愉しみながら米国史が学べる=松岡將著「ドライビング・ヒストリック・アメリカ 懐かしのヴァージニアに住まいして」

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  まさに有言実行の人です。昨年末か、今年に入ってからか、かの満洲研究家の松岡將氏から「今、また本を執筆中です。内容は秘密です」との連絡が入りました。秘密とは…、何か隠したいことでも、御執筆遊ばされているのかと思いつつ、忘れかけていた数日前に、出版社から私の陋屋に「著者謹呈」で本が送られてきました。

 それがこの本「ドライビング・ヒストリック・アメリカ 懐かしのヴァージニアに住まいして」(同時代社、2021年3月26日初版)です。

 「いやあ、凄いなあ」というのが第一感想です。何しろ、本の略歴に書かれていますが、著者の松岡氏は1935年2月7日生まれ。御年86歳ではありませんか!恐ろしいほどの体力、知力です。瀬戸内寂聴さんも吃驚です。

 読み始めてみると、これがめっちゃ面白い。楽しみながら、アメリカの歴史(特に独立戦争と南北戦争)を学ぶことができ、著者ファミリー(御令室、御子息、御令嬢の一家4人)と一緒に米国の名所旧跡を回ることができるからです。

 途中で、「あれ? この話、どっかで読んだことがあったような…?」と思っていましたら、著者が30年ほど前に出版された「ドライビング・アメリカ」(ジェトロ出版部、1992年)から部分的に借用していることが分かりました。私も昨年10月3日付の渓流斎ブログで、「南北戦争と和製英語の話=松岡將著『ドライビング・アメリカ』から」のタイトルで取り上げております。

 「借用」と大袈裟に書きましたが(笑)、本人が書いたものを「引用」しているわけですから、何の問題もなし。この本では、先行の本とは違って、グーグルマップや名所旧跡を訪れた際のプライベートな家族のカラー写真がふんだんに掲載されているので、類書ながら格段の違いです。

 それにしても、86歳の著者の記憶力には驚愕します。

◇スーパー爺ちゃん

 本の巻末やネットの著者略歴に書いてあるので、書いてしまいますが、著者の松岡氏は農水省のエリート官僚で、1972年から76年まで4年間、外務省に出向し、米国の在ワシントン日本国大使館に勤務した人でした。満洲関連本以外に昨年、現地での副産物として、「ワシントン・ナショナル・ギャラリー 三十六肖像」と「ワシントン・ナショナル・ギャラリー 参百景」を立て続けに上梓し、そのスーパー爺ちゃんぶりを発揮しました。

 私が大先生に対して、「スーパー爺ちゃん」などと気安く書けるのは(怒り心頭でしょうが)、御本人とは面識があり、御自宅にも何度もお邪魔したことがあるからです。ほとんどの読者にとって、本の著者とは面識を持つ機会に恵まれることは少ないのですが、(作家が故人なら尚更!)、幸運にも私はかつて、文芸記者という仕事の関係で多くの著者本人とお会いすることができました。そうなると、本を読むとその著者の声や言い回し、時によっては笑い声や怒りの声まで活字を通して聞こえてくるのです。この本を読んでいても、松岡氏の微苦笑が何度も目に浮かび、聞こえてきました(笑)。

 「記憶力抜群」というのは、例えば、在米4年間に乗ったフルサイズ車は、GM、フォードの2台で走った総距離は6万マイル(10万キロ)とか、その間使ったガソリンが6000ガロン(2万3000リットル)とか、サンクスギビングデーで食したディナーが、スッタフドローストターキーとクランベリーソース、それにスイートポテトとパンプキンパイ…等々、もう半世紀近い出来事なのに、よく覚えていらっしゃること! …んーむ、そんなことないですね。恐らく、細かいメモや毎日、日記を付けていて、それを参照されたことでしょう。

 とにかく、逸話が満載です。

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 例えば、米大陸最初の英国人による植民は、メイフラワー号ではなく、それに先立つ13年前の1607年、スーザンコンスタント号、ゴッドスピード号、ディスカバリー号の3艘で、場所はヴァージニア州のジェームズタウンだったこと、南北戦争で南軍の総司令官になったロバート・E・リー将軍の夫人アーリントンは、初代大統領ワシントンの夫人マーサの連れ子パーク・カスティス(後にジョージ・ワシントンの養子)の娘だったことから、南部軍総司令官になるまでリー将軍は、カーティス・リー・マンションに住んでいたこと、ヴァージニア州とウエスト・ヴァージニア州の違い…等々、あまり書くとこの本を読む楽しみが減ってしまうのでやめておきます。

◇超大金持ちのR氏とは何者か?

