他人から嫌われたい人は天才かもしれない

日米のプロ野球で大活躍したイチロー元選手が出演しているユーチューブの動画が大好評で、6月23日に公開されて2週間余りで再生回数が1800万回を超えたそうです。

 見てみると、半端じゃない生活信条と人生哲学の持ち主で、一芸に秀でた天才というのは、こういうものかと思わせます。

 私はかつてプロ野球担当記者をやったことがありますが、幸か不幸か、彼を取材したことはありません。阪急が身売りしたばかりのオリックス球団(上田利治監督)を担当したことがありますが、イチロー選手がまだ入団する前の話でしたからね。その後、彼がとてつもない記録を打ち立てるようになり、米大リーグに渡っても、全米記録を更新するなど日々、彼の活躍ぶりが報道されました。

 ただ、彼の評判に反比例して、「取材しにくい」とか「生意気で高飛車だ」とかいった話を後輩のスポーツ記者から聞くようになりました。中でも大リーグ時代は、仲の良いお気に入りの記者としか口をきかず、試合が終われば、ロッカールームにはそのお気に入りの共同通信の記者だけが入って話を聞き、ライバル記者は、彼の話をまた聞きするしかなかったという話も聞いたことがあります。ライバル記者たちは屈辱的だったことでしょう。ですから、少なからずの記者たちは彼を嫌っていたか、反感を抱いていたと思われます。相手にしないで済めばいいのですが、実力を伴っているのでどうしても追いかけなければなりません。仕方がない。仕事ですから。

 私も彼の担当記者でなくてよかったと神に感謝したい気持ちになりましたが、先程の動画で、「他人から嫌われるのは怖くないですか?」との質問に、46歳のイチロー氏は「僕は他人から嫌われるの大好きなんです。その人たち僕に対するエネルギー半端じゃないでしょう。興味がないことが一番辛いですよ、僕にとって。無関心が一番辛いですね。大嫌いと言われればゾクゾクしますよ」などと応えていました。

 なるほど、ほとんどの人は、まあ、99.99%の人は、他人から好かれようとして生きているはずです。いや、家族でも友人知人でも、仕事関係でも、他人から好かれるために生きているといっても過言ではないでしょう。そのために、嘘をついたり、おべっかを使ったり、心にもないことをしゃべったりします。どこかの元大臣さんなんかは、党から貰ったお金まで渡したりしますからね。

 イチロー氏は、他人から嫌われることが分かっていて、現役時代、あのような行動を取っていたのかもしれません。他人からの邪気をエネルギーに代えていたのかもしれません。いや、確信的に好きでやっていたのかもしれません。でも、そういうことが出来る人はほとんどいません。第一、実力を伴っていなければなりません。他人から嫌われれば、皆離れていきすから、単なる変人で終わってしまいますからね。となると、イチロー元選手のような人間は、先程の確率で言えば、残りの0.01%ぐらいでしょう。ちょうど、天才と呼ばれる人たちの比率に合うんじゃないでしょうか(笑)。

  30年以上昔のプロ野球担当記者時代を振り返ると、私にも色んな思い出があります。阪神タイガースの担当になった時、大阪の会社の先輩デスク(故人)から「阪神の悪口書いたら、ワシがしょーちせーへんからな」と真顔で恫喝された時は、背筋が凍りそうになりました。そう言われてもねえ…。試合中に怠慢行為をしたり、采配ミスしたりしたら書かざるを得ないでしょう。「こっちは仕事なので仕方なくやっているだけで、勝敗なんぞ興味ないわい」と心の中で反発しましたけどね。(その後、仕事を離れてからはプロ野球は一切見なくなりました)

 そして、とても取材しやすく、非常に好感が持てる選手に限って、1軍と2軍を行ったり来たりして、一流選手になれませんでした。逆に、大変、言ってみれば傲岸不遜で、記者など「人でなし」などと心の中で思っているような選手で、あまり取材に応じない選手に限って超一流で良い記録を残していました。誰とは言いませんけど、これはプロ野球の世界だけでなく、あらゆるスポーツ、いや、あらゆる業界にも言えることでしょう。

 私も、せめて、「他人から嫌われるのは大好き」と公言できるくらい神経が図太くなりたいと思っていますが、煩悩具足の凡夫ですから、所詮、無理でしょうね。

W杯ラグビーで日本がアイルランドに勝った、とはいえ、目眩しではないか?

