今話題の『世田谷一家殺人事件 侵入者の告白』(草思社)を読みました。2000年12月30日に東京で起きた一家惨殺事件でいまだに犯人が捕まっていないあの衝撃的な事件の「真犯人」を突き止めたという内容です。
当初は、物証が多く、指紋もたくさん残されていたので、ホシはすぐに挙げられる簡単な事件だと思われていたのに、なぜ今になっても解決できないのでしょうか?
著者の齊藤寅氏は週刊誌の記者からフリーに転じたジャーナリストで、警視庁にも大阪府警にも刑事の友人を持ち、アンダーグラウンドの顔役とも付き合いがあり、普通の人では知りえない情報をジャッカルのような執拗さで追っています。
齊藤氏は、犯人は、アジア系の犯罪組織の一員で、韓国人のHが主犯格で、あと中国人のYとGがからんでいるとイニシャルで書いています。彼が苦労して入手した犯人の顔写真は、警察当局にも渡り、警察はソウルにまでいって確認しています。しかし、新聞では報道されず、犯人はどこかでぬくぬくと生きて、素知らぬ顔で街中を闊歩しているようです。
犯罪グループは、主に韓国人、中国人、ベトナム人、カンボジア人などで、2001年12月に起きた大阪曽根崎の風俗嬢殺人事件も、2002年1月に起きた大分恩人殺人事件にも関わっているというのです。
彼らは、金に困っているアジアからの若い留学生を次々とスカウトし、殺人事件の詳細を聞かせて、組織から抜け出せないようにして、組織を拡大させているようです。彼らは失うものがなく、とにかく日本で稼げるだけ稼いで故郷に錦を飾ることが目的ですから、罪悪感が全くありません。罪の呵責に苛まれなければ何をしでかすかわかりません。
彼らはインターネット等で、どこの家に金があるかといった情報を交換して、目星をつけると家族構成から日常の生活パターンや、周辺の状況などを何度も「ロケハン」して調べつくすようです。
著者は警察関係に幅広い情報網を持っていながら、警察組織に対する批判は辛辣です。要するに、セクショナリズムに陥って、「管轄外」に関しての事件や情報には知っていても、知らないふりをするか、かかわらないようにしているというのです。だから、著者のような、フリーの人間が全国を飛び回って、複雑にからんだ情報をジグゾーパズルを組み立てるようにして、問題提起しているのです。
世田谷一家殺人事件で亡くなった宮澤みきおさんは私と同い年でした。同書によると、彼の両親が住む実家、ということは彼が小さい頃住んだ所は、私が今住む所と目と鼻の先のようです。
個人的に何か不思議な縁を感じます。早く犯人が捕まってほしいです。宮澤さん一家のご冥福をお祈りします。