スペイン料理で歴史と民族を考察=残虐なスペイン人のイメージは植え付けられたものか?

銀座 スペイン・バル「Virgo」

 たまにですが、家人から買い物を頼まれます。それが、イタリアの名門Venchiヴェンキ(銀座4丁目)の高級チョコレートだったり、銀座ウエスト(7丁目)のモンブランやチーズケーキだったりしますが、大抵は、築地で鰹節を買って来い、とか、お茶を買って来いとか命じられます。

 本日はお茶でした。築地や銀座などに店舗を構えている「うおがし銘茶」の「魚がし煎茶」(250グラム、1620円)というお茶です。もともと、最初は25年ほど前に調布先生から頂いて、初めてこのお茶のことを知ったのですが、家人もすっかり気に入ってしまい、専らこのお茶を飲むようになったのです。そして、なくなりかけると、家人は

 「そろそろ切れるわよ」とギロっと睨んでお終い。後は分かるだろう?といった具合で、口をつぐむのです。

 ヤクザの親分が「面白くねえなあ」と上を見上げた時、子分たちはそれは何を意味するのか瞬時に判断しなければなりません。〇✕組の親分をイテコマスのか、△〇組にチャカを持ってカチコミをかけるのかー。子分になったような気分ですよ(笑)。

「Virgo」ランチ 前菜

 私がよく行くのは、調布先生から教えてもらった銀座5丁目にある店舗です。この店の近くでは、ちょくちょく「竹の庵」という和食店でランチを取るのですが、本日はスペイン料理の「Virgo」という地下の店にしました。ここのランチは税込1000円ですから、釈正道老師にはお薦めですね(笑)。銀座には「エスペロ」という有名なスペイン料理店がありますが、こちらの方は価格がちょっと高めで、ちょっと行き違いがあったりしたもんですからもう行かないつもりです。

 「Virgo」は、確か、2度目ぐらいの訪店でしたが、味は「エスペロ」と比べても遜色ありません。何と言っても、ドリンクバーがあって、ジュースもウーロン茶もコーヒー等も飲み放題。まさにエコノミーです。

 いつの間にか、渓流斎ブログは、世界各国の料理を食べて、国際問題と歴史を哲学するブログになってしまいましたから、本日は少しだけスペインのお話。この話は、このブログで既に書いたことなんですが、私はかつて、スペインがあまり好きではありませんでした。何と言っても、フランシスコ・ピサロ、エルナン・コルテスといった軍人・征服者が、中南米のインカ、アステカ帝国を滅ぼして植民地化したからです。何という冷酷で残虐。血も涙もない、ならず者のスペイン人です。

「Virgo」ランチ 主菜はホウレンソウと鮭のグラタン

 と、ずっと思っていたら、4年程前にスペイン旅行したら、少し考え方が変わりました。ピサロ、コルテスの出身地であるエストレマドゥーラ地方をバスで通った時、その光景を見て唖然としたのです。赤茶けたごつごつとした丘と谷の大地で、とても作物なんか取れそうもありません。1960年~70年代にジュリアーノ・ジェンマらが主演したマカロニ・ウエスタンが世界的にも大ヒットしましたが、これらの映画が撮影されたのはこのエストレマドゥーラ地方だったとガイドさんから聞きました。まさに、西部劇の荒野です。

 だから、彼らは地元では食えないので、海外に逃避行するしかなかった、ということが少し分かりました。

 何と言っても、「スペイン人=悪者」説は、かつてスペインの敵だった大英帝国のアングロサクソン人によるネガティブキャンペーンの影響が強いことも分かりました。英国人は、北米大陸でインディアン=ネイティブアメリカンを惨殺したというのに、スペイン人の方が残酷だというイメージを世界中に吹き込みました。何でも「勝てば官軍」なのかもしれません。英国は1588年、アルマダの海戦で、スペインの無敵艦隊を破ってからは、世界の海の覇権を巡って、今度はオランダと争います。結局、1674年の第3次英蘭戦争で勝利を収めた英国が世界の覇者となりますが、英国のオランダ嫌いは言葉として残っています。例えば、Let’s go Dutch,「オランダ方式で行こう」というのは「割り勘にしよう」という意味で、オランダ人が如何にケチだというニュアンスを含めたと言われてます。もう一つ、有名なDutch何とかという言葉がありますが、よゐこの皆さんのために省略しておきます(笑)。

◇スペイン風邪は、本当はアメリカ風邪

 ちょうど100年前に、世界で5000万人の生命を奪って人類を恐怖に陥れた「スペイン風邪」は、本来は、第一次世界大戦に参戦した米国の兵士がヨーロッパに持ち込んで、感染が拡大したものだと言われています。当時、中立国だったスペインが正直にインフルエンザ感染の蔓延を報告したため、「スペイン風邪」と呼ばれてしまったというのです。

 もしかしたら、スペイン人はアングロサクソンと比べて、それほど小賢しくも計算高くもない、のんびりしたおっさんタイプなのかもしれません。スペイン人と結婚している京都の加藤力之輔画伯の御子息で、自身もマドリードを拠点に画家として活躍している加藤大輔氏が言ったことが忘れません。「スペイン人って結構おおらかなんですよ。英国人やフランス人は植民地にした現地人とは決して混血しませんが、スペイン人は現地に溶け込むんですよ」。確かにスペインが植民地にした南米ではペルーにしろ、アルゼンチンにしろ、混血が多いですね。なるほどです。

 何と言っても、私自身、スペイン料理といえば、パエリアぐらいしか知らなかったのですが、スペイン旅行をして、肉料理だけでなく魚介や海鮮料理も豊富で、日本人の口に合うことを知り、すっかりファンになってしまいました。ピンチョスと呼ばれる小さく切ったパンの上に魚介やハムや野菜などを載せて食べるおつまみのような前菜食は、種類が豊富で、色んな種類のものをどんどん食べたくなってしまいます。

あ、話が長くなるのでこの辺で(笑)。