軽井沢考


今、どういうわけか軽井沢におります。

堀辰雄の世界です。

もっとも「風立ちぬ」も「聖家族」も最近読まれなくなったので、そう書いても何が何だか分からない人がいるかもしれません。

先日、日本共産党の元議長の宮本顕治さんが亡くなった際、ラジオの番組で、ある評論家が「実は、宮本さんは文芸評論家からスタートし、ある雑誌の懸賞論文で第一席を受賞したのです。その時、次点だったのが、有名な文芸評論家の小林秀雄さんだったのです」と話したら、女性のキャスターが「へー、そうだったのですかあー」とひどく驚いていました。

私の世代にとっては自明の理であることを、いかにも得意気に話していた年少の評論家が微笑ましく感じたのですが、さらに若いキャスターが、本当に知らなかったようだったで、驚きというよりは失望を感じてしまいました。

教養というのは、受け継がれるものではなく、いともたやすく断絶するものなのだと実感した次第です。