 とは言いながら、どうしても書きたかったことは、松岡氏と大富豪R氏との交歓です。たまたま、世界一周旅行をしていた米国人のR氏夫妻と東京で知り合った二十代後半の松岡氏は、彼が大富豪だとは少しも知らずに、自分の自宅に招いたりして交際し、その後もクリスマスカードをやり取りする仲を続けていました。そして、ワシントンに赴任している際に、ニューヨークに住むR氏の自宅を訪れると吃驚。マンハッタン島の中心地に聳える1棟5階建てのマンションが、彼の自宅。あのジョン・レノンでさえ、ダコタハウスの何階かのフロアーを所有していただけですから、1棟丸ごと所有するR氏は、超大金持ちです。

 それに加えてロングアイランド島東端イーストハンプトンにある別荘が凄い。松岡氏ファミリーはこの別荘に招待され、車で駆け付けますが、ワシントンから飛ばして6~7時間かかる距離。R氏が住むニューヨークからイーストハンプトンまで2時間半。別荘の間取りの広さや絵画や彫刻が飾られた美術館のような部屋は当然のことながら、キャッチボールどころか軟式野球ができそうな広い芝生の庭。そして、何よりも、R氏一家(とそのゲスト)しか入れないプライベートビーチまで付いているのです。

 プラチナ価格のニューヨーク・フィルの年間席を持ち、冬はフロリダを越えてバハマやバミューダにまで足を伸ばし、何年かに1回は世界旅行をする超富裕層であるこのR氏の職業は何で、どんな人物なのか、最後まで書かれていませんでしたが、あのロックフェラーさんなのかなあ、と思ったりしました(笑)。多分違うと思いますが、この本のエピソードの中で、在米日本大使館勤務の松岡氏の御令室が、当時の副大統領だったロックフェラー氏とあるパーティーで出会った時、向こうから「私はバイス・プレジデントです」と名乗るので、御令室はどこかの中小企業の副社長のおっさんか何かと勘違いしたかどうか分かりませんが、「どちらのバイス・プレジデントですか?」と尋ねたそうな。そしたら、本物の副大統領だと分かって後で冷や汗をかいた、といったことも披露されてます。

 まあ、私から言うのも変ですが、面白い本なので、お読み頂ければ幸いです。

 ちなみに、プライバシーになりますが、写真と文章に頻繁に登場する松岡氏の御子息は今では有名なスーパーコンピューターの世界的権威、御令嬢は、大手国際企業の重役さんです。この本を読むと、子どもの時から好奇心旺盛のようでしたから、大物になるはずです。

言語は世界制覇の最大の武器

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 人間、否が応でも、政治や経済や社会の影響なしでは生きてはいけないということは自明の理です。でも、それ以上に重要なことは、日ごろ安易に感じられがちな文化だと私は思っています。文化の中でも最も大切なものは、言語です。

 言語は単なるコミュニケーションの手段だと、またまた安易に考えられがちですが、人間は言語によって思考したり、言語によって感情を表現したりする極めて重要なツールなのです。つまり、言語は世界制覇の最大の武器になるのです。

…なぞと、いつもながらの渓流斎ブログらしく、ややこしい前触れから始めましたが、何でこんなことを考えたかと言いますと、欧米が中国の「孔子学院」を相次いで閉鎖している、という記事を読んだからです。

 孔子学院とは、中国教育省傘下の孔子学院本部(北京)が海外の大学構内に設置しているもので、教師や教科書は中国から提供され、運営費の半額は原則的に中国が負担しているといいます。今年10月の時点で、世界162カ国・地域で計541校も開校しているといいます。

 しかし、ここに来て、中国が香港やウイグル、内モンゴルなどに強権的政治力を発動し、人権問題になったりしたことから、欧米を中心に反発が広がり、閉鎖される傾向が続いているといいます。そうでなくても、もともと孔子学院は中国政府のプロパガンダ(政治宣伝)機関かスパイ養成機関ではないかといわれるような疑心暗鬼があったことから、拍車が掛かったようです。

 私自身は、孔子学院でどのような教科書が使われているか知りませんが、中国国内でネット検索すらできない「天安門事件」や「香港国家安全維持法」などは取り上げられていないと想像しています。

実家の老親がやっと退院できるようになりましたが、条件はこのように家内に介護環境を整えることでした

 10月28日付産経新聞は「スウェーデン 対中感情悪化=欧州で突出 香港人権問題契機に」という見出しで大きく報道していました。中国共産党の批判書を扱い閉店に追い込まれた香港の「銅鑼湾書店」の親会社の大株主でスウェーデン国籍も取得している桂民海氏が2018年、中国本土で警察に拘束されたことが関係悪化の契機だったといいます。