WST National Gallery Copyright par Duc de Matsuoqua

 ワールドカップのラグビーで、日本代表は、ついに歴史的快挙を成し遂げてくれましたね。大興奮です。

 今まで一度も勝ったことがない世界ランキング第2位のアイルランドに逆転勝ちして、決勝トーナメント進出を濃厚にしました。このまま、目標のベスト8どころか、ベスト4まで行ってほしい。私も、にわか国粋主義者になりました(笑)。

 正直、私はラグビーの熱心なファンではありませんでした。仕事で、寒風吹き曝しの正月の花園ラグビー場で開催される全国高校選手権に取材に行かされ、辟易していました。

 ところが、世界の頂点のW杯と高校ラグビーでは月とスッポンでしたね。怒られる比喩ですが、高校ラグビーがボクシングの新人4回戦なら、W杯は、世界ヘビー級チャンピオンシップです。

また、テレビ観戦すると、分かりにくいルールも字幕で解説してくれます。上空からも撮影してくれます。攻撃と防御の構えも、歌舞伎や大相撲のような「様式美」を感じました。

そんなこんなで、大いに感動していたら、名古屋にお住まいの篠田先生から警鐘のメールを頂きました。

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拝啓 渓流斎さま

昨日は、貴人もラグビー中継を見ていたでしょう。日本が勝って、大騒ぎで嫌になります。ワタシは天邪鬼ですからね(笑)。スポーツほどファシズムに走るものはありません。朝日も日経もグローバリズム大礼賛するなら、それと、全く逆で、正反対の「自国第一主義」のスポーツを大きく礼賛するのは可笑しいのですがね。

 トランプ米大統領をマスコミは「自国第一主義だ」と、よく批判できますね。トランプも迷惑な話です(笑)。トランプが日頃「お前らは嘘つきだ!」とマスコミ批判するのは理解できますね。ワタシは「自国第一主義」ですが、スポーツは冷めた目で見ています。「わあわあ」と言っているのは、吉本の三流芸人の、どうでもいいようなアドリブを喜んでいるのと同じです。

アイルランドは、初戦で太ももを痛めたセクストンという優秀な司令塔が不在欠場で、だいぶ戦力が落ちていたようですね。そんなことは少しも解説しません。

「NHK」はラグビーで大騒ぎですが、「関西電力」の原発マネー疑獄があるのに、この調子では、ラグビーが、目晦ましになりかねません。関電経営陣を究極の「役得」で終わらせたら駄目です。関西電力首脳が「お金を返したら、助役さんが激怒されるので…」と言ったのを、会見で記者が「死人に口なしですよ!」と反論しなかったのも、今の新聞記者の体質が表れています。

 喧嘩腰でやり取りしたら、ほかのメディアが大きく取り上げるので、関電側は窮地にさらに追い込まれるのですがね。

草々

…あらまあ、さすが篠田先生、目の付け所が凡俗な衆生とは違いますね。

オリンピックは五輪貴族のため?

