「未完結感」をなくすということ

P,P,P,Paris

今年は暖冬ですね。私の住む集合住宅の南に面した室内は、暖房を入れなくても摂氏28度もあります。

そのせいか、「冬物が売れない」という嘆き声が聞こえてきます。かの量販チェーン店も苦戦してますが、「理由は、それだけじゃない」という記事もみかけました。中身は詳しく読んでいないので、ここまで(笑)。

さて、植木理恵著「ウツになりたいという病」(集英社新書)は、精神的にしんどい人でもそうでない人でも、読むと何となく心の整理がついて、すっきりします。つまり、モヤモヤした感情を文字化・記号化してくれるからでしょう。

もっとも、著者は、自分の感情など言葉で言い表せないので、毎日毎時、色で表現したらいい、と勧めたりしています。ヒトの感情は、体調や周囲などに影響され、1週間どころか、毎日毎時、刻々と移り変わり、そういう自分を受け入れることも勧めています。

著者は美人カウンセラーとして、テレビによく出ているそうですが、私はあまりよく知りません。関心したのは、巻末の参考文献としてほとんど英語の原書を列挙していたことです。

著者本人も何年もパニック障害で苦しんだ体験があり、そのせいか、何となく説得力があります。

かつての、この種の本は、自己啓発セミナーなどにもみられるように、「苦しい時こそ笑顔を浮かべれば、開放される」などと、ポジティブな考え方優先の理論で占められていましたが、この本では、自分のネガティブな部分も受け入れて、認めてあげようというスタンスなのです。
正確に言うと、ネガでもポジでもどちらかに偏らず、バランスをとる、という手法です。

また、従来のウツの人は、「自罰主義」で自分を責めてばかりいましたが、最近の新型ウツには、「他罰主義」が見られ、すべて、周囲の家族や、先生や、社会のせいに責任転嫁してしまう傾向がみられるそうです。自己評価が高い人が多い新型ウツの人に「頑張れ」というのは禁句で、むしろ、「あなたが会社を休めば、社にとって大損失ですよ」などと、自尊心をくすぐったりすると、前向きになったりするそうです。

この本で私が注目した点はその『対症法』です。

まず、相容れない矛盾した二つのことが同時に起こり(例えば、学業や仕事の挫折や失恋など)、そのために強い葛藤が生まれる「認知的不協和」となります。

そうなると、普通の人は現実逃避して、なるべくそこから逃れようとしますが、それは逆効果で、その認知的不協和は、「残存」してしまいます。

ですから、
(1)できるだけ真正面からこの「認知的不協和」と向かい合う。
(2)心の傷から目を背けたり、忘れたりしないで、じっくりと傷と向かい合う。そうすると、ひどく落ち込んで苦しくて一層つらくなります。かなりの激痛を伴います=「塩塗療法」。しかし、実はそうすることによって、早くつらいことを忘れ、傷を癒すことができ、脳の「忘却する能力」を刺激することになります。
(3)最後に、自分の中でその認知的不協和の悲しくてつらいストーリーの結末をつくって、「未完結感」をなくすのです。

ほかにも、「矛盾も何かもあるがままに受け入れる」といった話もありましたが、皆様のように、毎日、健全な精神生活を送られている方は必要ないかもしれませんね。失礼しましたー。