「万引き家族」は★★★★★

今日はついにネットで買ったパソコン(米デル製 6万6980円の15%引きで5万5233円+税4418円=5万9651円)が自宅に届き、色々と設定してみましたが、NTTコミュニケーションズのWIFIが良くなかったのか、うまく繫がらず、結局失敗。半日も無駄にしてしまいました。

凄いフラストレーション。時間がもったいなくてイライラしてしまいました。

それはともかく、午前中、是枝裕和監督の映画「万引き家族」を観に行ってきました。この作品がカンヌ映画祭のパルムドールを受賞していなければ、わざわざ観に行くことはなかったと思います。けど、観てよかった。うまく騙されました。(この先、少し内容に触れますから、これからご覧になる方は、ここでやめておいた方がいいと思います。さようなら)

映画は大抵、美男美女が出てきて、色んな災難やイジメや嫌がらせなどに遭いながら、それらを努力やら周囲からの助けやら超能力やらで克服して、あとはめでたし、めでたしのパターンが多く、観る者もそんなお約束事を安心して観るのがお決まりでした。

しかし、この映画に関しては、真逆です。美男美女が出て来ないどころか(失礼!)、主役は「犯罪者」なんですからね。

罪状は、万引き、誘拐容疑、年金詐欺などですが、舞台が、グローバリズムやフィンテックなどの世界の最前線から取り残された東京下町で、題材も極めて日本的な話。こういう作品が国際映画祭で最高賞を受賞するということは、話がドメスティックであれば、ドメスティックなほど、人種や国籍や性別を超えた実に人間的な共感と普遍的な感動を得るものだと思いました。

主役の治役のリリー・フランキーは、素顔はインテリの作家・芸術家なのですが、風采は失礼ながら、パチンコや競輪競馬三昧で、いかにもコップ酒が似合う日雇い労働者風。演技をしなくても、見事に役をこなしてました。

その妻信代役の安藤サクラは、初めて主役作品を観ましたが、決して美人ではないのに、実に魅力的で、親(俳優の奥田瑛二と安藤和津)の血を受け継いでいるのか、抜群に演技がうまい。つまり、ドキュメンタリーを撮っていると観る者を錯覚させるほど、自然で、演技をしているように思わせないのです。

特に、警察署の取り調べで、「貴女は、(誘拐してきた)じゅり(佐々木みゆ)ちゃんに何と呼ばせていたの?」と婦警(池脇千鶴)に聴かれて、「何と言ってましたかねえ…」と言いつつ、自然と涙が何度も何度も溢れる場面は秀逸でした。そこの近辺だけでももう一度観たいぐらいでした。

人物構造図がちょっと複雑で、最後に種明かしされます。おばあちゃん初枝役の樹木希林は、まあ別格ですが、信代の妹の亜紀役の松岡茉優、そして、息子の祥太役の城桧吏もカンヌで大喝采されたぐらいですから、やはり、演技が上手く、違和感なく映画の世界に溶け込んでおりました。

原案、脚本なども手掛けた是枝監督は、台詞を極端に切り詰めて、役者に背中で演技をさせるような過酷な演技指導をしたのではないかと思わせました。

また、小津安二郎に影響を受けたのか、彼のどの作品でもそうですが、食べるシーンが異様に多い。所詮、人間なんて、食べて、交わって、寝て、家族が支え合って、笑っていられればこれ以上の幸せはないと言いたげでした。

久し振りにイイ映画を観させてもらいました。

【追記】

昨晩、ふと、是枝監督がこの映画で一番言いたかったことはこんなんではないかと想像しました。

主人公の「万引き家族」は、確かに社会から抹殺されるべき悪人ですが、それなりに、それぞれが小さな幸せを感じながら健気に生きています。一方、女児が誘拐された夫婦は、実は自分の子どもを虐待し、「こんな子を産まなければよかった」と子どもの前では邪見にしていたのに、マスコミの前では、しっかりとスーツを着込んで可哀そうな実直な被害者を演じていました。こんな「偽善家族」と「万引き家族」を対比して、是枝監督は、人間の本当の幸福とは何かを訴えたかったのではないか、と思ったわけです。

