蓮池薫さん

北朝鮮拉致被害者の蓮池薫さんが、初めて翻訳書を出しました。本当にすごいですね。
豊臣秀吉の朝鮮出兵で、秀吉を苦しめた李舜臣将軍の生涯を描いた金薫氏の歴史小説「孤将」(新潮社)がそれですが、聞けば聞くほど、蓮池さんの努力には頭が下がります。日中は、大学や柏崎市役所で仕事があったため、何と、朝の3時に起き出して、翻訳の時間に当てていたそうです。

出版社の編集者は、最初、粗原稿を読んだ時、蓮池さんとは知らず、日本語の文章があまりにも清冽だったので、その「実力」で依頼したそうです。翻訳力とは外国語力のように思えますが、実は日本語力が一番肝心なのでしょう。拉致された24年間で、蓮池さんは、明らかにしてはいませんが、情報収集活動として、相当数の日本語の新聞や雑誌を読み込み、記事を翻訳していたのではないのでしょうか。

それでも、蓮池さんとは私と世代が同じなので、お会いしたことはないのに近しいものを感じています。それは、20歳の若さで亡くなった柏崎市出身の友人がいたせいかもしれません。ですから、柏崎には何度も行ったことがあります。その友人の法事で、十回以上は行っています。蓮池さんが拉致されたと言われる柏崎の海岸で泳いだこともあります。もちろん、その頃、拉致の「ら」の字も知りませんでしたが…。おっと、海岸では泳げませんね。泳いだのは海でした。沢山のランプのような電灯を装備したイカ釣り船が、何隻も停泊していたのを覚えています。

以前、蓮池さんは「レナード・スキナード」のファンだった、と聞いた時、「渋いなあ」と感心しました。恐らく今では知る人は少ないでしょうが、「スウイート・ホーム・アラバマ」のヒット曲で知られるアメリカの70年代のロックバンドです。メンバーの2人が飛行機事故で亡くなっています。この曲を聴いていた蓮池さんは、20歳の中央大学法学部の学生でした。弁護士を目指していました。同大学に復学した蓮池さんは、今、司法試験の勉強に励んでいるそうです。

本当に素晴らしい。すらばしい!