日本も韓国も消滅か?=そんなことないでしょうが人口減に拍車掛かる

 昨年2023年の日本(人口1億2570万人)の出生数(速報値=在留外国人も含む)が前年比5.1%減の75万8631人だったと厚生労働省が発表した数字は実に衝撃的でした。8年連続で減少し、過去最少です。一方、死亡者数は159万503人で、前年から8470人増え、過去最多だったといいますから、人口減に一層の拍車が掛かったわけです。何しろ、生まれてきた赤ちゃんの倍以上の人が亡くなっているわけですから減る一方です。

 このまま少子化が進めば、日本人はいなくなってしまうのではないかというSFの世界が待っているかもしれません。

東京・新富町

 これは日本だけの問題かと思いましたら、お隣りの韓国(人口5174万人)ではもっと大変な状況でした。女性1人が生涯に産む子どもの推定人数を示す「合計特殊出生率」が、8年連続で前年を下回り、昨年の韓国は過去最低の0.72だったというのです。低水準といわれる日本の1.26(2022年)より低いのです。生まれた韓国の子どもの数も、前年比7.7%減の約23万人で過去最少です。8年間でほぼ半減し、少子化は「日本以上」に見えます。

 韓国の少子化の背景には、ソウルに人口が一極集中して、地価と住宅価格が高騰し若者が住宅を購入出来ず、結婚に踏み切れない状況があるようです。結婚しても韓国はかなり苛烈な受験競争と超狭き門の大企業就職と格差拡大問題があり、高額の教育費が掛かるので子どもを2人も3人も持つ余裕がないという遠因があるようです。

 日本もそして韓国も、結婚新生活支援事業や育児休暇、子ども手当、教育費無償化など少子化対策を推進していますが、それでも歯止めが効きません。となると、結婚したくても出来ない非正規雇用といった経済的理由や、将来に対する不安など心理的理由が大きいと思います。

 林官房長官も記者会見で「少子化の進行は危機的状況」と述べ、少子化対策も発表していましたが、口先だけで、「笛吹けども踊らず」の印象です。だって、当事者である企業が賃金を引き上げ、非正規労働者の社員化を進めない限り、改善しないことが分かりきっているからです。「内部留保」に邁進する企業は、相変わらず、低賃金に抑え、非正規雇用の比率を挙げることで利益と業績を上げているわけですから、イエスマンで這い上がってきたサラリーマン経営者が、そんな「打ち出の小槌」を手離すわけありません。

 「内部留保税」や「非正規雇用割合税」なるものを徴収すれば、そんな悪循環が改善するでしょうけど、そんな法案を提出する政治家は一人もいないでしょうし、財界も大反対のキャンペーンを張ることでしょう。フリードマンや竹中平蔵らの新自由主義思想の根が深いからです。

 かくして、少子化に拍車が掛かり、人口減が幾何学級数的に進み、…この先はあまり想像したくないですね。

ファミリービジネス化している政治家という職業

 岸田文雄首相は13日に自民党役員人事を行い、第2次岸田再改造内閣を発足させました。女性閣僚が過去最多タイの5人入閣したという程度で、新味も期待感もない相変わらずの筋書き棒読み内閣といったところでしょうか。そもそも、わずか1年程度で、わざわざ内閣改造をする必要性があるんでしょうか?

 いつもながらため息が出るのは、政治家という職業がファミリービジネス化していることです。今に始まったわけではありませんが、政治家という職業は余程、美味しい、やめられない、濡れ手で粟のようなビジネスなのでしょう。周囲から「先生、先生」と持ち上げられ、出張すればファーストクラス席と超一流ホテルでの滞在も約束されています。

 でも、よくよく考えてみれば、彼らが贅沢出来る原資となっているものは、国民の税金ですからね。だからこそ、政治家の言動や政治資金集めの行動は、重箱の隅を突っつくほど監視してもし過ぎることはないのです。

新富町「トラムストリートカフェ」ガパオライス750円

 今回の内閣改造で、岸田首相を含む大臣20人のうち、世襲議員は、前回より2人増えて8人になりました。こども政策少子化担当相として初入閣した加藤鮎子氏(44)は、今閣僚最年少、衆院当選3回、副大臣経験もないのに異例な抜擢人事です。何で?と思ったら、彼女は宏池会の会長を務めた加藤紘一元官房長官の三女ですってね。また、沖縄・北方地方創生相として初入閣した自見英子氏(47)も郵政相などを歴任した自見庄三郎氏の御令嬢。さらに、環境・原子力防災相で初入閣した伊藤信太郎氏(70)は、衆院議長を務めた伊藤宗一郎氏の御子息。復興相として初入閣した土屋品子氏(71)は、参院議長や埼玉県知事を務めた土屋義彦氏の次女。なるほど、やっぱり、ファミリービジネスなのかなあ?

新富町「トラムストリートカフェ」ガパオライス付きのアイスコーヒー150円

 それにしても、小渕恵三元首相の御息女・小渕優子氏を自民党4役の選対委員長に抜擢した人事は尾を引きそうですね。「選挙の顔」として勝てると思っているんでしょうか?彼女は、自らの政治団体の不明朗な会計処理が明らかになって、経産相を1カ月半で辞任したのに、説明責任から逃げ続けた印象があまりにも強烈です。本日発売の週刊文春でも、またまた政治資金スキャンダルを暴露されてしまっております。

 宗教団体を管轄し、旧統一教会の解散命令請求手続きを担う文部科学省の大臣として、教団の行事に出席していた盛山正仁氏(69)が初入閣しました。よりによって、何でこのような疑惑の人事をするのでしょうか。岸田首相の任命責任が問われそうです。ーなんちゃって、大手紙政治部記者が書きそうなマンネリな〆(しめ)を書いてしまい、我ながら恥ずかしくなりました。

【追記】2023年9月15日

 こども政策少子化担当相として初入閣した加藤鮎子氏(加藤紘一元官房長官の三女)の最初の御主人は、あの有名な宮崎謙介・元衆院議員だということを後で事情通から聞きました。そりゃあ吃驚ですよ。

プーチン=金正恩会談の内容は推測しやすい

 飛行機嫌いの北朝鮮・金正恩総書記が専用列車に乗ってロシアに入り、13日にも極東アムール州にあるボストーチヌイ宇宙基地でプーチン大統領と会談する可能性があるというニュースが流れました。

 一体何を話し合うんでしょうか?