 スウェーデンは、国内に8カ所ある孔子学院を全て閉鎖し、携帯電話の5Gで中国のファーウェイの機器の使用を禁止したといいます。

 産経の記事だけを読んでいる限り、「そうですか。中国って悪い国ですね」と言いたいところですが、少し冷静になってみると、そう言い切れないところがあります。この深層に、今年新たに孔子学院を2校閉鎖し、最大120校あったものを現在、81校に減少させた米国と、政治的、経済的に世界制覇を狙う中国との覇権争いがあるからです。つまり、善悪で捉えてはいけないということです。中国が一方的に悪で、米国が善というわけではないのです。言ってみれば、サバンナの弱肉強食の世界です。

 スウェーデンにしたって、2000年初めまでは、経済大国であり、ノーベル賞学者を多く輩出する日本を重視し、多くの日本語講座を設けていたのに、中国が経済発展すると、手のひらを反すようにして、日本語学校を閉鎖・追放して中国語講座を設けるようになったという話を以前、スウェーデン留学歴のある学者に聞いたことがあります。

 正確な引用ではありませんが、勝海舟は毀誉褒貶がある人とはいえ、日清戦争が起きる前、「あれだけ、昔はお世話になったのに、支那(中国)がかわいそうじゃないか」と言って、戦争に反対したと言われてます。

 古代に仏教(漢訳経典)も、稲作灌漑技術も中国大陸から渡ってきたものです。何と言っても、日本語の根幹となった漢字の導入があります。ベトナムや韓国北朝鮮は漢字を棄てましたが、「優等生」の日本は漢字を棄てず、今でも漢字なしでは日本語は語れません。日本人は漢字なしでは思考すらできません。

 尖閣諸島に出没する中国船の話などが連日報道され、世論調査でも中国に対する好感度が極度に下がっています。しかし、隣国として将来に渡って付き合わざるを得ません。

 そう言えば、日本のメディアの中国報道はネガティブなものが多い気がします。それが日本人の対中感情の悪化の原因の一つになっています。

 正直、私自身も皆さんと同じように、今の中国のことを大好きにはなれませんが、何事もほどほどに。欧米だけが一方的に正しいというわけではないのです。「中庸の精神」が大事だと私は思っています。

 

コロナ不況で消費税をゼロにしたらどうでしょう

 日本のテレビは「新型コロナウイルス」の話ばかりやっていて閉口してしまったので、海外のテレビを見てみました。

 そしたら、海外のテレビニュースも9割方、新型コロナの話ばかりでした。駄目じゃん。さすがに、気落ちしてしまいました。このことをあまりブログに書いても、やたらと不安を煽り立てるだけのような気がして、昨日はブログを書くのはやめにしました。

 でも、今日は書かざるを得ませんね。 世界保健機関(WHO) は日本時間の今日未明に、ついに新型コロナウイルスはパンデミックであることを認めました。WHOが発表する数字は、意図的なのか、能力的なのか、かなり少ないので、米ジョンズ・ホプキンス大学が発表している世界の感染状況の数字を一生懸命に計算して取り上げてみると、3月11日の時点で、12万6093人が感染し、4628人が亡くなっています。このうち、(1)中国の感染者は8万0929人(死者3169人、香港3人)、(2)イタリア1万2462人(827人)、(3)イラン9000人(354人)、(4)韓国7755人(60人)、(5)フランス2284人(48人)、(6)スペイン2272人(55人)、(7)ドイツ1966人(3人)、(8)米国1281人(36人)、(9)クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」 696人(7人)、(10)スイス652人(4人)、(11)日本639人(15人)…となっています。(ジョンズ・ホプキンス大のサイトを見ていると、数字は時々刻々と増えています)

伊ミラノ

 今週になって、急に欧米で増えました。特にイタリアでは、1万人以上が感染し、既に827人が亡くなり、中国に次ぐ多さです。イタリアはどうしっちゃったんでしょうか。

 フランスのテレビですが、映像を見ていたら、芸術の都フィレンツェも、水の都ベネツィアのサンマルコ広場も、遺跡の都ローマのコッロセオも、あんなに観光客で溢れていたのに、今は人影もまばらです。飛行機内も空港もパラパラです。航空会社は大赤字でしょうね。

イタリアのコンテ首相は11日に、テレビを通じて、国内の薬局と食料品店以外の全店舗を閉鎖すると発表しました。イタリア人の大好きなオペラや映画も見られず、外食もできないんでしょうか。鎖国ですね。

