丹羽宇一郎著「死ぬほど読書」を読む

 丹羽宇一郎著「死ぬほど読書」(幻冬舎新書・2017・7・30初版)を読みました。著者は、大手商社伊藤忠の社長、会長を務め、民間ながら中国大使まで務めた有名財界人ですが、意地の悪い私は、実際にお会いしたことがないので、何故彼がこれほど人望が厚い方なのか分かりませんでした。

 でも、この本を読んで少しだけ分かったような気がしました。「文は人となり」かもしれません。まずは、財界人とはいえ、文章がうまい。読ませる力を持っています。文章家と言ってもいいでしょう。それは、実家が本屋さんだったため、子どもの頃から、身近に本があったため、学校の図書館の本をあらかた読んでしまうほどの読書家だったことで裏付けられているかもしれません。

バルセロナ

 仕事で必要な経済書だけでなく、直接仕事に役立たない日本や世界の文学全集まで読破しているのですから、教養だけでなく、人間観察の面で役立ったのではないかと思われます。

 彼が何故これほどまで人望があるのかという一つに、いつまでも庶民目線で、社長になっても黒塗りハイヤーを断って、電車通勤を続けていたことなどが周囲で共感されたのではないでしょうか。

 著者は別に読書を強制しているわけではありません。最初に「何で本なんか読まなくて問題視されなければいけないのか」という大学生による新聞の投書に対して、「別に読まなくても構いません。でも、こんな人生の楽しみをみすみす逃すのはもったいない」と謙虚に意見を述べています。

 この本で、失礼ながら一番面白かった箇所は、丹羽氏の米国駐在時代の失敗談でした。大豆を担当していた若き丹羽氏は、穀物相場の読みを外して、500万ドル(当時のレートで約15億円)の大損失を出してしまったという話です。大失敗の原因は、ニューヨークタイムズの一面に載っていた「今年は深刻な干ばつになる」という予測記事を鵜呑みにしてしまったからでした。干ばつなら大豆の収穫が減り、相場は高騰する。それなら、今のうちにどんどん買えということで、買い付けていたら、日照り続きだったのが、慈雨に恵まれ、今度は一転して農務省が「今年は大豊作になるでしょう」と発表。おかげで、大豆相場は暴落して、大損害を蒙ってしまったというのです。

 この大失敗で、丹羽氏は教訓を得ます。どんなに権威のある新聞でもその情報が正しいとは限らない。何よりも新聞を通した二次情報ではなく、できる限り一次情報を得るべきだということでした。そこで、民間の天気予報会社と契約したり、自分でレンタカーを借りて穀物地帯を視察したりしたそうです。おかげで、翌年、またNYタイムズが「小麦地帯が干ばつなる」という予測記事が出たときに、「今度は騙されないぞ」と意気込んで、カンザス州に向かい、干ばつになる気配がないことをつかんで、買わずに損失を免れたというのです。著者は「情報のクオリティを見抜け」と言います。

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 私はこのブログで何度も告白している通り、これまで社会科学の勉強を疎かにして、古典的名著と言われる有名な経済書などはほとんど読んでいませんでした。この本を読んで、今さらながら、アダム・スミス「国富論」、マックス・ウェーバー「 プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」 、マルクス「資本論」、高橋亀吉「昭和金融恐慌史」などは必読書だという認識を新たにしました。

 いい刺激になり、この本を読んでよかったと思いました。

市川裕著「ユダヤ人とユダヤ教」を読んで

 長年、「ユダヤ問題」については関心を持っていましたが、不勉強でなかなかその核心については、よく分かっておりませんでした。

 ユダヤ民族は、ローマ帝国や新バビロニア王国による支配と捕囚によって、世界中に離散してからは差別と迫害と虐殺(19世紀末のロシアにおけるポグロム=破壊とナチスによるホロコーストなど)の歴史が続き、第2次大戦後になって今度はシオニズムによってパレスチナに国家を建設して、核兵器を装備していることが公然の秘密の軍事大国となり、かつてそこに居た人々が難民になるという歴史的事実もあります。