 不労所得がガッポリ入る五輪貴族のための祭典、東京オリンピック・パラリンピックが来年に迫り、競技日程やら、チケット販売やらの細目が発表され出しました。 

 大手マスコミはスポンサーになってインサイダーなっているので、全く批判せず、「よかった」「おめでたい」「素晴らしい」の称賛一色ですから、一人ぐらい屁理屈を言うつむじ曲がりがいてもいいことでしょう。

 まあ、大方予想はついておりましたが、「オリンピック大会の華」と言えば、何と言っても、陸上競技です。それは、古代オリムピック大会からそう決まってます。その陸上競技の中の花形中の花形が、男子100メートル決勝です。それが、国際陸連の発表によると、8月2日午後9時50分にスタートだとは、驚きですねえ。勝負は10秒以内に終わってしまいますが、何でこんな遅い時間なんでしょうか。お爺さんはもう寝る時間です。

 2016年リオデジャネイロ五輪で日本が銀メダルを獲得した男子400メートルリレー決勝は、8月7日午後10時50分に開始。男子200メートル決勝は8月5日午後9時55分。女子100メートル決勝は1日午後9時50分スタート。じぇーんぶ、寝る時間じゃないすか。恐らく、高額の放送権料を支払っている欧米のテレビ局のゴールデンアワーに合わせたのでしょう。

 ちなみに、日本の午後9時50分は、米東海岸では午前8時50分です。うーん、ちょうど良い時間帯です。でも、逆でしょう?

 陸上のもう一つの花形、男子マラソンは、8月9日(日)午前6時に号砲。早(はや)!でも、これは分かります。日本の夏は、40度と殺人的な暑さで、しかも、卒倒するほど湿度たっぷりです。早朝の号砲は、日本が初参加した1912年のストックホルム五輪大会で、金栗四三が出場したマラソン大会のように死者が出かねないからでした。でも、何か変。

メダルが期待される柔道の決勝(7月25日~8月1日)は、男女とも午後5時から7時40分です。
 夜に試合をするんですか? 何で、こんな変な時間帯に決勝をやらされるんでしょうか。 このように、もし、欧米列強の時間帯に合わせているとしたら、日本開催なんか意味ないし、これじゃあ、まるで植民地ですよ。

 そもそも、真夏の一番ピークの殺人的猛暑が続く期間に何で選んで開催するんでしょうか。前回の1964年東京五輪の開会式は10月10日。まだ良心的でした。「スポーツの秋」で、身体を動かすのに1年でも最も適した季節です。

 2020年東京五輪大会を秋の絶好のシーズンに開催できないのは、単に、米大リーグ野球やらプロバスケット、欧州のプロサッカー、ゴルフなどがシーズン真っ盛りだからなんでしょう。

 こんなこと、誰でも分かりきっているのに、誰も批判しない。マスコミも批判しない。やはり、オリンピックは、五輪貴族と関連業者のための祭典と言わざるを得ませんね。

W杯サッカー、日本、よくやった セネガルと引き分け勝ち点4

昨晩じゃなくて、日本時間の本日未明に行われたサッカー・ワールドカップ・ロシア大会の日本対セネガル戦を見てしまいましたよ。仕事に影響があるのに、最後まで夜中の2時過ぎまで見てしまいました。

やはり、スポーツはライブに限ります。無理して起きててよかった。とてもいい試合を見させてもらいました。スピードもパワーも体格も技術も上回るセネガルを相手に日本がここまでやれるとは思いませんでした。よくて2-2の引き分けかなあ、と思っていたら、その通りになりました。前回のコロンビア戦同様、こういうことはもっと前に書いておかなきゃ駄目ですね(笑)。

日本の乾の1点目は、左サイドの長友が相手DF2人を強引に交わしてゴール前に折り返したから生まれたもの。2点目は、途中出場の本田がゴール前での混戦からのこぼれ球をノーマークで利き足の左で蹴り込みました。あまりにも、運が良いので、本人も舌を出したほどでした。

急遽監督が交代して選ばれた西野監督は、前回大会と変わらない本田、香川、岡崎、長友、長谷部といった「おっさん」を代表に選抜して大いに批判されたものです。某スポーツ紙は「西野監督、おっさんと心中」と書いたほどでした。それは監督以上に選手当人が感じていたことでしょう。今大会爆発した「おっさんパワー」は、意地以外何ものでもなかったのかもしれませんね。

