「一人の力で日経平均を動かせる男の投資哲学」は勉強になりました

私はアナログ世代なので、新聞の書評欄で話題になっている本を探します。そんな中、CIS(しす・個人投資家)著「一人の力で日経平均を動かせる男の投資哲学」(KADOKAWA・2018年12月21日初版発行・1620円)を見つけて買い求めましたが、あまりにもの面白さに1日で読了してしまいました。

何しろ、帯のタイトルが「平成が生んだ最強の相場師 230億円稼いだ勝つ思考。」ですからねえ。に、に、に、230億円も稼いだんですかぁ・・・!?発売1カ月で12万部だとか。

勿論、何か秘策があるのか知りたくて、この本を買ったことを認めますが(笑)、失礼ながら相場師と言われる人間の生態と生活信条と哲学、その生い立ちと、「何が彼をそうさせたのか」といった「人間観察」をしたかったことが一番大きな理由です。

 著者も書いておりましたが、投資は本を読んでも成功するとは限らないし、はっきり言って役立たないという持論は確かにその通りですね。私もこの本を読んで、即座に自分にはできないし、無理だし、そこまで興味がないことを判断できました。

著者は「経済理論は役立たない」し、新聞や雑誌に載った情報も、既に、掲載された時点で、「利益獲得」は終了しているので、何ら足しにならないというのです。彼が利用するのは、専らツイッターの「口コミ」という、まだ海のものとも山のものとも分からない最新情報なんだそうです。デイトレーダーは、一瞬の判断が勝負の分かれ目になりますからね。1979年生まれの著者は、20歳の大学生の時に、300万円を元手に株のデイトレードを始め、初めは連戦負け越しが続き、1000万円が100万円余になる惨敗でしたが、ある事がきっかけで連戦連勝に近い勝ち方ができるようになったといいます。また、「2ちゃんねる」がなければ、続けることができなかったといいます。

彼の投資法は極めてシンプルです。「上がっている株を買う。下がっている株は買わない。買った株が下がったら売る」。それだけです。え?そんなんでうまくいくの?と思う人がほとんどでしょうが、現に著者は、約18年間で230億円もの資産を株取引等で膨らませたのですから、間違いないでしょう。

だけど、いくらシンプルで間違いないとはいえ、誰にでもできるわけではありません。株投資が「ゼロサムゲーム」だということは本人も身に染みて分かっており、数台のモニターから目が離せないプレッシャーと、いつ財産を失うか分からない恐怖と毎日闘っています。

私には無理だと感じた一番の要因は、自分は彼のようなギャンブラーではないからです。彼は、小学校の頃は駄菓子の当たりクジを見極める天才。中学生の頃から、パチンコで出る台を見極めて、打ち手を集めて大儲けする元締め屋。麻雀もプロ並みの稼ぎで、競馬もポーカーも何でもござれ、です。株式投資も「確率のゲーム」だと割り切って楽しんでます。だから、お金目当ては二の次のところがあります。私は、アナログ世代なので、デジタル・ネイティブ世代の彼のようにゲームはやらないし、パチンコと煙草は30歳で卒業し、麻雀もルールさえ知りませんからね。

これだけの資産を作れば、もう一生何もしなくても食べていけますし、贅沢三昧で、色々と散財するのが人間ですが、彼は、キャバクラに行くでもなし、クルーザーや自家用飛行機を持つわけでもなし。自宅は、月額180万円の超高級マンションとはいえ、賃貸。着る服もユニクロ。松屋の株主優待券で、牛すき定食を食べるといった具合です。根っからのゲーム好きなんでしょう。

でも、これだけの資産があると金銭感覚が常人とは違うんでしょうね。ライブドアショックで5億円の損失した時なども、冷静に敗因を分析するぐらいです。(他にも大損失あり)

やはり、どこか小国の国家予算ぐらいに当たる230億円もありますから、「日経平均を動かせる男」という看板は嘘偽りはないと思います。そして、この本にはお金目当てで彼に群がる多くの人間も登場したりして、確かに人生哲学も学べます。

270億円という数字があまりにも巨額で庶民としては、全く雲をつかむような話でしたが、つい先日、千葉市の投資コンサルティング会社 「テキシアジャパンホールディングス」 がねずみ講のような手口で、460億円を超える巨額の詐欺事件を起こしたことが発覚しました。中心人物の「KING」と呼ばれた銅子正人容疑者(41)と、この本の著者と同じ次元で語るのは大変失礼ですが、彼には1000億円も巨額の隠し財産があるらしく、270億円で驚いていたら世間知らずになってしまうことが分かりました(苦笑)。

 この本の著者はちゃんと税金も払っているようですし、「タックスヘイブン」のシンガポールに移住するつもりもないとも語っていますから、誠実な善良市民だと思われます。誤解を避けるため、念のため。