AIが支配するデジタル監視社会となるのか?= 世界の「知の巨人」招いた「朝日地球会議2022」を視聴しました

 世界の「知の巨人」招いた「朝日地球会議2022」(朝日新聞社主催)が10月16日(日)~19日(水)までオンラインで開催されました。

 4日間の開催で登壇者は約64人という大変大掛かりなプログラムですので、とても全てをカバーできません。そこで、独断と偏見で、米国の経済学者ブランコ・ミラノビッチ氏とイスラエルの歴者学者ユヴァル・ノア・ハラリ氏、フランスの人類学・歴史学者エマニュエル・トッド氏、ドイツの哲学者マルクス・ガブリエル氏の4人が登壇する4日目の19日(水)だけ、会社をズル休みして自宅で拝聴しました。

 これだけ現代を代表する錚々たる「知の巨人」が登場するというのに、視聴するのに無料(ただし、パソコンの電気代や通信費はかかりますが)だったというところが凄い。まさか、知の巨人の皆様にただで登壇してもらうわけにはいかないでしょうから、気になるのはその原資です(笑)。旭硝子やサントリーなどがスポンサーになっているほか、国際交流基金なども特別共催していました。国際交流基金は外務省の外郭団体ですから、予算という名の税金が投入されています。ということは、無料でも一国民として堂々と視聴できる権利があるのかな、と下らないことばかり考えておりました(笑)。

 会議の模様は、そのうち朝日新聞の紙面に掲載されるほか、10月下旬に(YouTubeか何かで)ネット配信されると告知していましたから、見逃した方は是非ともアクセスされたら良いと思います。

◇世界的な監視社会の到来か

 「朝日地球会議」は今年で7回目らしいですが、私自身は初参加です。メインテーマは昨年と同じ「希望と行動が世界を変える」で、新型コロナのパンデミック後の世界や社会の有り様やロシアによるウクライナ侵攻、安全保障や食料、エネルギー問題、それに気候変動の問題が主な具体的なテーマになりました。

 これらの問題について、世界の知の巨人たちは何と答えたのか、茲ではとても書き切れないので、是非とも新聞かネット配信でご確認して頂きたいと存じます。ただ、私自身が一つだけ注目したことは、デジタル技術の進歩とパンデミックによって世界的に監視社会が強化されたことについて、知の巨人たちが何と発言するかということでした。

 経済学者ブランコ・ミラノビッチ氏は、グローバリズム推進論者で「経済成長を止めれば、世界の人口の20%が絶対的貧困になる」という論者だけあって、「SNSは世界市民となり、プラスに働いている」と実に楽観的でした。その一方で、哲学者のマルクス・ガブリエル氏は最近、自身のツイッターやフェイスブックを閉鎖したらしく、その理由について、「適度で科学的であるべきなのに、極端化した。自由で民主的ではなく反民主的になった。ツイッターやフェイスブックは、ステレオタイプ的な思考を強制する。例えば、プーチンと戦うためには、(ロシアから輸入されるエネルギーを節約するために)暖房を止めよう、などと発言する人がいるが、その前に、ネットの方を止めるべきではないか。矛盾している」などと発言していました。

 私もこのマルクスさんの見解に近い感じです。

 人類学・歴史学者エマニュエル・トッド氏に言わせると、確かに監視社会は強化されたが、一体誰が監視していますか?という話になりました。「監視者にとって、殆どの人は重要ではない。彼らが自己陶酔的なら尚更です。彼らが監視する対象は、権力ゲームの中にいる一部のエリートです。何故、欧州のエリートが米国に従属的になるのか?それは、ネットでの銀行送金が、米国の情報機関に丸見えになっているからです」などと恐ろしいことを暴露していました。

 ◇無神経で無意識過剰で生きたい

 私が一番聴きたかったのは、「サピエンス全史」の歴者学者ユヴァル・ノア・ハラリ氏でした。ロボット工学者の石黒浩氏との対談形式で発言されていましたが、この中で、テクノロジーは良い面と悪い面があり、悪い面では、今や、人工知能AIを塔載した(感情がない殺戮)兵器のロボットさえできている。今後、原爆投下の核ボタンにしても、人間の権限ではなく、アルゴリズムに任せるようになることもあり得る。そんな事態になる前に、グローバルな合意形成が早急に必要だ、ということを強調しておりました。

 私自身は悲観的過ぎるかもしれませんが、世界の知の巨人たちの話を聞いて、おぞましい将来しか描くことが出来ませんでした。

 だからこそ、メンタル障害になる前に、出来るだけ物事を楽観的に考え、なるべく無神経で無意識過剰で生きたいという願望を持つようになりましたよ。

【追記】

 司会進行役は、朝日新聞の論説委員や編集委員らが務めていましたが、世界の知の巨人と堂々と渡り合い、彼らの英語スキルがネイティブ以上の優秀さでした。さすが、ジャーナリズムを牽引する人たちだなあと納得しました。