仏マルセイユ、「ここは全てが腐ってる」

昨晩の11月27日、外国人労働者の受け入れを拡大する出入国管理法改正案が、衆院本会議で自民、公明両党と日本維新の会などの賛成多数で可決して、参院に送付されました。

私はこの法案には断固として反対で、賛成した議員には、今後起きかねない末代に渡る日本人の生活と文化への影響と激変、治安に関わる問題について想像力のかけらすらないと思っているのですが、私ごとき人間が何を言っても始まらないでしょう。

パリ

そんな折、日本の近未来を予想させるような記事を昨日読みました。27日付ニューヨーク・タイムズの記事で、タイトルは「ここでは全てが腐ってる」という衝撃なものです。

舞台はフランス南部の港湾都市マルセイユ。何とフランス第2の大都市だそうです(私は浅はかにもリヨンかと思ってました。調べたら、人口ではマルセイユがパリに次ぎ2位。経済力ではリヨンが2位でした)。マルセイユと言えば、私の世代はジーン・ハックマン主演の映画「フレンチ・コレクション」を思い出します。日本では1972年公開なので、還暦過ぎた人でないと知らないかもしれませんね(笑)。ハックマン演じる「ポパイ」ことニューヨーク市警のドイル刑事が、麻薬取引密売の黒幕をマルセイユで追い詰めるといった話でした。活気がある港街でした。

◇市民の4分の1が貧民

そのマルセイユが今、どうなっているかというと、すっかり寂れて、市民の4分の1以上は貧困状態で、住宅、雇用、教育、犯罪等の様々な問題を抱えているというのです。

特に、11月5日に、貧困層が多く住むノアイユ地区で、老朽化した5階建てのアパートが崩壊して、建物の下敷きになった住民が8人も犠牲になり、市当局の安全管理の怠慢を訴えて、大掛かりなデモが行われたことを、先ほどのニューヨーク・タイムズ紙のアダム・ノシテール記者が報じています。

犠牲になった人のほとんどがアフリカからの移民で、学生や塗装工のほか、失業者などでした。

デモ行進する1万人が槍玉にあげているのが、市内の複数の老朽化ビルを放置しているジャン=クロード・ゴーダン市長です。これに対して、ゴーダン市長は「我々が責められるような特別な過失は一つもない」と地元メディアに応えています。

倒壊したアパートの近くのビルの一角で小さな雑貨店を営むバントゥー・シセさんは、いつも店の外で立っています。「だって、このビルだって、いつ倒壊するか分からないじゃないの。怖いわよ。ここは全てが腐ってるわ。もうスラムね」と頭を抱えています。

◇マルセイユは「フランスのデトロイト」

社会学者のミシェル・ペラルディ氏は「マルセイユは、今や、フランスのデトロイトですね」と指摘します。その原因について、アルジェリアやモロッコなど北アフリカからの移民が多いマルセイユは、脱・植民地主義から回復せず、旧式の産業に固執してハイテク産業などを育成してこなかったからではないかと分析しています。失業率は、全仏平均より50%近くも高いと言われてます。

雇用がなければ、貧困に陥り、教育も受けられず、そのまま社会で出ても失業という悪循環が続き、市税収も途絶え、インフラ整備もされず、最悪、犯罪に走る者も続出して、治安の悪化につながります。

いつも、華やかなパリのニュースばかり接していたのですが、これが、先進国フランスの実態だったのですね。知らなかったので、大変な驚きでした。