東京・銀座並木通りの旧朝日新聞社跡に建つ高級ホテル
夏目漱石や二葉亭四迷、石川啄木らも働いた東京・銀座の(昔は滝山町といっていた)旧朝日新聞社跡に何か新しいビルが建ったというので、見に行ってきました。
そしたら吃驚。異国の超高級ブランの衣服と時計とホテルが横並びで、思わず通り過ぎてしまいました。とても中に入る勇気がありませんでした(笑)。以前はプロ野球のセ・リーグとパ・リーグの事務所があったりして入りやすかったのですが、とても足を踏み入れる気さえ起きませんでした。
家主は、朝日新聞社です。若者の新聞離れやら少子高齢化、日本人の教養劣化と記者の質の低下(笑)、そして今は流行のフェイクニュースとやらで、新聞の売れ行きがガタ落ちで、歴史のある大手新聞社のドル箱が、今や、紙から不動産に移っている様を如実に反映しておりました。
Italie
今年2018年の抱負のナンバーワンは、以前にも書きました通り、「スマホ中毒」からの解毒(デトックス)です。(笑)
ということで、電車内でスマホでこの《渓流斎日乗》を執筆することを控えることに致しました。更新もalmost毎日ということになります。
昔はメールなんかありませんでしたから、実に牧歌的な時代でした。メールも当初は、パソコン中心で、1週間に2~3回チェックする程度で、それから返信していても許されましたから、本当にいい時代でした。
今やスマホの時代ですから、いつもメールなんかを気にしていなければなりません。
今年は、スマホからの解脱を目標に掲げましたから、メール・チェック等もほどほどにすることにしましたので、返信が遅れてもお許しくだされ。
Italie
お正月休みにテレビで黒澤明監督の「わが青春に悔なし」を初めて観ました。黒澤作品全30作のうち9割は観ておりますが、この作品はどういうわけか、見逃しておりました。
何しろ、私の専門分野(笑)のゾルゲ事件と京大・滝川事件をモチーフに作られた(久板栄二郎脚本)というので、観るのが楽しみでした。
確かに京都大学・八木原教授(大河内伝次郎)の娘幸枝(原節子)をめぐる野毛(藤田進)と糸川(河野秋武)の三角関係のような青春物語でもありますが、究極的には昭和初期の軍国主義の中での言論弾圧とそれに反発する教授や学生、その中での保身や裏切り行為なども描かれています。
大学を卒業して10年、恋のライバル二人の運命は真っ二つに分かれ、糸川はエリート検事になり、野毛は、東京・銀座にある東洋政経研究所の所長として支那問題の権威として雑誌などに長い論文を寄稿したりしています。これが、ゾルゲ事件の尾崎秀実を思わせ、結局「国際諜報事件」の首魁として逮捕されるのです。
何といってもこの映画が凄いのは、敗戦間もない昭和21年の公開作品だということです。まだ占領下ですし、戦前タブーだった京大事件とゾルゲ事件を題材にした映画がよくぞ公開されたものです。
◇京大事件とは
京大事件とは、昭和8年(1933年)鳩山一郎文相が、京都帝国大学法学部の滝川幸辰教授の著書「刑法読本」や講演内容が赤化思想であるとして罷免した事件です。
法学部教授全員が辞表を提出しますが、結局、滝川教授のほか佐々木惣一(戦後、立命館大学総長)末川博(同),恒藤恭(戦後、大阪市立大学長)ら7教授が免官になりました。
この中で、私は法学関係に疎いので恒藤恭教授の名前を近しく感じてしまいます。彼は、旧制一高時代、芥川龍之介の親友で、確か、成績は恒藤が首席、芥川が2席という大秀才だったと記憶しております。
◇石田幹之助と東洋文庫
「京都学派」に詳しい京都にお住まいの京洛先生にお伺いしたら、「芥川の一高時代の友人の中に有名な菊池寛や久米正雄のほかに、石田幹之助という東洋学者がいて、私も学生時代に習ったことがあるんですよ」と仰るではありませんか。これには吃驚。京洛先生は一体、何時代の人なんでしょうか?(笑)
「石田先生は授業中によく、芥川や恒藤らの思い出話をしてましたよ。石田先生は、三菱の岩崎財閥からの支援と要請で今の東洋文庫の基礎をつくった人です。小説の世界と学者の世界は違うんです。芥川の『杜子春』なんかも石田先生が提供した資料を使ったんですよ。何?石田幹之助も東洋文庫も知らない?」
「石田教授の師は、『邪馬台国北九州説』を主張した東京帝大の白鳥蔵吉です。『邪馬台国畿内説』を唱えた京都帝大の内藤湖南と大論争になりました。えっ?それも知らない?嗚呼…嗚呼…」