100年前の関東大震災直後に起きた不都合な真実

 9月1日は、関東大震災から100年の節目の年です。100年は、長いと言えば長いですが、「人生100年時代」ではあっという間です。

 本日付の新聞各紙はどんな紙面展開するのか? 興味津々で都内最終版の6紙を眺めてみました。そしたら、「扱い方」が、どえりゃあ~違うのです。

 扱い方というのは、大震災のどさくさの中、「朝鮮人が井戸に毒を流した」などといった流言蜚語が飛び交い、自警団らによって朝鮮人・中国人が虐殺された事件をどういう風に紙面展開するのか、といったことでした。毎日新聞は、社説、記者の目、社会面を使ってかなり濃厚に反映していました。朝日新聞も負けじと、社説、特集面、社会面で積極的に報道しています。東京新聞も、「売り」の「こちら特報部」で朝鮮人虐殺正当化の「ヘイト団体」まで取り上げています。ネットで確認したところ、時事通信もかなり報道していました。

 その一方で、うっすらと予想はされましたが、産経新聞と読売新聞は全く触れていません。産経と読売の幹部は「朝鮮人虐殺はなかったこと」にしているかのようです。日本経済新聞も、ほとんど触れていません。と、思ったら、辛うじて、社説で、虐殺があったことを、震災直後に発行された「震災画報」の記事を引用して取り上げております。何故、論説委員が直接書かないのか不思議です。

 劇団俳優座を創設した一人である千田是也(本名伊藤圀夫、1904~94年)は、大震災後、千駄ヶ谷で朝鮮人と間違われて暴行された経験があり、芸名を、「千駄ヶ谷のコリアン」から付けた逸話は有名です。千田是也のような実体験をした人が亡くなると、歴史は風化して「なかったことに」なるのでしょうか。

スーパーブルームーン

 松野博一官房長官は8月30日の会見で、朝鮮人虐殺について問われ、「政府内において事実関係を把握する記録が見つからない」と宣言したようです。しかし、震災直後の内務省警保局の電信文には、朝鮮人殺害や日本人誤殺、流言の拡散などが記され、震災から2年後に警視庁が発行した「大正大震火災誌」にも掲載されています。また、政府の中央防災会議の2009年の報告書では、震災の死者・行方不明者約10万5000人のうち「1~数%」(つまり、1000人~数千人)が虐殺犠牲者と推計しています(東京新聞「こちら特報部」)。ということなので、岸田政権が事実関係を把握しようとしないのか、もしくは「なかったこと」にしようとする強い意思が伺えます。小池百合子都知事が犠牲者追悼式典に追悼文を送付しないのも、同じような理由なのでしょう。

 大震災のどさくさに紛れて、朝鮮人だけでなく、「主義者」と呼ばれた反国家主義者も虐殺されました。その一番の例が無政府主義者の大杉栄と妻の伊藤野枝、そして6歳の甥橘宗一が憲兵隊によって虐殺された「甘粕事件」です。さすがに本日、そこまで取り上げるメディアはありませんでしたね。(甘粕正彦憲兵大尉はその後、満洲に渡り、満洲映画協会の理事長になり、ソ連侵攻で、「大ばくち 身ぐるみ脱いで すってんてん」という辞世の句を残して服毒自殺しました。)

スーパーブルームーン

 産経、読売、日経も岸田政権も小池知事も「もう自虐史観はやめて、前向きな新しい歴史をつくろう」という積極的な意図が見えますが、読者には100年前の史実が伝わっていません。

 昨日は、西武池袋百貨店が、大手百貨店としては1962年の阪神百貨店以来61年ぶりにストライキを行いました。テレビで、ある若い男性がインタビューを受けていましたが、彼は「ストライキなんて教科書に載っているのを知っているぐらいで初めてです」などと発言していました。彼よりちょっと年を取った世代である私からすれば、「えー!!??」です。特に、我々は国鉄のストで学生時代はさんざん悩まされた世代ですからね。会社でも30年前まで頻繁に時限ストを行ったいました。

 30年前ぐらいにストライキが頻発した出来事を(当然のことですが)若い世代は知らないのですから、100年前の虐殺事件ともなると、知るわけがありません。特に、産経と読売の読者でしたら、知り得ません。でも、あれっ?そっかあ~。今の若い人は新聞読まないかあ~。

 奇しくも、本日から関東大震災直後の虐殺事件を扱った映画「福田村事件」(森達也監督)が公開されたので、御覧になったら如何でしょうか?

