世知がらい世の中になったものだ=デジタル・ネイティブ世代に告ぐ

  最近、新聞を読んでいて面白かったのは、コロナが収束の方向に向かったことから、大学では、オンライン授業から対面授業に切り替わり、学生さんから「教授の講義が遅すぎてイライラする」といった声が出た、というコラムです。

 今どきの学生さんは、オンライで講義を受ける際、1.5倍とか倍速で聴講するそうなのです。そりゃあ、生の普通の速さで聴けば、遅く感じるのは当たり前ですよ(笑)。

 何でそんなことをしているのかと言いますと、今の若い人は、「コスパ」より「タムパ」を重視しているからなんだそうです。コスパとは「コスト・パフォーマンス(費用対効果)」のことで、私でも知っています。でも、タムパは、私も初めて聞く言葉でしたが、「タイム・パフォーマンス(時間対効果)」のことなんだそうです。コスパを重視したのは、主に「ゆとり世代」と言わるれる世代(1987年~2004年生まれ)です。その一方で、2年程前から「タムパ、タムパ」と言い出しのが、ゆとり世代の一つ下の「Z世代」(1990年半ば~2010年代生まれ)だといいます。これも、トレンド評論家たちが勝手に言っているだけですが。

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 確かに、Z世代ともなると、「デジタル・ネイティブ」と言いますか、物心ついた時には、既にネットやデジタル機器に囲まれていた世代です。思うに、情報量が半端じゃないのでしょう。特に、動画ともなると、ラジオのように何かしながら見ることができるわけがなく、多くの情報を消化するには、ほぼ必然的に「飛ばして」ていくということになるのでしょう。

 私のような絶滅危惧種の化石世代では、ドアーズとかクリームとかCCRとか流行っていましたが、海外のロックスターの動く姿を見ることが出来るのは稀の稀でした。たまに、NHKが「ヤング・ミュージック・ショー」などで放送してくれましたが、大抵は、ラジオかレコードでの「音声」のみです。あとは、「ミュージックライフ」などの雑誌の写真を見て、演奏を想像するだけです。情報がない分、想像するしかないのです。

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 でも、私は、今の若い人たちを羨ましい、なんて全く思いませんね。我々の世代は、それなりに牧歌的時代でしたが、今の若い人の方が追い立てられていて、むしろ、可哀想に思えてきます。

 特に若い頃は流行に敏感ですから、流行に遅れれば、疎外感を味わったり、「置いてきぼり」感を味わったりします。そんな時代背景があるのか、今、話題になっているのが「ファスト映画」です。長編映画を10分ほどに短縮して、動画サイトにアップされた編集映画のことですが、勿論、著作権法違反ですから、昨日は、東宝や日活など13社が、投稿者を相手取り、損害賠償5億円を求める訴訟を東京地裁に起こしたことがニュースになりました。

 「ファスト映画」は犯罪ですが、それだけ、「結末を早く、もっと多く知りたい」という需要があるということなのでしょう。映画だけでなく、結末が肝心の推理小説まで、早く「最後」を知りたがり、「あらすじ」がよく読まれているらしいのですが、そこまでいけば本末転倒ですね。

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 旅だって、目的地だけが全てではなく、途中で遭遇する景観や人々も興趣の一つのはずです。

 私もどちらかと言えば、人生の時間が限られていますから、「コスト・パフォーマンス(費用対効果)」より「タイム・パフォーマンス(時間対効果)」の方を重視するタイプです。いつも「時間が勿体ない」と思い、起きている間は、本を読んだり、ピアノを弾いたり、ジャズギターを聴いたり、何かしていないと気が済みません。

 それにしても、今のデジタル・ネイティブ世代は異様です。随分と、せわしない、世知がらい世の中になったものです。

デジタル・ネイティブ世代の申し子、デビッド・ホッグ君

 昨日15日夕方、ちょうど会社からの帰宅時に、JR東海道線品川駅付近での「人身事故」に遭遇し、私の利用する路線も巻き込まれて、長らく待たされ、猛烈な混雑な上に、帰るのに1時間以上余分に掛かってしまいました。

  私は迷惑を受けた15万人のうちの1人でしたが、 今朝の朝刊を見たら、記事にしていたのは毎日新聞と東京新聞ぐらいで、他紙は無視。もうニュースにもならないんでしょうね。15万人ぐらい…て、とこでしょうか。

 さて、今朝、ラジオを聴いていたら、月尾嘉男東大名誉教授が、米国のZ世代(1990年代後半~2000年頃生まれ)について興味深い話をしておられました。この世代は、現在10代から20代半ばの若い世代ですが、生まれたときからパソコンやスマホに囲まれて育った「デジタル・ネイティブ」世代だということが特徴的です。

 月尾先生は、この世代を代表する一人としてデビッド・ホッグ君という19歳の青年を取り上げていました。今や、全米で知らない人はいないそうです。

 彼は、昨年2月に米フロリダ州の高校で、17人の犠牲者を出した乱射事件の生存者の1人で、事件後、メディアや集会などに出ては、銃規制に反対する「全米ライフル協会」や、その団体から献金を受けている政治家を実名で批判し、銃規制の必要性を訴えて来ました。

  その彼が昨年3月に、自分のSNSでカリフォルニア大学受験に不合格になったことを明らかにすると、彼の言動を心良く思っていないFOXテレビのトーク番組の女性司会者が「不合格にされ、めそめそと愚痴をこぼしている」とツイッターで発信します。これに対して、ホッグ君は、その番組のスポンサー企業名をSNSで公開して、このような番組のCMをやめるよう求めると、大反響を呼び、ペットフードのニュートリッシュ、旅行サイトのトリップアドバイザーなどが降板して、女性司会者が謝罪と1週間の休養に追い込まれたというのです。

 まさに、ホッグ君は、デジタル・ネイティブ世代の申し子で、SNSという武器を十二分に駆使したわけです。彼はその後、ハーバード大学に合格して政治学を専攻し、将来は政治家になるのが夢だといいます。 米国人のほとんどは、この話は知っていることでしょうが、日本人の私は知りませんでした。

 と、ここまで、ラジオを聴きながらメモも取らなかったのに書けたのはネットのおかげでした(苦笑)。私自身は、米国の世代分類では、X世代、Y世代の前のベビーブーム世代になりますけど、十分にネットの恩恵を受けているわけです。

鰻屋「川松」

 また、別の日にラジオで聴いた話ですが、あるキャスターが、ある取材先に電話で問い合わせたところ、先方は「ちょっとお待ちください」と言うので、待っていると、電話の向こうで「パチパチ」「カチカチ」というキーボードを叩く音がして、どうやら、パソコンで検索しているらしいことが分かってしまったのです。そして、キャスターは嘆きます。「そんなことなら、最初から自分で検索した方が早い。何のための電話取材なのか分からない」

 取材される側までもがネット検索ですか…。まあ、そういう時代になってしまった、ということなんでしょうかね。