言語は世界制覇の最大の武器

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 人間、否が応でも、政治や経済や社会の影響なしでは生きてはいけないということは自明の理です。でも、それ以上に重要なことは、日ごろ安易に感じられがちな文化だと私は思っています。文化の中でも最も大切なものは、言語です。

 言語は単なるコミュニケーションの手段だと、またまた安易に考えられがちですが、人間は言語によって思考したり、言語によって感情を表現したりする極めて重要なツールなのです。つまり、言語は世界制覇の最大の武器になるのです。

…なぞと、いつもながらの渓流斎ブログらしく、ややこしい前触れから始めましたが、何でこんなことを考えたかと言いますと、欧米が中国の「孔子学院」を相次いで閉鎖している、という記事を読んだからです。

 孔子学院とは、中国教育省傘下の孔子学院本部(北京)が海外の大学構内に設置しているもので、教師や教科書は中国から提供され、運営費の半額は原則的に中国が負担しているといいます。今年10月の時点で、世界162カ国・地域で計541校も開校しているといいます。

 しかし、ここに来て、中国が香港やウイグル、内モンゴルなどに強権的政治力を発動し、人権問題になったりしたことから、欧米を中心に反発が広がり、閉鎖される傾向が続いているといいます。そうでなくても、もともと孔子学院は中国政府のプロパガンダ(政治宣伝)機関かスパイ養成機関ではないかといわれるような疑心暗鬼があったことから、拍車が掛かったようです。

 私自身は、孔子学院でどのような教科書が使われているか知りませんが、中国国内でネット検索すらできない「天安門事件」や「香港国家安全維持法」などは取り上げられていないと想像しています。

実家の老親がやっと退院できるようになりましたが、条件はこのように家内に介護環境を整えることでした

 10月28日付産経新聞は「スウェーデン 対中感情悪化=欧州で突出 香港人権問題契機に」という見出しで大きく報道していました。中国共産党の批判書を扱い閉店に追い込まれた香港の「銅鑼湾書店」の親会社の大株主でスウェーデン国籍も取得している桂民海氏が2018年、中国本土で警察に拘束されたことが関係悪化の契機だったといいます。

 スウェーデンは、国内に8カ所ある孔子学院を全て閉鎖し、携帯電話の5Gで中国のファーウェイの機器の使用を禁止したといいます。

 産経の記事だけを読んでいる限り、「そうですか。中国って悪い国ですね」と言いたいところですが、少し冷静になってみると、そう言い切れないところがあります。この深層に、今年新たに孔子学院を2校閉鎖し、最大120校あったものを現在、81校に減少させた米国と、政治的、経済的に世界制覇を狙う中国との覇権争いがあるからです。つまり、善悪で捉えてはいけないということです。中国が一方的に悪で、米国が善というわけではないのです。言ってみれば、サバンナの弱肉強食の世界です。

 スウェーデンにしたって、2000年初めまでは、経済大国であり、ノーベル賞学者を多く輩出する日本を重視し、多くの日本語講座を設けていたのに、中国が経済発展すると、手のひらを反すようにして、日本語学校を閉鎖・追放して中国語講座を設けるようになったという話を以前、スウェーデン留学歴のある学者に聞いたことがあります。

 正確な引用ではありませんが、勝海舟は毀誉褒貶がある人とはいえ、日清戦争が起きる前、「あれだけ、昔はお世話になったのに、支那(中国)がかわいそうじゃないか」と言って、戦争に反対したと言われてます。

 古代に仏教(漢訳経典)も、稲作灌漑技術も中国大陸から渡ってきたものです。何と言っても、日本語の根幹となった漢字の導入があります。ベトナムや韓国北朝鮮は漢字を棄てましたが、「優等生」の日本は漢字を棄てず、今でも漢字なしでは日本語は語れません。日本人は漢字なしでは思考すらできません。

 尖閣諸島に出没する中国船の話などが連日報道され、世論調査でも中国に対する好感度が極度に下がっています。しかし、隣国として将来に渡って付き合わざるを得ません。

 そう言えば、日本のメディアの中国報道はネガティブなものが多い気がします。それが日本人の対中感情の悪化の原因の一つになっています。

 正直、私自身も皆さんと同じように、今の中国のことを大好きにはなれませんが、何事もほどほどに。欧米だけが一方的に正しいというわけではないのです。「中庸の精神」が大事だと私は思っています。