「パタゴニア」買っちゃいました=そして「世に盗人の種は尽きまじ」

 私は「有言実行」の人ですから、早速、写真の通り、パタゴニアのジャケットと帽子を購入しました。

 と、書いても、初めてこのブログをお読みの方は何のことかさっぱり分からないと思いますが、渓流斎ブログの先月1月30日に書いた記事「自社株を環境保護団体に寄付した創業者=パタゴニアのシュイナードさん」をお読み頂くと分かります。

 アウトドア用品「パタゴニア」の創業者シュイナードさん(84)が、自分と家族が持つ自社株3900億円相当を環境保護団体に寄付したという話でした。このまま地球環境が破壊されれば、地球は死んでしまいます。そんな死んだ星では、何もできない。せめて、パタゴニアは200年は続く企業になってほしい、という願いを込めて環境団体に寄付したのでした。そんな創業者の理念に私も共鳴し、いつか、今まで買ったことがないパタゴニアの商品を買うつもり、と書いたのでした。

 実は、緊急を要するほど欲しいものはなかったのですが、東京の丸の内にある直営店で帽子を買い、地元のスポーツ用品店で、ジャケットを買いました。いずれもリサイクルした再生衣料らしいですが、価格は、何と、ユニクロさんの4倍以上もしました。でも、ユニクロさんの名誉のために言えば、ユニクロ製品は、防寒面など質的には劣るわけではないと思います。素人の感想ですが、むしろ、ユニクロが安過ぎるのかもしれません。それとも、パタゴニアが高過ぎるのかも?

 商店で、パタゴニアの製品を買うに当たって、お店の人に東京新聞の記事を読んで、御社の企業理念に感銘したから、と私が説明しても、誰も東京新聞の記事を読んでいないんですよね。最近の若い人は新聞読みませんからね。ガッカリしました(苦笑)。

銀座

 ところで、例のフィリピンの入管施設に拘束されているルフィを首魁とする特殊詐欺グループは、わずかここ数年で60億円以上も稼いでいたという報道に接して本当に魂消ました。強盗に入られて殺されてしまっては、防ぎようはありませんが、オレオレ詐欺とか、還付金詐欺などに多くの人がどうして簡単に引っ掛かってしまうのか不思議です。

 特に、還付金なんて、わざわざ、お上がご丁寧にも電話を掛けて教えてくださるわけがないのですよ! 例えば、確定申告の本を何冊も買い込んで死ぬほど勉強して、苦労して、苦労して、面倒臭い申告をして、初めて還付金なるものを勝ち取ることが出来るものなんです。世の中甘くない。そんな簡単に、うまい儲け話や1年で2倍になる投資話などあるわけがないんです。

 そもそも、そんな簡単に儲かる話なんかを、見ず知らずの赤の他人に教えるわけがないでしょう? 元本保証の高利率の定期預金でさえ、ほとんど宣伝せず、小さい字で、そっと書かれているものなのです。売れない商品ほど派手に広告宣伝すると思って間違いないのです。広告で笑顔を振りまくタレントさんは、決して弁償してくれませんよ。騙される方も悪いのです。

 そんなこと、冷静になればすぐ分かるのですが、高齢になると判断力がだんだん鈍って来ます。詐欺集団もそんな弱みを心得て付け込んで来ますからタチが悪いたらありしゃしない。マニラの特殊詐欺集団は遠隔操作をしているだけなので、自分の手は血で汚していないので、罪悪感が薄いようです。騙した金で看守を買収して施設から抜け出して、高級ホテルのカジノで一晩で1000万円も2000万円も浪費している、などという報道までありましたから唖然としてしまいました。

 「浜の真砂は尽きるとも世に盗人の種は尽きまじ」と言った石川五右衛門も、これほどまで人間があくどくなるとは想像もつかなかったのではないでしょうか。

自社株を環境保護団体に寄付した創業者=パタゴニアのシュイナードさん

 本日は下世話なファッションの話をー。

 年を取ると、どうもファッションに関心がなくなり、着るものに関しては無頓着になってしまうものです。今さら、モテるわけでもなく、仕事もなくなれば、「着た切り雀」になることでしょう。

 私もその一人でした(過去形)。固有名詞を出しては申し訳ないですが、近年は、ほとんどユニクロで間に合わせておりました。下着からワイシャツ、ダウンジャケットに至るまでです。ユニクロの柳井さんに対して、こんなに貢献している人は他にいないぐらいです(笑)。

 それが、あるきっかけで、もうユニクロは卒業させてもらうことにしたのです。はっきり書きますが、XLの大きさにしても、下着のトランクスのゴムがきつく、布の質がイマイチなのか、装着感が、ゴワゴワして少し擦れる感じなのです。そこで、天下の伊勢丹で売っている某社の高級トランクスに代えたところ、値段は倍以上でしたが、ゴムは全然きつくなく、履いていても擦れる感じ全くなく、実に爽快だったのです。