「狐狼の血 」は★★★★★

本来なら、岩波ホールでかかっている真面目な「マルクスとエンゲルス」を観るつもりでしたが、金曜日の各紙夕刊(ご存知、金曜日夕刊は、映画批評を各紙特集しております)を読んでいたら、東映のヤクザ映画「狐狼の血」が全面広告までして、かなりお金(製作、宣伝費)を掛けていることが分かり、意外にも私の信頼する著作家も推薦し、そう言えば、銀座の地下街でも、かなり大きなポスターを貼って広告しているなあ、と目立ち、どういうわけか催眠術にでもかかったかのようになり、気が付いたらネットで予約していました(苦笑)。

翌日になって「何で、『仁義なき戦い』のオマージュみたいな映画を予約してしまったんだろう」と後悔してしまいましたが、仕方なく観ることにしたわけです。

そしたら、最初から最後まで、騙されっぱなし。つまり、映画という虚構の世界にドップリ浸かってしまい、最後は、ポロリと涙まで出てくるではありませんか。作り物と分かっていながら、最後までうまく乗せられ、騙されました。

何しろ、原作は柚月裕子さんの同名作で、日本推理作家協会賞を受賞しているらしいですね。この美人作家さんは、心底「任義なき戦い」の大ファンなんだそうで、本当に、この作品へのオマージュとして書かれたようです。舞台は広島の呉市(映画では架空の呉原市)で、暴対法が施行する前の昭和63年(1988年)の話になっているようです。ちょうど30年前です。

30年前ともなると、もう一世代前の昔の話で、こうして映画になると、歴史になってしまった感じでした。黒電話や、当時の「最新型」の自動車も登場して懐かしい限り。(今の若い人は黒電話など知りませんから、受話器も番号の回し方も分からないそうですね)

内容を書くとネタバレになるので、あまり触れないようにしますが、予告編でちらっと見た役所広司が、服装といい、物言いといい、てっきりヤクザの親分役かと思ったら、マル暴担当の刑事大上(おおがみ)役。役所は、善人役より悪役がハマる俳優ですが、最後にどんでん返しがあります。

この役所広司の「相棒」として付き添う新米の若い刑事日岡役が、松坂桃李。何で、こんなヤワな俳優を採用したのか、観る前は、違和感を覚えてましたが、まさに、彼の「成長物語」であり、適役、ハマり役。白石和彌監督の手腕には感服しました。

意外な人も出ていて、後で確かめてみたら驚きもありました。倶利伽羅モンモンのいかにも悪そうな加古村組の「真珠男」は誰かと思ったら、お笑いに近い北海道の演劇集団で大泉洋の仲間である音尾琢真、失踪した金融業の男の妹で、大上刑事と昵懇になる潤子役は、MEGUMI、薬局のアルバイト薬剤師桃子役は、阿部純子だったんですね。

私は、悪い癖で、主役よりも脇役の演技に注目してしまいます(笑)。

考えてみれば、主役の松坂桃李は、1988年生まれですから、この時代を知らないわけです。全くのフィクションの世界を、ゼロから実に多くの人間が関わって共同作業で作る映像芸術の醍醐味を味わった感じでした。

ただし、グロテスクな場面が多いので、よゐこの皆さんにはお薦めしません。ストレスの溜まってる人なら解消になるかもしれませんが、私は観てよかったので、相当ストレスが溜まってるんですね(笑)。

「ペンタゴン・ペーパーズ」は★★★★★

実は、あまり触手が動かなかったのですが、統合幕僚参謀本部からの指令で、映画「ペンタゴン・ペーパーズ」を先ほど観てきました。

だって、監督がスピルバーグ、主演はメリル・ストリープとトム・ハンクス。あまりにも役者が揃いすぎて、手垢がつき過ぎている。そりゃ、ハリウッド映画ファンなら大喜びでしょうけど、極東の映画巧者にとってはむしろマイナス要因ですからね(笑)。