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それにしても、ユダヤ人は神に選ばれた「選民」として、作家、思想家、哲学者、物理学者、音楽家、演奏家、俳優、金融資本家…と何と多くの優秀な「人類」を輩出しているのかという疑問が長年あり、ますます関心が深まっていました。いわゆる「ユダヤの陰謀」めいた本も読みましたが、眉唾ものもあり、どこか本質をついていないと感じておりました。

 そこで、出版されたばかりの市川裕著「ユダヤ人とユダヤ教」(岩波新書・2019年1月22日初版)を購入して読んでみました。

新書なので、入門書かと思っていたら、著者は東京大学の定年をあと2年後に控えた「ユダヤ学」のオーソリティーでした。最初の歴史的アプローチこそ、ついて行けたのですが、中盤からのユダヤの信仰や思想・哲学になると、初めて聞く専門用語ばかりで、読み進むのに難渋してしまいました。

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まず最初に、一番驚いたのは、「ユダヤ教は『宗教』ではない。人々の精神と生活、そして人生を根本から支える神の教えに従った生き方だ」といった著者の記述です。えっ? ユダヤ教は宗教じゃなかったの?という素朴な疑問です。読み進めていくと、私がユダヤ教の司祭か牧師に当たるものと誤解していた「ラビ」とは、聖職者ではなく、神の教えに関して専門知識を持つ律法学者だというのです。

つまり、ユダヤ教とは、厳密な意味で宗教ではなく、戒律を重んじ、それを厳格に実践する精神と生活様式だったのです。6日目の安息日は、必ず休み、普段はシナゴーグでの礼拝や律法の朗読とタルムード(聖典)の学習など毎日決まりきった行動を厳格に実行しなければならないのです。とても骨の折れる信仰実践です。

 戒律といえば、私自身は、「モーセの十戒」ぐらいしか知りませんでしたが、とにかく、色んな種類の独自の律法があるのです。その代表的なものが、「モーセの五書」(旧約聖書の「創世記」「出エジプト記」「レビ記」「民数記」「申命記」)とも呼ばれる文字によって伝えられた「成文トーラー」と、西暦200年頃に編纂された口伝律法集「ミシュナ」(ヘブライ語で「繰り返し語られた法規範」全6巻63篇)と呼ばれる「口伝トーラー」です。

口伝トーラーは、 ヘブライ語で「道」「歩み」を意味するユダヤ啓示法の法規範である「ハラハー」と、法規範以外の神学や倫理、人物伝や聖書註解を扱う「アガダー」に分類されます。ラビたちは、ヘブライ語を民族の言葉として選び、神の言葉の学習を中心に据えます。ラビ・ユダヤ教に従うユダヤ人は、主なる神である唯一神を信じ、神の教えに従った行動をすることが求められます。具体的に何をすべきかに関しては、ラビたちの教えに従うことが義務付けられます。従って、ナザレのイエスをメシアと信じて従うのは異端だといいます(65ページ)。

バルセロナ・グエル邸バルセロナ・グエル邸

 このほか、神秘主義のカバラー思想などもありますが、難しい話はこの辺にして、この本で、勉強になったことは、イスラム教が支配する中世になって、ユダヤ人の9割が、当時欧州などより先進国だったイスラム世界に住み、法学をはじめ、哲学、科学、医学、言語学、数学、天文学などを吸収し、旺盛な商業活動も行っていたということです。それが、1492年のいわゆるレコンキスタで、イスラム世界が欧州から駆逐されると、ユダヤ人も追放、放浪が始まったということです。中世ヘブライ語で、スペインを「スファラド」、その出身者を「スファラディ」と呼び、スペインで長くイスラム文化の影響を受けたスファラディ系ユダヤ人の社会では、哲学的合理主義と中庸の徳が推奨され、生き延びることを優先して、キリスト教への改宗も行われたといいます。(スペインからオランダに移住したスピノザ一族など)

 もう一つ、ライン地方を中心とする中欧を「アシュケナズ」、その出身者を「アシュケナジ」と呼び、アシュケナジ系ユダヤ人社会では、敬虔さを重視する宗教思想が尊ばれ、迫害に対して、果敢に殉教する道が選ばれたといいます。

 ユダヤ人というのは、ハラハーに基づき、「ユダヤ人の母親から生まれた子、もしくはユダヤ教への改宗者」と定義されていますが、内実は、複雑で、エチオピア系ユダヤ人などいろんな民族が含まれ、色んな考えの人がいて、イスラエルを国家と認めないユダヤ人や、厳格な原理主義のユダヤ教に反対するユダヤ人さえもいるというので、聊か驚きました。