 お金は、死んであの世に持っていけるわけではありませんから、ケチケチ過ごすことが馬鹿らしくなってきました。下着だけでなく、もう少し、ちゃんとした衣類を着よう、と思ったわけです。人は90%見かけで判断しますからね。でも、いい加減年を取ると、相応しいファッション・ブランドがなかなか見つかりません。

 昔は、つまり若い頃は、「ポパイ」や「ホットドッグ・プレス」なんかを買って、当時全盛期だったテニスのビヨルン・ボルグが着用していたフィラや、ジョン・マッケンローが着ていたセルジオ・タッキーニなどを無理して買って、よく着ていたものでした。それらは、昔は、かなり高級ブランドでしたが、今では、そこら辺のスーパーでも売っているぐらい、格が落ちてしまいました。高級ブランドのジヴァンシーが、トイレのスリッパまで作るようになったのと同じ路線です。

 何の話でしたっけ? そうそう、シニア向けのブランドと言えば、有名なパパスとかありますが、あまりにもあからさまで「爺むさい」感じがするので、仕方なく、昔よく買っていたラコステのポロシャツやズボンで間に合わせることにしました(価格はユニクロの2.5倍以上)。この他、1877年にノルウェーで創業された老舗のヘリー・ハンセンというブランドが、漁師向けで防寒に優れて耐久性もあり、品質が良いという噂を聞いて、リュックサックやダウンジャケットなども取り揃えました。

 それでも、何か物足りないような、引っ掛かるような感覚がありました。私は電車通勤をして、会社のある銀座の街中を歩いておりますが、車内や街行く人のファッションのブランドを眺めてみると、男性も女性も圧倒的にノースフェイス THE NORTH FACEが多いですね。今は冬なので、そのノースフェイスのダウンを着ている人ばかり見かけます。私はへそ曲がりですから、(全く恨みはありませんけど)皆が着ているノースフェイスだけは恥ずかしくて着られません。

東銀座

 そんな折、本日のことですが、東京新聞が朝刊1面トップで、「米アウトドア用品『パタゴニア』創業者 自社株ほぼすべて環境団体に 地球を救う経営を」と題した記事を掲載しておりました。何と1面トップですよ! ウクライナ戦争でもなく、昨今の物価高の話でもなく、防衛費増額問題の話でもなく、ファッション業界の創業者の話です。

 最初、大変失礼ながら、「また売名行為かぁ?」と読む気がしなかったのですが、読んでいくと、こんな素晴らしい経営者はいないと確信しました。創業者のイボン・シュイナードさん(84)は、もともとロッククライマーで、登山用具の鍛冶屋だった経験も生かして1973年に「パタゴニア」(本社=米加州ベンチュラ)を設立します。現在、世界で1300億円以上の売上高を誇る企業に成長させました。しかし、もともとは職人さんですから、金儲けには大して関心がなかったようです。自身と家族が保有する約3900億円もの自社株を環境保護団体に寄付してしまったのです。その理由は、気候変動の危機感があり、「死んだ星では何もできない」ことを悟ったからだといいます。シュイナードさん御自身、パタゴニアという会社をこれから先、200年は続けてもらいたいという希望があるからこそ、どうすれば良いか考えた末、環境保護団体に寄付を決めたというのです。

 いやあ、なかなか出来ないことです。しかも、大富豪らしからず、社長さんなのにお抱え運転手はおらず、飛行機はエコノミークラス。同じ家に50年以上妻と一緒に住み、携帯電話も通話以外使わない。ほぼ毎日、中古で買った日本車スバル・アウトバックを自ら運転して出勤しているというのです。

 しかも、2011年の感謝祭翌日の大規模セールで、「自社商品を買わないよう」キャンペーンを張ったといいます。「そのジャケットは本当に必要なのか。必要で買ってくれるなら永久に保証する。不具合が出たら修理する。体形が変わって着られなくなったら、買ってくれる別の人を探す。使い古されて完全に使えなくなったら送り返してほしいというメッセージだった」とシュイナードさんは振り返ります。勿論、地球環境問題に配慮した考え方です。

 この記事を読んで、私は、いっぺんにシュイナードさんと、彼の理念が反映されているパタゴニアのファンになってしまいました。パタゴニアは登山用品専門かと思っておりましたら、検索してみたら、街中でも着られるジャケットやパンツ(私の世代ではズボンと言います)やダウンや帽子など品数多く揃っておりました。

 今まで一度も買ったことがありませんが、これからは、シニアでも着られる(と思われる)パタゴニアの衣類を少しずつ買い揃えてみようかなあ、と思っております。(あくまでも、これは宣伝記事ではありません。我利我利亡者が蔓延るビジネスの世界で、シュイナードさんの理念と行動に感動した話でした)