日本の闇を牛耳った昭和の怪物120人=児玉誉士夫、笹川良一、小佐野賢治、田中角栄ら

WST National Gallery Copyright par Duc de Matsuoqua

東京の調布先生に久しぶりにお会いしたら、「貴方も好きですねえ。真面目に仏教思想を勉強していたかと思ったら、最近またアンダーグラウンド関係に熱中していますね」と言われてしまいました。調布先生もしっかりと渓流斎ブログをお読みになっているんですね(笑)。

 アンダーグラウンド関係にのめり込むきっかけの一つが、何を隠そう、調布先生の影響でした。もう時効ですから明かしますが、もう四半世紀以上も昔のこと。当時会社があった東京・内幸町界隈にどでかい東武財閥系の富国生命ビルがあり、その地下は飲食街になっていて、よくランチに行っておりました。ある日、調布先生が、わざわざ弊社にお見えになり、昼時なので、その富国生命ビルにランチに行くことになりました。

 そこの1階には、入居しているテナントの会社のプレートがあり、調布先生は「この方を御存知ですか?」とニヤニヤしながら御下問するではありませんか。そこには「日本政治文化研究所 西山広喜」と書かれていました。当時の私はまだ紅顔の美青年ですから、世間のことは何も知りません。後で、その方は、その筋では知らない人はいない右翼活動家で総会屋の大物だということを知りました。

 その後、調布先生から、いきなり「滋賀県の大津に行きましょう」と言われ、連れて行かれたのが、義仲寺です。名前から分かる通り、源平時代の武将・木曽義仲の墓所でした。しかし、昭和初期には荒廃して壊滅寸前だったといいます。戦後、この寺の復興整備に尽力した著名人の墓もありました。一人は、「日本浪漫派」の文芸評論家保田与重郎(1910~81)。この人は私も知っています。しかし、調布先生が私に教えたかったのがもう一人の方でした。三浦義一(1898~1971)。大分県出身。戦前は虎屋事件、益田男爵事件などを起こし、戦後直後は、政財界の最大の黒幕と恐れられ、日本橋室町の三井ビルに事務所を構え、大物政治家や財界人が足繁く通ったことから、「室町将軍」の異名を取った人だというのです。

 私もナイーブでしたから、知るわけありませんよね。当時は、インターネット情報も充実していませんし、「知る人ぞ知る」人物に関する人名事典すら書籍として発行されていなかったので、その筋の情報は、一部の関係者の間で口コミで広がるぐらいでした。

 しかし、今は違います。ガセネタも多いですが、ネット情報があふれ、本もいっぱい出ています。前置きが随分長くなりましたが、21世紀の令和時代となり、昭和時代も歴史となった今、いい本が出ました。これもまた、調布先生が教えてくれた、というおまけ付きです(笑)。

 別冊宝島編集部編「昭和の怪物 日本の闇を牛耳った120人の生きざま」(宝島社、2019年12月25日初版)です。恐らく、色んなライターが別々に書いているようで、それぞれに出来不出来があり、明らかな間違いや校正ミスもありますが、全体的によくまとまっています。見開きページに一人、顔写真と経歴付きですから、小事典としても使えます。

 裏世界を何も知らなかった頃から30年近く経ち、あれから、普通の人よりもかなり多くのその筋の本を読み(笑)、重要人物からもお話を聴くなどかなりの情報を獲得しましたから、私もさすがにその方面には異様に詳しくなり、情報の目利きができるようになりました。

  この本の「日本の闇を牛耳った昭和の怪物120人 」をどういう基準で編集部が選んだのか、よく分かりませんが、欠かせない人物なのに落ちている人がいることが散見されます。例えば、フィクサー田中清玄(1906~93)、北星会会長岡村吾一(1907~2000)、 情報誌「現代産業情報」発行人石原俊介(1942~2013) はマストでしょう。山段芳春(1930~99)を取り上げるなら、「京都三山」の高山登久太郎(1928~2003)らも取り上げなければいけませんね。バブル期のリゾート王・高橋治則(1945~2005)や末野謙一氏、北浜の天才相場師・尾上縫(1930~2014)らも欲しいですが、彼らは別に黒幕でも何でもないですけどね(苦笑)。

 この本には、先程の三浦義一と西山広喜(1923~2005)はもちろんのこと、児玉誉士夫(1911~84)、笹川良一(1899~1995)、小佐野賢治(1917~86)、岸信介(1896~1987)、田中角栄(1918~93)ら、この手の本では必ず出てくる人物は漏れなく登場しますが、番外編として、玄洋社の頭山満(1855~1944)と杉山茂丸(1864~1935)や黒龍会の内田良平(1874~1937)らも取り上げているのが良い点です。また、私自身が取材経験のない弱点でである(笑)総会屋系の木島力也(1926~93)、芳賀龍臥(1929~2004)、小川薫(1937~2009)、正木龍樹(1941~2016)、小池隆一氏(1943~)らの略歴で、彼らの師弟関係も分かり勉強になりました。

