自殺した米有名シェフ、ベトナムでも悲しみに包まれる

昨日の休み、家でたまたま米CNNテレビを見ていたら、米著名料理人アンソニー・ボーデインさん Anthony Bourdain という人が、8日にフランス・アルザス地方のケゼルスベールの高級ホテルで首吊り自殺したというニュースが報じられていました。61歳だったといいます。

私は全く知らない人でしたが、2013年に放送が始まったCNNの料理・旅番組「パーツ・アンノウン(邦題:アンソニー世界を駆ける)」に出演して、一躍人気者になり、世界中で顔が売れている超有名シェフだったとか。

2016年にはオバマ大統領(当時)がベトナムを公式訪問した際に、彼と2人でハノイ市内のブンチャー(つけ麺)食堂で、気軽に食事を取っている姿が同番組で紹介されたこともあり、ベトナムでもボーデインさんの人気が高かったといいます。

“Low plastic stool, cheap but delicious noodles, cold Hanoi beer.” This is how I’ll remember Tony. He taught us about food — but more importantly, about its ability to bring us together. To make us a little less afraid of the unknown. We’ll miss him.

↑ オバマ氏による追悼ツイッターから転載(オバマ氏の右がボーデイン氏)↑

何と言っても、ボーディンさんはその前に何度もベトナムを訪問し、ベトナム料理の魅力を世界中に伝えるテレビ番組を何本か制作していたそうです。

ボーディンさんは気取らない性格で多くの人に愛されたらしく、あの大統領のオバマ氏と食事をするというのに、豪華とは言えない狭い大衆店で、ビールを飲みながら、わずか3米ドル程度のポーク麺と春巻きを注文して食べたといいます。ボーデインさんが、この店の味を気に入っていっていたからなのでしょうね。

お蔭で、そのハノイ市のつけ麺店「フオンリエン」は、世界中から観光客が押し寄せるほどの人気店となり、店内にはオバマ大統領とボーディンさんが座った上の写真の小さなテーブルといすがショーケースの中で飾られているそうです。

ボーディンさんの死を知った多くのベトナム人がこの店に詰め掛けて、彼に哀悼の意を捧げるとともに、ベトナム料理の素晴らしさを世界中に広めてくれたことを感謝していたことが、地元の新聞に載っていました。

かつて米国はベトナムで泥沼の戦争を続け、枯葉剤などの後遺症もいまだに残り、ベトナムにとっては、憎んでも憎み切れないかつての敵国なのに、こうして、食を通して市民レベルの友情が育まれるものなのですね。

ホッとするエピソードでしたので、茲にご紹介致しました。