 3月10日のフランス2の「20時のニュース」では、新型コロナウイルスは、全世界で11万6000人が感染し、約6100人が死亡しましたが、6万4000人が回復。死亡率は1~3%程度だと報じていました。数字は、米ジョンズ・ホプキンス大学の最新データとは違いますが、結構、回復者がいて、80%は軽症と、合理的なフランス人らしく、努めて冷静になるよう強調している感じがしました。

 ですから、隣国のイタリアは異様です。病床が少なく、医者や看護師が足りないようですが、何でこんな急速に拡大したんでしょうか?北イタリアは、中国人観光客や出稼ぎ労働者が多かったという話もありましたが、隣国のドイツの感染者は1966人、死亡者が3人ですから、何か他に理由がありそうです。

 とにかく、このような新型コロナウイルスの拡大による経済的損失は莫大で、まさに「コロナ・ショック」で世界同時株安、原油安、債権暴落という恐慌が押し寄せてきました。

 我が日本国政府は昨日の11日に「緊急対応策」第3弾の着手を発表し、子育て世帯に3万円を給付する案が検討されているとか。そんなんで大丈夫なんでしょうかねえ。「焼け石に水」のような感じがします。

 この分だと、夏の東京オリンピック開催は無理でしょう。夏には終息するという希望的観測がありますが、真夏の南半球のオーストラリアで感染拡大するぐらいですからね。突然変異するウイルスです。代替開催に「立候補」していたロンドンだって感染者がいるんですから無理ですよ。(英国の感染者は459人、死者8人)

 日本にも大不況が襲ってくるのはほぼ確実で、倒産する会社も出てきますし、個人消費は大幅にダウンすることでしょう。こうなったら、1年間の時限立法でいいですから、消費税を半分ではなく、一層のこと、ゼロに戻したらどうでしょうか。

 私のような単なるブロガーが何を言っても始まりませんが、政府与党の皆さんには景気回復のために真剣に検討してもらいたいです。

森永卓郎著「なぜ日本だけが成長できないのか」

正直に告白しますと、現役時代はお金に困ったことはありませんでした。毎月、決まって給与が入り、半年に一度、多額の(まさか=笑)ボーナスまで振り込まれましたからね。会社は赤字でも、京洛先生の会社のように給料遅配の憂き目に遭ったこともありませんでした。

でも、今は遠い昔。現役を引退しますと、実入りが大幅に減額し、あ、はあ、さて、は困った、困った。大変なことになってしまった…。そこで、やり繰りするために、死に物狂いで経済と金融を勉強せざるを得なくなりました。

100冊ぐらい関連書を読みましたかねえ…(笑)。その結果は「さっぱり分からん」です。投げやりな、悪い意味ではないのです。これから景気が悪くなるのか、株が暴落するのか、今は多くの人がそう予想していますが、それはあくまでも予想であって、可能性は高くても、当たるかもしれないし、当たらないかも知らない。要するに未来のことなど誰も分からないという当然の結論でした。(誰にも分からないことを、さも分かった顔をして御託宣してお金を稼いでいる人もいますが)

 一方、過去については、解釈の違いこそあれ、覆せないので、安心して学ぶことができ将来に向けて参考にできます。「歴史に学べ」です。

その点、今読んでいる森永卓郎著「なぜ日本だけが成長できないのか」(角川新書、2018・12・10初版)は、特にバブル経済崩壊から日本経済の転落までを扱ったもので、まさに蒙が啓かれたといいますか、目から鱗が落ちたといいますか、大いに勉強になりました。「プラザ合意」も「バブル崩壊」も、同時代人として体験しながら、その当時はほとんど経済の勉強をしていなかったので、何が原因で起きていたのか分かりませんでしたが、「あれは、そういうことだったのか」「今の状況はそういう繋がりがあったのか」と、今さらながら、やっとクイズかパズルが解けたような爽快感があります。

 この本は面白い。興奮するほど面白いです。日本が不景気になり、経済大国から転落した原因として、人口減や労働人口の低下にあるとされてきましたが、著者は「それは違う」と具体的な数字をあげて反論します。(日本の就業者数は1995年6414万人だったのが、2016年は6465万人で、減っているどころか微増している)

バルセロナ・グエル邸

 それでは、日本経済の低迷の原因は何だったのかと言うと、森永氏は、ハゲタカ・ファンドを含む外資の日本進出にあった、と喝破します。同氏は「世界のGDPに占める日本の比率は、1995年に17.5%だったのが、2016年に6.5%と3分の1も落ち込んだ。これは、2001年からの構造改革により、日本の大切な資本が外資に二束三文で食われてしまったからだ。資本が外国のものになれば、当然、儲けは海外に持っていかれてしまう」と説明します。少し引用します。