 ヴィルナ(現在のヴィリニュス)が「リトアニアのエルサレム」と呼ばれた街で、18世紀には正統派ユダヤ教の拠点だったことも初めて知りました。 とにかく、ユダヤ民族は教育と学習に熱心で「書物の民」と呼ばれ、成人の結婚が奨励されることから、歴史に残る多くの優秀な人材を輩出してきたことが分かりました。

 この本の不満を言えば、ユダヤ教の思想・哲学を伝えた偉人は出てきましたが、一般の人でもよく知るユダヤ人として出てくるのは、スピノザとマルクスとハイネ、それに、フロイトとアインシュタインぐらいだったので、もっと多く登場してもよかったのではないかと思いました。そして、何故、あそこまでユダヤ人だけが差別され、迫害されてきたのか、ご存知だと思われるので、もう少し詳しく説明されてもよかったのではないかと思いました。でも、大変勉強になりました。

北野天満宮の梅が咲き始めました

 京都にお住まいの京洛先生から、うれしい「風物詩」を送ってくださいました。

…大阪の梅田にまで遠出し、念願のデジタルカメラを奮発して買ってしまいました。

今日の午後、その新しいデジカメで近所の「北野天満宮」の梅を撮ってきました。だいぶ紅白梅が咲き始めました。2月の「節分」を終える2月8日(金)から境内の「梅苑」公開は3月半ばまで始まります。「梅が咲いたか、桜はまだかいな」ですね。

 デジカメは高性能カメラで画素数が高く、一度そちらにお送りしたのですが、うまく行きませんでした。そこで、少し画質を落として配信することに致しました(笑)。

Copyright par Kyoraque sensei

 それにしても、一年経つのは早いものです。こういう具合にあっという間に終わるのです。

 「合格祈願」のお札をかけて無事、大学入学した受験生もあっという間に4年経ち、社会人になり、定年を迎え、人生終末を迎えるわけです。

Copyright par Kyoraque sennsei

あっという間に一生ははかなく終わるわけですから、一日一日を大事にしないといけませんね。…

 諸行無常。何か、「平家物語」か「方丈記」を読んでいる感じですね(笑)。

 一日一生

 

Tカードの情報漏えいは犯罪なのでは?

昨日の「最後の確定申告」で書きましたように、それがために、昨年、一生懸命に領収書を集めていたら、名古屋の篠田先生から「領収書乞食だぎゃなあ~」と怒られてしまいました。

 それでも、慎ましい生活をしなければならないので、買い物なんかする度にポイントを貯めていたら、今度は「ポイント乞食だぎゃや~」と、また怒られてしまいました。

そこで、今日書きたいことは、Tカード情報漏えい事件です。報道によると、ポイントカード最大手の「Tカード」を展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブが、裁判所の令状なしに会員の氏名や住所、年齢、電話番号といった個人情報のほか、商品購入履歴(買った時間までも!)やレンタルビデオのタイトルなどを警察に提供していたというのです。その数、6700万人!

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私もTカードを使っているポイント乞食です。怒り心頭ですね、と書いておきます。でも、私の場合は、持っているTカードは、カルチュア・コンビニエンス・クラブ ことレンタルビデオのツタヤで作ったわけではなく、自宅近くのドラッグストアで作ったもので、使用するのは専らその店か珈琲店かコンビニで新聞や週刊誌を買った時ぐらいです。

ツタヤの情報が漏えいしたら、借りたDVDなんか警察当局に丸見えですね。「金縛り何とか」とか、「蝋燭タラタラ」なんてDVDを借りたりしていたら、「こいつは変態じゃあーーー」と警察にマークされますね。

 その点、あたしはツタヤの会員じゃないもんね(笑)。映画は、ちゃんと大型スクリーンで音響設備のしっかりした映画館で観ることにしてますし。

 もちろん、ツタヤに限らず、どこのポイントカード会社も当局に情報提供しているかもしれません。スノーデン氏によると、カード会社だけでなく、グーグルなんかもGメールの内容を米国家安全保障局(NSA)に通報しているらしいですね。戦中、日本は検閲で郵便物を当局が開封していたらしいですが、今の時代はそれどころじゃない、ということでしょう。