でも、「おっさん」とはいえ、本田も長友もみんな30歳代前半。1984年以降生まれでしょう。私がかつて、サッカー記者をやっていたのは、1980~84年のことですから、「おっさん」連中はまだ生まれていませんでしたからね。当時はまだ、プロのJリーグが出来ておらず、アマチュアの日本リーグ時代。西野監督は日立の選手でした。当時の日立は確か、碓井と松永のツートップだったという記憶があります。西野はハーフで前線にパスを送る役目で足が速い選手だった覚えがあります。(当時の世界的なスーパースターは、アルゼンチンのマラドーナでした。勿論、取材で見たことがあります。そうそう、日本のスーパースター、釜本の引退試合も取材したなあ…)

今大会、テレビの解説者として出演している元日本代表監督の岡ちゃんこと岡田氏は古河の選手で、日本代表のキャプテンを務めていました。ポジションは、今はセンターバックというようですが、当時はスイーパー(最後の砦として掃く人)と言われてました。顔見知りぐらいにはなりました。彼は、当時と殆ど変わりません。

でも、サッカー用語は随分変わりましたね。当時はボランチとか、ピッチとかなんていうことはありませんでした。自殺点はオウンゴールに、ロスタイムは、アディショナルタイムに変わりましたね。

随分古臭いことを思い出したものですが、仕事で鍛えられたおかげで、一応、普通の人よりは「サッカーを見る眼」を身に着けたと自分では勝手に思ってます。

そのせいか、テレビのコメンテーターがピンと外れのことを言ったりすると鼻白んでしまいます。本職は弁護士とか医者とか公認会計士とかいう肩書きを持っているらしいのですが、何で、本職を一生懸命にやらないでテレビに出たりするんでしょうかねえ?視聴者に人気があるかららしいのですが、視聴者がその程度なのか、番組制作者になめられているのか、まあ、そのどちらかなんでしょう。

サッカーの話からとんでもない方向に行ってしまいましたので、この辺で(笑)。28日のポーランド戦もけっぱれ、日本。決勝トーナメントに行ってくれい!

ロナウドとメッシ、ヒーローなのか?ダーティーヒーローなのか??

今、熱戦が繰り広げられているサッカーのワールドカップ(W杯)ロシア大会のヒーローは、恐らく、ポルトガルのFWクリスティアーノ・ロナウド(レアル・マドリード)とアルゼンチンのMFリオネル・メッシ(FCバルセロナ)の2人に収束されることは間違いないと思われます。

昨年の世界のスポーツ選手の年収ランキングで、ロナウドは、広告契約料34億円を合わせて計94億円と首位。メッシは同34億円と合わせて87億円で2位と、仲良く分け合っています。それにしても、半端じゃない金額ですねえ。

今年の流行語大賞になりそうな「大迫半端じゃねえ」どころではありません。

ところが、正義の味方であるはずなのに、このW杯開幕を前後にして、この2人には「悪役」としてのスキャンダルに襲われています。

ロナウドの場合は、肖像権収入1470万ユーロ(約19億円)の脱税を行った疑いで起訴され、裁判では、1880万ユーロ(約24億円)の罰金を支払うことでスペイン税務当局と同意したようだと、開幕前に米メディア「ESPN」などで報道されました。

一方のメッシは、今日になって、例の「パナマ文書」の中で、彼と実父が共同でパナマに設立した会社を使って肖像権を巡る租税を回避していた疑いが再浮上したということです。

今回流出した内部メールには、従業員が「ウルグアイ事務所は『メッシ氏親子は(パナマの)会社を利用している』と私に話した」と書いた文面があったということです。金額については、明らかになっていませんが、メッシの弁護士はスペイン紙エルコンフィデンシャルの取材に「終わった話だ。(パナマの)会社は使われていない」と改めて否定したそうです。でも、ますます疑惑は深まるばかりですねえ。

4年前は覚えてませんが、今大会のメッシさんは腕にかなりどぎつい刺青をふんだんに施しており、こんなスキャンダルを耳にすると、失礼ながら、清潔感あふれたスポーツ選手ではなく、どこか、その筋の人に見えなくもありません。