 …日本の空洞化は、3段階で進んだことが分かる。

 第1段階は、1986年以降に日本企業が海外生産比率を上げていく『海外移転』。

 第2段階は、1990年のバブル崩壊以降、外国資本が日本の企業の株式を買い漁り、外国資本による株式保有の増加。

 第3段階は、日本企業そのものが二束三文で外国資本に叩き売られた不良債権処理。

 この三つはそれぞれ単独の現象のようにみられるかもしれないが、実は、この順序も含めて大きなシナリオで結びついている。グローバル資本とその先棒をかつぐ構造改革派の日本人は、実に30年がかりで日本経済を転落させていったのだ。…

バルセロナ

 うーん、実に明解ですね。この後、筆者は、この「グローバル資本」と「構造改革派の日本人」として、対日貿易赤字に苦しみ、その打開策を図った米国政府とその圧力に負けた日銀と財務省、構造改革を主導した小泉純一郎首相とそのブレーンになった1962年生まれの元日銀行員だった木村剛氏らを槍玉に挙げます。(当時の最大責任者だった竹中平蔵経済財政政策担当大臣を、森永氏は、時たま擁護するような表現を使うので不信感はありますが)

 特に、不良債権処理の旗振り役だった木村剛氏( 日本振興銀行会長になった同氏は2010年、銀行法違反容疑で逮捕=懲役1年執行猶予3年の有罪刑が確定= )がリストアップした「問題企業30社」は、流通、建設、不動産などに偏ったものばかりで、それは、外国のハゲタカ・ファンドが涎が出るほど欲しがっていたものと一致していたことは絶対に偶然ではないという著者の指摘は、背筋が凍るほどでした。森永氏は「木村氏は問題企業をハゲタカの餌食に差し出す手先だ」と批判しましたが、日本一のスーパーだったダイエーや日本長期信用銀行などの例を見ても、 結果的にそうなってしまいました。

 渓流斎ブログは、多くの経済専門の方々が熱心に読んでくださってますが、私自身は、この本は大変参考になったことを強調しておきます。(まだ、途中なので、この本については、またいつか触れるかもしれませんが)

トランプ大統領の移民半減政策

ハバロフスクのプーシキン像 Copyright par Duc de MatsuokaSousumu

昨日の夕方、会社で何か焦げ臭いな、と思いつつ、仕事が終わって外に出たら、空に2機ヘリコプターが飛び交い、普段より多めの人が歩道に屯して異様な雰囲気。曇りかなあと思っていたら、臭いがある煙が多少充満してました。

お家に帰ってニュースを見たら、築地の場外市場の木造の商店で火災が発生した、とやっていて、それで初めて火事だと分かった次第。案外、現場近くにいても、面倒臭さがらずに、その現場に行かなければ、分からないものです。

ハバロフスク Copyright par Duc de MatsuokaSousumu

昨日のニュースで、トランプ米大統領が永住権(グリーンカード)の年間発行数を100万人から50万人へと半減する移民政策法案を発表しました。

理由は、移民労働者が米国民の職や収入を奪っているからだというもの。

これは為政者として半分正しい主張です。何故なら、為政者としての最大の使命は、自国民が安心して働ける社会を構築することにあるからです。

しかし、そもそもアメリカという国自体は、ネイティヴ・アメリカンを虐殺、略奪して建国し、はるばるアフリカから奴隷を連れてきてプランテーションで富を築き、現代も移民労働者をかなり安い賃金で搾取して成り立っている国ではないのでしょうか。

移民労働者の職を米国民が安い賃金でできるのかどうか他人事ながら心配してしまいます。

毎日新聞の報道によると、共和党側からも反対論が出ており、立法化が実現するか不透明な状況だたいうことですので、果たしてどうなるか。
ハバロフスク Copyright par Duc de MatsuokaSousumu

日本も移民問題については、対岸の昨日の築地場外市場ではない状況です。

トランプ大統領は、「今後は、英語を話し米国経済に貢献できる高い技能を持つ申請者に優先的に永住権を付与する」と説明したらしいですが、早晩、日本の為政者も「今後は、日本語を話し日本経済に貢献できる高い技能を持つ申請者に優先的に永住権を付与する」と宣言するかもしれません。

もっとも、通販大手の楽天が既に社内公用語を英語にして高い技能を持つ外国人を優先してますから、今更何だという話になるのかもしれません。

まさにグローバリズムの最先端です。

しかし、トランプ大統領の方針は、そんなグローバリズムに異議を唱えたことになります。

トランプさんが可哀想?