 この記事は9月12日正午すぎの昼休みの時点で書いていますから、もしそれ以降にこの記事を読まれている方があるとしたら、既に会談の内容は明らかになっていることでしょう。とはいえ、この記事を書いている時点では何も分からないので推測して書いてみます。何故かと言いますと、大変推測しやすいからです(笑)。北朝鮮はいまだに古代奴隷独裁国家の域を出ていませんから、人民が餓死しようが、軍備増強だけに邁進しています。しかし、国際社会からの経済制裁で人民は疲弊していますから、ロシアからは食糧を含む経済援助と軍事衛星技術を求めることでしょう。その見返りに、金総書記は、ウクライナ戦争で消耗しているロシアのプーチン大統領に対して武器・弾薬を供与するといった約束を取り付けのではないでしょうか。古代奴隷制国家ですから、肉体労働者も格安の値段でロシアに派遣するのではないでしょうか。

 中らずと雖も遠からず、といったところでしょう。どうせ、記者会見も行われず、2人の会談内容は極秘扱いで公表されず、マスコミや識者らが推測するだけだと思われますが。

 それにしても、他人の迷惑を顧みず、ミサイルを花火のようにボンボン打ち上げて喜んでいる金総書記は常軌を逸していますが、ウクライナに侵攻し、国際刑事裁判所から戦犯容疑で指名手配されているプーチン大統領も同じです。そんな2人が直接会って話し合うなんて、まさにブラックジョークです。

 プーチン氏は先日、「西側諸国は『ナチズム賛美』を隠蔽するために、ユダヤ人であるゼレンスキー氏をウクライナ大統領に据えた」と発言したニュースが流れました。(9月5日、ロイター電)ただし、その根拠は示さなかったようですが、この人、正常な思考をしているのか心配になりました。

 ロイター通信が伝えたところによりますと、プーチン大統領はロシアのジャーナリスト、パーベル・ザルビン氏とのテレビ・インタビューで「西側諸国は現代ウクライナのトップにユダヤ人の出自を持つ人物を据えた。西側諸国はこうして、現代ウクライナ国家の根底にある反人間的な本質を隠ぺいしようとしているように見える」と発言したことになっています。

 この発言を聞く限り、プーチン氏は反ユダヤ主義者のように見えます。でも、そうなると、矛盾してしまいます。プーチン氏は自らの後継者としてドミートリ―・メドヴェージェフ氏を大統領や首相に据えたりしましたが、このメドヴェージェフ氏もユダヤ系だと言われているからです(ロシア問題専門家の中澤孝之氏)

 そもそも、ロシア革命を指導したレーニンもユダヤ系ロシア人と言われ、彼が信奉した共産主義を生んだカール・マルクスはユダヤ人です。

 もう一度、繰り返しになりますが、プーチン大統領が「西側諸国は『ナチズム賛美』を隠蔽するために、ユダヤ人であるゼレンスキー氏をウクライナ大統領に据えた」と発言したことは、やはりおかしい。

 パレスチナ人を殺害して領土拡大を狙うイスラエル人は好きになれませんが、私は反ユダヤ主義者ではありません。むしろ、人類は大いにユダヤ人の知性の恩恵を受けていると思っています。国際金融の拠点、ウォールス街もそうですし、ハリウッド映画もそうです。メンデルスゾーンやマーラーに陶酔し、ボブ・ディラン、サイモンとガーファンクル、ニール・ヤング、ビリー・ジョエル、バート・バカラックらの曲にも楽しんでいます。何と言っても、物理学の最大理論の一つ「相対性理論」を「発見」したアインシュタインはユダヤ人です。

 ユダヤ人が何故、これほどまで聡明なのか?ーそれについては、ユダヤ人は子どもの頃に、ユダヤ教の聖典「タルムード」(6部63編)を全て暗記させられるから、と聞いたことがありますが、それも一つの要因なのでしょう。子どもの時の暗記によって、脳細胞が肥大するのではないでしょうか。

 あれっ? プーチン=金正恩会談の話から、思わぬ方向に展開してしまいました(苦笑)。

100年前の関東大震災直後に起きた不都合な真実

 9月1日は、関東大震災から100年の節目の年です。100年は、長いと言えば長いですが、「人生100年時代」ではあっという間です。

 本日付の新聞各紙はどんな紙面展開するのか? 興味津々で都内最終版の6紙を眺めてみました。そしたら、「扱い方」が、どえりゃあ~違うのです。

 扱い方というのは、大震災のどさくさの中、「朝鮮人が井戸に毒を流した」などといった流言蜚語が飛び交い、自警団らによって朝鮮人・中国人が虐殺された事件をどういう風に紙面展開するのか、といったことでした。毎日新聞は、社説、記者の目、社会面を使ってかなり濃厚に反映していました。朝日新聞も負けじと、社説、特集面、社会面で積極的に報道しています。東京新聞も、「売り」の「こちら特報部」で朝鮮人虐殺正当化の「ヘイト団体」まで取り上げています。ネットで確認したところ、時事通信もかなり報道していました。

 その一方で、うっすらと予想はされましたが、産経新聞と読売新聞は全く触れていません。産経と読売の幹部は「朝鮮人虐殺はなかったこと」にしているかのようです。日本経済新聞も、ほとんど触れていません。と、思ったら、辛うじて、社説で、虐殺があったことを、震災直後に発行された「震災画報」の記事を引用して取り上げております。何故、論説委員が直接書かないのか不思議です。

 劇団俳優座を創設した一人である千田是也(本名伊藤圀夫、1904~94年)は、大震災後、千駄ヶ谷で朝鮮人と間違われて暴行された経験があり、芸名を、「千駄ヶ谷のコリアン」から付けた逸話は有名です。千田是也のような実体験をした人が亡くなると、歴史は風化して「なかったことに」なるのでしょうか。

