審議会委員に選ばれるマスコミ

 どうでも良い話かもしれませんが、私自身は、若き頃、マスコミの仕事を選んだのは、世の中の仕組みがどうなっているのか、知りたかったからというのが一つの理由でした。政治にしろ、経済にしろ、誰が世の中を動かしているのか知りたかったのです。

 有難いことに、マスコミに入ったお蔭で、色んな著名人と会うことができ、おまけに裏社会のことも知ることができ、ある程度のことは分かるようになりました。ただ、仕事が担当にならなかったせいか、霞ケ関の官僚の皆さんとは深く親密になることができず、結局、その「仕組み」を知らずに終わってしまいました。

 特に分からなかったのが、どこの省庁にもある審議会です。誰が選ばれて、何のために、そして何をやっているのか、時折、不思議に感じておりました。実際問題、法案のたたき台になることでしょうし、政策にかなり影響を及ぼしているはずです。それなのに、新聞もテレビもほとんど報道しません。

 特に、ニュースで脚光を浴びるとしたら、内閣府の税制調査会ぐらいでしょうか。これは、内閣府本府組織令第33条によると、「内閣総理大臣の諮問に応じて租税制度に関する基本的事項を調査審議する」会議のことで、その委員は30人以内です。

 その委員は、専門の大学教授をはじめ、いわゆるシンクタンクのエコノミスト、地方自治体の首長さんらもおりますが、今年4月1日現在、読売新聞の取締役や産経新聞の論説委員の方まで選ばれているのです。どういう経緯で、どなたが選出されたのか、皆目見当もつきませんが、マスコミといえば、普通一般の民衆の感覚では、時の為政者の不正をチェックし、「社会の木鐸」とか、「弱きを助け、強きを挫く」ようなイメージがあります。それが、実態は、政府の中に入り込んで、インサイダーとして社会を動かしていることが分かります。これでは政権批判はしないはずです。

 たまたま、税調の委員が政権寄りの産経と読売の方が入っておられるので、分かりやすいといえば、分かりやすい。まさか、反政権報道を繰り返している東京新聞では無理かな、と邪推してしまいます。読売新聞さんの場合、その論説委員や編集委員らが、税調だけでなく、法務省の法制審議会委員やスポーツ庁のスポーツ審議会委員にまで数多(あまた)食い込んでおります。

 しかし、一方では、政府内部に入り込んでいるせいなのか、読売新聞の記事解説が大手紙の中では一番分かりやすく、報道は細かいところまで目が行き届いています。その逆に、為政者に弱く、その半面べったりなのに、反政権的ポーズだけは取ってみせている朝日新聞は、審議会にスパイ、おっと失礼、あまり委員を送り込んでいないせいなのか、記事の内容が薄く無残といえば無残です。

銀座SIXの屋上

例えば、朝日は、「未来投資会議」についてはほとんど目立つように報道しません。これは、アベノミクスの第3の矢として「民間投資を喚起する成長戦略」を実現するために鳴り物入りで創設されたものですが、彼らが何を審議して、どんなことを政府に提案していたのか、読者に知らせてくれません。以前、このブログでも書きましたが、この未来投資会議の「民間議員」である竹中平蔵氏が率先して提言したおかげで、いつの間にか、公共水道水が売られ、国有林が売られるようになったというのに、朝日は、ほとんどそれらの事実を報道しないんですからね。

 メディアは何を報道したか、よりも、何を(故意に)報道しなかったのか、の方が重要だと思いませんか?

 また、安倍政権による過去最大の101兆円を超える予算を支えるために、黒田日銀総裁は、国債を買いまくる禁じ手である「財政ファイナンス」を続けていて、将来的に財政破綻の恐れがあるというのに、どこも解説どころか、事実関係を報道すらしてくれません。それが、最近では、メリケン帰りの「MMT」=Modern Monetary Theory とやらが、日本のシンクタンクや霞ケ関などでも闊歩するようになり、「財政破綻はありえない」という理論も優勢になっているらしいですね。

 まあ、いきなり話が飛んでしまいましたが、ボーと生きていたら、世の中から置いてきぼりにされてしまいますね。クワバラ、クワバラ。