イエメン難民が済州島に押し寄せ、韓国で難民法見直し署名が殺到

はるか遠く中東のイエメンでは、2015年から、またまた内戦が続いています。1990年に南北イエメンが統一された後の94年にも内戦がありましたから、色んな複雑な要素が絡んでいて一言では説明できません。

今回、3年以上続いている内戦は、イスラム教スンニ派が主導するサウジアラビア中心のアラブ連合軍が支える暫定政権と、イランの後押しを受けるイスラム教シーア派の武装組織フーシ派が対立する構図で、要するに、イランとサウジの「代理戦争」とみられているという報道がありましたが、これが一番分かりやすいです。

小生のようなフランスかぶれにとって、イエメンという土地は、仏象徴派詩人アルチュール・ランボーが20歳で筆を折った後、貿易商というより武器商人として拠点にしたイエメンのアデンという港町が非常に印象深くインプットされております。(アデン発のランボーの手紙が多く残っています)

いずれにせよ、その現代のイエメンでは、日本ではほとんど全くといっていいくらい報道されていませんが、内戦という名の残酷な殺戮が毎日のように行われ、多くの難民が国外に逃亡しています。

はるか遠くの中東の話なので、日本や東アジアは関係ないと思っている人が多いでしょうが、今、そのイエメン難民が韓国の済州島に押し寄せて、問題になっているというのです。

このことについては、小学館系のネットメディアNEWSポストセブンに9月4日付で寄稿したノンフィクション作家前川仁之氏の現地取材記事「済州島にイエメン難民続々、反対派韓国人『ニセ難民』と批判」に詳しいので、ご興味のある方は、リンクを貼らせて頂きましたので、クリックしてお読みください。

何で、遠くアラビア半島の南端に位置するイエメンの難民が、はるばる済州島にまでやってきたのかー? 前川氏はこう書いております。

済州島では2002年以来、観光促進のため諸外国からの旅行者に対し、30日間までノービザで滞在できる制度をとっている。そこへ持ってきて昨年12月、マレーシアのクアラルンプールと済州島をつなぐLCCの直行便が就航したのである。内戦状態のイエメンから、近隣諸国を経てマレーシアまで逃げて来ていた人々はそこでの滞在期限に追われ、今度は直行便に乗って済州島までやって来る。こんな具合にして今年の1月から5月までに560名以上のイエメン人が来島し、難民申請を出したのだった。」

東南アジアのインドネシアは世界最大のイスラム国であり、隣国のマレーシアは、イスラム教を国教と定めています。つまり、アフリカもアラビア半島も東南アジアも、イスラム・ネットワークでつながっているわけです。

そして、格安航空で済州島に逃れてきたイエメン難民に対して、韓国国内では「難民法の見直しを求める市民のネット署名が、1カ月で70万人を超えた」というのがこの記事の趣旨です。

現在、日本でも移民・難民問題がクローズアップされる一方、「観光公害」まで叫ばれておりますから、この韓国のケースは、日本の近未来であり、幕末の「鎖国か」「開国か」に匹敵するぐらいの決断を迫られているのかもしれません。