スーパーブルームーン

 松野博一官房長官は8月30日の会見で、朝鮮人虐殺について問われ、「政府内において事実関係を把握する記録が見つからない」と宣言したようです。しかし、震災直後の内務省警保局の電信文には、朝鮮人殺害や日本人誤殺、流言の拡散などが記され、震災から2年後に警視庁が発行した「大正大震火災誌」にも掲載されています。また、政府の中央防災会議の2009年の報告書では、震災の死者・行方不明者約10万5000人のうち「1~数%」(つまり、1000人~数千人)が虐殺犠牲者と推計しています(東京新聞「こちら特報部」)。ということなので、岸田政権が事実関係を把握しようとしないのか、もしくは「なかったこと」にしようとする強い意思が伺えます。小池百合子都知事が犠牲者追悼式典に追悼文を送付しないのも、同じような理由なのでしょう。

 大震災のどさくさに紛れて、朝鮮人だけでなく、「主義者」と呼ばれた反国家主義者も虐殺されました。その一番の例が無政府主義者の大杉栄と妻の伊藤野枝、そして6歳の甥橘宗一が憲兵隊によって虐殺された「甘粕事件」です。さすがに本日、そこまで取り上げるメディアはありませんでしたね。(甘粕正彦憲兵大尉はその後、満洲に渡り、満洲映画協会の理事長になり、ソ連侵攻で、「大ばくち 身ぐるみ脱いで すってんてん」という辞世の句を残して服毒自殺しました。)

スーパーブルームーン

 産経、読売、日経も岸田政権も小池知事も「もう自虐史観はやめて、前向きな新しい歴史をつくろう」という積極的な意図が見えますが、読者には100年前の史実が伝わっていません。

 昨日は、西武池袋百貨店が、大手百貨店としては1962年の阪神百貨店以来61年ぶりにストライキを行いました。テレビで、ある若い男性がインタビューを受けていましたが、彼は「ストライキなんて教科書に載っているのを知っているぐらいで初めてです」などと発言していました。彼よりちょっと年を取った世代である私からすれば、「えー!!??」です。特に、我々は国鉄のストで学生時代はさんざん悩まされた世代ですからね。会社でも30年前まで頻繁に時限ストを行ったいました。

 30年前ぐらいにストライキが頻発した出来事を(当然のことですが)若い世代は知らないのですから、100年前の虐殺事件ともなると、知るわけがありません。特に、産経と読売の読者でしたら、知り得ません。でも、あれっ?そっかあ~。今の若い人は新聞読まないかあ~。

 奇しくも、本日から関東大震災直後の虐殺事件を扱った映画「福田村事件」(森達也監督)が公開されたので、御覧になったら如何でしょうか?

【追記】2023年9月2日

 関東大震災後の朝鮮人虐殺事件に関して、「国営放送」のNHKでさえかなり積極的に報道していました。予算審議を政府に握られているNHKが出来るのに、何で政府の意向に従わなくても済む読売、産経、日経が政府の顔色を窺って報道を避けるのか、全くもって不思議です。

台頭するインドの衝撃=4年後、経済大国世界第3位に?

  先日放送されたNHKスペシャルの混迷の世紀シリーズ 「台頭する”第3極”インドの衝撃を追う」はタイトル通り、実に衝撃的でした。

 一人っ子政策の弊害?から早くも少子高齢化社会に突入した中国を追い抜いて、インドは今年(2023年)、世界一の人口大国(14億2800万人)に躍り出たといいいます。そんなインドの台頭が緻密に描かれていました。

 何しろ、4年後の2027年には、インドはドイツ、日本を抜いて世界第3位の経済大国になると言われているのです。その背景のメリットとして平均年齢27.9歳という若さがあります。若さは高度経済成長の要です。中国の平均年齢は38.5歳、日本ともなると48.7歳ですから、どんなに頑張っても(老人をこき使う手もありますが)この予想は覆されないことでしょう。

向日葵

 インド発展のバックグラウンドには、IT技術の強みがあります。インド人はゼロを発見した民族ですから、古代から数学に強い民族です。仏教のお経にも「阿僧祇(あそうぎ)」「那由多(なゆた)」など、とてつもない桁数の数字が出てきます。弥勒如来も、釈迦入滅から56億7000万年後に出現すると言われています。現代人が今、普通に使っている1、2、3…といった数字は「アラビア数字」と言われていますが、実は、インド数字の表記がアラブ世界に取り入れられ、欧州人は中世にアラブ世界からそれらの数字を輸入したのでアラビア数字と呼んだだけで、事実はインド数字だったといいます。

 インド人は数学やITに強いので、米国Googleの社長サンダー・ピチャイ氏も、アドビの会長、社長兼CEOでシャンタヌ・ナラヤン氏らもインド系米国人です。インド系が世界のIT業界を制覇しているといっても過言ではないかもしれません。

 番組では、そんなIT技術の強みを生かして、モディ首相がインド国内だけでなく、エチオピアやフィリピンなどグローバルサウスと呼ばれている国々に対してもデジタルインフラを推し進めている有り様を追っていました。デジタルインフラには、個人のIDが生体認証システムとドッキングし、銀行口座にも紐づけされ、決算が飛躍的に便利になるメリットがあります。その半面、個人情報が何処まで守秘されるのか疑問符が付き、政権が変わって、独裁者が出現すれば、国民を奴隷のように意のままに扱うことが出来る危険性もあるわけです。

 今の日本のマイナーカードでさえ、トラブルが頻発しているわけですから、この個人IDシステムがインド国内はともかく、海外で何処まで伸びるのか、まだ誰も分かりません。

 インドは長い間、英国による植民地支配を受けて苦しんできた国です。そのため、デジタル技術も欧米に奪われて支配されたくないといった高邁な精神から、IT技術を促進していったといいます。つまり、インドによるグローバル・スタンダードの構築です。インドは、グローバルサウスの最貧国にはIT技術を無償で提供すると言われています。

