人類滅亡後も生き残るのは蠅蠅、蚊蚊か、ゴキブリか?

 杉田敏先生の「現代ビジネス英語」(2023年夏号)のLesson 5「地球温暖化を生き抜く鳥や昆虫」には異様にもおっとろしい地球の現実が浮き彫りにされています。

 近年、鳥類が減少し、北米にいる繁殖鳥は、1970年と比べて30億羽も少なくなったといいます。また、地球上の生物の3分の2を占めていた昆虫も、40%の種が劇的に減少し、もしこの傾向が続けば、100年後には昆虫が絶滅するかもしれないと危惧する科学者もいるといいます。

 ホンマかいな、です。

 昆虫のことを虫けらなんて、馬鹿にしてはいけません。昆虫は植物の蜜を吸う代わりに、花粉を運ぶを役割を担い、時には鳥や爬虫類や哺乳類の餌となり、死骸は土壌となり、美味しい野菜や果物などの栄養物になるのです。ということは、昆虫が絶滅すれば、動物、植物全ての生物の絶滅危機につながるということなのです。(鳥や昆虫の減少の原因は、気候変動による生息地の激減や農薬、肥料の使用などが挙げられています。)

 私も街中で、スズメを見かけなくなったことは気が付いていました。もう3、4年、いや、5、6年前ぐらいからでしょうか。ゴミ集積場や電信柱などに当たり前のように見かけていたのに、あまり見なくなってしまったのです。駅構内での燕の巣作りも最近、ほとんど見かけなくなりました。まるで、レイチェル・カーソンの「沈黙の春」のようです。

 元気なのは人間が嫌いなカラスぐらいでしょうか。奴らは雑食で何でも平気で食い散らしますからね。そして、昆虫の部類に入るかどうか、人間には天敵の蚊や蠅やゴキブリなどは粘り強く生き残っています。地球上では、誕生から46億年間で、ビッグファイブと呼ばれる5度の生物の絶滅があったそうです。特に、2億5000万年前のペルム紀には95%の生物が絶滅したと言われています。現在は、6度目の生物絶滅期と主張する科学者もおります。

 皆さんの大嫌いなゴキちゃんなんかは、雑食性で腐肉も食べるomnivorous scavenger昆虫で、恐竜が絶滅しても尚も生き長らえたといいますから、その生命力とやら、人類とは比べものにならないくらい絶大なのでしょう。

 最近、書評で読んだのですが、興味深い本が出版されました。ティモシー・ワインガード著、大津祥子訳「蚊が歴史をつくった」(青土社)という本です。(7月1日付毎日新聞、評者は鹿島茂氏)「世界史で暗躍する人類最大の敵」という副題があるように、これまで世界の歴史で、蚊、というより蚊を媒介にして発症するマラリアなどの伝染病が、如何に人類の歴史に影響を与えてきたのかという事象が描かれています。

 同書によると、世界史で最初に蚊が登場したのは、紀元前5世紀のペルシャ戦争で、ペルシャ兵の40%超がマラリアなどで亡くなったといいます。「蚊が歴史をつくった」ことを最も雄弁に語る例は、15世紀のコロンブスによる新大陸発見でした。コロンブス到着まで蚊媒介の伝染病を知らなったアメリカの先住民たちは「記録的な速さ」で亡くなっていったといいます。また、太平洋戦争で玉砕したガタルカナル島での戦いは、ガタルカナル島を「餓島」と略されたりして、日本軍の将兵の死亡の多くは戦闘ではなく、餓死だと言われてきましたが、マラリアによる死亡、もしくは戦闘意欲喪失→自害?もかなり多かったようです。

 溜息が出ますが、人類が滅亡しても、蚊や蠅やゴキブリはしぶとく生き残ることでしょうね。あとは、ペストを媒介するネズミも。。。