「アビエイター」★★

今評判の映画「アビエイター」を観てきました。
謎の私生活に包まれた大富豪ハワード・ヒューズの半生を描いているので、大いに期待したのですが、残念ながら、及第点はあげられませんね。特にフィニッシュが良くない。「終わり良ければ…」と本当に悔やまれます。監督のマーティン・スコッセシは何を言いたかったんですかね。未見の方には種明かしをしてしまうようなので、この先は読まれなくていいですが、この映画は、狂気に駆られたヒューズ役のレオナルド・ディカプリオが「未来への道、未来への道、未来への道…」と、言語障害に陥って、何十回も繰り返して、幕が閉じられます。何ですか?この終わり方は?観客を何処に連れて行きたいのですかね?

小生、子供の頃、まだ存命中で隠遁生活を送っていたハワード・ヒューズのゴシップ記事を何度か目にしたことがありました。彼の名は極東の中学生にも轟き渡っていたわけですね。
「大富豪で飛行機会社を買収した」
「たくさんのハリウッド女優と浮名を流した」
「何度、手を洗っても、また何度も手を洗ってしまう潔癖神経症に罹った」
「晩年は誰とも会わずに隠遁生活を送り、一切の音を遮断できるようにコルクを敷き詰めた部屋に住んでいた」…記憶を辿るとそんな感じです。映画でもそのようなシーンが出てきました。

「アビエイター」は150億円の製作費をかけたらしいですけど、その大半は飛行機でしょうね。正直、ハワード・ヒューズがあそこまで飛行機気違いだとは知りませんでした。

それでも、製作費を飛行機代に掛けすぎじゃないでしょうか。「神は細部に宿る」といわれ、確かに飛行機は細部まで精巧で素晴らしかったのですが、それ以外はずぼらでした。例えば、ちょくちょく出てきた歌って踊るキャバレー内のステージ。バンドは演奏している「ふり」で、演奏してませんね。三流でもいいから本物のジャズバンドに演奏させればよかったじゃありませんか。

唯一、「アビエイター」でよかったのが、キャバレーのステージで気が狂ったように手を大きく広げながら叫ぶように歌っている太った中年の歌手です。名前も出ないし、キャバレー内が騒がしくて、彼の歌も聞こえません。それでも、一心腐乱に歌う彼の歌う姿は感動ものでした。

もし「アビエイター」をもう一度観たいとしたら、「彼」だけです。