公開日:2006年1月23日
最近、専ら経済書を読んでいます。
とはいっても、ケインズとかシュンペーターとかサミュエルソンとか言えば、格好いいのですが、何しろ「経済知識ほとんどゼロ」で初老の歳まできてしまったので、今、必死に基礎知識を仕入れているところです。
実は若い頃は経済を馬鹿にしていたのです。只管、金にならない学問に時間を費やしてきました。文学とか歴史とか美術とか音楽とか宗教とかです。ですから、そういった方面の知識は、ある程度はあると自負しております。しかし、経済となると、からきし駄目です。高校生のレベルならどうにか追いつけるかもしれませんが、本当に、ケインズもサミュエルソンもマックス・ウエバーさえ一冊も読んだことはありません。バブルの頃、株の本も何冊か買いましたが、結局一冊も読み通すことができませんでした。もちろん、バランスシートの読み方さえ、知りません。
しかし、最近「恒産なきは恒心なし」という加藤廣さん(「信長の棺」の著者)に触発されて、ボチボチ、経済入門書を読み始め、つまらない経済記事も率先して読むようになりました。
標題の本の著者は、板倉雄一郎さんという1963年生まれの方です。高校卒業後、若くしてゲーム会社を興して、大成功し、ビル・ゲイツと商談して日経の一面を飾るも、97年に負債総額37億円を抱えて破産ーと略歴に書いてある人です。
この本は、経済の本というより、経営や投資の話が中心ですが、そういった世界の知識は私の知らないことばかりだったので、勉強になりました。ためになったことを抜書きするとー。(一部表現をかえています)
●金融雑誌の記事や新聞広告に大々的に出ている金融商品は、すでに売り手である金融のプロたちがさんざんおいしいところを食べつくしたあとの「残りカス」である。
●金融機関が自分が損する商品を販売するわけがない。
●「株価チャート」の本を読んだくらいで、実際に株で儲けることができるのか?そんなことはありえない。すでに終わった話で論理を構成しているから破綻がないだけなのだ。そもそも後付けの理論なのだ。株価チャートで儲けられれば、皆、その本を鵜呑みにして株を買えば儲かるのに、そんな人はごくわずか。本当に賢い人は「株価チャート」の本を書いてベストセラーを狙い、印税を稼ぐ。
●株主が配当という現金を受け取る分、株主価値は減少する。企業の株式時価総額(=株価×発行済み株式総数)は、株主価値に担保されているからだ。株主価値は、その企業が将来生み出すであろう現金収支によって担保されている。だから、企業の成長期に配当を行う経営者は、おばかさんである。配当した瞬間に、配当した分、株主価値が減少するからだ。
●PERやPBRなどの株価指数は、投資判断において当てにならない。なぜなら、これらの指標はある企業の「単独期」の指標でしかないからだ。投資家からみた企業価値(=株主価値+債権者価値)は、当該企業が将来生み出すであろう現金収支に担保されている。つまり、時価総額や企業価値とは、当該企業の「将来性を織り込んだ数値」のことだ。今から将来にわたる企業の業績が織り込まれるのが時価総額であり、時価総額と債権者価値の合計が投資家から見た「企業価値」だ。従って、単独期の指標のどれとどれを組み合わせようが、時価総額や企業価値の「高低」を測る指標とはなりえない。
この本を読んでいたおかげで、ライブドア事件のニュースがよく分かりました。なぜ、ホリエモンがあれほど「時価総額世界一」に拘っていたのか。株主総会で配当を出さないことに対して株主が怒りの声をあげた時、ホリエモンが、「自分がいかに株主のことを考えているのに、皆さんには分かってもらえない」と泣いて訴えていたのは、そういうわけだったのか…等々。
この本を読む前に、細野真宏著「世界一わかりやすい株の本 実践編」を読んでいたので、「株式分割」によって、いかに株が上昇して利ザヤが出るかというカラクリを知っていたので、やはり、ライブドアの手法は、「風説の流布」や「偽計取引」以前に、株価吊り上げが目的だったということが、手に取るように分かりました。
今晩、ついにホリエモンが逮捕されました。つくづく、ライブドアの株に手を出さなくてよかったと思っています。
「知識は身を助く」です。