プーチン=金正恩会談の内容は推測しやすい

 飛行機嫌いの北朝鮮・金正恩総書記が専用列車に乗ってロシアに入り、13日にも極東アムール州にあるボストーチヌイ宇宙基地でプーチン大統領と会談する可能性があるというニュースが流れました。

 一体何を話し合うんでしょうか?

 この記事は9月12日正午すぎの昼休みの時点で書いていますから、もしそれ以降にこの記事を読まれている方があるとしたら、既に会談の内容は明らかになっていることでしょう。とはいえ、この記事を書いている時点では何も分からないので推測して書いてみます。何故かと言いますと、大変推測しやすいからです(笑)。北朝鮮はいまだに古代奴隷独裁国家の域を出ていませんから、人民が餓死しようが、軍備増強だけに邁進しています。しかし、国際社会からの経済制裁で人民は疲弊していますから、ロシアからは食糧を含む経済援助と軍事衛星技術を求めることでしょう。その見返りに、金総書記は、ウクライナ戦争で消耗しているロシアのプーチン大統領に対して武器・弾薬を供与するといった約束を取り付けのではないでしょうか。古代奴隷制国家ですから、肉体労働者も格安の値段でロシアに派遣するのではないでしょうか。

 中らずと雖も遠からず、といったところでしょう。どうせ、記者会見も行われず、2人の会談内容は極秘扱いで公表されず、マスコミや識者らが推測するだけだと思われますが。

 それにしても、他人の迷惑を顧みず、ミサイルを花火のようにボンボン打ち上げて喜んでいる金総書記は常軌を逸していますが、ウクライナに侵攻し、国際刑事裁判所から戦犯容疑で指名手配されているプーチン大統領も同じです。そんな2人が直接会って話し合うなんて、まさにブラックジョークです。

 プーチン氏は先日、「西側諸国は『ナチズム賛美』を隠蔽するために、ユダヤ人であるゼレンスキー氏をウクライナ大統領に据えた」と発言したニュースが流れました。(9月5日、ロイター電)ただし、その根拠は示さなかったようですが、この人、正常な思考をしているのか心配になりました。

 ロイター通信が伝えたところによりますと、プーチン大統領はロシアのジャーナリスト、パーベル・ザルビン氏とのテレビ・インタビューで「西側諸国は現代ウクライナのトップにユダヤ人の出自を持つ人物を据えた。西側諸国はこうして、現代ウクライナ国家の根底にある反人間的な本質を隠ぺいしようとしているように見える」と発言したことになっています。

 この発言を聞く限り、プーチン氏は反ユダヤ主義者のように見えます。でも、そうなると、矛盾してしまいます。プーチン氏は自らの後継者としてドミートリ―・メドヴェージェフ氏を大統領や首相に据えたりしましたが、このメドヴェージェフ氏もユダヤ系だと言われているからです(ロシア問題専門家の中澤孝之氏)

 そもそも、ロシア革命を指導したレーニンもユダヤ系ロシア人と言われ、彼が信奉した共産主義を生んだカール・マルクスはユダヤ人です。

 もう一度、繰り返しになりますが、プーチン大統領が「西側諸国は『ナチズム賛美』を隠蔽するために、ユダヤ人であるゼレンスキー氏をウクライナ大統領に据えた」と発言したことは、やはりおかしい。

 パレスチナ人を殺害して領土拡大を狙うイスラエル人は好きになれませんが、私は反ユダヤ主義者ではありません。むしろ、人類は大いにユダヤ人の知性の恩恵を受けていると思っています。国際金融の拠点、ウォールス街もそうですし、ハリウッド映画もそうです。メンデルスゾーンやマーラーに陶酔し、ボブ・ディラン、サイモンとガーファンクル、ニール・ヤング、ビリー・ジョエル、バート・バカラックらの曲にも楽しんでいます。何と言っても、物理学の最大理論の一つ「相対性理論」を「発見」したアインシュタインはユダヤ人です。

 ユダヤ人が何故、これほどまで聡明なのか?ーそれについては、ユダヤ人は子どもの頃に、ユダヤ教の聖典「タルムード」(6部63編)を全て暗記させられるから、と聞いたことがありますが、それも一つの要因なのでしょう。子どもの時の暗記によって、脳細胞が肥大するのではないでしょうか。