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 今回のTカード事件は、明らかに犯罪だと思いますが、まずは被害届が必要でしょうし(警察に利用されているなんて、誰も分からんでしょう)、どういう犯罪となり、ツタヤのへの罰則がどうなるのか、まだよく分かりません。裁判になったら、司法が判断するでしょうけど、政権を忖度するような今の司法も、心もとないですね。やられっぱなしの可能性が高い気がします。

最後の確定申告に行って来ました

 今朝は、出勤前の早朝、最後の確定申告に地元税務署まで行って来ました。「最後の」という理由は、あとで書きます。

そもそも、サラリーマンの分際で何で確定申告をするのかと言いますと、「副収入」があったからでした。具体的に言いますと、翻訳代です。社内でアルバイト感覚でやっておりました。「原稿料」として私の口座に振り込まれておりましたが、3年ほど前に、市役所から連絡がありまして、この原稿料は、なんじゃらほい、ちゃんと確定申告しはりましたまんねんか、このまま、ほっとくと、税務署に通報して、追徴課税されかねますまんねんよ、といった趣旨の柔らかい言葉で脅されました。今は、マイナンバーとかで、収入は筒抜けなんですね。

えーーーー!ですよ。会社の同僚は、「そんなもん、一度も来たことないよ」と言ってましたから、市町村、地方の自治体で対応が違うのでしょうか。

そこで、とにかく、慌てて、その年は確定申告をしました。この時、領収書さえあれば「必要経費」として、あわよくば還付金なるものまであることも分かりました。(当時は、領収書なんか取っておきませんでしたよ)

さて、昨年に引き続き、今年も税務署に行って来たのです。2月から広い会場で大々的にやりますが、12台のパソコンが設置された狭い税務署の方が懇切丁寧に教えてくれるので、自分に合っていると思ったからでした。

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今回が「最後の確定申告」と書いたのは、もう昨夏から「副収入」がなくなったからでした。責任者と称す社内の後輩の男から、「翻訳料タダなら使ってやるが、もう辞めてもらう」と、同僚と一緒に不当解雇されたのでした。この時、私は生まれて初めて、他人に対して殺意を覚えましたね。勿論、覚えただけですよ(笑)。「こいつは許せねえ」と廊下ですれ違っても存在そのものを無視することにしたのです。その方が健康的です。でも、私も精神年齢が幼い。やっと5歳ですかね。(あ、大坂なおみちゃんでした)

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今では、確定申告は、カードリーダーなんかなくても、自宅でパソコンでもスマホでもできるようになりました。でも、「必要経費」として何が認めらて、何が却下されるのか、よく分からないのです。私としては、これで3度目の確定申告でしたが、昨年認められたものでも、今年は却下されたものがありましたからね。

いい加減です。税務署員も毎日、毎日、100人は対応することでしょうから、いちいち、細かいところまで拘っていない。結構、属人的なものかもしれません。

今回、必要経費と認められたのは、パソコンと携帯端末と靴(何と!)の「消耗費」と本や雑誌などの「図書・資料費」の雑費のみでした。しつこく食い下がれば良かったのですが、一生懸命にレシートを貯めた「飲食費」やセミナーなどの「講演費」などは認めてもらえませんでした。しかも、税務署員は、パソコンなど高額品は3年分割で申告しろ、と強制するものですから、「もう来年は申告しない」ということで、やっと一括申告が認められました。

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 そう言えば、ほとんどタクシーに乗らず、電車やバスばかり乗っていたので、領収書がなく、「交通費」も請求できませんでした。

 最も痛かったのは、米国ファンドに投資して莫大な損失があったのですが、見せた書類では、若い税務署員には受け付けてもらえませんでした。

でも、作業をしながら、近くに税務署員(とアルバイトと思しき人)がいると助かりました。結局、パソコン登録に1時間20分も掛かりましたが、無事終えることができました。これで最後か、と思うと感無量です。

どれくらい、追加税を支払うのか、それとも、還付金が出るのかについては、茲では書きません。内緒ですよお(笑)。税務署には早朝に着いたので、私は1番でしたが、フラフラして戻ってきたら、前から4番目になりましたが、帰りに見たら、60人以上もたくさんの人が行列に並んでました。