それに、私の世代にとっては、この事件は、教科書に載るような歴史物語ではなく、生々しい過去の出来事。「感動してたまるか」と上から目線で見始めたら、いきなり、ベトナム戦争の前線の場面から始まり、多くの若い米国人兵士が次々と生命を奪われていく。。。「あれ、もしかしたら凄い映画なのかもしれない」と思ったら、気が付いたら、すっかり映画の中の住人になっていました。最後まで観客を飽きさせなかったリズ・ハンナの脚本の力が大きかったのかもしれませんが。

くどいようですが、私の世代まで、ギリギリ、ワシントン・ポストの女性社主キャサリン・グラハムの名前や、最高機密文書を暴露したエルズバーグという名前、それに、メディアとニクソン政権との確執などを同時進行で見てきた世代でしたので、「ストーリー」は分かってました。

個人的ながら、「ペンタゴン・ペーパーズ」を大スクープしたニューヨーク・タイムズのニール・シーハン記者とは、後年、彼が「輝ける嘘」(集英社)上下2巻を1992年9月に日本で翻訳出版した時、その発売前の8月に来日した際、インタビューしたことがありました。この映画の中で、何度も何度もニール・シーハンの名前が出る度に(意図したことなのか、名前だけで本人役は登場しませんでしたが)あの時の感動を思い出したほどです。

映画では、時の政府権力者と新聞社の社主との癒着に近い親密な関係を事細かく描いてます。ワシントン・ポストのグラハム女史と国防長官のマクナマラが、ホームパーティーに呼び合うなどあそこまで親密な仲だったとは知りませんでしたね。

デイビッド・ハルバースタムの名著「ベスト・アンド・ブライテスト」の中では、当時、フォードの社長だったマクナマラが、ケネディ大統領によって「最も優秀で賢い人間」の1人として国防長官に抜擢された有様が描かれていました。

それが、先日読んだ宇沢弘文氏の著作で、マクナマラは、太平洋戦争で日本空襲爆撃の際、どうやったら最も効率良く死者を産み出すことができるかという「キル・レシオ(殺戮比率)」を考案した人間で、ベトナム戦争でも応用した人物だったと知って、彼に対する見方も大分変わりました。

あ、映画の話でした。とにかく、1970年代の米国の新聞社の内部が非常によく描かれていました。当時は鉛活字ですから、今はなき植字工さんも健在です。原稿を包の中に入れて、ダストシュートのように社内を飛ばすやり方も、見ていて懐かしかったですね。私が勤めていた会社にも昔、ありましたからね(笑)。

1971年、つまり今から47年前の出来事ですから、脚本執筆に当たり、当時を知っている存命中の関係者に可能な限り取材して反映させた、といった趣旨の話がプロダクションノートに書かれていました。

映画に出てくる車やファッションは、70年代を再現していて、それらしく見せておりますが、当時を知っている私から言わせれば、外見は70年代でも、中身はやはり21世紀の若者、もしくは俳優にしか見えない。こういうのが作りもの映画の限界なんだろうなあと、理屈っぽく考えてしまいましたよ(笑)。

「修道士は沈黙する」は★★★

久しぶりに、若者の街渋谷に行って、映画を見てきました。都内に一体いくつの映画館があるか知りませんけど、単館上映のため、首都圏ではここでしかやっていなかったからでした。

週末のせいか、相変わらず、ウンザリするほど混沌とした人混みで、渋谷は好きになれませんね。序でに、池袋も新宿も嫌いです。やはり、東京なら銀座か神保町、もしくは大塚、王子、三ノ輪、千住辺りの城北が好きです。

映画は、ロベルト・アンドー監督・原案・脚本の「修道士は沈黙する」です。アンドー監督は、フェデリコ・フェリーニ監督らの下で助監督を務めたイタリア映画界の王道を行く人らしいですが、安藤さん、いや、アンドーさんの作品を観るのはこれが初めてです。

ドイツの高級リゾートホテルで開催されたG8財務相会議の内幕の話で、社会派ミステリーと称してますから、内容に深く立ち入ることはやめておきますが、正直言って、原案、脚本まで務めたアンドー監督の限界を見てしまった感じです。

つまり、アガサ・クリスティーほど緻密に構築された社会派ミステリーになりえなかったし、アンドーさん自身が国際金融市場の知識がさほど豊富ではないせいか、フィクションにしても玄人に「もしかしたらあり得るかもしれない」という錯覚に陥りさせてくれる「夢心地」さえ味わせてくれない、というのが正直な感想でしょうか。

