パラレルワールドもタイムマシンも出来るかもしれない?=ミチオ・カク著、斉藤隆央訳「神の方程式ー『万物の理論』を求めて」を読了して

 昨日、ミチオ・カク著、斉藤隆央訳「神の方程式ー『万物の理論』を求めて」(NHK出版)を読了しました。「嗚呼、面白かった」と言いたいところですが、理解できたのは7割ぐらいかな、というのが正直な感想です(苦笑)。

 これは以前にもこのブログに書きましたが、後半に量子論が登場してから、俄然、難しくなります。例えばー。

 ひも理論の超対称性といった要素は、無用でもなければ物理学に適用できないわけではもないことは認めなければならない。超対称性が存在する証拠はまだ見つかっていないが、量子論に潜む問題の多くを取り除くために欠かせないことは分かっている。超対称性は、ボソンをフェルミオンで相殺して量子重力理論を悩ます発散を取り除くことで、長年の課題を解決することができる。(174ページ)

 なんて言われても、日本語として辛うじて字面は読めても、うーん?どうゆうこと?と思ってしまいます。やはり、修行が足りない。

 でも、著者を批判しているわけではありません。一般の人でも、生まれて初めて相対性理論や量子論に触れる人でも分かりやすく基本的に説明してくれます。しかも、現代の最先端の理論物理学は、この相対性理論や量子論を統合した「万物の理論」を構築しようとしています。でも、いまだその理論は確立せず、そもそも相対性理論と量子論が統合できるわけがないという学者もいるようです。

 今後どうなるのか? 素人はその推移を見守るしかありませんが、少なくとも「まだ分からないことが分かった」ことは収穫ではありませんか!

銀座

 著者らが提唱する「超ひも理論」によると、我々が、縦、横、高さの三つの座標で定義される空間を動く三次元の存在だと思い込んでいるが、それは幻かもしれないといいます。本当は、我々は、ホログラムのような中で生きているかもしれないし、我々が体験している三次元の世界は、本当は十次元や十一次元である現実世界が落とす影に過ぎないかもしれないというのです。そう言われてもねえ。。。。しかも、本文では十一次元の世界とはどうゆうものなのか、素人に分かりづらいだろうと著者は思ったのかどうか知りませんが、説明がありません。

 十一次元の世界とは何か? 調べてみると、我々が実感できるのは縦、横、高さの三次元の世界で、見えたり、触ったり、匂いを感じたりすることができます。これに時間が加わると四次元の世界になります。でも、超ひも理論となると、この四次元以外に七次元の世界もあるというのです。この七次元は触ることも見ることもできず、「余剰次元」とも呼ばれますが、素粒子にぐるぐる巻かれたり折り畳まれたりして確かに存在するというのです。そう言われてもねえ。。。

銀座「割烹 きむら」

 ちなみに、この素粒子というのは、物質を分解していくと、分子や原子になり、さらに分解していくと、電子、陽子、中性子になり、またさらに分解してこれ以上のものにならないもののことですから、もともと、肉眼や普通の顕微鏡では見えないものです。これらの形状は、当初は粒と考えられていましたが、粒ではなく、実は波の性質を持って回転したり、振動するひものようなものではないかという説を唱えたのが、後にノーベル物理学賞を受賞する南部陽一郎氏らです(1970年の弦理論)。これが10次元空間の場に発展した「超ひも理論」(84年)となり、さらに11次元のM理論(95年)に引き継がれたといいます。

東銀座

 そこで、私なりに考えたことは、音楽の平均律です。ド、レ、ミ、ファ…の1オクターブを12等分した音律のことです。明治以降に教育を受けた日本人の多くは、ド、レ、ミ、ファの12平均律は極めて当たり前で常識な話です。しかし、これは西洋音楽が、オクターブを12分割しただけだったのです。トルコでは53平均律があるらしく、インドでは100とか200とかの平均律もあると聞いたことがあります。バイオリンなど弦楽器を例に取れば分かりやすいと思います。ドとレの間の半音としてド#か、レ♭の音がありますが、本来ならドとド#の間にも音があり、またその間にも音があり、音階として使えるはずなのです。それをわざわざ音階として使っているのはトルコの音楽であり、インド音楽になるわけです。

 もっと言えば、人間の耳に聞こえる周波数の範囲(可聴域)は、低い音で20ヘルツ、高い音で20キロヘルツぐらいまでの間だと言われています。それは、人間だけに当てはまることであって、例えば、イルカですと、150ヘルツから150キロヘルツの間なら聞こえると言われています。つまり、音の周波数は無限大にあり、人間が聴こえないからと言って、その周波数の音がないとは言えないわけです。

 先ほどの十一次元の世界で、七次元の世界は余剰次元と言われて、まだ実体が分かっていないのですが、まだ見つかっていないからと言って、「ない」とは言えないことも、今の例え話で共感してもらえるんじゃないかなあ、と思いました。