いやあ、こんなこと書くと怒られるだろうなあ。。。

ロナウドとメッシの熱烈なファンの皆さんと、2人に憧れる子どもたちの夢を壊してしまい、大変失礼致しました。

やはり記者はネット・チェッカーでした

 

北京五輪米国代表選考会で、北島康介の最大のライバル、ブレンダン・ハンセンが競泳二百メートル平泳ぎで落選しました。そのことについて、北島のコメントが各紙に載っていましたが、(本人の公式ホームページから)という断り書きが付いていました。

 

http://www.frogtown.jp/kosukemail/2008/0704.html

 

やはり、今の記者は、ライターではなく、ネット・チェッカーに成り下がっていたのですね。

 

北島康介選手の公式サイトを見ると、次原悦子さん率いるサニーサイドアップにマネジメントを任せているようですね。http://www.ssu.co.jp/home/index2.html この会社は、自分達の都合のいい情報しか流さない、とマスコミ人からはすこぶる評判の悪い会社です。と私ははっきり書いておきましょう。

この会社には、あの有名なサッカーの中田選手も所属していて、彼が引退宣言したのは、マスコミを通じてではなくて、自分の公式サイトでした。ただし、サニーサイドアップ側から、各マスコミに電話で、「中田が引退発表をしましたので、公式ホームページを見てください」と連絡があったという話を業界関係者から聞いたことがあります。

そう言えば、宇多田ヒカルの離婚発表も自分のHPでしたが、これも各マスコミに連絡があったとか、なかったとか。まあ、各人、マスコミを利用したい時は、積極的にアピールするものなんですね。

北京五輪サッカー日本代表の24歳以上のオーバーエージ枠で神戸の大久保が代表入り招集を断念したというニュースがありました。「右ヒザ故障のため」というのが、表向きの理由でしたが、夕刊紙を読んでいたら、J1神戸のオーナーである楽天の「ドケチ」三木谷浩会長が、「大久保は、J1残留のために、代表に貸し出すことができない」と、鶴の一声で決まったというのです。そんなこと、一般紙のどこの社も書いていませんでしたね。真相が分かりませんが、こちらの方が説得力はあります。

情報の伝達については、つくづく考えさせられます。今「新聞と戦争」(朝日新聞出版)を読んでいるので尚更です。1931年9月の柳条湖事件(満洲事変)を境に、新聞は軍部発表の言いなりになっていきます。ミッドウエーで大敗したにも関わらず、アッツ島で玉砕したのにも関わらず、新聞は大本営発表そのまま「勝った、勝った」と報道しました。

もちろん、ブログの情報も頭から信じてはいけませんよ。北島のコメントも本人が直接書いたかどうか分かりませんからね。

スポーツ・ジャーナリズムの内幕

昨日は、プレスセンターでOセミナーがありました。ゲストは某スポーツ新聞のU編集局次長。Uさんは、記者から、運動部デスク、写真部長、販売部長、文化芸能部長まで歴任し、業界の裏の裏を知り尽くした人で、大変面白い話が聞けました。Oセミナーは25年以上も続き、「来る者は拒まず、去る者は追わず」というスタンスでやってきたので、累積会員は500人ぐらいいると思うのですが、今回集まった人は10数人。皆さん、お忙しいとは思いますが、本当にもったいないなあ、と思ってしまいました。

 

今、スポーツ新聞、だけではありませんが、新聞マスコミ業界は本当に危機的な状況なんですね。細かい数字を教えてくれましたが、この会だけでオフレコで発言してくれたことでしょうから、具体的な数字はあげません。とにかく、新聞が売れなくなったという話です。その原因について、Uさんが実体験に基づいて分析してくれたわけです。ちなみに、公表されている新聞協会のデータによると、スポーツ新聞は、1996年に約658万部だったのが、2006年には525万部。つまり、10年で、133万部も減少しているのです。地方新聞が4紙も5紙も消滅したことになります。