伊太利亜フィレンツェ

「弱い者イジメじゃないですかねえ」ー。こう仰るのは進歩主義者として知られる札幌にお住まいの雪祭先生です。

この「弱い者」というのが、アメリカのトランプ大統領のことなので、2度ビックリです。

えっ? トランプ大統領といえば、今や飛ぶ鳥を落とす勢いの、世界で最も高い権力を握った為政者でしょう?

しかも、周囲に大富豪やゴールドマンサックスや将軍様や狂犬まで従えて、自分の意の向くまま、好き放題、やり放題じゃありませんか。

「いやいや、可哀想ですよ。あそこまで世界の首脳やマスコミを敵に回して…。中東・アフリカ7カ国の人々の一時的入国禁止だって、ロイター通信の調査では、米国民の49%が支持してるんですよ。反対の方は41%と少ないんです。

それなのに、既成の新聞やテレビは、小さくしか扱わない。彼は、アメリカ国民から選ばれた正統な大統領なんですよ。

既成マスコミは、何処の国もエリートなんですよ。それも、官僚になりそこなったプチ・エリートだから、権力者に対するやっかみやら当てつけやら僻み嫉みが、一般人より激しいんですよ。

そりゃ、一緒に同じキャンパスの机の隣で並んで座っていた奴が出世すれば、誰だっていちゃもんつけたくなりますよなあ…」

雪祭先生、言わんとすることは、分からないことはないですけどね。

そう言えば、昭和の有名な評論家で、その人の名前で出版社が賞を贈呈している評論家がいましたが、その人は、新聞社からコメントを求められると「賛成?反対?」と聞いたそうですね。

例えば、安全保障問題でも、基地問題でも何でもいいんですけど、賛成でも、反対でも、どちらでも書けるという意味なんですね。

その著名評論家にとって、世情で起きる問題なぞ、どっちでもいいと思ってるんでしょう。まあ、よく言えば、紙一重だと思ってるんでしょうね。政治家じゃないから本人は、何を書いたって責任取る必要もないし、原稿料だけ稼げればいいんですから。

まあ、言葉は悪いですが、活字芸者みたいなもんですよ。

人間的な、あまりにも人間的な…。「節操が無い」と批判する方が間違ってるんですよ。
伊太利亜フィレンツェ

「そういうことです。世の中はそんな単純じゃありません。一人の人間だって、ある時は息子で、ある時は夫で父親、ある時は使用人、ある時は先生と色んな側面を持ってるわけです。

だから、物事は複眼的に見なければならないのです。マスコミが一方的に報道したことを鸚鵡返しに発言する輩が多すぎます。

その点、渓流斎さんとやらも、大分、賢くなってきたようですね。まあ、その歳じゃ、どう足掻いたって、もう手遅れですけどね(笑)。まあ、めげないで頑張って下さい」

ははあ、御意。

私は裃のシワを伸ばしながら、土下座するしかありませんでした。

バノン氏の暴走を止めるのは誰?

伊太利亜フィレンツェ

私は最近は、トランプ米大統領以上に、スティーブ・バノン首席戦略官(63)の言動に注目しています。

経歴は、ハーバード・ビジネス・スクールで名誉(?)修士号などを取得した後、海軍やゴールドマンサックスに勤務し、入閣する前は、ユダヤ系の右派ネットメディア「ブライトバート・ニュース」の編集長を務めていた人です。

アイルランド系のカトリックだそうですが、過激な発言から「人種差別主義者」「女性蔑視主義者」として危険人物視されてきました。

熱烈なトランプ支持者として、大統領選挙の選対責任者に選ばれ、大統領のスピーチや大統領令の草案を作っているものと見られ、トランプ大統領の側近中の側近ブレーンです。

既存メディアを蛇蝎視して、「お前たちは、さっさと敗北を認めて黙ってろ」と放言するなど、彼らしい面目躍如を発揮しております。

伊太利亜フィレンツェ

その白豪主義者バノン氏が昨日、国家安全保障会議(NSC)の常任メンバーに選出されたことから、またまた物議を醸しています。

彼がメンバーに選ばれることは既成路線だったとしても、統合参謀本部議長と国家情報長官がNSCの常任メンバーから除外されたというのは穏やかではありません。

これでは、バノン氏の暴走、いや独裁が目に見えています。NSCは、米国内だけでなく、日本を含む対外、つまり国際戦略に大変大きな影響を及ぼすセクションであることは明白です。9.11以降、米国はイラク・アフガン戦争を起こし、憎しみが憎しみを呼ぶテロ組織を萌芽させる遠因も作りましたからね。

気になるのは、彼のアジア人蔑視です。大国アメリカの政権中枢にいるバノン氏が、日本人を含むアジア人から、また植民地主義時代に戻って搾取することしか考えないようなら、今から遅くはないので、対策を考えるべきではないでしょうか。

