宇宙が終わってもまた再生するのだろうか?

 ジェフリー・ロバーツ著、松島芳彦訳「スターリンの図書室」(白水社、2023年7月28日初版、4950円)が一部の識者の間で大変な話題になっているそうです。ちょっと高い本なので、小生は読んでおりませんが(苦笑)、書評を読むと驚くことばかりです。

 あの何千万人も粛清・殺戮した血も涙もない独裁者が「本の虫」と言われるほどかなりの読書家で、蔵書も2万五千冊以上あったというのです。別荘を図書室を備えた博物館にする予定が、「スターリン批判」で頓挫しましたが、蔵書には、トルストイ、ドストエフスキー、マルクス、レーニンは当然のことながら、政敵のトロツキーの本まであり、ヒトラーの「我が闘争」まで読んでいたといいます。特にマキャベリの「君主論」には相当な書き込みがあり、指針にしていた跡が伺えるそうです。

 こんな書評を読みながら、ウクライナに侵攻したプーチン大統領の蔵書を覗いてみたい誘惑に駆られました。国際社会にとっては迷惑な話なのですが、プーチンさんの並外れた自信とブレない恐ろしい正義感は、読書量に比例すると思われるからです。しかしながら、その全く正反対で、彼はほとんど本なんか読まず、勘で、しかも感情的に指図しているのかもしれませんが。

北八ヶ岳

 さて、Newton別冊「宇宙の終わり」(ニュートンプレス)を読了しました。途中で何度も、「独裁者だったら、この本を発禁書にするのではないか」と思いました。この本は、大衆がパニックを引き起こす危険書だと言えないことはないからです。この本では、我々の地球も銀河も宇宙も「永遠」ではなく、いつか(10の100乗年後に)消滅、崩壊し、終わりを迎える「宇宙の歴史」が淡々と語られているからです。人に死があるのと同じように、宇宙にも終わりがあるというのですから、生物は勿論のこと、ピラミッドも哲学も宗教も国家も何もかもが消滅します。この本を読んで、虚無的になるか、パニックを引き起こす人が出てもおかしくありません。

ーーなんて、ちょっと誇張して書いてしまいましたが、この本を読めば、最先端の科学が、宇宙の始まりと終わりを明らかにしてくれます。宇宙の終わりは、想像もつかないくらい先の話ですから、人はパニックにならず、他人事としてとらえることでしょうね。

 まだ学説の段階とはいえ、最新の宇宙論が展開されます。まず、宇宙の始まりについてー。宇宙は「無」から生じたというのが定説になりつつあるようです。物理学者が理論的に扱える大きさには限界があり、それは約10のマイナス33乗センチメートルです。物理学で扱う時間にも限界があり、それは、この10のマイナス33乗センチを、真空中で光が通過する時間で、10のマイナス43秒となります(光速約30万キロ)。この10のマイナス43秒間は、物理学者がどうしても乗り越えられない謎の部分で、「プランク時代」と呼ばれています。10のマイナス36秒後に、急激な膨張の「インフレーション」が始まり、10のマイナス27秒後には、物質をつくる素粒子が爆発的に生まれる「ビッグバン」が始まり、宇宙が誕生します。中略で、それから37万年後に原子が誕生し、「宇宙の晴れ上がり」状態となり、数億年後に最初の星が輝き始め、12億年後、現在のような銀河が生まれ、92億年後、太陽系が誕生します。そして、今、宇宙誕生から138億年の年月が経っています。

 これが「宇宙の始まり」です。文字で読むより、図解で見た方が分かりやすのですが、このブログでは出来ませんので、大まかなことを頭にインプットして頂くだけで結構です。さて、今度は「宇宙の終わり」です。

 20億年後、太陽は1.2倍の明るさとなり、地球は灼熱の大地になります。この本ではハッキリ書かれていませんが、この時点で、人類を含む生物は死滅することでしょう。でも、生物絶滅はもっともっと早い段階で訪れることでしょう。盛者必滅です。生物がいなくなった45億年後、地球のある天の川銀河とお隣のアンドロメダ銀河が大衝突を起こし、60億年後、太陽が膨張を開始し、水星と金星を飲み込むほど巨大化し、80億年後に太陽が地球を飲み込みます。

 話は飛んで、10兆年後に、長寿命の星が燃え尽き、宇宙は輝きを失い、10の20乗年後、銀河から天体が飛び去り、巨大なブラックホールだけが残り、10の34乗年後、陽子の崩壊でブラックホール以外の天体は消滅し、10の100乗年後、ブラックホールすら消滅します。東大大学院の横山順一教授によると、この時点で何の変化も起きず、時間がたっても何も変わらないことから、事実上、時間の終わりでもあるといいます。

 はい、これが宇宙の終焉です。宇宙の終わりは、ビッグクランチと呼ばれます。10の100乗年後ですから、あまり御心配しないように。なぜなら、宇宙の終わりとは「無」に帰するということです。その無からまた新たに宇宙が生まれるのではないかという説があるからです。無数の宇宙の存在を考える理論を「マルチバース宇宙論」と呼ばれています。何か、仏教の輪廻転生みたいだなあ。宇宙とは死んでも死なないゾンビみたいなものなのかなあ? 

 私が生きている間、宇宙の神秘がどれくらい明かされるのか?ー それが楽しみで私は今、生きているようなものです。宇宙論と比べれば、他の学問は皆、お子様ランチみたいなもんです。あ、こんなこと言ったら、怒られますね。渓流斎ブログも炎上しますね。

 宇宙の果てまで逃げろ~。