「西鶴一代女」と「ボヴァリー夫人」「女の一生」「居酒屋」

伊太利亜ヴェローナ

巨匠手塚治虫が秘蔵していた春画が見つかったそうで、話題になっています。

文芸誌「新潮」に掲載されていますが、どうやら、新潮の編集者が事前に、特定のメディアに垂れ流し、いや間違えました、特ダネ記事を耳打ちしたらしいです。スクープできなかった弱小メディアのお父様、残念でした。

世の中、強い者が勝つようにできているのです。政治の世界では特に、誰もが勝馬に乗ろうと我先にと、人を押しのけて生きてます。

その手塚治虫ですが、驚くべきことに、亡くなったのはまだ60歳だったのですね。あれだけ歴史に残る大仕事を残したので、もっと長生きされていたと思っていましたが、早逝といっていいぐらいです。

まあ、いわゆる天才ですから、10代から大活躍されていて、確か、あまり若く見られたくないということで、生前は5歳ぐらいサバをよんでいたことがありました。早熟の天才だったのですね。

◇溝口健二は58歳で死去

昨日は、ネットの無料動画で、溝口健二監督を世界的に有名にした「西鶴一代女」を観ましたが、酷く暗い映画で落ち込んでしまいました(苦笑)。

昭和27年の作品です。この作品は、ヴェネツィア映画祭でグランプリを受賞し、翌年は「雨月物語」、翌々年は「山椒太夫」でも獲得して、3年連続の栄誉を授かり、すっかり「世界の溝口」の名を不動のものとしました。「3人好きな監督を挙げよ」と聞かれた仏ヌーベルバーグのジャン・リュック・ゴダール監督が「溝口、ミゾグチ、みぞぐち」と答えたことは有名です。

今でも、日本よりフランスの方が溝口健二研究家が多いぐらいですが、これ程、暗い映画をフランス人が好むとは意外でした。

田中絹代主演で、若き三船敏郎も最初に登場します。田中絹代演じるお春は、3万石の殿様の側室となって世嗣ぎを産んで頂点を極めたかと思ったら、運命の悪戯で落魄して、苦界に堕ちて、堕ちて、堕ちまくる話で、これ程ついていない女性もいないぐらいです。そんな女性は、フランスにはフロベールの「ボヴァリー夫人」を始め、モーパッサン「女の一生」のジャンヌ、ゾラ「居酒屋」のジェルベーズと結構多く描かれ、なあんだ、薄幸女性は、フランス人好みだったわけですか。