【追記】2023年9月2日

 関東大震災後の朝鮮人虐殺事件に関して、「国営放送」のNHKでさえかなり積極的に報道していました。予算審議を政府に握られているNHKが出来るのに、何で政府の意向に従わなくても済む読売、産経、日経が政府の顔色を窺って報道を避けるのか、全くもって不思議です。

読者プレゼントに続けて当選してしまいました=人生は縁と運

 うひゃぁ~! 何たるちいあ(死語=笑)!

 応募した懸賞が続けて当選してしまいました。一つは、東京新聞の「6月16日 和菓子の日・読者プレゼント」(全国和菓子協会)です。応募したことさえも忘れていたので吃驚です。

 当選したのは、和菓子柄のエコバッグです。折り畳めばポケットに入る便利なバッグです。

 こりゃあいい。こいつは春から縁起がいい。(今は夏でした!)

 東京新聞と全国和菓子協会に感謝です。

もう一つは、「鎌倉殿の13人 大河ドラマ館」の入場券です。ここ数年、毎月購読している「歴史人」(ABCアーク)7月号の読者プレゼントで当選しました。

 実は同誌6月号で、あまりにも誤字脱字が多かったので、応募はがきにそれらをクドクドと指摘したので、恐れをなした編集部が気を遣って、私に当選させ、「口封じ」(笑)を狙ったものとみられますが、残念、こうして書かれてしまいました(爆笑)。

 「歴史人」読者プレゼントに当選したのは、これで4回目ぐらいです。凄い当選確率です(笑)。それだけ、私が、毎号、熟読して意見もどしどし述べているせいなのかもしれませんが、過去の当選者でも排除しない出版社の心意気には大変感謝したいと思っております。

 有難う御座いました。

 そして、「大河ドラマ館」も、2017年の井伊の「おんな城主 直虎」(浜松市)、2020年の明智光秀の「麒麟がくる」(岐阜市)、2021年の渋沢栄一の「青天を衝け」(東京都北区飛鳥山)と結構行っておりますので、今年の「鎌倉殿の13人」(鎌倉市)も「勉強のために、是非とも行って来い」ということになったのでしょうね。

新橋演舞場

 話は飛びますが、私のこれまで生きて来た苦難の人生の経験上、得た教訓は、「人生とは縁と運」でした。そして、それはてっきり自分だけが考えたものだと誤解していました。

 そしたら、先日、NHKラジオの「ビジネス英語」を聴いていたら、出演者のジェニー・シルバーさんが、こんな発言をしたのです。

 Life is about fate and luck, but fate will only come to you when you make the effort.

(意訳)人生とは縁と運みたいなものです。でも、縁というのは、努力して初めて恵まれるものではないでしょうか。

 えーー!? 「運」なら、西洋的な思想に思えますが、「縁」とはまさに仏教思想というか東洋的だと思っていたので、欧米人でも、縁と運の両方を重視する人がいたとは意外に思ってしまったのです。

 ま、同じ、人類として西洋人も東洋人も何も変わらない、ということなのかもしれませんが。

?「i新聞記者 ドキュメント」は★★★★★

 やたらと無意味な殺人場面が多発するハリウッド映画「ジョーカー」を観て、ひどくウンザリし、しばらくお金と時間を費やしてまで映画館に足を運ぶ気力も失せてしまったのですが、ちょっと見逃せない映画がかかったので、山手線の新駅工事の影響でダイヤが乱れる中でも、都心まで行って来ましたよ。

 オウム真理教や佐村河内守らを題材にしたドキュメンタリーを撮った監督として知られる森達也作品「i新聞記者」です。「あなたの質問には応える必要はありません」と啖呵を切った菅官房長官との対立で一躍「時の人」となった東京新聞社会部の望月衣塑子記者の取材活動を追ったドキュメンタリーです。

