長期修繕費が足りないと管理会社が逃げてしまう?=マンション受難時代

 関西地方に住む私の友人が、今年、住んでいるマンションの管理組合の理事をやってまして、問題が山積していて、「とてもやってらへん」と愚痴って来ました。

 マンションは、築30年超のオールド小型マンションですが、オートロック式なので、鍵一つで出入り出来て、安心と言えば安心です。でも、30年も経つと住人の半数近くが引っ越して出て行ってしまったというのです。

 バブル崩壊で資産価値は当時の半額どころか、4分の1以下に下がってしまいましたから、当初と比べると「普通」の方が入って来て、もう顔も名前も知らないといいます。

 彼によると、理事という役員をやると、色んな情報が入って来るといいます。オートロックなので安全かと思ったら、二カ所、空き巣に入られた部屋があったとか、後から入居した人が外国籍で、日本語があまり出来ないという理由で、年ごとに回って来る管理組合の理事をやりたがらない、などといったネガティブな情報ばかりですが。

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 でも、問題はそんな生易しいものではありませんでした。どこの全国のマンションも同じ問題を抱え、新聞の記事にもなったりしていますが、集合住宅は、だいたい12年おきに大規模修繕をやらなければならないことが、法的に決まっています。しかし、だんだん、「長期修繕積立金」の預金残高が足りなくなって、幽霊屋敷になってしまうという大問題が発生するケースがあるというのです。

 そうならないためには、全戸から臨時金を徴収するか、各戸の長期修繕費を値上げするかしかありません。しかし、30年も経てば、サラリーマンなら何処も定年退職した年金生活者の世帯が増え、にっちもさっちもいかない状態に陥ってしまうのです。マンションは、たとえ分譲で購入したとしても、毎年、不動産取得税と、毎月、高額の管理費という名の「家賃」を払い続けなければならないのです。

 修繕費に不足が生じないためには、常時、業者を厳選したり、無駄遣いを減らしたりしなければなりません。

 彼が住んでいるマンションは、大手の有名な管理会社らしいですが、「長期修繕積立金」が足りなくなり、儲けが見込まれなくなったら、降りる、つまり、手を引くのではないかという噂まで流れているというのです。

 しかも、この管理会社は、かなり利益優先主義で、昨年、エレベーターの修繕工事を管理組合の理事会に提案した際、1500万円もの高額金を提示したといいます。それでは、あまりにも高額なので、有志が独自で同じメーカーの修繕工事を調査して発注したところ、その半額以下の700万円で済んだというのです。

 管理会社ですから、マージンを取るのが仕事ですが、2倍以上も請求することは「暴利」でしょう。信頼度が下がったので、彼は今度、水道の受水槽をやめて、直接水道管から上水を引く工事の見積もりを、管理会社だけに任せるのではなく、理事の有志でも探してみることにしたといいます。

cabanは「カバン」ではありません。フランス語で『ピーコート」のことです。もう一つ、smoking は英語で「喫煙」なのに、フランス語は「タキシード」なんですよね(笑)。

 ゴミの問題もあります。ある不届き者がゴミを分別せずに、13個ものゴミの袋を放置したので、管理人が「とても処理できまへん」と会社に泣きついて来たといいます。それを管理会社が理事会で図り、5500円支払って、管理人に処理してもらうことにしたというのです。本来ならゴミの処理は、管理人の仕事ではないかと私なんか思ってしまいますが、どうなっているんでしょうかねえ? ちなみに、友人のマンションの管理人は管理会社の正社員だといいます。

 ま、そんなこんなで、マンションなら、気楽な生活が出来るかと思いましたら、そうでもないようです。実は、理事以外のほとんどの住人は無関心で、我関知せずです。彼の悲痛な愚痴を聞いて、可哀そうに思いましたが、それは他人事の話ではないことは、私も十分承知しております。

これが世間の実体、実相だ=マンション・ゴミ捨て騒動

 マンションの掃除のパートをしている知り合いの遠藤さん(仮名)から頭の痛い嫌な話を聞いてしまいました。

 50歳も過ぎると、なかなか再就職が難しいことは体験者なら分かるはずです。終身雇用を廃止して、転職を推奨する学者もマスコミも、何も分かっていません。儲かるのは、政商が会長を務めていた人材派遣会社や転職紹介会社だけなのです。