 何か偉そうなことを書いてしまいましたが、以前もブログに書いた通り、最先端の物理学とは結局、宇宙論です。「万物の理論」が構築されれば、ブラックホールの実体が分かり、我々の世界と同じようなパラレルワールド(並行世界)が宇宙の何処かに見つかるかもしれません。SFの絵空事だったタイムマシンだって、開発されるかもしれません。そう思うと、何かワクワクして、もっと長生きしたいと思いますよね?(笑)。

最先端の物理学とは宇宙論?=ミチオ・カク著、斉藤隆央訳「神の方程式ー『万物の理論』を求めて」

 ミチオ・カク著、斉藤隆央訳「神の方程式ー『万物の理論』を求めて」(NHK出版)を読んでいます。まだ途中で、3分の2ぐらい進んでいます。

 でも、登山でいうところの「難所」があり、途中で引き返したくなるほど読むのが難儀してしまう箇所もありました。特に量子論に入った頃から難しくなりました。ノーベル物理学賞を受賞したリチャード・ファインマン博士ですら「量子力学を理解している人は誰もいないと言っていいと思う」と発言するぐらいですから、まして文科系の素人をや、です。それに、学生時代は量子論なんて全く習いませんでしたからね。

 この本は2022年4月30日初版ですから、出版されて1年以上経ってますが、日本ではあまり大きな話題になりませんでしたね。「神の方程式」ですから、新興宗教の聖典と勘違いされたのでしょうか? でも、この本は、理論物理学の一般向けの好著だと思います。難しい数式は本文では避けて、註釈の中に登場させています。また、訳者の斉藤氏の翻訳がこなれていて読みやすいお蔭で、文科系の素人でも理解しようと頑張れば出来るからです。

 この本は、このブログで以前ご紹介したニュートン別冊「学びなおし 中学・高校物理」(ニュートンプレス)を読了した際にも取り上げました。繰り返しになりますが、現代の最先端の物理学は、マクロな世界を記述するアインシュタインの一般相対性理論と、ミクロな世界を記述するシュレーディンガーやハイゼンベルクらの量子力学(量子論)を融合した「究極の理論」を構築しようとしていて、未だにその統一された「万物の理論」は出来ていません。本書はそれまでに至る過程というか、偉大な科学者の業績と歴史を辿り、今後の展望を探っています。つまり、この1冊で、最先端の物理学が分かるわけです。先のブログでご紹介した通り、著者のミチオ・カク(賀来道雄)氏(76)は、日系3世の米国人で、ニューヨーク市立大学教授です。米国では、テレビの多くの科学番組やニュースの解説者として登場し、大変な有名人のようですが、不勉強な私は存じ上げませんでした。

 私は文科系の人間ですが、最先端の物理学の礎を築いたニュートンとアインシュタインの二人の科学者について、著者の見方が面白かったです。カク氏によると、ニュートンは、孤独を好み寡黙で、人間嫌いと言っていいほど。生涯の友はおらず、日常会話も満足に出来なかった、とまで言ってしまっております。一方のアインシュタインは、社交的で、人間的で気取らず、周囲の人間はその高潔さに圧倒されるものの、誰からも愛される性格だったといいます。文科系の人間は、理論よりも、こういった人間臭い話の方が好きです(笑)。

 カク氏は大学の先生ですから、説明の仕方も分かりやすいです。例えば、こんな感じです。

 アインシュタインは見事にこう見抜いた。光の速度は不変だから、光速を不変にするために、時間と空間が歪むのに違いない!

 アインシュタインは、万有引力が実は錯覚であるという見事な知見を得た。物体が動くのは、重力や遠心力で引っ張られるからではなく、周囲の空間の湾曲によって押されるからである。もう一度言おう。重力が引っ張るのではなく空間が押すのだ。

 このように、「時空は重い質量によって歪み、重力による力の錯覚をもたらす」という一般相対性理論を一般向けに易しく解説してくれます。

 さて、究極の万物の理論が構築されると何が解明されるのか? 著者は、それについても明確に答えています。著者によると、究極の理論とは、自然界の四つの力(重力、電磁力、強い核力、弱い核力)が一つの理論にまとまる考えだといいます。疑問が解明する可能性があるものの中にはー。

●ビッグバンの前に何が起きていたのか? そもそも何故ビッグバンが起きたのか?

●ブラックホールを抜けた向こう側に何があるのか?

●タイムトラベルは可能なのか?

●いくつもの並行宇宙からなるマルチバース(多宇宙)は存在するのか?

 等々ですが、あれっ?です。最先端の物理学の究極の理論というのは、宇宙論のことではありませんか!(つづく)

【追記】2023年8月24日

 ニュートンとアインシュタインという2人の天才に関して、もう一つ、人間的な側面を追加しておきます。

 ・人間嫌いで奥ゆかしいニュートンは、自分の著作の出版を考えていませんでしたが、ニュートンの業績に感嘆して、その著作の印刷費用を支払うことを申し出たのは、「ハレー彗星」で名を残した天文学者のエドモンド・ハレーだった。その著作とは、科学史に残る重要な最高傑作の一つとなる「プリンシピア 自然哲学の数学的原理」(1687年)だ。

 ・アインシュタインは、ロングスリーパーで、毎日10時間寝ていたといわれる。