 あれっ? プーチン=金正恩会談の話から、思わぬ方向に展開してしまいました(苦笑)。

「アメリカ経済のユダヤ・パワー」で納得しました

 先日、国際金融関係の本を読んでいたら、ゴールドマン・サックスなどウォール街での金融ビジネスで、上位に君臨しているほとんどがユダヤ系だというので、「どうしてなのかな?」と素朴な疑問を友人の榊原君に話したら、彼は、佐藤唯行著「アメリカ経済のユダヤ・パワー」(ダイヤモンド社)という本を貸してくれました。

 この本は、2001年10月4日初版とかなり古い本なので、情報も古いのですが(何しろ、フェイスブックのザッカーバーグもネットフリックスも出てきません!)、何故、ユダヤ系の人たちが米国経済界の上位に躍進したのか少し分かりました。

 最初にお断りすると、この本の著者(獨協大学教授)と同様に、私自身も「ユダヤ人陰謀説」には与しません。150年ほど前から米国に来たユダヤ人のほとんどが東欧やロシアなどで迫害されてやむ得ず移民した者が多く、ほとんど無一文の状態から、血の出るような努力を重ねて「アメリカン・ドリーム」を実現した者が多かったからです。そして、恐らく、この本に書かれている成功したユダヤ人とは違い、彼らの大半は成功せずに貧困のうちに生涯を終えていたと思われるからです。

 何よりも、ユダヤ人ということで最初から差別され、1970年代までまともに企業に就職できなかったといいます。(米国の基幹産業である石油産業はユダヤ系だと思っていたら、WASP=プロテスタントのアングロサクソン系白人=が独占していたことをこの本で知りました)となると、自分たちで起業しなければなりません。この本では、最初は廃品回収業に近い職種から大成功を収めたユダヤ人も出てきます。

 ユダヤ系といえば、金融業のほか、新聞(ニューヨーク・タイムズなど)やテレビ(ABCなど)などのメディア(この本では、メディア王ルパート・マードックはユダヤ人ではない、と書いてありました)、ハリウッド映画(スピルバーグ監督らと映画製作会社ドリームワークスを共同創業したデヴィッド・ゲフィンは、レコード会社の経営者で、ジョン・レノンの最後のアルバム「ダブル・ファンタジー」を出したゲフィン・レーベルだったとは!彼も勿論ユダヤ人です)、俳優らのほとんどがそうだということは知っておりましたが、それ以外にも、化粧品(エスティー・ローダー、マックス・ファクター、レブロンなど)、服飾ファッション(カルバン・クライン、ラルフ・ローレンなど)、玩具(トイザらス、バービー人形など)も創業者がユダヤ系だったことをこの本で初めて知りました。

 では、なぜ、これほどまでユダヤ人が優秀なのか? 著者の佐藤教授は、その秘訣は、ユダヤ人の教育にあると見ています。佐藤氏はこう書きます。

 幼い子どもを対象とするユダヤ教古典学習の根幹は、徹底した暗記教育である。これを毎日繰り返すうちに、脳の中に大きな記憶回路が作り出されるといわれる。敬虔なユダヤ教徒の家庭で生育した若者たちの中から、天性の記憶力の持ち主が生まれることは偶然ではないのである。

 なるほど。旧約聖書をはじめ、ユダヤ教の聖典タルムード(6編・63項目からなる口伝律法ミシュナとその注解ゲマラから成る)を丸暗記させられるのでしょう。頭脳が鍛えられるはずです。

 そして、佐藤教授によると、ユダヤ人がビジネスの面で成功するのは、キリスト教や仏教などでは「清貧」を重んじるのに対して、ユダヤ教は、富を求める衝動は人間の幸福に不可欠なものと容認しているからではないか、と分析しています。これも、なるほど、です。

 ユダヤ人は相互扶助の形で、起業する若者たちに低金利で融資したりしていることもビジネス面で役立っていることは確かです。就職差別により、隙間産業を探したり、起業せざるを得なかったことが逆に彼らにビジネスチャンスを与えた格好になりました。

 いい本を貸してもらいました。