 遠藤さんも、社内のパワハラ上司とウマが合わず、思い切って退職しましたが、次の転職先がなかなか見つかりません。3カ月もの就職浪人の末、結局、マンション掃除人のパートがやっと決まりました。応募が殺到していて、3倍の難関を突破して採用されたといいます。募集元は、テレビでもよく宣伝する有名な不動産仲介管理会社です。

 散々苦労してやっと決まったので、彼はかなりのプライドを持って真面目に仕事に取り組んでいます。「掃除人だと人は皆、馬鹿にするけど、なくてはならない仕事ですよ。俺たちがいなくなったらどうなると思いますか? 俺たちは縁の下の力持ちというか、政治家さんよりも余程偉いと思っていますよ」と言うのが彼の口癖です。確かにその通りです。

 彼が担当しているのは某駅から数分の一等地に建つマンションですが、ワンルーム・マンションなので、全員独身者です。それなのに、ある日、小学校4年生ぐらいの女の子がマンションの住民用のゴミ置き場にゴミを捨てに来ました。そう言えば、ここ半年以上、「ゴミの日」ではないのに、ゴミが置いてあったり、キチンと分別しないで、そのまま乱雑に捨てられたゴミを目にするようになり、気になっていました。駅近の高級マンションなので家賃も高く、居住者は一流企業にお勤めの富裕層とみられ、ゴミのルールは守る人ばかりだったので、不審に思っていたところでした。仕事はパートの午前中だけなので、それまで怪しい人物と出食わすことがなかったのです。

 遠藤さんは、その女の子を捕まえて、「ここは、ここに住んでいる人だけだから、駄目だよ。ここに捨てろと言ったのは誰なの? えっ? お母さん? それなら、今日だけは許してあげるけど、今度から受け付けないからね。帰ったらお母さんに言っておいてね。ここは監視カメラが付いているから、隠れて捨てても駄目だからね」

 彼としては、優しく、かんで含めて、説諭したつもりでしたが、それから5分も経たぬうちに、女の子の母親らしき女が血相を変えて、まくし立ててきたというのです。

 「あんた、ウチの子に何言ったのよ。泣きじゃくって、帰ってきたじゃない。怖いおじさんに怒られたって! ウチはね、前からここに捨てて良い、とC(例の有名な不動産仲介管理会社)から言われているのよ。娘を脅迫するつもり? こっちは間違ったことなんかしていないのに、あんた何様なのよ、一体。冗談じゃないわよ。たかが、掃除人のくせに。あんた、名前何て言うの? Cに言って、やめさせてもらうわよ」

日比谷

 「全く、取り付く島もない、とはこのこと」と遠藤さんは後から振り返って言いました。彼の説明によると、女の住む低層集合住宅の1~2階は保育園になっていて、3階に居住している住民は3軒だけ。集合住宅のゴミ捨て場は、保育園専用になっていて、居住している3軒は、自治会にも入っていないので、そこには捨てられない。そこで、不動産仲介管理会社は、そこから50メートルも離れた遠藤さんが掃除を担当しているマンションのゴミ捨て場にゴミを捨ててもいいよ、と居住している3軒の住人に許可していたというのです。保育園とマンションの土地(建物)のオーナーは、同一人物だったからです。

 しかし、不動産仲介管理会社は、遠藤さんに一言もその「事実」を知らせていませんでした。1年前からそういう状態になっているにも関わらずです。一言あれば、「ああ、また、あの3軒の住人の誰かがが来たのか。ゴミ分別もしないけど、仕方ないな」と彼も納得したといいます。

 心優しい遠藤さんは、散々、モンスターペアレントみたいな女にこっぴどくどやされて、落ち込んでしまい、その日は夜も眠れなかったといます。

 悪いのは、連絡怠慢の大手の不動産仲介管理会社ですが、謝罪もなく、孫請けの人材派遣会社の担当者から遠藤さんに電話で一言、「それは大変でしたねえ」と慰めの言葉があっただけだったそうです。

【追記】

 町内会や自治会に入会する義務はありませんが、デメリットとして、町内会や自治会が管理するゴミ捨て場にはゴミは出せないといいます。不動産仲介会社ならそれぐらいの法律は知っているはず。遠藤さんが担当するゴミ捨て場は、マンションの住人が自治会費を支払って設けられたものだからです。となると、遠藤さんは、自治会費を払っているマンションの住人のためにゴミ捨て場を掃除し、その見返りに給料をもらっているようなものです。テレビで宣伝する有名不動産仲介管理業者も酷い会社だなあ。違法スレスレじゃないのかなあ。。。その後、遠藤さんは例のモンスター女と会ったのかどうかは、聞いていません。