先日見たNHKの「映像の世紀 バタフライエフェクト」の「独ソ戦 地獄の戦場」は、かなり衝撃的な内容で、頭にこびりついてなかなか離れてくれません。(5月31日に再放送があるようですから、お見逃しの方はどうぞ)
1941年6月から45年5月にかけて、ヒトラー率いるナチス・ドイツとスターリン率いる共産主義国ソ連との全面戦争で、両軍(民間人も含めて)合わせて3000万人以上の死者を出したという人類史上最悪・最大の戦争です。最初に仕掛けたのはドイツでしたが、復讐が復讐を呼ぶ殺戮・殲滅合戦となり、反転攻勢したソ連が、逆にドイツ軍の捕虜を虐殺したりして、想像もつかない程の犠牲者を生みました。(嗚呼、だからソ連軍はシベリア抑留した日本人捕虜を奴隷以下に扱っても平気だったんですね。日露戦争の復讐です!)
「この世の地獄だった」という生存者の証言もありましたが、まさに、地獄はあの世にあるのではなく、この世にあると思わせました。
諸説ありますが、第二次世界大戦では、ソ連(1939年の総人口1億8879万人)は、民間人も含めて2700万人が戦病死したと言われ、ドイツ(同6930万人)では800万人以上が犠牲となったと推計されています。日本(同約7138万人)は310万人の戦病死者が推計され、日本全国津々浦々、何処の家庭でも犠牲者を出していたので、あまりにも多過ぎると思っていましたが、独ソ戦を含め、戦場になった欧州での犠牲者の数は、日本人が想像も出来ないぐらい桁違いです。
スターリンは、19世紀のナポレオン戦争の「祖国戦争」になぞらえて、特に独ソ戦を「大祖国戦争」と銘打ちました。勝利を収めたソ連ですが、その陰には2700万人の莫大な死者の犠牲があったということになります。そのソ連の血を引くロシアのプーチン大統領がウクライナ戦争を仕掛けたということは、この大祖国戦争の延長で思考しなければなりません。つまり、今のウクライナ戦争は、独ソ戦争に抜きにしては語れないということです。プーチンも演説の中で、ウクライナのことを「ネオナチ」と呼んだり、大祖国戦争のことを持ち出したりしていますから。
ということは、ロシア人は2700万人だろうが、考えられないほどの大量の犠牲者を出しても戦争を完遂する民族であるということです。イデオロギーだろうが、領土的野心だろうが、正義だろうが、名目は何でも良いのです。「戦争犯罪」何のその。勝てば官軍、勝てば責任なんか問われない免罪符です。そして、この分だと、戦争は短期間で終わらず、あと数年は続きそうだということです。
プーチン大統領をウクライナ侵略に駆り立てた独ソ戦から引き出せる教訓は、やはり、全人類がもう一度、学び直すべきです。その点、この番組は最適です。