な、何と、東スポ餃子とは!=ぐあんばれ、東京スポーツ新聞!

 前から書こうと思って忘れていたことを本日書かさせて頂きます。質量とも、つまり、売上部数も内容も、エンターテインメント紙ナンバーワンだったあの東京スポーツ新聞が、ネット社会の弊害を受けて、部数が低迷してしまい、ついに数年前から社員の大幅リストラに踏み切りました。

 日本新聞協会によると、スポーツ紙の発行部数は、2000年の時点で、630万7162部もあったのですが、2022年は215万1716部と3分の1近くも落ち込んでしまいましたからね。

 若い人は紙の新聞を買わなくなってしまいましたし、もう「企業努力」ではこの流れを食い止めることは出来ません。朝日新聞や読売新聞など大手一般紙は、もはや都心の超一等地にある旧社屋の跡地にビルを建てて、本業よりも不動産業の方が収益があるという噂があるほどです。

 東京スポーツは残念ながら、不動産業で副業出来るほどの土地持ちではないようなので、そこで、思い切って始めた副業が、何と餃子販売だったというのです。この経緯については、昨年11月に出版された岡田五知信著「起死回生 東スポ餃子の奇跡」(MdNコーポレーション)に詳しい。宣伝文句に曰く…

 スポーツ紙が危機的状況に晒される中、大手一般紙傘下とは無縁の東スポが生き残りを賭けて起死回生の大勝負に打って出た。これまでの新聞業態とは縁もゆかりもなかった食品業界に、餃子、唐揚げ、ポテトチップスで事業参入を図ったのだ。その裏にあったのは、大リストラを経て学んだ血まみれの教訓だった。これ以上、社員を犠牲にしたくない。社員を守るため、会社を存続させるために一人の幹部社員が腹を括って動き出した…。

 東スポブランドの食品の売上は、今や年間1億円に拡大しているといいます。

銀座

 私も東スポの記者とは何人もお付き合いしたことがあります。東京スポーツは、明治に創刊された大衆紙「やまと新聞」の流れを汲み、あの児玉誉士夫氏がオーナーとして戦後の1960年に創刊され、プロレスや芸能スポーツ、スキャンダル、はたまた河童から人面魚に至るまで「飛ばしの東スポ」の異名を持ったことは皆さん御案内の通りです。

 本来、新聞記事は最終的に本人に確認し、そのことを業界用語で「ウラを取る」と言いますが、東スポの場合、社是として?「ウラは取らない」と聞いたこともあります(笑)。

 しかし、私の経験では、東スポ(と系列の大阪スポーツ新聞)の記者ほど真面目で大人しい人間が多く、記事とのギャップに驚いたほどです。それに、記者会見など公式な場での発言は紙面では書けないので、記者会見では出なかった「本音」を聴くために、さらに、夜討ち朝駆けで取材しなければならず、要するに他社と比べて2倍も3倍も働いていました。

 もう一つ、東スポは夕刊紙なので、時差を利用して早くから日本人が活躍するゴルフなど海外でのスポーツ報道に力を入れていました。ゴルフの全米オープンやマスターズなど格式がある大会でも、「東京スポーツ新聞社様」とネームプレートと入りの豪華な記者席が用意されているという話も聞いたことがあります。それは、米国の主催者が、Tokyo Sports News なら日本を代表するクオリティーペーパーだと誤解したためだ、というオチがありますが(笑)。

 でも、時代の趨勢ですね。ネット上では、東スポとは比べ物にならないもっと過激で、ウラを取らないフェイクニュースや関係者しか知らないスキャンダルに溢れていますから、太刀打ちできません。それに輪をかけて、駅やプラットフォームでのキオスクがほとんど消えてしまい、サラリーマンの「通勤の行き帰りに新聞」という習慣も絶滅してしまいました。