Uさんによると、スポーツ新聞がよく売れたピークは1995年だったそうです。しかし、その年、オウム真理教事件が発生し、地下鉄などの駅でゴミ箱が撤去されたことなども影響し、「滑り台から堕ちるように」部数が低迷しはじめたというのです。

その要因は、

●プロ野球の巨人が弱くなった。王、長嶋のような一面を張れるスターがいなくなった。松井秀、松坂といった優秀なスター選手は米大リーグに行ってしまう。しかし、時差の関係で、彼らがどんなに活躍しても、紙面化すると、2日遅れになってしまう。おまけに、記者を米国に派遣すると1人1ヶ月かなり高額な取材費(金額は丸秘)がかかる。それでも、そんなニュースは新聞で読まれず、若者は、ネットで済ませてしまう。しかも、プロ野球をテレビが中継しなくなった。熱狂的なプロ野球ファンは、おじさんなので、若者向けのスポンサーがつかなくなった。

●記事もつまらなくなった。スポーツ新聞各社とも同じような話が載っている。それは、選手が自分でホームページを持って、自分から発信するようになったり、芸能プロダクションに所属して、情報がもれないようにしたり、当たり障りのないコメントしか発表しなくなったからだ。個人情報保護法の壁もある。要するに、これは、違った意味での「取材拒否」で、特色のある取材ができなくなった。スポーツ選手も芸能人も自分で情報を発信するようになったから、記者は、直接本人に取材するのではなく、「ネットをチェックすること」が仕事になってしまった。

●スポーツ新聞は、1997年に1部120円から130円に値上げして以来、11年間値上げできない。かつて、32ページだったが、今は22ページから26ページへと、ページ数を削減して経費削減している。下手に値上げすると売れなくなるからだ。競馬予想雑誌「競友」は、昨年450円に値上げした途端、前年比7割以上も部数が減った!

●サッカーのJリーグは、地域性が強すぎて新聞は売れない。売れるのは浦和ぐらいで、いくら浦和を一面にしても、静岡や鹿島では全く売れない。また、オリンピックで日本人選手がいくら金メダルを取っても売れない。

●芸能人にも大物がいなくなった。プラバシー侵害問題もあり、新聞社も多くの訴訟を抱えるようになり、あまり微妙なことが書けなくなった。若者はより過激な情報を求めて、ネットに走り、新聞のような「建前情報」には見向きもしなくなる。

結局、重要な問題は、ニュースを作る新聞社が、一番要(かなめ)のニュースという製品をヤフーやグーグルといった検索会社に安い値段で売ってしまったことだという話に行き着きました。新聞社がいくら苦労してスクープを取ってきても、ネットに流れれば、一瞬で、その価値は限りなくゼロになって、新聞自体が売れなくなってしまう。儲かるのは検索会社のみということになってしまう。そもそも、新聞社は、媒体なので、ニュースを伝達する仲介者に過ぎない。お役所や企業がニュースをHPなどで、直接発表すれば、媒体の価値は下がる一方です。しかも、ニュースには著作権がないので、いくら独占的に入手しても、他社が裏を取って取材すれば、一瞬にして特ダネでも何でもなくなってしまう。著作権が発生するのは映像ぐらいだというのです。

社会では少子高齢化の真っ只中で、今、新聞を購読する核となっている中年が定年になると、また部数が落ちることでしょう。これから、一体どうなってしまうのかー。10年後、かなりの新聞社が淘汰されているかもしれません。

五輪聖火リレーは何処へ行く?