ヤブカンゾウ

 ただし、インドはヒンズー教を国教とし、いまだにカースト制度が残存していると言われます。番組では、モディ政権による少数民族やイスラム教徒に対する弾圧も描写していました。カースト制の最下層に多いと言われる少数の仏教徒も弾圧されているのかもしれません。ウイグル族らを弾圧している中国と同じことをしておきながら、欧米社会は、批判せずにインドを受け入れるという矛盾した態度を取っているわけです。

 国際社会というものは、うわべでは握手してニコニコしながら、水面下では足の蹴り合いをして覇権を争っている社会と言えるのかもしれません。

【追記】

 本日7月18日、銀座の会社に出勤して、無事、誕生日を迎えることが出来ました。Facebookを停止したのにも関わらず、(私から見て)多くの皆様からお祝いのメッセージを頂きました。この場も序でにお借りして御礼申し上げます。

 有難う御座いました。

 誕生日が過ぎれば、精神的にも落ち着くことでしょう(笑)。

ホットドッグ屋から国防次官ポストを目指す野心家=ワグネル創設者プリゴジンとは?

本日(6月25日)の朝刊各紙は、ロシアの民間軍事組織「ワグネル」が、あわやモスクワに進軍するのではないか、ということでプーチン大統領が、反乱軍として投降を呼びかける演説をしたことが1面になっていました。その後、ワグネルはモスクワに侵攻することなく、ベラルーシ方面に向かったという続報が出たので、内戦まで発展せず、万事休すです。

 それにしても、よくテレビで、強面の顔でロシア国防軍を厳しい表情で常に非難して登場するこのワグネルの創設者プリゴジンさんとやら、一体、どんな経歴の持ち主なのか? 日本の新聞では、単なる「実業家」だの「プーチン大統領に近い人物」程度の情報しか書いておらず、いかなる人物なのか、さっぱり分からなかったのですが、たまたま読んだ英高級紙ガーディアンにプリゴジン氏の人となりについて、かなり詳細に報道されていました。

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 そのガーディアンの6月24日付の長文記事(電子版)は「エフゲニー・プリゴジン Yevgeny Prigozhin ホットドッグ売りからプーチンの戦争マシーンのトップに躍り出た男」(意訳)というタイトルでした。

 それによると、プリゴジンは1961年、旧ソ連時代のレニングラード生まれ。父親を幼くして亡くし、病院勤務の母親に育てられたといいます。スポーツ学校でスキーのクロスカントリーなどに励みましたが、プロのスポーツ選手になることはなく卒業。しかし、悪友3人と路上強盗を何度も働いて逮捕され、1980年3月の18歳の時に懲役13年の実刑判決を受けたといいます。ブレジネフ書記長の死もゴルバチョフのペレストロイカも知らないまま、10年後の1990年に出所したプリゴジンは、レニングラードからサンクトペテルブルクと名前を変えた地元でホットドッグ屋を始めます。これが月に1000ドルも売り上げるほど大ヒットし、野心のあるプリゴジンは、スーパーマーケットの株を買って大儲けし、これを元にレストランを開業します。「オールド・カスタムズ・ハウス」と名付けた店で、パートナーは、ロンドンのサヴォイ・ホテル出身で、サンクトペテルブルクの高級ホテルで働いていたトニー・ギアという男でした。このギアの才覚で、ストリッパーが出演する風俗レストランから高級食材を使った超高級レストランに転換すると、グルメのポップスターやビジネスマンらに大評判の人気店となり、ついに、サンクトペテルブルクのアナトリー・ソブチャク市長が副市長に起用したプーチンをこの店に連れてくるようになりました。

 プーチン元中佐は当時、KGBを退職して政治活動を始めたばかりで、勿論、首相にも大統領にもなる前です。ですが、プリゴジンは、将来の大統領候補の胃袋をつかんだことになります。プリゴジンはプーチンだけでなく、サンクトペテルブルク在住の世界的なチェリスト、ロストロポーヴィチとまで親密になり、彼が2001年、自宅にスペインの女王を招待した際に、プリゴジンに食事のケイタリングを任せたほどでした。

 そして、プーチンが首相、大統領に昇り詰めると、世界の首脳らと私的食事会をサンクトペテルブルクで開いた際、利用したのが、このプリゴジンの超高級レストランでした。この中にはブッシュ米大統領やチャールズ英皇太子(当時)らも含まれ、これら要人とプリゴジンも一緒に写真に収まっています。これらの写真は、野心家によって大いに利用されたことでしょう。

 プリゴジンは、プーチンを通して、政府関係のケイタリング・ビジネスに食い込んだだけでなく、その後、シリアで内戦が起きると、食事関係だけでなく、軍装備調達まで手掛けるようになります。2014年にはワグネルを創設して、ついに民間軍事会社として、クリミア半島の占領戦争にも参加したりするわけです。

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 半グレの少年強盗あがりから、社会の大混乱を利用して、一介のホットドッグ屋から叩き上げで高級レストランのオーナーとなり、「先物買い」で著名人との人脈を利用して、のし上がってきた男だということが分かります。プリゴジン氏がロシアのショイグ国防相を非難しても、プーチン大統領だけは批判しないのは、プリゴジン氏にとって、プーチンは大恩人だからだということなのでしょう。勿論、プーチン大統領もプリゴジンを安価な傭兵として利用し、これからも利用し続けることでしょう。

 彼は、日本史でいえば、野心家の成り上がりの羽柴秀吉に近いのかもしれません。今後のプリゴジン氏の動きには目が離せません。一体、この先どうなるのか、誰も予想できませんが、結構、彼がウクライナ戦争の勝敗の鍵を握っているのかもしれません。

【追記】2023.6.30

 約1週間も遅れて、日本の主要新聞各紙もプリゴジンの経歴と人となりを、やっと掲載するようになりました。特に、6月30日付日経朝刊では、かなり詳しく報じていました。プリゴジンの企業グループには、軍事会社ワグネルや飲食業、不動産のほか、「トロール工場」と呼ばれるSNSなどによる世論操作会社もありました。2016年の米大統領選挙に介入し、米国はプリゴジンに制裁を科したといいます。

