その不動明王は小高い河岸段丘の緩やかな崖の麓にありました。
角川春樹氏が30年以上前に夢のお告げで訪れ、「これから出版だけでは駄目だ。映画界に進出せよ」との啓示を受けた所だそうです。
音更町の人里離れた十勝川の河岸に、とても立派とは思えない草庵ともいうべき粗末な庵の中に小さな不動明王は鎮座していました。その草庵の横に湧き清水が流れ、地元の人がひっきりなしにお水取りにやってきました。
私も浄財箱に幾ばくかの小銭を入れて、手を合わせて、何かの啓示を待ちました。
あるがままに…。
まだ春遠き十勝の広大な原野に葉風の音がそう囁きました。