「ウェブ人間論」

公開日時: 2007年10月7日 

某文芸誌の編集長からのお奨めで、梅田望夫・平野啓一郎の対談「ウェブ人間論」(新潮新書)を読了しました。

まさに、目から鱗が落ちる感じでした。これまでのインターネットの関する考え方が変わりました。特に、シリコンバレー在住のITコンサルタントである梅田氏のブログに対する真摯ともいえる態度には、感銘すらおぼえました。何しろ、梅田氏は、1995年を日本における「インターネット元年」ととらえ、その年に20歳だった1975年生まれに注目し「自分より年上の人(梅田氏は1960年生まれ)と過す時間をできるだけ減らし、自分より年下の人、それも1970年以降に生まれた若い人たちと過す時間を積極的に作ることで次代の萌芽を考えていきたい」と「9・11」以降に決断するのです。ちなみに、作家の平野氏は、1975年生まれです。

梅田氏は、1日、トータルで8時間から10時間もネットにつながり「ネットの世界に住む」と自称します。毎日、300近いブログを読み、自分のブログも頻繁に更新し、「自分の分身に会いにいく」というような表現をするのです。

梅田氏によると、ネットの魅力は、リアルな空間での自分の恵まれ度、つまり現実生活での幸福感と言ってもいいでしょうが、その度合いと反比例するというのです。要するに、リアルな世界で認められている人やいい会社に勤めている人は、リアルの世界で完全に充足しているので、別のネットの世界など必要がないし、興味もないというわけです。

いやあ、これは、私自身にも思い当たる節、大だということなので納得してしまいました。

誰でもリアルな世界で恵まれていたら、こんなに無料のブログにはまることはないですからね。

この本の中で、面白かったのは、新しい商品名を思いついた時、その言葉が、検索で「空いている」かどうかチェックするということです。例えば、この私のブログの「渓流斎日乗」は、そんなことを意識しなくて勝手につけたのですが、「渓流斎日乗」と、グーグルでも、ヤフーでもいいのですが、検索すると、私のブログが最初に出てきます。それは「空いて」いて、今まで、誰もこの名称を使っていなかったからです。仮に何万人も同じ名称を使っていたとして、私のブログが9999番くらいに初めて出てきたりしたら、誰も気づかれずに読まれることはないということなのです!

それからもう一つ。もし、リアルな世界でハッピーでなかったら、ネットの世界でハッピーな空間が作れると、梅田氏が力説していることです。ネットは時間を超えられませんが、空間は完璧に超えられます。今、身の回りに親身に相談に乗ってくれる人がいなくても、アメリカに住む友人が相談に乗ってくれることもできますし、今まで知り合えなかった人と、性別、国籍、年齢を超えて友人にもなれます。

この本には、終始、梅田氏の「楽観論」で満ち溢れていますが、本当に考えさせられ、興味深く読むことができました。皆さんにもお奨めです。