 ベラルーシに亡命したプリゴジン氏は、目下、同国内に軍事拠点基地を建設中らしく、これからも一波乱ありそうです。

ジェームス・ディーン似のジーンズと仏友会と北原安奈さんが議員当選したお話

 本日は二日酔いでしたので、例のLee 101zのジーンズを履いて会社に出勤しました。別に深い意味はありませんが…。「例のLee 101zのジーンズ」というのは、4月20日付の渓流斎ブログに書きましたが、「有言実行」で、ジェームス・ディーンが愛用したモデルジーンズを買っちゃったわけです(笑)。結構高かった。

 二日酔いになったのは、ちょっとワインを飲み過ぎてしまったからです。昨日は、東京・大手町のサンケイプラザで開催された大学の同窓会「仏友会」に参加し、講演後の懇親会で美味しいワインを頂いたら、すっかり調子に乗ってしまい、帰宅してから家にあったワインまで開けて呑んでしまったのでした。そりゃあ、二日酔いになります。

 仏友会の同窓会は、ちょうど1年前に不肖、この私が講師として、「仕方なく始まった僕のジャーナリスト生活」の題で講演させて頂きました。あれからもう1年経ってしまったとは!

東京・大手町サンケイプラザ

 今回の講師は、川口裕司東京外国語大学名誉教授で演題は「外語での27年間」でした。川口氏は言語学者で、「中世フランス語における方言研究の現状」などの著作や、「フランス中間言語音韻論における母音研究」「第2言語としてのフランス語教育における話し言葉のフランス語研究」などの論文がありますが、あまりにも専門的過ぎて、内容はよく分かりません(笑)。ただ、驚いたことには、川口氏は1981年に東外大フランス語科を卒業しながら、最初の留学先がトルコのイスタンブール大学でトルコ語をマスターしてしまうのです。その後、パリ大学などにも留学しますが、その後に台湾の淡江大学などとも接点が出来て、学究生活は日本とフランスだけでなく、トルコと台湾まで行き来して講義されたりしていたのです。川口氏の研究は「日本語とフランス語の否定辞比較研究」など非常にマニアックなので、「希少価値」として世界中から引っ張りだこだったのでしょう。

 懇親会では、主に、世界的な金融業界で大変な苦労をされた鈴木さんの体験談を聞きました。涙なしには聞けない話でした。

東京駅

 ワインを呑み過ぎたのは、もう一つ要因がありまして、帰宅後、朗報に接したからでした。4月21日付の渓流斎ブログに書きましたが、旧友Kさんの御令嬢Aさんが福島県の裏磐梯にある北塩原村議会議員選挙に出馬し、昨日が投開票日だったのですが、最年少の新人候補ながら、見事、当選したというのです。私以上に「有言実行」の人です。

 当選したので、もうイニシャルはいいでしょう。北原安奈さんです。

 今朝、やっと選挙結果が公表された北塩原村のホームページによると、投票率が何と85.34%。議員定員数10人のところ、16人が立候補しましたが、彼女はギリギリ10番目で当選したのです。まだ実績のない、知名度も低い新人候補ですから、当然ながら、大苦戦でしたが、天の神さまも見てくれていたんですね。奇跡の風を吹かせてくれました。

 でも、当選してから、これからが本番です。村では過疎化や産業発展など色々と問題が山積していると思われますが、是非とも、2697人の村民のためになるよう尽力してほしいものです。

上野・東博の特別展「東福寺」と小津監督贔屓の「蓬莱屋」=村議会議員選挙も宜しく御願い申し上げます

 旧い友人のKさんの御令嬢Aさんが今回、福島県の裏磐梯にある北塩原村議会議員選挙に出馬されたことが分かり、吃驚してしまいました。投開票は4月23日(日)です。

 Aさんにとって、北塩原村は、幼少時から小学生まで育ち、その後、同じ福島県の会津若松市に引っ越しましたが、第二の故郷のようなものです。長じてから、北塩原村にある観光温泉ホテルで働いておりましたが、選挙に出るともなると、両立することは会社で禁じられ、仕方がないので、退職して「背水の陣」で今回の選挙活動に臨んでいます。

 2年ほど前、私もその観光ホテルに泊まって、Aさんに会った時、将来大きな夢がある話も聞いておりました。ですから、別に驚くこともないのですが、こんなに早く、実行に移すなんて、まさに「有言実行」の人だなあ、と感心してしまいました。

 政治というと、どうも私なんか、魑魅魍魎が住む伏魔殿の感じがして敬遠してしまいますが、Aさんの場合は全くその正反対で、彼女は、裏表がない真っ直ぐなクリーンな人なので、安心して公職を任せられます。とても社交的な性格なので、友人知人が多く、周囲で支えてくれる人も沢山いるように見えました。最年少の新人候補なので苦戦が予想されますが、是非とも夢を着実に実現してほしいものです。Aさんは、SNSで情報発信してますので、御興味のある方は是非ご覧ください。

上野・東博「東福寺」展

 さて、昨日は所用があったので会社を休み、午前中は時間があったので、上野の東京国立博物館で開催中の特別展「東福寺」を見に行きました(2100円)。当初は、予定に入れていなかったのですが、テレビの「新・美の巨人たち」で、室町時代の絵仏師で東福寺の専属画家として活躍した吉山明兆(きつさん・みんちょう)の傑作「五百羅漢図」(重要文化財、1383~86年)が14年ぶりに修復を終えて公開されると知ったので、「これは是非とも」と勇んで足を運んだわけです。平日なのに結構混んでいました。

上野・東博「東福寺」展

 「五百羅漢図」は明兆が50幅本として製作しましたが、日本に現存するのは東福寺に45幅、根津美術館に2幅のみです。それが、近年、第47号の1幅がロシアのエルミタージュ美術館で見つかったそうです。この絵は、ある羅漢が天空の龍に向かってビーム光線のようなものを当てているのが印象的です。明兆の下絵図(会場で展示)が残っていたお陰で、江戸時代になって狩野孝信が復元し、この作品も現在、重要文化財になって会場で展示されています。何で、この本物がエルミタージュ美術館にあるのかと言いますと、どういう経緯か分かりませんが、もともとベルリンの博物館に収蔵されていたものをドイツ敗戦のどさくさで、ソ連軍が接取したといいます。接取と言えば綺麗ですが、実体は戦利品として分捕ったということでしょう。ウクライナに侵略した今のロシアを見てもやりかねない民族です。