五輪の聖火リレーが世界中で大混乱を起こしています。ロンドンに続き、昨日のパリでも3000人以上の警官が警備したのにも関わらず、逮捕者が多数出るなど大騒動が起きました。明後日はアメリカのサンフランシスコでのリレーが予定されていますが、またまた一波乱あることでしょう。まさに「グローバリズム」です。

聖火リレーが大混乱して新聞のフロントページを飾るほどの大問題になったのは、近代五輪史上初めてではないかと思います。(06年のトリノ冬季五輪では、反グローバリズムの活動家によって妨害されましたが)

私自身は、「平和の祭典」に政治や暴力を持ち込むことは反対です。しかし、一般庶民でさえ、オリンピックは、政治的プロパガンダであり、平和の祭典でも何でもないことを知っています。

いい例が、1936年のヒトラーのベルリン五輪であり、日本を含む西側がボイコットした1980年のモスクワ五輪です。いずれも、当時のことを知る人は少なくなってきていますが、私は28年前のモスクワ五輪ははっきり覚えています。その方面で仕事をしていましたからね。ソ連のアフガニスタン侵攻に抗議する政治的処置でした。

マラソンの瀬古選手は参加していれば金メダルを獲得していたことでしょう。レスリングの高田選手は、「このオリンピックのために苦難を克服して一生懸命に練習を積み重ねてきたのだから、是非参加させてください」と涙で訴えていた姿も印象的でした。今でも忘れられません。しかし、当時の為政者とスポーツ界の幹部は米国に追随して、不参加を決定しました。

その時、「何だ、スポーツといっても、政治と切り離せないんだ」と確信めいたものを持ちました。今でもそうですが、スポーツの各種団体の多くは、お飾りでも、政治家が会長を務めていますからね。例えば、日本ラグビーフットボール協会会長は森喜朗元首相です。

しかし、今回のチベット問題に端を発する北京五輪ボイコット運動は、為政者側からというより、庶民や一般市民から高まってきていることが、これまでの政治的プロパガンダとは大きな違いだと思います。

今月26日には日本の長野でも聖火リレーが行われます。私はあくまでも暴力には反対ですが、日本でも何か起こりそうな気がしています。私は活動家ではないので、何もしませんが、平和に歌を歌うのが一番いいと思っています。

さて、奥林匹克さんという人を知っていますか?え?知らない?

失礼、人間ではありませんでした。これで、中国では「オリンピック」の当て字なのだそうです。中国の専門家に聞いたら、普段は、「奥運会」と書くそうです。

傲慢はセレブの特権

 

メダルが期待される北京五輪のマラソンの日本代表男女6人が決まりましたね。

野口みずきさんの史上初の女子マラソン2連覇をはじめ、大いに期待したいと思っています。

人気者のQちゃん高橋尚子は選考会の名古屋マラソンで27位と惨敗して惜しくも代表の座を逃しました。驚いたことに途中でトイレに駆け込んだそうですね。悲喜こもごもです。

スポーツ選手の人気は、いや増すばかりです。注目度は政治家や芸能人に匹敵するぐらいです。スポーツ記者でさえ、昔と比べ、格が上がった気もします。今や、マスコミの中でも政治記者や経済記者を目指すのではなく、スポーツ記者は志望の上位を占めているそうです。そういえば、スポーツ記者出身で現在マスコミの社長になっている人もいますね。

それだけ、スポーツ選手に品格が求められているというのに、海の向こうの中国でちょっと傲慢な選手がいて、話題をさらっていました。いや、もう、これは先月2月下旬の話なので、かなり古いニュースです。2000年シドニー五輪で銀2個、04年のアテネ五輪で金2個、今度の北京五輪でも連覇が期待される女子飛び込みの女王、郭晶晶のことです。

 

彼女は、記者会見で、「北京五輪でのライバルは誰ですか?」との質問に、選手名を言わずに「カナダのデブ」と言い放ったのです。これには、地元マスコミも大騒ぎ。しかし、郭本人は「私には何の影響もない」と批判に動じず、謝罪する意志もないというのです。

中国では、オリンピックで金メダルを獲得するような選手は、日本以上にに「セレブ化」し、広告の出演も引く手数多。特に郭は、中国ではプロポーションの整った超美人として人気が高く、賞金や広告収入で、1億元(約15億円)以上の財産があるというのです。

