初めての米子で面白い床屋のご主人と会う=山陰・山陽の旅

 「城好き」を自称しておきながら、日本一のお城「国宝 姫路城」にまだ行ったことはありません。「ライフワークは、寺社仏閣巡り」と宣言しておきながら、八百万の神が集まる出雲大社にも行ったことありませんでした。

 それじゃあ、駄目でしょう。ということで、この二つがセットになっていた団体旅行ツアーがあることを10月某日の新聞広告で見つけて、一人参加も同じ料金ということもあって、申し込んでみました。

その旅行の出発が昨日12月1日のことでした。東京から岡山までの「新幹線グリーン車」というのが、このツアーの「売り」でしたが、豪華さはそこまで。残念!初日は移動だけで、6時間半も掛かり、どういうわけか宿泊先が、何も関係がない鳥取県の米子市の駅近くのシティホテルで、大浴場がなし。

しかも、その日は、夕食もつかないということで、グリーン車代の影響がここまで波及するとは、申し込んだ参加者の中で想像出来る者は一人もありませんでした。

早速、ホテルを出て散策したところ、米子城跡があることが分かりました。看板では駅前辺りから800メートル。でも、雨が少し降ってました。少し走ったりして、15分ぐらいで、城址公園の入口みたいな所に着きましたが、辺りは真っ暗。これじゃ無理なので、明日、早朝にでも行くか、ということで、再び、駅に戻りました。

そしたら、床屋のネオンサインが目に入り、頭をカットしてもらうついでに、色々と米子市の情報を「床屋談義」で、取材しちまおうという魂胆で入ってみました。

米子市の特産物は何か?観光名所は何か?地元の有名人は誰か?ー色々とご主人に聞いてみましたが、あまりよく知らない、とどうも話が噛み合わない。おかしいな、と思ったら、このご主人はもともと松江市出身で、どうも、電車で40分ぐらいかけて米子にまで来ているみたいでした。

米子市は鳥取県とはいえ、西端で島根県に近く、県は違えども、松江市文化圏に入ることが初めて分かった次第。

 ご主人に、地元の人がお勧めの居酒屋を紹介してもらおうか、と聞いたところ、この床屋から歩いて1分ほどの「太平記」という店を教えてもらいました。

あとは、こっちが質問もしていないのに、ご主人自身が旅行した北海道の話になり、函館でのナオンは酷かった、札幌のススキノのサロンの横の店では隠れてやっていたとか、その筋の話のオンパレードになり、とにかく、興に乗って、変態的なレラシオンとか、ホワイトは凄いとか、一日に三回はしなきゃ、みたいな話を滔々とまくし立てて止まらないのです。

あまりにも、そういう数奇ものの話が多いので、「ご主人は、さっき自分で43歳って言ってましたけど、ご結婚されてないんですか?」と、つい、プライバシーを侵害してしまいました。

そしたら、「ええ、自分は独身ですよ。結婚するつもりないし、別に寂しくないですよ。老後のお金を貯めているんです。趣味としてクラシック音楽を聴いたり、サスペンスが好きなので本を読んだり、映画を観たりしてますから」と言うではありませんか。

 「あら、独身でしたか。そしたら、あっちの方はまだまだ頑張りたくてしょうがないでしょうね」と、私はもう達観してますから、彼を励ましておきました。

ご主人の独演会が終わった頃、本職も無事に済み、カットと軽いシャンプーで、料金はわずか1700円でした。安い!

この後、ご主人に教えられた通り、「太平記」で一人で呑んでいたら、何と、その床屋のご主人が店に来るんじゃありませんか。吃驚です。彼も飲みに来たと思ったら、詳細は分かりませんが、どうやら、一日の売り上げ金をこの店に銀行代わりに毎日預かってもらっているようでした。真相は分かりませんが。

 なーんだ。「安くて、美味しい、手頃な店」と聞かされていましたが、何かグルみたいですね(笑)。もっとも、添乗員さんが配ったお勧めの店のナンバーワンの店がこの店でしたから、グルというのは言い過ぎだったでしょう。

地元、いや、恐らく隣りの島根県の地酒のヤマタノオロチは、結構、口に合って美味しかったです。この日は予約客でいっぱいで、何人かの人が断られていました。私が入店できたのもラッキーでした。また、米子市に来るようなことがあれば、またこの店に来ますよ。そう言えば、鳥取県は、故片岡みい子さんの親友の米澤画伯の出身地でした。鳥取県を悪く言ったわけじゃありませんからね(笑)。

今日は、何か酒場放浪記みたいな話になってしまいました。次回は、ちゃんとした出雲大社や姫路城のお話になります。