「憲法の涙」を読んで

井上達夫「リベラルのことは嫌いでも、リベラリズムは嫌いにならないでください」の第2弾「憲法の涙」(毎日新聞出版、2016年3月20日初版)を先日から読んでおり、もうすぐ読み終わります。

同書では、井上東大大学院教授は、一気に持論を展開し、改憲派も護憲派も両方とも「欺瞞」だとバッサリ切り捨てます。

◇憲法9条削除を主張

何しろ、井上教授の持論は、憲法9条を改正するのでも、修正するのでも、護持するのでもなく、「削除」ですからね。しかも、自衛隊を「戦力」として認めるならば、「徴兵制」を復活させよ、といいますからね。最初は眩暈がするほど圧倒されましたが、よく聞けば、というより、読み進めていけば、全く突拍子でもなく、理がないこともない気がしてきます。

なぜ、憲法9条を削除するのかといいますと、井上教授は、「日本の安全保障の基本戦略を憲法に書き込むべきではなく、通常の民主的な立法過程で絶えず討議され、決定・試行され、批判的に再検討され続けるべきだ」という考えの持ち主だからです。

つまり、「今の憲法9条では、安全保障の基本を『非武装中立』と凍結してしまっている。それが容易に変えられないから、右も左も解釈改憲で対応し、結果として9条を死文化させている」と主張するのです。

井上氏によると、憲法9条第2項で「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」と明記されているのに、現実は、自衛隊という世界第5位の「戦力」を保持している。これはいかなる「解釈」をしても、自衛隊は違憲となり、護憲派のように「見て見ぬふりをする」ような解釈は、欺瞞だと切り捨てます。

また、井上教授が、「もし戦力を持つなら」ば、その条件として「徴兵制導入」を提言していることについては、国民が無責任な好戦感情にあおられないための歯止め策であり、同時に「良心的兵役拒否権」を認める、といいます。(徴兵は、権力者や国会議員の息子も貧乏人も差別なく公平に行い、拒否すれば、国民の責務を果たさず、逃れることになり、代わりに消防士など危険な業務が義務付けられることも付加しておりました)

あと詳細については、本書を手に取って読んでみて、皆さんも考えてみてください。

私自身は、井上教授の意見、と言ったら怒られるかもしれないので、学説について全面的に賛成することはありませんが、一読の価値はありました。

ただ、日本の国民の1人1人が井上教授が思っているほど、思慮深く、理念や定見や信念を持った人ばかりではなく、丁か半かのどちらでもなく、そしてどちらでもある、極めて曖昧でどっちつかずで、考え方も1年ではなく1日で何度も何度もコロコロと変わってしまうというのが人間の性(さが)じゃないのか、と私のような日和見で、中途半端なぬるま湯人間の平和主義者なんかは、そう思ってしまうんですがね。

近鉄を日本の超一流会社にして「中興の祖」呼ばれた佐伯勇(1903~89年)は、こんな名言を残しているそうです。

学者は現実を知らない。

経営者は情報を知らない。

政治家は両方知ってても喋らない。

驕れるものは久しからず

茅の輪くぐり=大宮・氷川神社

先日は、大切なスマホを忘れ、昨日は眼鏡を忘れ、今日は腕時計を忘れ…。

私も世間に誇れる年齢になってきました。このまま行けば、綾小路きみまろのように、何を忘れたか、忘れることでしょう(笑)。
合併記念公園

日曜日の都議選は、あそこまではっきりと結果が出るとは想像もつきませんでした。呆気ないですね。権力は根元から腐敗する見本を見せてもらいました。

祇園精舎の鐘の声も聴こえてきました。

奢れる平家も久しからず、です。

たまたま「受け皿」があったので、浮動票の多い都会の皆さんは、自民党を避けた結果、自民党の歴史的惨敗に繋がったのでしょう。

自衛隊を私物化して応援を頼んだ稲田さんも、加計学園からの献金疑惑を否定した下村さんも、お金を払って新聞を買って悪口を書かれた二階さんも踏んだり蹴ったりです。

しかし、今回の千両役者は、何と言っても、森友学園の籠池さんでした。あれ程、安倍さん、並びに貴婦人に対して尊崇の念を抱き、園児らに万歳三唱までさせていたのに、国策捜査を仕掛けられてからは、すっかり「反・安倍」の急先鋒の闘志に転向されておりました。

安倍さんが都議選候補の応援のため、東京・秋葉原で演説している会場にわざわざ大阪から駆けつけ、貴婦人から頂いたと思しき100万円の札束を振り回して、「安倍辞めろ!」コールを周囲の若者たちと一緒に合唱して、警察らしき公安関係者に捕まっておりました。

籠池のおばはんも「安倍に携帯電話も何もかも盗られてしもうた…ほれ、ほれ」と吉本新喜劇も驚く名演技で、YouTubeカメラマンに向かって訴えておりました。

そう、こういう吉本新喜劇より面白い番組は、天下の公共放送NHKでは、官憲の手が入っているのか、放送してくれないんですよね。

「右向け右」の会長がいなくなったと思ったら、新会長は、目立たぬように生かさぬように、遥かに政権べったりで右傾化しております。

あっ?

でも、こうして「隠れた真実」を市井の民が「報道」してくれるので、健全な民主主義が保たれるのかもしれません。

それにしても、籠池さんは、千両役者。絵になる人だなあ~。