つまり、 謎めいた陰謀が、陰謀らしく見えないし、マイケル・ムーア監督の作品のように、国際社会の不正が暴かれる爽快感が少ないのです。それに、観客サービスのためのアダルトなお愉しみも中途半端かな?(笑)

G8財務相会議ですから、日本人も出てきますが、この俳優が日本人に(もしくはそれらしく)見えないし、出てくる各国財務相役の俳優さんも、とても財務大臣にも銀行家にも見えない。

唯一、「沈黙する」修道士サルス役の俳優だけが、それらしく見えないことはないのに、何か最後まで怪しくて、没入できない感じでした。

ありゃ、全くいい所がない映画になってしまいましたね(笑)。そんな意図がなく書き始めたのに、いつのまにかそうなってしまったのは、見る前に、陰謀の奥深さとそれらが暴かれる爽快感をかなり期待していたからでしょう。

でも、かなりの映画賞を獲得している作品ですし、試写会を見た日本人の俳優さん、経済アナリストさんらもかなり高い評価でしたよ。タダで見させてもらった代わりのべんちゃらか、宣撫活動かもしれませんけど。

しかし、こういう映画はボディーブローのように効いて後から深い感銘が押し寄せて来るかもしれません。着眼点は素晴らしいのですから。

映画がはねて、せっかく渋谷に来たのですから、行きつけの「麗郷」に久し振りに行ってきました。もう20年以上昔かもしれませんが、この店で、今は亡き大島渚監督ら著名人を結構お見掛けしたことがあります。

この店自慢の腸詰や蜆、空芯菜炒めは美味しかったですが、店主が無愛想で感じ悪いところは昔と変わっていませんでしたね(笑)。

「15時17分、パリ行き」は★★★★★

クリント・イーストウッド監督作品「15時17分、パリ行き」をロードショーで観てきました。

実は、この映画、某新聞の映画評で「途中で中だるみする」と書かれていたため、今年のアカデミー賞で最多部門でノミネートされている「シェイプ・オブ・ウォーター」にしようかな、と迷いましたが、「作り物の半魚人よりも実話の方がいいか」と思い、こちらにしたわけです。

正解でした。

2015年8月21日にアムステルダムからパリへ向かう高速列車の中で、銃で武装したイスラム過激派の男による無差別殺傷未遂事件を材に取った映画です。実は、この頃、私自身は入院中で、ほとんど黄泉の国に行っている状態でしたので、この事件については、実話と言っても、全く知りませんでした。未遂に終わったので、日本のマスコミも大きく取り扱わなかったのかもしれません。

事件の遭った列車にたまたま乗り合わせていたのが、米空軍兵のスペンサー・ストーンとオレゴン州兵のアレク・スカラトスとその友人である青年アンソニー・サドラー3人で、男を取り押さえて、忽ちヒーローになるのです。

驚くことに、イーストウッド監督は、この3人の俳優にご本人を起用したというのです。しかも、この3人は、俳優でもないのに、プロの役者以上の自然の演技なのです。本人たちが体験したことをまた繰り返し演じているわけですから、自然になるのは当たり前かもしれませんが、男優賞をあげたいくらいの演技なのです。

彼らは、ローマやベニスやベルリンなどを旅行しますが、そこに登場する無数の観光客も、恐らく、エキストラでしょう。1本の映画を作るのに、本当に多くの人間が関わり、大変だなあ、と思いました。

映画では、彼ら3人が、仲良くなった小学生の時の場面が差し挟まれます。それが、2005年なんですからね。私から見れば、2005年はつい昨日のように思えますが、当時、小学生だった子どもが、成長して軍隊に入り、欧州旅行中に事件に遭遇して大手柄を立てるんですから、まるで映画の出来事のようです。

最後は、本物のオランド仏大統領(当時)も出演していて、これは、恐らく、テレビ報道のフィルムとうまく画像調整してコンピュータではめ込んだようです。フランスからレジョン・ドヌール章を叙勲されるのも、「出演者」である彼ら自身ですから、なんか、映画なのか、合成フィルムなのか、区別がつかなくなってしまいました。

オランド大統領は、かなりゆっくりとした発音だったので、字幕を見なくても、フランス語が理解しやすかったですねえ。

3人のアメリカ人はどうもフランス嫌いで、いかにもハリウッドらしいハッピーエンドとアメリカ万歳的な鼻に付く覇権主義も感じましたけど、オランド大統領による叙勲シーンには思わず感極まってしまいました。

それに、登場する女優さんは、名前は知りませんけど(笑)、映画だからでしょう、みーんな、洗練された聡明そうな美女ばかり!