そんな中、世界各国の首脳が、トランプ大統領による入国制限の混乱について批判するメッセージを発表しているというのに、日本の安倍首相だけはだんまりを決め込んでいるのが気になります。

スリーG機関=トランプ新政権の実体

長春Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur

1月20日に始動する米国トランプ政権は、ミズーリ州選出のクレアー・マッカスキル上院議員(民主)の命名によりますと、「スリーG機関」となるようです。

スリーGとは、Goldman, generals and gazillionaires のこと。つまり、トランプ政権の重要ポストに就任する面々のほとんどが、世界最大の投資銀行ゴールドマン・サックス出身者と国防省の将軍歴任者と億万長者で占められているというわけです。

「我々は何処から来たのか 我々は何者なのか  我々は何処へ行くのか」(ゴーギャン)

ええ、それは、彼らスリーGが、我々を連れて行ってくれるのです。

一体、それは何処へ?
 旧外交部 Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur
まだ、総資産37億ドルの不動産王トランプさんがつぶやいた内定段階ですが、ちょと見てみましょう。(敬称略)

【ゴールドマン・サックス=GS関係】
●スティーブン・ムニューチン 53歳(元GS幹部でトランプ選対の金庫番)⇒財務長官
●ゲーリー・コーン(GS前社長兼COO)⇒国家経済会議議長(経済政策司令塔)

【軍人・将軍歴任者】
●ジェームス・マティス 66歳(元中央軍司令官・元海兵隊大将、イラク戦争指揮官、「狂犬」の異名)⇒国防長官
●マイケル・フリン(元陸軍中将)⇒国家安全保障担当大統領補佐官 *親ロシア派 「イスラム教を怖れることは理にかなう」と発言
●ジョン・ケリー(元海兵隊大将)⇒国土安全保障長官
●ライアン・ジンキ(元海軍特殊部隊シールズ出身・モンタナ州選出下院議員)⇒内務長官

【億万長者】
●レックス・ティラーソン 64歳(石油大手エクソンモービルの前会長兼CEO・総資産4億ドル)⇒国務長官 *樺太油田をロシアと共同開発 、プーチン大統領とは刎頚の友
●ベッツィ・デボス(義父リチャード・デボスがアムウエイの共同創業者・総資産51億ドル)⇒教育長官
●ウィルバー・ロス(投資家・ウォール街の再建王・総資産25億ドル)⇒商務長官 *親ロシア派
●ウィリアム・ハガティ(投資会社ハガティ・ピーターソン創設者)?駐日米国大使
●リック・ペリー(石油パイプライン「エネルギー・トラスファー・パートナーズ」重役・前テキサス州知事)?エネルギー長官

 長春 Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur

このほか、トランプ次期大統領の最初の妻との間の長女イバンカ(実業家)の夫ジャレッド・クシュナー(35)はユダヤ系で、父親の不動産業を受け継ぎ、IT業界との太いパイプがあり、中東問題に多大な影響を持つと言われています。

【学識経験者】
●ピーター・ナバロ(カリフォルニア大学アーバイン校経済学部教授)⇒国家通商会議(新設)議長 ※著書「中国は世界に復讐する」など対中国強硬派

●スティ-ブン・バノン(親イスラエル・サイト「ブライトバート・ニュース」会長)⇒大統領上級顧問兼首席戦略官 ※白人至上主義・人種差別主義・女性蔑視記事を好んで掲載(サイトの設立者の故アンドリュー・ブライトバートは、ユダヤ系米国人)

もうこれで、我々が何処へ行くのかお分かりですね。

トランプ氏もヒラリーさんも同じ?

 ワニノ・ホテル Par Duc Matsuocha-gouverneur

今日は、飯場でちょっとしたことがありまして、ほんの少し思うところがありましたが、まあ、それはそれで、また明日からも頑張ることにしました。哀しい哉、それしかありませんからね。

ワニノ・ホテル Par Duc Matsuocha-gouverneur

とは言っても、今日は別に書くことはないのです(笑)。

まあ、スーパーチューズデイで共和党候補のトランプ氏が圧勝して、もしかして、もしかして、民主党候補のクリントン女史を圧倒して、彼が大統領になるんじゃないか、と、今、世界中で大騒ぎです。

日本も多大な影響があるので、見過ごすことはできません。彼の一挙手一投足に眼が離せませんね。

ワニノ公民館 Par Duc Matsuocha-gouverneur

不動産王の異名を持つトランプ氏は、フランスの極右政党国民戦線のル・ペン氏みたいなもんでしょうかね?―と、こんなことを書くと本人から、いや両者から怒られますかね?

