森の哲人さんが傘寿に

北海道紋別郡滝上町に住む「おじじ」こと徳村彰さんが、3月26日に傘寿、つまり80歳の誕生日を迎えました。今時珍しいガリ版活版刷の「森の子どもの村つうしん」を送ってもらっていますが、そこに書いてました。

おじじのことは、以前、「森の哲人」のタイトルでこのブログでも何回か書いたことがあります。40歳の頃に、病気になり、当時、名医といわれた人から「あと2年の命」と宣告され、子供たち向けの「ひまわり文庫」を(確か)横浜の日吉に創設し、25年ほど前に北海道に移住して「森の子ども村」を創った人です。

 

主に不登校などの問題を抱える子供や、都会の生活になじめない子供たちの受け皿となったり、夏休みのシーズンだけ預かって、キャンプ生活や集団生活を体験させる場を提供してきました。

その間、1985年夏に、移動中に子供二人を交通事故で亡くす災難に遭ったり、一昨年には火事で山小屋を焼失して、「形あるもの全部を失ったり」と散々でしたが、その都度、森を通しての「愛の関係」で乗り越えてきたといいます。

一昨年の9月から4ヵ月半、原因不明の長い下痢に悩まされて、一時は骨と皮の状態で体重も40キロにまで落ちたそうですが、森の中では、寝込もうという気が全く起きず、毎日、雪かきや薪割り、厳寒の沢の水浴びを続けているうちに昨年の2月12日に奇跡的に治ってしまった、と「つうしん」に書いてありました。

私は、おじじとは一度お会いしたことがあります。滝上町は、真冬は零下30度くらいになり、雪も2m近く降ります。まず、普通の人はとても生きていけません。おじじも、当初、郵便配達の人から「これ以上奥地に人は住めないだろうと思ったのに、住もうとするので驚いた」と聞かされたそうです。

 

毎日、雪かきしないと、生きていけません。そのため、肉体労働は必須です。

おじじは、東大卒のインテリらしいのですが、そんなことは全く鼻にかけず、「美学入門」(朝日選書)などの著作もある義父の中井正一の哲学を実践しながら、毎日、森の中に暮らして、環境問題や政治、経済、国際問題について、考えをめぐらしています。

 

自然の大切さを伝えたいがために、無料で「森を語る集い」も開いています。

遅ればせながら、おじじさん、傘寿の誕生日、おめでとうございます。

「アース」

 話題の映画「アース」を見てきました。すごーく期待していたので、ほんの少し、がっかりしましたね。いや、自分では何もできないくせに、ないものねだりに過ぎないのですが、正直、物足りなかったのです。だから、79点。

 

何が物足りなかったか、というと、ディズニー映画のように、「動物万歳!」の視点で撮られており、肉食動物が狩りをするにしても、襲ったところで、お仕舞いにしています。子供たちにあまり残酷なシーンは見せたくないという配慮なのかもしれませんが、自然の過酷さが伝わってきません。

 

でも、内容は本当に素晴らしいのですよ。北極から南極に至るまで、地球に棲む動植物が精一杯生き抜く姿勢が描かれています。ヒトは登場しません。主人公はホッキョクグマであったり、アフリカゾウであったり、鯨だったり、サイベリアのタンドラ(つまり、日本語ではシベリアのツンドラ)だったり、壮大な瀑布だったりします。

地球温暖化の影響で、北極の氷が解け、2030年までに、ホッキョクグマは絶滅すると警告しています。お腹を空かして体重が半分にまで落ちこんだホッキョクグマが、やっとセイウチの集団を見つけますが、狩りをする体力も残っておらず、結局、餓死してしまうところまで映されています。

 

映像は素晴らしいの一言で、誰もが「どうやって撮ったのだろう」と疑問を持つに違いありません。空から撮ったことは分かりますが、ヘリコプターなら、もっと映像がぶれるはずです。鳥が空を飛んで眺めているように、映像は「なめらか」なのです。

この地球は人間だけのものではない、ということをこの映画は伝えたかったのでしょうか?

深く考えさせられる映画でもあります。

カムチャッカ熊 

 帯広

 

カムチャッカ半島に棲息するカムチャッカ熊は、平均体重500キログラムもある超巨大グマです。なぜ、こんな大きな熊がいるのか、NHKの「ダーウインが来た!」と解明していました。

 

原因は火山だそうです。火山のおかげで、プランクトンの好きなリンが散布され、プランクトンが大量に発生し、このプランクトンを目当てに何十種類ものサケやマスが何十万匹も押し寄せてくる。これらを、熊さんたちが、何の苦もなく手づかみで食べられるので、食物の心配がない。疲れた時に、温泉に入ることができ、火山で地熱が高いので、餌にもなる植物もよく育ち、冬眠期間も普通の熊の半年ではなく、3,4ヶ月で済んでしまうというのです。

 

面白かったのは、熊は子供ができると、雄は家族から離れて、雌と子供たちは雄から隠れて棲むようになる。雌は子供がいる限り、発情しないので、雄は時々、子供を襲うことさえあるというのです。嗚呼、熊も人間と同じなんだなと思いました。(え?)

 

そういえば、写真家の星野道夫さんが襲われたのもこのカムチャッカ熊だったはずです。

 

森の哲人、その後…

このブログでも何回かご紹介した「森の哲人」こと、北海道紋別郡滝上町の森に住む徳村彰さんが発行する「森の子ども村つうしん」が久しぶりに届きました。1年ぶりくらいではないでしょうか。何で、こんな間隔があいたのか、どうしたものかと思っていたのですが、これを読んで分かりました。徳村さんにとって、昨年は大変な年だったようです。

 

何と言いますか、彼にとって、昨年は不運続きでした。1月に交通事故に遭ったことを皮切りに、森の小屋が全焼するという災難に遭ってしまいます。その後、昨年から今年にかけて4ヵ月半も原因不明の下痢に悩まされていたということでした。

 

徳村さんは、今年で80歳になるそうです。若い時、どういう生活をしていたのか不明ですが、噂では貿易会社に勤務していて、中国大陸を中心に駆け回っていたと言われますが、40数年前(ということは30歳代後半)に大病を患い、名医から「あと2年の生命」と宣言され、当時の仕事も都会を捨てて、森での生活を選ぶことにしたのです。

 

北海道の滝上町は、冬はマイナス30度にもなる極寒の地です。そこで、想像も絶する重労働の雪かきと森林での生活で、すっかり健康を回復し、視力も0・1と0・09だったのが、1・0と1・2にまでなったという人です。

 

徳村さんは、今でも環境問題に非常に関心があり、舌鋒鋭い論文も書いております。ご興味のある方は、どうか、検索して調べてみてください。有名な方ですから、彼の著書が何冊か紹介されています。