なので、満点!

「スリー・ビルボード」★★★★

日本人はどうもアカデミー賞に弱い。そこに付け込まれて、映画「スリー・ビルボード」を観てきました。この映画は、作品賞始め、主要部門の候補になっていたからです。

場所は初めて行くTOHOシネマズ上野。昨秋出来たばかりらしい映画館で、JR山手線・京浜東北線の御徒町駅南口から数分。駅から降りて目の前の「パンダ公園」の裏手にありましたが、公園の左から迂回して回って行ったら、大通りの表通りに来ても出入り口がないので吃驚。「なんちゅう建物なんじゃい」と思いましたが、隣り松坂屋百貨店側にだけ、出入り口が付いていました。右から行けばよかったのです。

後から分かったのですが、この変なビルは、松坂屋のアネックスみたいで、PARCOが入っていて、2階より上階は空中廊下のように接続されておりました。7階がシネコンでした。

そういえば、最近、東宝はえらい頑張ってますね。伝統と歴史のある有楽町の日劇PLEXを閉鎖すると思ったら、3月には、日比谷の三信ビル跡などにどでかくおっ建てた高層ビルに、TOHOシネマズ日比谷をオープンするらしいですからね。

「スリー・ビルボード」は、英国人の監督・脚本なので、薄っぺらい他のハリウッド映画と違って、単純な勧善懲悪物語でもないし、ヒーローものでもありません。

米ミズーリ州の田舎町が舞台になってますが、何処にでもいそうな人間で、極端な善人でも悪人でもない。思い入れできる登場人物は一人もいませんが、台詞がよく練られていて、自然で、人物像がよく描かれておりました。

主人公の娘を殺害されたミルドレッド役のフランシス・マクドーマンド(60)は、他の映画であまり見たことはありませんが、一癖ありそうな、頑固オバさん役で、なかなかはまってました。

推理サスペンス映画のようなので、意外な展開で、内容にはあまり触れられませんが、ちょっとありえない暴力沙汰や火災場面など映画的演出の態とらしさが妙に鼻についてしまい、そのせいで、全面的な賛辞を送れない要因になってます。

他の候補作の映画を見てないので、分かりませんが、マクドーマンドがアカデミー賞主演女優賞を獲るかもしれませんが、最大の栄誉である作品賞は難しいと思いました。

新聞社が不動産屋に~スマホからの解脱~わが青春に悔なし~京大事件~恒藤恭~東洋文庫

東京・銀座並木通りの旧朝日新聞社跡に建つ高級ホテル

夏目漱石二葉亭四迷石川啄木らも働いた東京・銀座の(昔は滝山町といっていた)旧朝日新聞社跡に何か新しいビルが建ったというので、見に行ってきました。

そしたら吃驚。異国の超高級ブランの衣服と時計とホテルが横並びで、思わず通り過ぎてしまいました。とても中に入る勇気がありませんでした(笑)。以前はプロ野球のセ・リーグとパ・リーグの事務所があったりして入りやすかったのですが、とても足を踏み入れる気さえ起きませんでした。

家主は、朝日新聞社です。若者の新聞離れやら少子高齢化、日本人の教養劣化と記者の質の低下(笑)、そして今は流行のフェイクニュースとやらで、新聞の売れ行きがガタ落ちで、歴史のある大手新聞社のドル箱が、今や、紙から不動産に移っている様を如実に反映しておりました。

 

Italie

今年2018年の抱負のナンバーワンは、以前にも書きました通り、「スマホ中毒」からの解毒(デトックス)です。(笑)