 それにしても、確定申告ができる副収入が欲しいなあ(爆笑)。

情報商材のSNS、やりません

 先日、巧みな勧誘詐欺の「情報商材」について書きました。

 私自身、SNS(インターネット交流サイト)はやっているようで、やっていません(笑)。フェイスブックもツイッターも、やっていることはやっているのですが、主目的はこの渓流斎ブログを告知するためなので、他の人のサイトはほとんど見ていないのです。送りっ放しです。放送局みたいなもんです(笑)。

 フェイスブックはいつも、衣川先生がコメントを寄せてくださるので、嬉しくてその返信は書いておりますが、利用するのはその程度です。あと、高校の同窓会のサイトがあるので、そちらは利用してます。

ツイッターは、いまだにハッシュタグって何なのかさっぱり分かりません。新聞、通信、出版、テレビ、ラジオなどの内外マスコミを中心に500以上フォローしていますが、フォローしているだけで、ほとんど全くアプローチしません(笑)。

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 それなのに、つい先日、ツイッターを登録している自分のメールに、「○件の通知が届いています」とあり、「確認する」をクリックすると、「億万の人」とかいうハンドルネームの方が、私のブログのツイートを「いいね」と褒めてくださっていたのです。

 知らない人ですが、若くて美人の写真を見て、ついつい舞い上がって、フラフラっと「フォローする」をクリックしてしまいました。するとどうでしょう。

 5分ほどして、「億万の人」から「早速フォローして下さり有難う御座います。つきましては、1日わずか20分の作業で月に200万円も稼ぐことができるお仕事があります。ご興味ありませんか」と来るのです。「なーんだ、情報商材じゃないか」と独り言を言いました。

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勿論、頭に血が上っていたので、「情報商材」の知識がなければ、すぐ騙されていたかもしれません。日々の修行と研鑽は必要ですねえ。

 やっぱし、私、SNSは放送局に徹します(笑)。

これからは大坂なおみちゃんの時代?

昨日のテニスの全豪オープン。恐らく、信じらないほど多くの日本人がテレビの生中継に釘付けになって見たことでしょう。

私もその一人でしたが(笑)、テニスという競技が観戦するだけで、こんなに面白いものだということを久しぶりに思い出しました。

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もう40年近い大昔。これでも私はテニス担当記者でした。当時は、男子がビョルン・ボルグとジョン・マッケンローの時代。他に、プレイメイトと結婚したジミー・コナーズやギレルモ・ビラスなんていう渋い選手もいました。1980年、ボルグとマッケンローのウインブルドンでの4時間に及ぶ死闘は伝説となり、映画化されたほどです。

女子は、ビリー・ジーン・キング、クリス・エバート・ロイド、それにマルチナ・ナブラチロワらが覇を競ってました。これらの名前は今でもスラスラ出てきます。そういえば、私自身はテニスをしないのに、ボルグが着ていたフィラや、マッケンローが着ていたセルジオ・タッキーニなんかのテニス・ウェアを真似して着ていたものでした。(笑)

テニスは仕事で観ていたので、半分冷めて、つまらない試合は半分不貞腐れて(笑)観ていたのですが、昨日の大坂選手の試合は、単なるおっさんとして、応援しながら観てました。

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40年前と比べて、ラケットやボールの性能が飛躍的に進歩したせいなのか、昔と比べてスタイルが変わった気がしました。昔は、選手はもっと前に出てスマッシュやボレーを決めていましたが、最近の試合は、あまりそんな場面はありません。

ベースラインぎりぎりにまでリターンする戦法に変わっていました。それに、サーブでは男子は200キロ、大坂選手も175キロの超スピード・サーブを決めていたのですから、そんな速い球を前進してボレーするなんて出来ないんでしょうね。

そして、「チャレンジ」といって選手が1ゲーム3回まで、主審に抗議して「ビデオ判定」することができることを初めて知りました。今回、大坂選手のリターンを、主審が「アウト」とジャッジした場面が、ビデオ判定で覆り、スッキリしたりしました。審判も間違えるんですね。

そういえば、また大昔の話ですが、マッケンローはよく審判の判定に駄々をこねて、試合を遅延させたりして警告を受け、「悪童」と呼ばれましたが、今のような「ビデオ判定」があれば、もっと冷静にプレーし、案外、マッケンローの主張が正しかったかもしれません。

