昨晩は、東京・銀座の歌舞伎座が見える高層ビルの13階ラウンジで、ニューヨークから一時帰国中のA氏と初めてお会いし、肝胆相照らす仲となりました。
A氏は、元大手銀行員でしたが、本店からの帰国命令に従わずにそのまま米国に住み着いてしまったテレビドラマに出てきそうな剛腕やり手大物(go-getter, or hotshot)です。現在、投資会社の社長といったところでしょうか。
2年ほど前に、会社の同僚を通じて知り合いましたが、何せお住まいは米国なので、メールで何回か、いや何十回かやり取りするだけの仲でした。いつか、お会いしましょうと約束していました。
彼は、何冊か金融関係の本を日本経済新聞社などから出版しており、私も少し読みましたが、当然、素人には理解することが限られているとはいえ、多くの点で勉強になり、私淑している感じでした。
その彼と昨晩、初めてface-to-faceでお会いしましたが、メールで予告されて覚悟はしてましたが、ぶっ飛びましたね(笑)。ラストエンペラーのような丸い薄いサングラスをかけ、日大アメフト部出身のような、見上げるような大きなガタイで、半ズボンを履き、靴は目がふらふらするようなショッキング・レッドのスニーカー。とても日本人には見えず、無国籍の大陸浪人のような風情で、帰国滞在先のホテルやレストランでは必ず英語で声を掛けられるとか。
はっきり言って強面のインテリやくざですね。ドスの効いた声で睨まれたら竦みますねえ(笑)。
帰国する度に、日本の金融庁の役人とサシで渡り合うそうですから、「存在が意識を規定する」ということでしょうか。
ここまで書いたら怒られますねえ。ま、彼はこんなブログを読まないから大丈夫でしょう(笑)。
私もジャーナリストの端くれですから、色々と下調べして彼とのインタビューに臨みました。とはいえ、表向きは単なるお酒の入った懇親会ですから、メモを取ることなく、言葉のラリーを楽しんだ感じでした。
彼は日本人なのに何故、米国に半永住しているのか、理由は伺うと、金融業界は日本は米国やシンガポールなどと比べると40年も遅れていることと、情報の質が天と地の開きがあるほど雲泥の差があるというのです。
日本の最高峰の経済紙である日経には、読むに値する情報がほとんど載っていないというのです。やはり、ウォールストリートジャーナル、もしくはフィナンシャルタイムズの足元にも及ばないと断言するのです。
彼は、趣味で自動車とゴルフが好きらしいのですが、日本のテレビのゴルフやカーレースの中継の解説にしても、ピンと外れが多く、おふざけみたいなもんだといいます。米国の中継の解説の的確さ、そして、的を射た発言とは段違いだというのです。
「どうして日本のレベルはここまで低いんでしょうかねえ」と彼は頭を抱えるのです。
彼は投資家ですから、ウォーレン・バフェットやFAANG(Facebook, Amazon, Apple, Netflix, Google)などの話もしてくれました。私は未読ですが、「バフェット・コード」という本も出しているそうです。あ、こう書くと彼の名前がバレてしまいますね(笑)。
昨晩、彼と話をしていて、一番面白かったのは、先進国の中で日本だけが、会社が銀行から借金した場合、経営者が最後まで責任を取らされるという話でした。「だから、日本の社長は最後に自殺したりするでしょ?でも、アメリカなんかは、倒産したら、チャラでそれで終わりなのです。経営者はもう一度立ち直って、新しく再建できるのです。もちろん、当事者の銀行はもうお金を貸してくれないかもしれませんが、他の銀行は貸してくれるかもしれません」
この話を聞いて、初めて、トランプ米大統領の逸話として、かつて、彼がアトランティックシティーでカジノ経営に失敗したり、何度も何度も会社を倒産させても復活できたのは、米国ではそういう商法だったので、再建することができたことが理解できました。倒産したら、前の会社の借金はもう返さなくていいのですから。
「そういった点、日本の場合、銀行に有利できているのです。いつまでも、借金を追うことができるからです。でも、日本は商法を変えて、もっとビジネスをしやすく、復活しやすくしなければならないのです。だから、今、私は金融庁と闘っているのです」と打ち明けてくれました。
なるほど、そういうことでしたか。
彼は目下、日本で会社を設立しようと奮闘中です。応援したい気持ちでいっぱいになりました。強面とか、インテリやくざ、とか書きましたが、根は、心優しい人でした。