ということで、電車内でスマホでこの《渓流斎日乗》を執筆することを控えることに致しました。更新もalmost毎日ということになります。

昔はメールなんかありませんでしたから、実に牧歌的な時代でした。メールも当初は、パソコン中心で、1週間に2~3回チェックする程度で、それから返信していても許されましたから、本当にいい時代でした。

今やスマホの時代ですから、いつもメールなんかを気にしていなければなりません。

今年は、スマホからの解脱を目標に掲げましたから、メール・チェック等もほどほどにすることにしましたので、返信が遅れてもお許しくだされ。

Italie

お正月休みにテレビで黒澤明監督の「わが青春に悔なし」を初めて観ました。黒澤作品全30作のうち9割は観ておりますが、この作品はどういうわけか、見逃しておりました。

何しろ、私の専門分野(笑)のゾルゲ事件と京大・滝川事件をモチーフに作られた(久板栄二郎脚本)というので、観るのが楽しみでした。

確かに京都大学・八木原教授(大河内伝次郎)の娘幸枝(原節子)をめぐる野毛(藤田進)と糸川(河野秋武)の三角関係のような青春物語でもありますが、究極的には昭和初期の軍国主義の中での言論弾圧とそれに反発する教授や学生、その中での保身や裏切り行為なども描かれています。

大学を卒業して10年、恋のライバル二人の運命は真っ二つに分かれ、糸川はエリート検事になり、野毛は、東京・銀座にある東洋政経研究所の所長として支那問題の権威として雑誌などに長い論文を寄稿したりしています。これが、ゾルゲ事件の尾崎秀実を思わせ、結局「国際諜報事件」の首魁として逮捕されるのです。

何といってもこの映画が凄いのは、敗戦間もない昭和21年の公開作品だということです。まだ占領下ですし、戦前タブーだった京大事件とゾルゲ事件を題材にした映画がよくぞ公開されたものです。

◇京大事件とは

京大事件とは、昭和8年(1933年)鳩山一郎文相が、京都帝国大学法学部の滝川幸辰教授の著書「刑法読本」や講演内容が赤化思想であるとして罷免した事件です。

法学部教授全員が辞表を提出しますが、結局、滝川教授のほか佐々木惣一(戦後、立命館大学総長)末川博(同),恒藤恭(戦後、大阪市立大学長)ら7教授が免官になりました。

この中で、私は法学関係に疎いので恒藤恭教授の名前を近しく感じてしまいます。彼は、旧制一高時代、芥川龍之介の親友で、確か、成績は恒藤が首席、芥川が2席という大秀才だったと記憶しております。

◇石田幹之助と東洋文庫

「京都学派」に詳しい京都にお住まいの京洛先生にお伺いしたら、「芥川の一高時代の友人の中に有名な菊池寛や久米正雄のほかに、石田幹之助という東洋学者がいて、私も学生時代に習ったことがあるんですよ」と仰るではありませんか。これには吃驚。京洛先生は一体、何時代の人なんでしょうか?(笑)

「石田先生は授業中によく、芥川や恒藤らの思い出話をしてましたよ。石田先生は、三菱の岩崎財閥からの支援と要請で今の東洋文庫の基礎をつくった人です。小説の世界と学者の世界は違うんです。芥川の『杜子春』なんかも石田先生が提供した資料を使ったんですよ。何?石田幹之助も東洋文庫も知らない?」

「石田教授の師は、『邪馬台国北九州説』を主張した東京帝大の白鳥蔵吉です。『邪馬台国畿内説』を唱えた京都帝大の内藤湖南と大論争になりました。えっ?それも知らない?嗚呼…嗚呼…」

🎥「花筐」は★★★

東京新聞の二社面の片隅に「編集日誌」がありまして、先日、(石)さんというよく知らない方の署名が入ったそのコラムの中で、病を押して最新映画の公開にこぎ着けた大林宣彦監督のことについて触れられていました。(その日の東京新聞の一面片に大林監督の最新作「花筐」についてのインタビュー記事が載っておりました)

あ、一つ、大訂正です(笑)。実は、この(石)さんという方はよく存じ上げておりました。長年の友人です。失礼致しました。(しっかり訂正しないと怒る人がいるもんで=笑)