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気の早いマスコミは、世界ランク1位になった大坂選手について、もう「グランドスラム達成か」「大坂の時代」なぞと騒ぎ立ててますが、勝負の世界は、そんな甘くないでしょう。でも、これからの彼女の試合は気になってしまいました。

恐らく、世界的なスポンサーがこれから陸続と彼女に群がることでしょうね。

▷全豪オープン(1月26日、メルボルン)女子シングルス決勝=第4シード、世界ランク4位大坂なおみ(日清食品)7-6、5-7、6-4 第8シード、同6位ペトラ・クビトバ(チェコ)。大坂は日本人初となる全豪オープン制覇。

森永卓郎著「なぜ日本だけが成長できないのか」続・完

森永卓郎著「なぜ日本だけが成長できないのか」(角川新書)を1月23日に続いて、今回も取り上げます。彼が務めるラジオ番組で、「この本を書いたら殺されるかもしれない、という覚悟で書きました」と話していたからです。

 23日に取り上げた時は、まだ半分くらいの途中でしたが、昨日、全部読み終わりました。その感想ですが、「少し全体的なまとまりがなく、ちょっと推測も大胆という印象」がありましたが、彼には頑張って欲しいので、原稿料代として(笑)、ネットではなく、有楽町の三省堂書店にまで行ってこの本を購入しました。

 書けば長くなってしまうので簡潔に済ませたいのですが、日本の経済低迷というか転落の原因として、森永氏が槍玉に挙げていたのは、日銀と財務省の金融政策と外資のハゲタカ・ファンドでしたね。

 前回も書きましたが、私は経済に関して非常に不勉強でした。いや忌避してました(笑)。そのおかげで、1990年代のバブル崩壊から不良債権問題が起こり、証券会社や損保生命保険や銀行が事実上倒産して再編成されたとき、面倒臭くて、名称が変わっても、その経緯に、とてもついていけませんでした。まして、その経営陣が外資だったことさえ意識してませんでした。

 この本を読むと、どうも金融庁による誤った不良債権処理で、外資のハゲタカに二束三文で買い叩かれ、値が上がると高額で売り抜けるという手口が明らかにされてます。再生機構が不良債権処理で導入した資金は、国民の税金ですからね。こんな酷いことを納税者が知らないでどうする?という話ですよ。

Mt Fhuji par la fenetre de Tokio Copyright par Duc de Matsuoqua

 例えば、日本長期信用銀行は1998年に破綻し、その処理に3兆7035億円の税金が使われましたが、結局、長銀はハゲタカ・ファンドの一つであるリップルウッド社にわずか10億円の「のれん代」で売却。社名変更で新生銀行になりますが、長銀をメインバンクにしていた百貨店のそごう、スーパーのライフ、第一ホテルなどが「瑕疵担保条項」を「活用」されて破綻します。(2007年に、リップルウッド<RHJインターナショナルに社名変更>の大変著名なティモシー・コリンズCEOは、米投資ファンドに売却し経営撤退しましたが、同社がどれくらいの差額利益を得たのか、この本には書かれていませんでした。まあ、簡単に想像つきますが)

 森永氏はかつて、UFJ総研に在籍したことがあるので、思い入れがあるのか、UFJ銀行の赤字による東京三菱銀行への吸収合併の過程について、「竹中平蔵金融担当大臣がターゲットをUFJ銀行に絞ったのだ、と私は見てる」と書いております。UFJ銀行が抱えていた「不良債権」になったスーパーのダイエーやミサワホームなどは、世間から厳しい目を向けられ、結局、倒産に追い込まれます。マンションの大京グループも赤字に追い込まれ、結局、資本支援して子会社化したのはオリックス。宮内義彦会長(当時)が「政商」と批判されたのは、確か、この頃だったと思います。竹中大臣らのインナーサークルにいたのではないかという批判でしたね。

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 キリがないので、この辺でやめておきますが、森永氏は、ハゲタカ・ファンドの最大手としてサーベラスを挙げております。1992年に設立された米国投資ファンドで、ブッシュ(息子)政権時代の財務長官ジョン・スノー氏が会長に務めたことがあります。