15億円もあれば、悠々自適で一生暮らせるでしょう。まさに「女王様」そのものです。これでは、誰でも傲慢にならなければおかしいのかも。

素顔のイチロー

 写真と本文は全く合っていません(笑)

 

先日、「テレビは見るに値しない」と散々悪口を書いたのですが、昨日のNHKの「イチローの素顔」は本当に久しぶりに見るに値する番組でした。

米大リーグ、シアトル・マリナーズのイチローといえば、マスコミ嫌いで有名で、記者のインタビューにも後ろ向きでボソボソと答え、顔見知りでない記者の質問には答えず、顔見知りでも底の浅い質問は無視するという噂を聞いたことがあります。ニュースでは、人間的に悟りを開いているヤンキースの松井は、ちょくちょく登場するのに、イチローは活躍してもほとんどニュースに出てきません。恐らくインタビューを拒否しているわけで、その噂を裏打ちする感じでした。

しかし、この番組で、イチローというより鈴木一朗という一人の人間の素顔が初めて白日の下に晒されたような感じで、なぜ、マスコミ嫌いになったのかということも手に取るように分かりました。

イチローのような超天才になると、我々のような凡人にとっては縁も所縁もない超人で、全く考えが及びもつかない人物とみなしてきたのですが、ある面では、一人の傷つきやすい青年であり、日々訓練を怠らない努力の塊であることを知り、ほんの少し共感してしまいました。

メモをしたわけではないので、正確ではないのですが、イチローはこんなことを言っていました。

「自分の弱さを人に絶対に知られたくないので、自分の弱さを必死で隠そうとした」

 

「広いアメリカで、何年経っても時差には慣れることができない。眠れないと精神的ダメージが大きいので、睡眠薬を飲んでいます」

 

「人一倍、プレッシャーを感じる方です。これまで、そのプレッシャーに押しつぶされそうで、闘ってきましたが、今年(2007年)から、そのプレッシャーを楽しむくらい受け入れることにしたのです。ヒット数が150本くらいになると、『さあ、来たぞ、来たぞ』といった感じです」

イチローの日々の生活といったら、哲学者カントのように規則正しい生活です。何時に家を出て、何時に球場に着いて、何時にトレーニングを始めて、何時に試合に臨む…。

7年間、昼食は奥さんの弓子さんが作る全く同じカレーライスを食べる、という所には少し変質狂的な性格があるんじゃないかと思えるくらい驚いてしまいました。毎日、毎日、同じ味のカレーですよ。そして、「カツカレーなんて邪道で、考えられない」なんて自信満々に発言しているのです。野球では、修行僧のようなイチローでも、野球以外のことはどこか淡白に見えてきました。

試合で遠征に行っても、試合が終われば飲み歩くことはなく、ホテルにこもって、持参した足裏マッサージ器を使って疲れを癒しながら、雑誌のページをめくっていました。これが普通だそうです。信じられませんでしたね。天下の大リーグ・スターといえば、ベーブ・ルースやジョー・ディマージオの例を出すまでもなく、私生活は本当に華やかでした。

ですから、仕事が終わると、座禅を組むようなライフスタイルで、自分を律する、あまりにも日本人的な振る舞いに、いつしか、彼に共感してしまいました。

何しろ彼の口から出た目標は「50歳になって、4割を打つこと」なんだそうですから、今は非現実的に思えても、イチローならもしかしたらやれるのではないかと思えてしまいました。

もう1つ。野球を人生に例える人も多いのですが、打率3割を打つ打者は一流選手ですが、イチローのように3割5分も打てば、超一流です。でも、超一流選手でも、6割5分は失敗しているのです。ということは、人生でも、7割失敗しても大成功と言ってもいいのではないでしょうか。

私の場合、これまでの人生、失敗の連続でしたが、それでも、まだ7割も失敗していない気がします。

イチローさんのように、まだまだ、色々と挑戦しなければならないと思いました。