 面白かった。実に面白かった、大いに笑い(特に森友の籠池夫妻との会見場面)、大いに泣いた、と先程観たばかりなので、新鮮な感覚を記録として残しておきます。恐らく、2017年辺りから2019年までに起きた同時進行的事件ー例えば、沖縄・辺野古米軍基地移転問題、森友・加計学園問題、それらに伴う安倍政権に対する忖度や前川喜平元文科省事務次官の「あったことをなかったことにするわけにはいかない」発言、表現の自由問題-などが出てきて、50年後、100年後に、未来の人はこの映画をどう観るのかなあ、と思ってしまいました。

 我々現代人にとっては、つい昨日に起きた事案で、同時代で生きてきたので、皮膚感覚で分かりますが、未来の人は、この2010年代の終わりに起きた歴史になったドタバタ劇(失礼)をどう解釈するのかなあ、とフト思ってしまったわけです。

 それにしても、主人公の望月記者は、自らのプライバシーを全開にオープンしていますねえ(屋上屋を架していますが)。フォトジェニックで、ファッションセンスも良く、まだ若いのでスクリーンのアップに耐えられますが、幼い娘さんが出てきたり、森監督の趣向なのか、旦那さんが作ったお弁当などレディなのにやたらとモノを食べる場面が多く出てきたりして、何というか身内感覚的気分になると、少々恥ずかしくなりました。

 身内感覚的恥ずかしさというのは、私自身も望月記者と同じマスコミ業界で長年禄を食んできたため、新聞記者の世界というか、記者クラブや取材現場というものを熟知しているからです。(それが、単なる錯覚にすぎないのかもしれませんが…。)私は古い人間なので、今の若い記者たちが会見場で、取材相手の顔も見ないで、一言一句漏らさぬよう、やたらとパソコンに向かって文字を打っている姿を見るにつけ、「随分時代が違うんだなあ」と感じでいます(日本だけでなくどこの国も一緒)。が、それ以上に、特に日本は、国家権力に対する忖度やら同調圧力とやらで、表現の自由が失われ、ジャーナリズムが官報と同じ御用新聞に成り下がって、危機的状況になってしまったことは、自戒も込めてヒシヒシと感じました。

 望月記者自身が「恥ずかしい」などとは思っていないのでしょうが、あそこまでプライバシーを全開してまで、森監督の要望に応えたのは、ジャーナリズムの危機を救うためには自ら犠牲になっても構わない、と開き直ったようにもみえます(本人は否定するかもしれませんが)

 恐ろしかったのは、望月記者が記者会見で菅官房長官に食ってかかって、いや、失礼、真偽を糾して、有名になってから、東京新聞編集局に匿名の男が電話で「殺してやる」と脅迫する場面(音声と字幕だけですが)が出てきたことでした。望月記者を日本を貶める北朝鮮(人)と決めつけているのです。こういった言辞は、今でも、ネットに書き込まれて、残っているようですが、私は読みません。

 これを見て、望月記者の勇気には本当に感心しました。もう、恥ずかしいなどと言ってはられないでしょう。でも、非常に気丈な人で、脅迫に怯まず、森監督は、望月記者が泣く場面を撮りたかったそうですが、見事に失敗したそうです。

 「一匹狼」で「方向音痴」の望月記者の行動力には脱帽しますね。パソコンと資料いっぱい詰め込んだガラガラの付いたボストンバッグを引きずって沖縄でもどこでも行きます。宮古島の住民の話をじっくり聞いて、建設中の自衛隊駐屯地の中にある「保管庫」が、実は「弾薬庫」だったという鮮やかなスクープは見事でした。

 繰り返しになりますが、私も長年、望月記者と同じ業界に棲んできたので、映画の中で誰か知っている人は出てこないかな、と探しました。東京新聞ですから、当然、X編集局次長が出てきてもいいはずなのに、映っていませんでしたね(笑)。そしたら、日本外国特派員協会での記者会見場で、望月記者の隣りに、皆さん御存知の朝日新聞OBのAさんがちゃっかり映っていたのです。嬉しかったですね。

