WST National Gallery Copyright par Duc de Matsuoqua
台風19号の影響で東日本で甚大な被害を受けているので、この3連休は、城歩きなどは自粛しましたが、映画を観に行ってしまいました。
カンヌ映画祭で「万引き家族」がパルムドールを受賞した是枝裕和監督の最新作「真実」です。フランスの大女優カトリーヌ・ドヌーブ主演という話題作なので、観に行ったわけです。
大変期待して行ったので、ちょっと厳しい採点になっています。ドヌーブ演じる大女優ファビエンヌが自伝を出版し、ニューヨークに住む脚本家の娘リュミエール( ジュリエット・ビノシュ )が、テレビ俳優の夫ハンク(イーサン・ホークス)と娘と一緒にお祝いに駆けつけますが、自伝に書かれていることは嘘だらけで、娘が憤慨する…といった内容は、結構明かされているので、私も書いちゃいました(笑)。
この映画自体の主人公が映画俳優で、映画を撮影する場面が何回も出てきて、その出演映画作品がきっかけで、母と娘が和解するような方向になっていく、といったちょっとした仕掛けがマトリョーシカの「入れ子」のようになっていて、大女優ファビエンヌがドヌーブに重なって、何が何だかよく分からなくなってしまいます。名匠フランソワ・トリュフォー監督の「アメリカの夜」(1974年日本公開)という作品も、舞台が映画スタジオで、俳優が俳優役を演じるわけの分からない作品でしたから、この映画を思い出しました。
「真実」は、日本人が撮った作品で、言葉はフランス語と英語(ビノシュは見事な英語使いでした)という今の時代ならではの作品ですが、全く違和感がなかった、と同時に、日本人ならでは、といった特徴もあまり見受けられませんでしたね。つまり、「万引き家族」のようなエグさやアクの強さ、良い意味でのいやらしさがないんですね、「真実」には。
グローバリズムの悪影響でしょうか(笑)。ベネチア映画祭でグランプリを逃したのも、しょうがないなあ、と思いました。
つまり、是枝監督は「万引き家族」では、年金詐欺、擬似家族といった極めて日本的(ドメスティック)な問題を普遍的な問題に昇華して、世界から共感を得たのに対して、「真実」は最初から普遍的な問題が露わになってしまった感があり、それが逆に共感にまで昇華しなかったのではないか。そう思ったわけです。