 このサーベラス、田中角栄元首相の盟友として名を馳せた小佐野賢治氏が創業した国際興業を「乗っ取った」と著者を書いております。UFJ銀行とりそな銀行が持っていた国際興業グループの貸出債権約5000億円をサーベラスが半値で一括購入し、その後、小佐野氏が苦労して手に入れていた帝国ホテルを三井不動産へ、八重洲富士ホテルを住友不動産へ売却。サーベラスは、他に売るものがなくなると、バスとハイヤー事業を創業家に売り戻したといいます。その売却価格は1400億円。

 また、西武鉄道乗っ取り計画に失敗したサーベラスは、2017年8月までに保有する同社株を全て売却します。その額は公表されませんでしたが、著者は約2400億円と見て、「11年半で1400億円のボロ儲けだった」と明記します。

 さらに、サーベラスは、あおぞら銀行(前身は日本債権信用銀行)への投資でも、わずか1000億円の投資で3000億円以上の資金を回収するという荒技を演じている、と書いております。

 ま、詳細については本書をお読みください。私も再読することにします。

「情報商材」撃退法のサイトに危うく騙される

 「情報商材」という耳慣れぬ言葉を昨日初めて知りました。

 国民生活センターが「簡単に高額収入を得られるという副業や投資の儲け話に注意!-インターネット等で取引される情報商材のトラブルが急増-」というタイトルで注意を呼びかけていたのです。

 そこには「 『1日数分の作業で月に数百万円を稼ぐ』『○万円が○億円になる投資法』といったお金儲けのノウハウと称して、インターネット等で取引される情報である情報商材 に関連する相談が増加しています。2017年度の相談件数は6593件と2013年度に比べ7倍超となり、2018年度も増加ペースが続いています。 」などと書かれています。

 この情報商材の特徴として「インターネットの通信販売等で、副業、投資やギャンブル等で高額収入を得るためのノウハウ等と称して販売されている情報のことです。情報商材はPDF形式などの電子媒体で取引されることが多く、パソコンやスマートフォン等を使ってダウンロードや閲覧をすることができます。事業者によっては、動画やメールマガジン、アプリケーションで配信したり、冊子やDVD等に加工して契約者に送付する場合もあります。

 情報商材そのものだけでなく、情報商材をきっかけに高額なコンサルティングやビジネスセミナー、ソフトウエア等を契約させられるケースもあり、契約書にもアフィリエイト、ビジネスサポート、コンサルティング、業務委託等の名称が用いられていることがあります。」と書かれていました。

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 これだけで、十分理解できたのですが、さらに知りたくて、この情報商材なるものについて、ネットで検索してみました。あるサイトでは、情報商材の具体例として、

★「♪貴方だけに特別に伝授します!1日20分の作業で、月に200万円稼ぐ方法」

★「メモ厳禁!初心者でもノーリスクで月収100万円稼げます」

などいう勧誘文句が送られてくるそうです。

 冷静になれば、そんなうまい話、世の中にあるわけがなく、そんなに楽にお金が稼げるのなら、他人に教える前に詐欺師本人が先にやってます。


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 「有難いことを書いてくれたものだ」と感謝しながら、このサイトを最後まで読み進めていたら、「厳しい審査を受けている、絶対に安心できる情報商材をご紹介します」との御託宣。何じゃこりゃあ~です。ブラックジョークというか、新手の詐欺商法というか、思わずクリックして犯罪者の策略にまんまと乗せられるところでした。そう言えば、このサイトには「アフィリエイトで100万稼ぐ」といった広告ばかり掲載されていました。

 危ない、危ない。ネットの世界は怖いですねえ。

森永卓郎著「なぜ日本だけが成長できないのか」

正直に告白しますと、現役時代はお金に困ったことはありませんでした。毎月、決まって給与が入り、半年に一度、多額の(まさか=笑)ボーナスまで振り込まれましたからね。会社は赤字でも、京洛先生の会社のように給料遅配の憂き目に遭ったこともありませんでした。

でも、今は遠い昔。現役を引退しますと、実入りが大幅に減額し、あ、はあ、さて、は困った、困った。大変なことになってしまった…。そこで、やり繰りするために、死に物狂いで経済と金融を勉強せざるを得なくなりました。

