熊井啓監督 

 池田町

 

ある統計によりますと、2005年に映画館に足を運んだ人を各国の年平均で比較するとー。

1、アメリカ人  4・7回

2、オーストラリア人 4回

3、フランス人 3回

4、スペイン人 2.9回

5、イギリス人 2.7回

そして、我らが日本人は、わずか1.3回だというのです。

世界一の「映画王国」のインドの数字が入っていないので、正確な比較にはならないのですが、それにしても、日本の1.3回は唖然とするほど低い数字です。ほとんどの人は、態々映画館に足を運ばないのでしょう。自宅でテレビかビデオ等を見ているのでしょうが…。私は約24回という感じです。

 

昨日、調布先生から電話があり、銀座のシネパトスで「熊井啓監督特集をやっているから、行ったらいいよ」とご教授戴きました。特に、26日までやっている「日本列島」(1965年、宇野重吉、芦川いづみ、二谷英明主演)は、何やら昭和の一大疑獄事件を追うサスペンスらしく、若き頃の大滝秀治も精悍な役で出演していて面白い、ということでした。シネパトスは、会社の近くですから、早速、タイムテーブルを確認に行ったのですが、すべて、ナイトショー(20時40分~)で、日程的に行くことができそうにありません。残念。家の近くにレンタルビデオ屋さんもない民度の低い所に住んでいるので、フラストレーションがたまりそうです。

 

でも、「追悼 映画監督 熊井啓」特集は、8月25日まで続いています。「社会派」の代表監督として名を馳せただけに、「謀殺・下山事件」「日本の黒い夏 冤罪」「海と毒薬」など、続々と公開されます。(残念ながらデビュー作の「帝銀事件 死刑囚」は終わってしまいました)もちろん、山崎朋子さん原作の「サンダカン八番娼館 望郷」(1974年、栗原小巻、田中絹代主演)も7月5日から8日まで上映されます。他に井上靖原作「天平の甍」、武田泰淳原作「ひかりごけ」なども…。ご興味のある方は、私の分も是非。

 

熊井啓監督は、今年5月23日にクモ膜下出血のため急逝されました(享年76歳)。5月18日早朝に自宅敷地内で倒れているところを発見されて、病院に搬送されたらしいのです。その倒れる一週間ぐらい前の頃、大学教授の井川さん(仮名)が、桜上水の自宅付近を歩いていると、向こうから品のいい感じの老人が近づいて来て「この辺りに、『木々』という名前の料亭がありますか?」と聞かれたそうです。もちろん、井川さんは知っていますが、道が複雑で分かりにくいので、結局、一緒に歩いて案内したそうです。

 

『木々』に着くと、その老人は、「私は映画監督の熊井啓と申します。わざわざご案内して戴き。有難うございました。もし、お時間がありましたら、ご一緒しませんか」と誘われたそうです。井川さんは、そこは高級懐石料理を出す店であることを知っていましたし、あまりにも突然の申し出だったので丁重にお断りしました。しかし、それから1週間ほどして監督の訃報に接し、「ああ、あの時、ご一緒して、色んな話を伺っておけばよかったなあ」と後悔したそうです。

 

この話を聞いて、私も大変参考になりました。「歳月人を待たず」です。