その(石)さんに刺激されて、わざわざ東京は有楽町のスバル座まで決死の覚悟と遠出しまして、この「花筐」を観に行って来ました。

◇昭和初期の唐津が舞台の映画

あ、また、二つ目の訂正です。この作品は、原作が私も大ファンの檀一雄先生。時代は昭和初期で、舞台は小生の母方の出身地で、今年亡くなった、大好きだった幸夫叔父さんも長年暮らしていた佐賀県唐津市ですから、見逃がすわけにはいきませんでした。

物語は、昭和12年の支那事変辺りから始まって、16年12月8日の真珠湾攻撃を経て、戦後に主人公の榊山俊彦(窪塚俊介)が青春時代を回想する場面で終わります。

日本は戦争にまっしぐらに進む軍国主義の暗い世相の中、その当時なりに若者はピクニックに行ったり、お酒を呑んだり、タバコを吸ったり、淡い恋愛をしたり、青春を謳歌したりします。

設定がかなり庶民とはかけ離れた裕福な豪邸が舞台ですから、映画の中では昭和初期に一世風靡したアール・デコ風の調度品がふんだんに出てきます。

唐津には私も何度か行っておりますので、懐かしい「虹の松原」も映画では頻繁に出てきて、唐津くんちの山車も全て揃って登場してました。(いわゆる町おこしのための、映画ロケのタイアップ製作作品)

長浜城跡(後北条氏の海城)Copyright par Osamoutakata (映画とは関係ありましぇん)

◇思い切って作品批判

で、肝心の映画ですが、巨匠大林監督の作品ですから、プロの映画記者や評論家は誰も批判しないので(日経の映画評は、何と五つ星でした!)、私は敢えて挑戦しますが、まず第一に長過ぎる!映画館では予告編も見せられて拘束されますから、それを入れて実に3時間の長丁場。私なんか、途中で我慢できず、御不浄に行ってしまいました。編集で30分はカットできたと思います。

も一つ、カメラワークが異様で感動の連鎖が途中で切れてしまいました。映画は、カット割りの継ぎ接ぎだらけだということは、昔、小生が学生の頃、アルバイトで映画のエキストラに出たことがあるので、よく分かっておりますが、あの撮影方法が目についてしまい、要するに自然の流れになっていないので興醒めしてしまうのです。

そして、これは巨匠大林監督の手法なのかもしれませんが、映画というより映像芸術として表現しがちで、美学としてはいいかもしれませんが、あまり行き過ぎると、物語世界にのめりこんでいけない嫌いがありました。

最後に何と言っても、40歳過ぎた中年というか、おじさん俳優が、10代の旧制高校というか予備門の学生役をやるのは、あまりにも無理があり過ぎる!キャスティングのミスでしょう。

以上、少し言い掛かりめいたことばかり述べてしまいました(苦笑)。

◇矢作穂香に大注目

ヒロイン江馬美那役の矢作穂香は、初めて観る女優さんでしたが、異様に可愛らしく、世界に誇れる女優さんですね。子役でデビューし芸歴は長いらしく、あの研音に所属し、まだ20歳なので将来が楽しみです。

映画の会話の中では、中原中也、山中貞雄の「人情紙風船」、満洲、名護屋城など私が関心がある人や場所が登場するので嬉しい限りでした。

今は便利な世の中で、出演者の顔を見て、「あの人誰だっけなあ」と思って、見終わって調べてみると直ぐ出てくるので有り難い。私の場合、「もどかしかった」人は、美那の友達あきな役と酒場の老娼婦役の俳優でした。前者は、全く映画の出演作は見たことがありませんが、映画館で本編が始まる前の予告編の紹介者としてちょくちょく登場していた「東宝シンデレラ」特別賞の山崎紘菜でした。後者は、何と池畑慎之介、つまりピーターだったんですね。長い台詞をスラスラとこなして出演場面も多かったので、誰方(どなた)かと思ってしまいました。

「禅と骨」のミトワ禅師にまつわる意外な話の展開

東銀座「ねのひ」B定食800円

(昨日の続き)

