「ペニー・レイン」のA four of fishの意味が分かった!=ポール・マッカートニー「The Lyrics : 1956 to the Present」

 2月24日早朝、ついにロシア軍によるウクライナ侵略が始まってしまいました。

 あれだけ、銀座のロシア料理店のロシア人の女将さんに「戦争はしないようにプーチン大統領に伝えてください」と念を押したのに、ルビコン川を渡ってしまいました。

 プーチンは、最近、歴史書を読み漁っていたといいますから、自分がカエサルになったつもりなんでしょうか。まさに、意図的、計画的で、まず新ロシア派が実効支配するウクライナ東部ドネツク州とルガンスク州の南部「独立」を承認し、ミンスク合意を一方的に破棄。これは、先の大戦で日ソ中立条約を一方的に破棄して満洲(現中国東北部)に侵攻したソ連軍の手口に習っています。

 何よりも、プーチン大統領は、戦争とも侵攻とも呼ばず、あくまでも自存自衛のためのやむを得ない処置で、領土的野心はなく、ウクライナの「非軍事化」「無力化」が目的だと主張しています。

 事態は分刻みで変化しており、チェルノブイリ原発をロシア軍が占拠したという未確認情報まで流れ、予断を許されません。

 ブラジルのモウラン副大統領は24日、ウクライナ侵攻を、ヒトラーのやり方と同じだと非難しましたが、プーチン氏は、中国以外の全世界から非難される歴史に残る悪者になってしまいました。

 さて、本日書きたかったことは、ビートルズの「ペニー・レイン」の歌詞のことです。

 ポール・マッカートニー初の自叙伝とも言える新刊「The Lyrics : 1956 to the Present」(Penguin Books Ltd.)を私は「衝動買い」で買ってしまったのです。今年6月に80歳になるポールは人類史上最も成功した有名な音楽家だと思いますが、これまで自叙伝の執筆に関しては頑なに断ってきたといいます。

 その代わりに出版されたのがこの本で、1951年生まれのアイルランドの詩人でピュリッツァー賞も受賞しているポール・マルドゥーンを相手に、ビートルズ、ウィングス、ソロを含めた現在に至るまで作曲した154曲に関しての思い出と自分の人生を彼は語っています。通販で購入したこの本は、送料込みで何と1万3071円もしました。国際郵便の直輸入で3週間近く掛かり、上下2巻のハードカバー本で、これまた何と960ページもありました。

 この本を衝動買いしたのは、何と言っても、「ペニー・レイン」の歌詞のことが一番気になっていたからでした。実は、この曲に関しては、渓流斎ブログ2021年2月11日付で書いた「ビートルズ『ペニー・レイン』にはエッチな歌詞も?」で取り上げたことがあります。

 お手数ですが、リンクを貼った上の記事をもう一度読んでほしいのですが、はい、読まれましたね? ということで次に進みます(笑)。

 私が最も不可解だった歌詞「Full of fish and finger pies」は、この本では「A four of fish and finger pies」となっていました。作曲者のポールの本ですから、こちらが正解なのでしょう。となると、A four of fish とはやはり、「4ペンス分のフィシュ&チップス」という意味なのでしょうね。残念ながら、この箇所について、ポールは一言も触れていません。

 日本人として分からないのは、four という複数なのに、何故、a という単数の不定冠詞が付くのかということです。マニアのサイトの中には、A four pennyworth of fish (4ペンス分のフィシュ&チップス」と説明する人もいます。これなら、He is a four-year-old boy. と同じような使い方だったのかな、と外国人でも想像できます。

 さて、「4ペンス分のフィシュ&チップス」とは日本円で幾らぐらいか気になりました。この曲が発表された1967年時点での英国の物価はよく分かりませんが(笑)、為替レートなら分かります。

 当時はまだ固定相場制で、1ポンド=1008円でした。そして、1971年2月15日以前は、1ポンド=20シリング=240ペンス(ペニーの複数)でした。ということは、1ペニー=1008円÷240=4.2円となります。ということは、4ペンスなら16.8円。当時、フィシュ&チップスがそんな安く買えたんでしょうか?

 ちなみに、現在1ポンド=154円ぐらいです。目下、英国ではフィシュ&チップスは、安い屋台売りから高級レストランまでピンからキリまであり、大体400円~3000円といった感じらしいです。となると、いくら1967年でも17円は安過ぎます。

 恐らく、ポールは子ども時代の思い出を唄っているので、4ペンスは1950年代の値段なのでしょう。そして、子供用に小量の4ペンス分のフィシュ&チップスが売られていたのでしょう。私が子どもの頃の1960年代、駄菓子屋さんでデッカイ飴玉が5円で買えましたからね。

 この本でポールが「ペニー・レイン」の歌詞の中で触れていることは、「Penny Lane is in my ears and in my eyes」の箇所です。in my eyes は今でも目に浮かぶ、といった感じですが、in my ears というのは、当時、ポールはこのペニー・レイン(という名の通り)にあった聖バーナバス教会の少年合唱団に参加していて、当時歌った讃美歌などを思い出すといった意味だったのです。

◇英霊記念日

 もう一つ、A pretty nurse is selling poppies from a tray の箇所。「可愛らしい看護師がお盆に載せたポピー(ケシ)の花を売っている」といった意味です。このポピーがpoppiesではなく、アメリカ人はpuppies(子犬) だと勘違いしている、とポールは発言しています。そして、このpoppies とは生花ではなく、paper poppies and badgesのことで、紙で出来たポピー、つまり造花だと説明しています。英国では11月11日は、rememebarance day(英霊記念日)と呼ばれ、第1次、第2次世界大戦で戦死した兵士を慰霊する日です。(1918年11月11日、第1次世界大戦終結を記念して英国王ジョージ5世によって定められた。)

 この日は、英国ではヒナゲシの造花のバッジを胸に付ける風習があるのです。看護師さんがペニー・レインのバス停の待合所近くでその造花バッジを売っているのをポールが子どもの頃見ていたので懐かしい思い出として振り返っていたのです。恐らく、日本の赤い羽根運動みたいで、売上は慈善団体に寄付されていると思われます。

 なあるほど。そうでしたかあ。実に奥が深い!