?「花筐」は★★★

東京新聞の二社面の片隅に「編集日誌」がありまして、先日、(石)さんというよく知らない方の署名が入ったそのコラムの中で、病を押して最新映画の公開にこぎ着けた大林宣彦監督のことについて触れられていました。(その日の東京新聞の一面片に大林監督の最新作「花筐」についてのインタビュー記事が載っておりました)

あ、一つ、大訂正です(笑)。実は、この(石)さんという方はよく存じ上げておりました。長年の友人です。失礼致しました。(しっかり訂正しないと怒る人がいるもんで=笑)

その(石)さんに刺激されて、わざわざ東京は有楽町のスバル座まで決死の覚悟と遠出しまして、この「花筐」を観に行って来ました。

◇昭和初期の唐津が舞台の映画

あ、また、二つ目の訂正です。この作品は、原作が私も大ファンの檀一雄先生。時代は昭和初期で、舞台は小生の母方の出身地で、今年亡くなった、大好きだった幸夫叔父さんも長年暮らしていた佐賀県唐津市ですから、見逃がすわけにはいきませんでした。

物語は、昭和12年の支那事変辺りから始まって、16年12月8日の真珠湾攻撃を経て、戦後に主人公の榊山俊彦(窪塚俊介)が青春時代を回想する場面で終わります。

日本は戦争にまっしぐらに進む軍国主義の暗い世相の中、その当時なりに若者はピクニックに行ったり、お酒を呑んだり、タバコを吸ったり、淡い恋愛をしたり、青春を謳歌したりします。

設定がかなり庶民とはかけ離れた裕福な豪邸が舞台ですから、映画の中では昭和初期に一世風靡したアール・デコ風の調度品がふんだんに出てきます。

唐津には私も何度か行っておりますので、懐かしい「虹の松原」も映画では頻繁に出てきて、唐津くんちの山車も全て揃って登場してました。(いわゆる町おこしのための、映画ロケのタイアップ製作作品)

長浜城跡(後北条氏の海城)Copyright par Osamoutakata (映画とは関係ありましぇん)

◇思い切って作品批判

で、肝心の映画ですが、巨匠大林監督の作品ですから、プロの映画記者や評論家は誰も批判しないので(日経の映画評は、何と五つ星でした!)、私は敢えて挑戦しますが、まず第一に長過ぎる!映画館では予告編も見せられて拘束されますから、それを入れて実に3時間の長丁場。私なんか、途中で我慢できず、御不浄に行ってしまいました。編集で30分はカットできたと思います。

も一つ、カメラワークが異様で感動の連鎖が途中で切れてしまいました。映画は、カット割りの継ぎ接ぎだらけだということは、昔、小生が学生の頃、アルバイトで映画のエキストラに出たことがあるので、よく分かっておりますが、あの撮影方法が目についてしまい、要するに自然の流れになっていないので興醒めしてしまうのです。

そして、これは巨匠大林監督の手法なのかもしれませんが、映画というより映像芸術として表現しがちで、美学としてはいいかもしれませんが、あまり行き過ぎると、物語世界にのめりこんでいけない嫌いがありました。

最後に何と言っても、40歳過ぎた中年というか、おじさん俳優が、10代の旧制高校というか予備門の学生役をやるのは、あまりにも無理があり過ぎる!キャスティングのミスでしょう。

以上、少し言い掛かりめいたことばかり述べてしまいました(苦笑)。

◇矢作穂香に大注目

ヒロイン江馬美那役の矢作穂香は、初めて観る女優さんでしたが、異様に可愛らしく、世界に誇れる女優さんですね。子役でデビューし芸歴は長いらしく、あの研音に所属し、まだ20歳なので将来が楽しみです。

映画の会話の中では、中原中也、山中貞雄の「人情紙風船」、満洲、名護屋城など私が関心がある人や場所が登場するので嬉しい限りでした。

今は便利な世の中で、出演者の顔を見て、「あの人誰だっけなあ」と思って、見終わって調べてみると直ぐ出てくるので有り難い。私の場合、「もどかしかった」人は、美那の友達あきな役と酒場の老娼婦役の俳優でした。前者は、全く映画の出演作は見たことがありませんが、映画館で本編が始まる前の予告編の紹介者としてちょくちょく登場していた「東宝シンデレラ」特別賞の山崎紘菜でした。後者は、何と池畑慎之介、つまりピーターだったんですね。長い台詞をスラスラとこなして出演場面も多かったので、誰方(どなた)かと思ってしまいました。