渓流斎です。

昨日は、京都にお住まいの京洛先生のお薦めの映画「禅と骨」をご紹介しましたが、あれから吃驚。京洛先生も知らない驚くべきお話が寄せられました。

スクープですかね?(笑)

「禅と骨」は、「粋人か?変人か?」と言われた有名な禅僧ミトワさんの評伝ドキュメンタリー映画でしたね。

そしたら、世間は狭い。このミトワ禅師の奥さんを知っている方がいらしたのです。

京洛先生行きつけの馴染みのお店。京都三条商店会「力」(今年、惜しまれて閉店)の女将さんの美人従姉妹マキさんです。知ってるどころではありませんでした。

いわゆる一つの今年の流行語大賞を受賞した「インスタ映え」、じゃなかった、「LINE」で女子高生のような電報を送って下さったのです(笑)。

…こんにちは。従姉妹のマキです。お元気ですか?渓流斎さんのブログを読ませて頂き、特にミトワさんの記事に驚きました‼️(びっくり)

実は中学生の頃から奥様のMrs.ミトワ (幸子)さんに英会話を習っていました☺️高校生の時に、Mrs.ミトワと一緒にアメリカ🇺🇸旅行へ行きました✈️

当時まだ日本に東京ディズニーランドの無い時で、“遂に私は夢の国へやって来た〜🏰”と大興奮(笑)
その後20代前半までMrs.ミトワ家(天龍寺)へ通ってました。ヘンリー・ミトワさんとはご挨拶くらい。
そして、私が13年くらい前に帰京した時に、再会したのが最後です。

とても懐かしかったので、ここでお喋りさせていただきました☘…

ねっ?大スクープでしょ?

これは京洛先生も知らないことなので、さぞかし吃驚していることでしょう(笑)。

映画「禅と骨」所感

東銀座・イタリア「ダ・フェリーチェ」ランチ1000円

京都の京洛先生です。私の書いた記事が《渓流斎日乗》で大変好評だと聞きまして、これは横井英樹さんに倣って乗っ取るしかないと確信し(笑)、一筆啓上仕ります。

◇禅僧ミトワの半生

帝都は東中野の「ポレポレ東中野」で12月11日まで上映している「禅と骨」はご覧になりましたか?

迂生は京都の”小芝居”ならぬ”小映画劇場”の京都シネマで見てきました。ドキュメンタリータッチで、禅宗の周辺には、こういう人士が多士済々なのだ、と再認識しました。

青い目のミトワという生臭い「禅僧」の戦前、戦後の一代記を評伝風に作ってあります。ミトワは日系アメリカ人ですから、戦前はスパイとして特高からマークされ、父親の母国に行っても、今度は敵国から来たという扱いを受けたり、何処の国でも、ハーフ、混血というのは苦労が多く、生き方も大変だと、思い至ります。

”グローバリズム”は、体裁の良い事ばかりが、強調されますが、「日本の近未来」の前触れというか、歴史は同じことの繰り返しです。

◇男を迷わせるもの

また、ミトワ自身も、家族をほったらかしにして、思うように生きたわけです。親しかった作家の水上勉の臨終直前には、お互いの◯◯を握り合って「これが男を迷わせるので、困ったものだ」と言ったり、「ワシは未来に興味、関心はない。過去に興味があるのだ」と言ったりします。

天龍寺の老師は「風流人だった」と言っていますが、家族は迷惑だったことでしょう。面白い生き方の一つだ、と思いますが…。

◇千玄室大宗匠の迫力
ミトワの末娘が父親の生き方を批判的で、反発しますが、あれは本当は父親のミトワが大好きだった、と思いますね。
映画には「裏千家」の千玄室大宗匠も出てきます。もう、93歳なんですね。この人も、生臭くて、ミトワと相通じるものがありますが(笑)、久しぶりに映像で見ました。風格が出て、何とも言えない雰囲気が出ています。底の浅い映画俳優より迫力をにじませています。

予告編は「禅と骨」で検索されるとみられます。 野口雨情作詞の「赤い靴」の謂れも紹介されたり、「映画製作はカネが無いと踏んでかかると、サッと皆んなが引いていく」とか、新たな人生勉強になりましたよ。