 【後記】

 「昭和の120人」のせいなのか、1926年(大正15年、昭和元年)生まれが異様に多かったですね。安藤昇、渡辺恒雄、氏家斎一郎、木島力也、五味武、根本陸夫といった面々です。ちなみに、同年生まれには、梶山静六、森英恵、多胡輝、菅井きん、山岡久乃、佐田啓二、マリリン・モンロー、仏のジスカールデスタン、キューバのカストロ、中国の江沢民、米コルトレーン、チャック・ベリーら多彩な人を輩出しております。

新元号、スクープ記者は語り継がれる?

 今日は3月27日(水)。5日後の4月1日(月)に閣議決定を経て、今上天皇御退位に伴う新元号が発表されます。

 ワイドショーかなんかでは盛んに新元号名が予想されているようですが、見ていないので分かりません。

 でも、私が個人的に得た情報によると、現在の日本の国家の最高権力者の名前から一字取った「安」が入るのではないかという憶測が流れております。

ソニー生命保険が、2018年3月16日~19日に、全国の平成生まれの男女(20歳~28歳)と昭和生まれの男女(52歳~59歳)1000人に対し、「平成生まれ・昭和生まれの生活意識調査」をネットで調査したところ、新元号の予想として、「安久」が3位、「安寧」と「安泰」が10位に入ったため、この調査が基準となり、情報が一人歩きしたようですが。

 その程度の情報が拡散しているとしたら、こうなったら、四字熟語の「安心立命」から拝借して、「安立」とか「安命」とかいう元号になるかもしれません。えっ? 四字熟語? お相撲さんの口上じゃあるまいし、「まさか」でしょうね。恐らく、また、四書五経など中国の古典から引用されることでしょう。日本の古典からという説もありますが、当たったらどうしましょ。

 そもそも、こうして庶民が新元号を予想すること自体は、戦前なら「不敬罪」に当たり、逮捕されていたことでしょう。しかし、今回は生前退位であり、国民の象徴として、次第にタブー視されなくなったことから、元号予想が百花繚乱の趣を呈していると思われます。

Alhambra, Espagne

 ま、いずれにせよ、私が注目しているのは、どこのメディアが新元号をスクープするか、です。今から30年前の「平成」は、毎日新聞が発表の35分前にスクープしたのですが、「号外」を出さなかったといいます。なぜかというと、大正から昭和に改元される際に、毎日新聞の前身の東京日日新聞が「次の元号は光文」という大誤報の号外を出してしまった過去のトラウマがあったからでした。「二度と誤報は繰り返したくない」という、平成改元当時の毎日上層部の慎重な判断があったようです。

 しかし、今回は、首相官邸側が「新元号が事前に漏れ、報道されるようなことがあれば必ず差し替える」とメディアを恫喝していると言われます。となると、菅官房長官の大嫌いな美人記者のいる東京新聞は、まずスクープは無理でしょう。「大正」をスクープした朝日新聞や、毎日新聞は安倍首相に嫌われているので論外。日本経済新聞は、財界からの情報頼みか。となると、「御用新聞」面目躍如の読売新聞か、産経新聞のどちらかになるでしょう。でも、産経は「人手不足」ですから脱落。やはり、日本のメディアで一番政財界に食い込んでいて、読み応えのある読売が抜くかもしれません。

 とはいえ、30年前と違って、紙のメディアは著しく後退して、ネットメディアが台頭しています。取材力でいえば、人員豊富なNHKか共同通信、もしかして意外にも米国のAP通信辺りがスクープするかもしれません。

 えっ?5分や30分のスクープが何になる?くだらない、ですって? いやいや、スクープはジャーナリズムの醍醐味です。新元号をスクープした記者は、後々の世まで、代々語り継がれますからね。

 ちなみに、「大正」をスクープしたのは朝日新聞の政治記者だった緒方竹虎(1888〜1956)でした。後に同社の主筆兼副社長となり、退社後、情報局総裁、戦後は内閣官房長官、自由党総裁などを歴任した超大物政治家です。昭和11年の2・26事件で、有楽町の朝日新聞本社が襲撃された際、青年将校と対峙した人ですから、この人、よっぽど、歴史の変革に居合わせる運命を持つ稀有の人だったことが分かります。