上野・東博「東福寺」展 釈迦如来坐像

 この東福寺展で、私が一番感動したものは、東福寺三門に安置されていた高さ3メートルを超える「二天王立像」(鎌倉時代、重要文化財)でした。作者不詳ながら、慶派かその影響を受けた仏師によるもので、異様な迫力がありました。撮影禁止だったので、このブログには載せられず、撮影オッケーの釈迦如来像を掲載してしまいましたが、「二天王立像」は、運慶を思わせる写実的な荒々しさが如実に表現され、畏敬の念を起こさせます。

 東福寺は、嘉禎2年 (1236年)から建長7年(1255年)にかけて19年を費やして完成した臨済宗の禅寺です。開祖は「聖一(しょういち)国師」円爾弁円(えんに・べんえん)です。34歳で中国・南宋に留学し、無準師範に師事して帰朝し、関白、左大臣を歴任した九条道家の「東大寺と興福寺に匹敵する寺院を」という命で東福寺を創建します。鎌倉幕府の執権北条時頼の時代です。特別展では、円爾、無準、道家らの肖像画や遺偈、古文書等を多く展示していました。

現在の上野公園は、全部、寛永寺の境内だった!

 ミュージアムショップを含めて、80分ほど館内におりましたが、お腹が空いてきたのでランチを取ろうと外に出ました。上野は久しぶりです。当初は、森鴎外もよく通ったという「蓮玉庵」にしようかと思いましたが、結局、東博からちょっと遠いですが、小津安二郎がこよなく愛したトンカツ店「蓬莱屋」に行くことにしました。

上野

 司馬遼太郎賞を受賞した「満洲国グランドホテル」で知られる作家の平山周吉さんの筆名が、小津安二郎監督の「東京物語」に主演した笠智衆の配役名だったことをつい最近知り(東京物語は何十回も見ているので、そう言えば、そうじゃった!)、その作家の方の平山周吉さんが、最近「小津安二郎」というタイトルの本を出版したということで、頭の隅に引っかかっていたのでした。上野に行って、小津と言えば「蓬莱屋」ですからね。

上野「蓬莱屋」「東京物語」定食2900円

 「蓬莱屋」に行くのは7~8年ぶりでしたが、迷わず、行けました。でも、外には何も「メニュー」もありません。「ま、いっか」ということで入ったのですが、前回行った時より、値段が2倍ぐらいになっていたので吃驚です。結局、せっかくなので、ランチの「東京物語」にしました。「商魂逞しいなあ」と思いつつ、流石に美味で、舌鼓を打ちました。上野の「三大とんかつ店」の中で、私自身は蓬莱屋が一番好きです。

 隣りの客が、昼間からビールを注文しておりましたが、私は、ぐっと我慢しました。だって、展覧会を見て、ランチしただけで、併せて5000円也ですからね。昔は5000円もあれば、もっともっと色んなものが買えたのに、お金の価値も下がったもんですよ。

謎の100部隊と満洲国の「真の姿」=「満洲における日本帝国の軌跡の新発掘」ー第49回諜報研究会

 4月15日(土)、東京・高田馬場の早稲田大学で開催された第49回諜報研究会(インテリジェンス研究所主催、早大20世紀メディア研究所共催)の末席に連なって来ました。同研究会にはここ数年、コロナの影響でZOOM会議では参加しておりましたが、実際に会場に足を運んだのは4年ぶりぐらいでしょうか。久しぶりにお会いする旧知の方とも再会し、まるで同窓会のような雰囲気でした。

 何と言っても、今回登壇されたお二人の報告者が、もう20年近く昔に謦咳を接して頂いた私淑する人生の大先輩ですので、雨が降ろうが嵐が吹こうが、万難を排して参加しなければなりませんでした。実際、この日は雨が降っておりましたが(笑)。

 今回の諜報研究会の大きなテーマは「満洲における日本帝国の軌跡の新発掘」でしたが、最初の報告者は、加藤哲郎一橋大学名誉教授で、タイトルは「人獣共通感染症とワクチン村 731部隊・100部隊の影」でした。事前にメール添付で各人に資料が送られて来ましたが、加藤先生の場合、簡単なレジュメどころか何と70ページにもなる浩瀚なる資料だったので絶句してしまいました。

 こんな長尺な資料から醸し出される講演について、このブログで一言でまとめることは私の能力では無理なので、「概要」から特に印象に残ったことだけ記させて頂きます。講演は、政治学者である加藤哲郎氏と獣医疫学者である小河孝氏がコラボレーションして共著された「731部隊と100部隊ー知られざる人獣共通感染症研究部隊」(花伝社、2022年)の話が中心でした。私自身は石井四郎の731部隊に関しては存じ上げておりましたが、100部隊については、全く知りませんでした。この部隊は、細菌戦研究・生体実験実行部隊として活動した「関東軍軍馬防疫廠100部隊」が正式名称で、歴史の闇の中に隠れておりましたが、小河孝氏による「新発掘」のようです。

 ズルして、概要について、少し改編して引用させて頂きますと、「中国大陸や東南アジアで細菌戦や人体実験を行ったのは、医学者、医師中心の関東軍防疫給水部『731部隊』(哈爾浜) だけではなく、 馬を『生きた兵器』とした軍馬防疫廠『100部隊』(新京)も重要な役割を果たしていた。 戦後、731部隊関係者は米軍に細菌戦データを提供して戦犯訴追を免れるが、軍歴を問われなかった獣医たちはGHQと厚生省、農林省に協力して伝染病撲滅のワクチン開発に職を得た。 そこに人獣共通感染症を研究してきた旧731部隊医師が加わり、彼らは1948年にジフテリア予防接種事件(84人死亡、1000人被害)を起こしながらも、感染症が蔓延した占領期の『防疫』に従事し、その後も日本のワクチン産業を支えた。 2020年年以来の新型コロナに対する日本の医療にも、731部隊・100部隊出身者の系譜を引く「防疫」の影がみられた。」