 森監督はジャーナリズムの世界の人ではないので、付け加えておきますと、同じ新聞社でも政治部と社会部との内部対立や足の引っ張り合いなどエゲツない部分が昔から多かったということです。特に、マスコミ業界人は嫉妬心の塊ですから、記者が有名になると叩こうとします。「敵は本能寺にあり」てなとこでしょうか。

 

沖縄県民投票と「適量ですか 高齢者の薬」

 昨日、2月25日(月)の「安倍首相の一日」、いわゆる「首相動静」欄に以下の記述がありました。

 午後7時36分、東京・銀座の鉄板焼き店「銀座うかい亭」着。時事通信社の大室真生社長、渡辺祐司常務取締役らと会食。同9時45分、同所発。同10時2分、私邸着。

 おー、あの「うかい亭」ですかあ。一昨年11月にトランプ米大統領が来日した際、首相官邸のお導きで会食した高級鉄板焼き料理店です。安倍首相もよほど気に入ったとみえますが、またのご利用です。場所は東京・銀座の時事通信本社ビルの1階でした(笑)。

 それにしても、マスコミのトップの人間が、時の最高権力者と会食するのは如何なもんでしょうかねえ。一体、どんなお話をするんでしょうか。前日に結果が出た沖縄県民投票については「スルー」したのでしょうか。一定の距離を置いて、批判するということがジャーナリズムの原点のような気がしますが、そんな安っぽい「書生論」をほざいている人間は野暮かもしれません。

 そもそも、時事通信社の前身の戦前の同盟通信社は、まさに、政府系の「国策通信社」でした。

 国策通信社で、何か問題でも?

 中国の新華社通信や人民日報などは、まさに政府メディアでしょう。それを言ったら、北朝鮮やロシア、それにトルコもサウジアラビアなどでは、政府系マスコミばかりで、反政府メディアがあれば、つぶされたり拘束されたりするでしょう。

 先進国と言われるフランスのAFP通信社(日本では時事通信社が独占契約)も、自動車のルノーと同じように国有企業で、何パーセントか知りませんが、政府が出資しています。ということは、AFPはフランス政府の悪口は書けないと、普通の人なら思い込んでいます。

 日本が好きなアメリカはどうでしょう。CNNの記者さんはトランプさんと仲違いしていますが、FOXニュースを始め、概ね、政府寄りの報道でしょう。特に、デジタルメディア時代ともなると、インターネットそのものが、米軍によって開発されたものですから、GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)などは、国防省(ペンタゴン)や米航空宇宙局(NASA)、米国家安全保障局(NSA)など政府系機関と歩調を合わせていることは想像に難くありません。

 それが何か問題でも?

 いや、別に問題はないでしょうが、毎日、「官報」のような無味乾燥な高級官僚の作文の丸写しを読まされていては、食傷気味になりませんか?

 それとも、庶民は為政者の命令に唯々諾々と黙って従っていれば良いのでしょうか。

 24日に投開票が行われた沖縄の普天間飛行場の辺野古移設を問う県民投票。移設反対が県民の7割を超えましたが、翌25日の首都・東京都内で発行された各新聞最終版の一面トップの違いが面白かったですね。

《朝日新聞》…「辺野古『反対』72%」

《毎日新聞》…「辺野古反対7割超」

《読売新聞》…「適量ですか 高齢者の薬」

《日経新聞》 …「見えざる資産 成長の源に」

《産経新聞》…「海自観艦式 韓国招待せず」

《東京新聞》…「辺野古反対 7割超」

 日経は、経済専門紙だから分かります。産経も韓国問題でいかにも産経らしい。朝日、毎日、東京が、県民投票の結果を大きな活字で大々的に報道しているのに対して、天下の読売新聞は 「適量ですか 高齢者の薬」。

 何ですか、これ?いやあ、面目躍如ですね。庶民の生活をここまで心配してくださるメディアは、世界広しといえども他にありません。

 一番、読み応えがありました。