳で食べるものなんですね。旨い、不味いは関係ない(笑)。誰それ有名人が贔屓にした店とか、ミシュランで三ッ星を取ったから、といった「情報」でヒトは、食欲を満たす動物なんですよ。

 私もそんな動物の一人ですから、秘密に仕入れた情報だけを頼りに行ってみました。

東京・銀座・北京料理「東生園」五目チャーハン・ランチ900円

 注文したのは、五目チャーハン。談志師匠がこよなく愛した五目チャーハンは1300円ですが、私が注文した五目チャーハンは、ランチでしたので900円でした。

 うわっ! うまっ!

 北京料理の看板を掲げていますが、とても上品な味でした。今まで食べた五目チャーハンの中でもベスト3には入ります。加えて、給仕してくれるお店の女性も感じが良い。900円ランチは、酢豚から中華風カレーライスまで9種類ありましたから、これから全部制覇しようかしら(笑)。

 談志師匠のグルメぶりには見直しました。

東京・銀座・北京料理「東生園」

 立川談志と言えば、一時閉園の危機から一気に全国的な人気動物園に再建した北海道の旭川動物園の元園長小菅正夫さんのことを思い出します。今から15年以上昔に帯広に赴任していた時に、講演会の講師にお招きしたことがあるのですが、小菅さんは談志の大ファンで、控室で初対面でお会いした時、最初から最後まで談志の凄さを熱っぽく語っていました。北海道で落語会があれば必ず行くと話していました。

 そう言えば、私自身は、彼のこと、テレビやラジオで接しても、寄席で生で一度も見たことありませんでしたね。亡くなった時に、翌日の某スポーツ紙が「談志がシンダ」と回文のような上手い見出しを付けていたのが今でも忘れませんが、「嗚呼、一度くらい見ておけばよかった」と後悔したものです。

◇一期一会の立川談志

 でも、立川談志師匠には一度だけ取材したことがあります。1998年頃だったか、東京・赤坂にある有名な前田病院に検査か入院かで行くという報せがあって、各社の芸能記者が取材に走ったのです。その前年にがんの手術をしたりして、一時「談志死亡説」まで流れていたからでした(その後治癒)。

 報道陣に囲まれた談志師匠は当時62歳。少しやつれて痩せた感じでしたが、口調ははっきりしていて、「皆さん、こんなに集まってくださって、どうもすいませんねえ」とあまりにも低姿勢だったので吃驚。談志と言えば、べらんめえ調で、人をどやしつけるタイプだと思っていたので拍子抜けしてしまったことを覚えています。勿論、その時は、高座に上がった立川談志ではなく、本名の松岡克由という素顔を晒していただけなのかもしれません。