トランプ氏の個人資産は5000億円以上とも言われ、お金は泉のように湧いて使えないほどありますから、何処の組織、団体に遠慮することはなく、まさに言いたい放題です。ウオール街を敵に回しても、何のそのです。

それでも過激な発言には恐怖すら感じさせます。中には、「マジ?」「本気?」と言いたくなる程で、「イスラム教徒の(米国)入国は、禁止する」とか、「メキシコ国境に壁をつくる」とか、「米国の雇用が落ちているのは、中国と日本のせいだ」とか…。

当選したいがためのリップサービスなのか、本気なのか、ちょっと判断に苦しみます。

実際にトランプ氏にあったことがある日本人の国際経営コンサルタント氏は「非常に頭が切れる人で、彼ならやれる」といった趣旨の発言をしていましたが、「日本は米国に防衛を押し付けて、ただ乗りしている」といった発言は事実誤認でしょう。トランプ氏は、政治家経験がないので、「おもいやり予算」のことなど知らないんでしょうね。

 海の向こうは樺太 Par Duc Matsuocha-gouverneur

一方のヒラリー・クリントン氏も、急に「TPP反対」を言い出したり、「日本はわざと円安にして貿易で利益を挙げている。米国の雇用を守ろうではないですか」と、これまた事実とは異なった演説をしたりして、有権者に対するリップサービスなのか、「反日的」です。

要するに、民主党=左派、共和党=右派というのは間違っていて、民主党も共和党も大差はないエスタブリッシュメントだということです。奴隷を解放したリンカーンは共和党ですし、広島・長崎の原爆投下にゴーサインをしたトルーマンは民主党ですからね。

スーパーチューズデイで大勢が決すると言われてますから、恐らく、ヒラリーさん対トランプ氏の決選投票になることでしょう。

どちらになっても、「強い米国」を復活させるために保護貿易に徹底しそうですから、日本にとっては手強い相手だということは確かです。

オバマ氏が民主党大統領候補になりましたが

 

民主党大統領候補に、小沢氏が、いや違いました…小浜氏が、あ、また間違いました。オバマ氏が確定しましたね。

あ? わざとらしかったですか?

それだけ、アメリカの大統領は、政治経済、外交、軍事問題に至るまで、日本に多大な影響を深く及ぼすということです。

 

しかし、どうも、オバマ氏の場合、日本にとって、未知数のゾーンが多いようですね。上院議員は1期しか務めていないので、日本人の政治家と親しい人は一人もいないらしく、もちろん、オバマ氏は1度も日本に来たことはないし、日本に関する知識もほとんどないのかもしれません。もっと言えば、関心も薄いのかもしれません。アジアでは母親の再婚相手がいて自らも少年時代に過したインドネシアの方が日本より関心があるのかもしれません。

そもそも、オバマ氏は、今回の選挙キャンペーンで、”change” (変革)と  “We can do it”(自分たちならできる)という2語だけは絶叫しておりましたが、具体的な政策については、言明しておらず、未知数の部分が多いんですよね。ブッシュ大統領がrogue country (ならずもの国家)と揶揄した「北朝鮮」や「イラン」の指導者たちに、大統領になったら直ちに会う、と発言して、物議を醸しだしましたが、彼が何を「変革」したいのかよく分かりません。

アメリカ大統領といえば、真っ先に思うのは、「核のボタン」を預けられるということです。「世界警察」の長として、平和の鍵を一手に握るということです。

霞ヶ関の高級役人の皆さんの中には「オバマ氏が大統領になったら、誰を国防長官、国務大臣…に任命するのかさっぱり分からない。むしろ、日本びいきの共和党のマケイン氏に大統領になってもらった方が、日本の国益とっていいのではないか」と言う人もおりました。

私の個人的意見としては、誰が大統領になっても、早く、サブプライムローン問題を解決してもらって、世界経済を安定してもらいたいですね。京都議定書に不参加の米国ですから、今後の環境問題にどう取り組むのか、明確な指針も示してほしいです。

71歳のマケイン氏に対して、オバマ氏は46歳なんですね。でも、ケネディが大統領になったのは、確か43歳ですから、そんなに若いともいえません。とかく激務ですから、体力と気力が重要です。

今のところ敗北を認めないヒラリーさんは副大統領候補になるのでしょうか?

 

11月の本選まで、目が離せませんが、本当に長い選挙ですね。お金が掛かるはずです。一説では、ヒラリーさんは30億円以上の借金を抱えてしまったそうです。

こういう報道は尻切れトンボで、それ以上の詳細に触れられていないのですが、じゃあ、大統領になれば、それぐらいの借金は返せるということでしょうか?よく分かりません。すごい世界です。