「ラスト、コーション」を見て

 

「ブロークバック・マウンテン」でアカデミー賞監督賞を受賞したアン・リー(李安)監督の作品映画「ラスト、コーション」をやっと見てきました。「朝の9時15分からの上映だったら大丈夫です」というので、無理に早起きして出かけたのです。非常に期待してみたのですが、途中でちょっとがっかりしてしまいました。

トニー・レオン扮する親日諜報機関の幹部を暗殺する計画が、別所哲也に似た俳優が扮する香港の大学の演劇部の学生を主体にした若者たちだった、という辺りから、ちょっと「話に無理があるなあ」と思ってしまいました。これが、例えば、最初から国民党なり、共産党なり大きな組織がバックにあって、学生たちを手先に使って計画したものであったならば、筋として納得できたのに、惜しいことをしたと思います。

ヒロインのモデル出身の新人タン・ウェイは、林寛子に似て、確かに綺麗ではありますが、服は脱がない方が魅力的でした。

「中国全土に激震が走った」というベッドシーン(そのために、中国でも日本でも満員御礼が続いているのです!)は、アクロバティックな器械体操みたいで、残念なことに(笑)私はあまりエロスを感じませんでした。もう少し穏やかに育めないものかなあと嘆息してしまいました。

総合70点。

よかったのは、1940年代の上海がCGを使ったのでしょうが、よく描かれていたということでしょうか。

 

ただ、「中国映画」のせいか、日本に対する敵意丸出しです。お座敷小唄か、端唄か知りませんが、日本人の軍人の宴会で、芸者が三味線で歌っているのを聴いたトニー・レオンに「調子ぱずれで聴くに堪えない」と、まるで日本の歌が劣等文化の如き言わせしめるぐらいですから、国粋主義者でなくてもカチンときますね。

 

タイトルもどうにかならないもんですかねえ。ラストと言えば、日本人なら誰でも「last 」(最後)だと思うじゃないですか。しかし、実は「lust」。肉欲のことです。中国語名は「色・戒」ですから、これなら少しは意味が分かります。

 

原題をそのままカタカナにして、タイトルにするのは、映画もしくは配給会社の怠慢だと思います。