菅公
映画ちゅうものは、観る前に期待すればするほど、大きくその期待が膨れ上がって、少しでも意に沿わなかったりすると、がっかりしてしまうものですね。まあ、映画評論家さんらと違って、身銭を切って観ているので、これぐらいは、言わせてくださいな(笑)。
何しろ、この作品「キャロル」は、28日に発表される第88回アカデミー賞の主演女優賞と助演女優賞にノミネートされているんですからね。しかも、原作は、あの「太陽がいっぱい」のパトリシア・ハイスミス。当然、サスペンスを期待するじゃありませんか。
監督は、ジュリアン・ムーア主演の「エデンより彼方へ」(2002年)のトッド・へインズ。この人、アメリカの古き良き黄金時代である1950年代を描くのがよっぽど好きなようですね。ファッションや車や街角などを再現するのが実にうまい。センスがあります。
キャロル役は主演女優賞にノミネートされているケイト・ブランシェット。彼女はオーストラリア出身です。テレーズ役は、「ドラゴン・タトゥーの女」で鮮烈な印象のルーニー・マーラ。彼女は、アイルランド系米国人で、大富豪一族としても知られていますね。
二人の女性の禁断の愛が描かれておりますが、当時の社会通念や風紀常識では、とても容認されず、原作者のハイスミスも、スキャンダルになるのを恐れて、他の筆名で発表していたようです。
ブランシェットは、既に「ブルージャスミン」で主演女優賞を受賞している演技派。マーラは、既にこの作品でカンヌ国際映画賞で女優賞を受賞しています。これだけ、材料がそろえば、文句なしのはずが…。
自分が男のせいか、ちょっと、間延びしている感じで、最後近くの「どんでん返し」めいた場面で、やっと、一気にスクリーンの世界にのめりこめたという感じでした。
ブランシェットは、恐ろしく美しくて醜い両面を持っていました。マーラは、最初から最後まで、顔つきからスタイルまで、まるで、オードリー・ヘプバーンのように見えました。
ハイスミスの他の作品に見られるように、上流階級の実に胡散臭い俗臭をこれでもか、といった感じで描かれている点は面白かったですが…。登場する男たちの言い分に同情して、てこ入れするように分かってしまえば、この映画の世界に入っていけないかもしれませんね。
単なる大金持ちの有閑マダム(死語!)の火遊び映画に過ぎなくなってしまいますから。