ちょっとローカルな話ではありますが、進学校として知られる埼玉県立浦和高校(若田光一、タケカワユキヒデ、愛川欣也、半藤一利さんらの出身校)に「古河競歩大会」というのがあります。今年は11月5日(日)に開催され、65回目という伝統があります。
古河は「ふるかわ」ではなく、「こが」と読みます。茨城県古河市です。室町時代から戦国時代にかけて、関東足利氏の拠点となる古河公方(こがくぼう)が置かれ、江戸時代は、大老土井利勝らを輩出した譜代の古河藩がありました。今でも静かな城下町として大変な趣があり、私も、渡辺崋山が肖像画(国宝)を描いたりして有名な古河藩家老の鷹見泉石(大塩平八郎の乱を平定した)の足跡を辿りたくなって、古河市を訪れたことがありました。
浦高の「古河競歩大会」は、埼玉県の浦和からこの茨城県古河市まで競歩する伝統的大会ですが、私はJR宇都宮線で行って、その距離感覚が分かっているので、ぎょっとしました。何しろ、浦和~古河間は50.2キロもあるのです。高校生といえども、あり得ない!速足でも約7時間かかるそうです。
たまたま、会社に浦髙出身の同僚がおりましたので、彼に聞いてみました。「古河競歩大会? ええ、ええ、ありました、ありました」と言うではありませんか。彼にとっては、もう40年以上昔の話なので、毎年高校3年間、参加したか、2年生の時1回だけ参加したか、そして、50キロを完走したかどうかも、忘れてしまったそうですが、それほど苛酷ではなかったそうです。
彼によりますと、競歩は全速力で走ってもよし、途中でダラダラと友達としゃべりながら歩いてもよし、だそうです。ただし、時間制限があり、一定の時間になると、茨城県古河市の手前の埼玉県久喜市の栗橋でストップを掛けられ、完走できなかった生徒はここからバスで戻るシステムになっているそうです。彼は「今も大して変わらないと思いますよ」と振り返っていました。
まさに文武両道ですね。浦高は、県大会レベルですが、野球もサッカーも進学校にしてはまあまあの成績を残しています。
ところで、平和な江戸時代になって、庶民の間で「お伊勢参り」など旅行ブームになったそうです。細かいことは省きますが、当時は、駕籠なんか乗れば高くつきますから、専ら歩きです。しかも、1日40キロも歩くと聞いて、驚いてしまいました。昔ですから草鞋です。あんな藁の靴で良く長距離を歩き切ったものだと感心しました。
そうか、私も歩こう。先日読んだアンデシュ・ハンセン著「運動脳」(サンマーク出版)によると、歩くだけでも、精神的抑圧がかなり緩和されるといったことが書かれていました。最近の私は、どうも、夏目漱石の「それから」の主人公代助が悩まされていた「アンニュイ」(仏語で、倦怠感、物憂いなどの意味)の束縛から離れらず困っていたので、ちょうど良いかもしれません。
歩いて、アンニュイを吹き飛ばそう。