 これだけの概要だけでも、「えーー、本当ですか?」と胸騒ぎがしますが、加藤氏は、一つ一つ、実証例と関係者の実名を明らかにして解説してくれました。特に、驚かされたことは、究極的に、言論思想統制の「防諜・検閲」と、感染症対策の「防疫・検疫」は相似形で、明治の山縣有朋以来、同時進行で行われ、戦前の最大官僚だった内務省の対外インテリジェンスの二本柱であったという事実です。それだけではなく、現在の新型コロナの感染対策も明治以来の施策が色濃く残り、旧731部隊、100部隊出身者が設立した病院や彼らが開発したワクチンや医薬品、それに彼らが旧職を隠して潜り込んだ大学や製薬会社などがあったという史実でした。

 加藤氏は、医師の上昌広氏がコロナ・パンデミックに際して発表した「この国(日本)は患者を治すための医療ではなく、日本社会を感染症から守る国家防疫体制でコロナに対応している。(中略)明治以来の旧内務省・衛生警察の基本思想がそのまま生きる、通常医療とは別の枠組みからなっている。先進国では日本以外ない」(「サンデー毎日」2021年9月5日)といった記事も「裏付け」として紹介されていました。

 また、「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」のメンバーの出身を検証すると、(1)国立感染症研究所(感染研)は、国立予防衛生研究所(予研)と陸軍軍医学校防疫部の流れを汲み、この軍医学校防疫部から731部隊が結成されます。(2)東京大学医科学研究所は、伝染病研究所の流れを汲み、(3)国立国際医療センターは、陸軍病院の流れを汲み、(4)東京慈恵医科大学は、海軍生徒として英国に留学した高木兼寛らが創立し、海軍との関係が深かった、ということになります。まさに、人材的に、戦前と戦後は途切れたわけではなく、その歴史と系統と系譜は脈々と続いていたわけです。

 100部隊の獣医師らについては、農林省の管轄であったこともあり、戦後はほとんど公職追放されることなく無傷で、ワクチン業界に入ったり、学会に戻ったりした人も多かったといいます。後に岩手大学長になった加藤久弥や新潟大農学部長になった山口本治らの実名が挙げられていました。

 このほか、ワクチン製造会社で有名なデンカ生研は、電気化学工業(現デンカ)の子会社ですが、その前は東芝の子会社として1950年に設立され、戦前は東芝生物理化学研究所新潟支部で、もっと辿れば、1944年に設立された陸軍軍医学校新潟出張所が母体になっていたといいます。陸軍軍医学校とは、勿論、石井四郎の731細菌部隊を輩出した母体でもあります。

 次に登壇されたのが、ジャーナリストの牧久氏でした。タイトルになった「転生」ですが、私はこの本について、このブログでも昨夏、二度にわたって紹介させて頂きました。(2022年8月9日付「8月9日はソ連侵攻の日=牧久著「転生 満州国皇帝・愛新覚羅家と天皇家の昭和」」と同年8月12日付「周恩来と日本=牧久著「転生 満州国皇帝・愛新覚羅家と天皇家の昭和」」です。)牧氏らしく、多くの資料を渉猟して、満洲国皇帝、愛新覚羅溥儀とその実弟溥傑と日本人妻嵯峨浩を中心にした波乱万丈の生涯と満洲帝国の「真の姿」を描き切った労作です。

 今回の諜報研究会の大きなテーマになっている「新発掘」というのは、これまで散々流布されてきた「傀儡国家・偽満洲」ではなく、残された資料から、皇帝溥儀と満洲帝国の「真の姿」を炙り出したことが「新発掘」に繋がると思います。

 つまり、自己批判の回顧録として書かされた溥儀の自伝「我が半生」には、自分の都合の悪いことは書かれず、また、東京裁判で証言に立った溥儀が、自分は関東軍にピストルを突き付けられ、脅迫されて即位した皇帝で、満洲は傀儡国家だったいった趣旨の発言も虚言だったことを暴いたのです。歴史の資料というものは、100%真実が書かれているわけではないのです。

 私も、自分自身の思い込みなのか、教育でそう教え込まれたのか分かりませんが、溥儀の言う通り、満洲は傀儡国家で、皇帝溥儀には何ら自由も決定権もなく、関東軍に操られた人形に過ぎなかった、と信じておりましたが、牧氏の「転生」(小学館、2022年)を読むと、そうではなかったことが分かります。溥儀は、清朝最後の「ラスエンペラー」で、辛亥革命で退位させられたものの、実は、清朝復辟(復活)を夢見て、日本(軍)を利用しようと目論んでいたというのです。そのためにも、実弟溥傑を日本の陸軍士官学校に留学させたりします。

 また、溥儀は、満洲国皇帝に即位して、昭和10年に初来日した際、大歓迎を受け、特に貞明皇太后(昭和天皇の母)から、我が子のように手厚いもてなしを受けたことから、「自分は天皇の兄弟ではないだろうか」と大錯覚してしまうのです。満洲に帰国すると、溥儀は自ら率先して、天照大神をまつる建国神廟を建立するなど、各地に神社をたてます。これも、以前は、「日本人が強制的に満洲に無理やりに神社を建立させた」と、私自身も思い込み、「可哀想な満洲の人たち」と思っていたのですが、溥儀自らが決断したことだったことが分かりました。

 私も、牧氏が仰るように、同じように「歴史修正主義者」ではありませんが、やはり、少なくとも歴史教科書には真実を書くべきであると思っています。諸説ある場合は、違う説も並列して記述するべきです。そうすれば、学徒も間違った思い込みをしたまま、老いて一生を終えたりしないと思います。

 

おっとろしい未来地獄絵=「農業は国家なり」なのでは?