100冊ぐらい関連書を読みましたかねえ…(笑)。その結果は「さっぱり分からん」です。投げやりな、悪い意味ではないのです。これから景気が悪くなるのか、株が暴落するのか、今は多くの人がそう予想していますが、それはあくまでも予想であって、可能性は高くても、当たるかもしれないし、当たらないかも知らない。要するに未来のことなど誰も分からないという当然の結論でした。(誰にも分からないことを、さも分かった顔をして御託宣してお金を稼いでいる人もいますが)

 一方、過去については、解釈の違いこそあれ、覆せないので、安心して学ぶことができ将来に向けて参考にできます。「歴史に学べ」です。

その点、今読んでいる森永卓郎著「なぜ日本だけが成長できないのか」(角川新書、2018・12・10初版)は、特にバブル経済崩壊から日本経済の転落までを扱ったもので、まさに蒙が啓かれたといいますか、目から鱗が落ちたといいますか、大いに勉強になりました。「プラザ合意」も「バブル崩壊」も、同時代人として体験しながら、その当時はほとんど経済の勉強をしていなかったので、何が原因で起きていたのか分かりませんでしたが、「あれは、そういうことだったのか」「今の状況はそういう繋がりがあったのか」と、今さらながら、やっとクイズかパズルが解けたような爽快感があります。

 この本は面白い。興奮するほど面白いです。日本が不景気になり、経済大国から転落した原因として、人口減や労働人口の低下にあるとされてきましたが、著者は「それは違う」と具体的な数字をあげて反論します。(日本の就業者数は1995年6414万人だったのが、2016年は6465万人で、減っているどころか微増している)

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 それでは、日本経済の低迷の原因は何だったのかと言うと、森永氏は、ハゲタカ・ファンドを含む外資の日本進出にあった、と喝破します。同氏は「世界のGDPに占める日本の比率は、1995年に17.5%だったのが、2016年に6.5%と3分の1も落ち込んだ。これは、2001年からの構造改革により、日本の大切な資本が外資に二束三文で食われてしまったからだ。資本が外国のものになれば、当然、儲けは海外に持っていかれてしまう」と説明します。少し引用します。

 …日本の空洞化は、3段階で進んだことが分かる。

 第1段階は、1986年以降に日本企業が海外生産比率を上げていく『海外移転』。

 第2段階は、1990年のバブル崩壊以降、外国資本が日本の企業の株式を買い漁り、外国資本による株式保有の増加。

 第3段階は、日本企業そのものが二束三文で外国資本に叩き売られた不良債権処理。

 この三つはそれぞれ単独の現象のようにみられるかもしれないが、実は、この順序も含めて大きなシナリオで結びついている。グローバル資本とその先棒をかつぐ構造改革派の日本人は、実に30年がかりで日本経済を転落させていったのだ。…

バルセロナ

 うーん、実に明解ですね。この後、筆者は、この「グローバル資本」と「構造改革派の日本人」として、対日貿易赤字に苦しみ、その打開策を図った米国政府とその圧力に負けた日銀と財務省、構造改革を主導した小泉純一郎首相とそのブレーンになった1962年生まれの元日銀行員だった木村剛氏らを槍玉に挙げます。(当時の最大責任者だった竹中平蔵経済財政政策担当大臣を、森永氏は、時たま擁護するような表現を使うので不信感はありますが)

 特に、不良債権処理の旗振り役だった木村剛氏( 日本振興銀行会長になった同氏は2010年、銀行法違反容疑で逮捕=懲役1年執行猶予3年の有罪刑が確定= )がリストアップした「問題企業30社」は、流通、建設、不動産などに偏ったものばかりで、それは、外国のハゲタカ・ファンドが涎が出るほど欲しがっていたものと一致していたことは絶対に偶然ではないという著者の指摘は、背筋が凍るほどでした。森永氏は「木村氏は問題企業をハゲタカの餌食に差し出す手先だ」と批判しましたが、日本一のスーパーだったダイエーや日本長期信用銀行などの例を見ても、 結果的にそうなってしまいました。

 渓流斎ブログは、多くの経済専門の方々が熱心に読んでくださってますが、私自身は、この本は大変参考になったことを強調しておきます。(まだ、途中なので、この本については、またいつか触れるかもしれませんが)