ローマ
最近出版された「満足死」は、大宅ノンフィクション賞作家の奥野修司氏が、地域医療というより過疎地医療に半生を捧げている高知県佐賀町(現黒潮町)の拳ノ川診療所の勤務医、疋田善平(ひきた・よしひら)氏の日々の活動を追った記録です。
疋田医師は「寝たきりゼロ」を目指して、「死ぬまで働け」と提唱しています。人間には運動するための細胞と、生命を維持するための細胞があり、生命維持の細胞は、その個体が死ぬまで、コンスタントに働くが、運動細胞は、使われないと衰退してしまうそうです。「寝たきり」というのは、その生命維持細胞が元気なのに、運動細胞が衰退した状態で、寝たきりにならないためには、運動細胞を活性化し、生命細胞を衰退させればいい。全細胞が同じように衰弱し、器官が止まれば、苦しむことがなく、自然死を迎えることができるというのです。
死ぬまで健康を保ち、自然死したければ、「死ぬまで働け」というわけです。
面白いデータがあります。(京都大カール・ベッカー教授)
イギリス、ドイツ、日本の3カ国で「両親の面倒を最後まで看ますか」と質問したところ、
英国人は50%、独人は62%、日本人は75%の人が「ハイ」と答えました。
ところが、実際に親が寝込んだときにそれを実行したかどうか調査すると、
英国人は40%、独人は50%、日本人はわずか20%しか実行していなかったというのです。
日本人は口先だけなんですね。現実と期待値の乖離がみられます。
疋田医師は難問をぶつけます。
「子供が面倒を看てくれなかったら、行政に頼りますか?最近は、福祉予算が削られ、簡単に老人ホームにもはいれないんですよ」
それでは、どうしたらいいのか。寝たきり(生活死)になってから、臨終(生物死)を迎えるまでの間隔が短ければ短いほどいい。その理想が一週間だというのです。
疋田医師は言います。
「大体、嫁さんをはじめ、家族がお世話をしてくれるのは1ヶ月です。バカ息子でも1ヶ月はしてくれます。1ヶ月過ぎると、早く死んで欲しいとは言わなくても、粗末に扱われると思った方がいい。これが、二カ月、三カ月となると、現実問題、世話する側で困る人が出てくる。そうすると、生活死から生物死まで、最長1ヶ月以内でないと具合悪い。もちろんベストは一週間以内です。それでは1ヶ月以内にコロッと死ぬにはどうしたらいいか。それが私の言う『死ぬまで働け』という意味です」
どうです、少しは参考になりましたか?
詳細は同書を読んでみてください。