 大変ショッキングな番組を見てしまいました。昨年11月に放送されたものですが、見逃していて、たまたま見た再放送番組です。NHKスペシャル「混迷の世紀 第4回 世界フードショック 〜揺らぐ『食』の秩序〜」という番組です。

 ウクライナ戦争はもうすぐ24日で1年となりますが、その影響で世界中の穀物が高騰し、食糧危機に陥っているというドキュメンタリーです。世界第3位の経済大国日本だって、その蚊帳の外にいられるわけがありません。何しろ、日本の食料自給率はわずか38%(2019年、カロリーベース)で、食料の6割以上を輸入に頼っている現実があるからです。昨夏以来、パンやお菓子や冷凍食品など日本の物価が急激に高騰したのも、輸入に全面的に依存している小麦やトウモロコシや油脂などが高騰した影響なのです。

 それが、これまでのやり方のように、札束を積めば輸入できるならまだましな方で、これからは、トランプ流の「自国民ファースト」の時代になり、まず自国民に十分行き届かせた上で、その余った分をやっと輸出に回す。しかも、最も高額の金額を提示した外国だけに輸出する、といった現実を如実に活写していたのです。(昨年5月末から、インドは小麦、インドネシアはパーム油の輸出を禁止し、世界で取引される食料と飼料の17%が影響を受けたといいます=2023年2月23日付朝日新聞朝刊)

 番組では、日本の全農系の穀物会社の副社長が、世界中を回って穀物確保に苦悩するさまが描かれていました。当初は、全農系の穀物商社を米国に設置しておりましたが、米国の農家は、もっと高い売り手先を見込んで、なかなか日本に売りたがらなくなりました。ちなみに、穀物には、人間様が食べる大豆、小麦などだけでなく、家畜が食べる飼料や肥料なども含まれます。

 仕方がないので、副社長はカナダのアルバータ州の穀物会社に飛んでいきますが、そこで見せられたのは、空っぽの穀物倉庫です。その年は干ばつ等で生産量が少なかったせいもありますが、自国で消費されたか、もっと高額の売り手先に既に輸出してしまっていたのです。

 これでは仕方がない。北米が駄目なら、南米に行くしかない。ということで、副社長さんは、今度はブラジルに飛びます。そしたら、何んともまあ、中国最大の穀物・食品企業であるコフコ(中糧集団)という国有企業が既に全ブラジルの農家と大豆やトウモロコシなどの穀物を抑えていて、目下、1500万トンを輸出できる穀物コンビナートを港に建設中だったのです。中国は、ブラジルの穀物企業も買収してコフコの子会社化しておりました。「遅かりし由良助」です。(中国は、既にブラジルに8000億円も投資しているそうです。)

 驚いたことに、コフコは、ブラジルの農家に穀物の種子だけでなく、肥料まで提供し、荒野で作物が育たなかったアマゾンの奥地のマットグロッソ州の土地までも農地に変えていたという場面(地図だけですが)がチラッと出てきたのです。マットグロッソと聞いて、私は飛び上がるほど驚いてしまいました。何という偶然の一致! 目下、レヴィ=ストロース著「悲しき熱帯Ⅱ」(中公クラシックス)を読んでいたからです。この本では、著者が1930年代後半にマットグロッソ州の先住未開人ナンビクワラ族のもとを訪れ、その生態を事細かく描いていたのです。ナンビクワラ族は先住民の中でも最も極貧に近い生活を強いられています。裸で地面の上で寝起きして、作物があまり育たない荒野を移動しながら狩猟採集生活を細々と続けているのです。

 この本で描かれたナンビクワラ族の生態は今から80年以上昔の話ですから、現在、どうなったのか? まさか、絶滅したかもしれないなあ、と私は思いながら、マットグロッソ州とともに記憶の奥に留めていたのです。そして、現地に行かなければ確かめようがありませんが、ナンビクワラ族は今では数十人だけが生存して狩猟採集生活を続けているようで、この番組を見て、もしかしたら、彼らの一部が農家に転じていたかもしれないと勝手に思ったわけです。

 いずれにせよ、13億人の人口を抱える中国共産党の食料戦略は、感服するほど見事ですね。中国の食料自給率は約98%もあるというのに、です。番組では、このような戦略のことを「食料安全保障」という言葉を使っていました。安全保障は、何も軍事や防衛の話だけではなかったのです。人類の最終的、究極的問題は、最後は食料問題に行きつくことになります。過去4000年間、人類の戦争は食料問題がきっかけに起こったという学者もいました。(18世紀の仏革命も、マリー・アントワネットが「パンがなければケーキを食べればいい」という発言に民衆の革命精神に火が付いたという俗説を思い出しましたが、後世の作り話だという説もあります。)

 番組では、飼料が高騰して、日本の酪農家や養鶏農家の皆さんが「これ以上やっていけません」と絶望していて、私も危機が身近に迫っていることを感じました。これで話が終わってしまえば、身も蓋もないことになってしまいますが、番組のキャスターがフランスの経済学者ジャック・アタリ氏に処方箋を聞いていました。アタリ氏は、食料自給率を上げるためにも、日本はもっと農業を社会的にも報酬的にも魅力的にすべきだ、といった趣旨の発言をしておりました。

 ビスマルクは「鉄は国家なり」と言いましたが、今は「農業は国家なり」と言った方が正しいかもしれません。

【追記】

 2023年2月23日付朝日新聞朝刊1面では「餌が消え鶏が消えた 輸入頼るエジプト」という記事を掲載していました。新聞も負けていませんね(笑)。それによると、エジプトでは昨年10月、トウモロコシや大豆の配合飼料の価格が1.8倍も急騰し、多くの養鶏業者が廃業に追い込まれたといいます。エジプトは、世界最大の小麦輸入国で、昨年までその8割をロシアとウクライナから輸入してきたといいます。石油などエネルギー価格も高騰したことから、エジプトの外貨準備高は急減し、まさかですが、デフォルトの危機になりかねません。

 それなのに、日本のテレビは、相変わらず「大食い競争」だの「行列が出来る飲食店」などグルメ番組ばかりやっています。特別に危機感を煽る必要はありませんけど、大丈夫かなあ、と思ってしまいます。