マンションの掃除のパートをしている知り合いの遠藤さん(仮名)から頭の痛い嫌な話を聞いてしまいました。
50歳も過ぎると、なかなか再就職が難しいことは体験者なら分かるはずです。終身雇用を廃止して、転職を推奨する学者もマスコミも、何も分かっていません。儲かるのは、政商が会長を務めていた人材派遣会社や転職紹介会社だけなのです。
遠藤さんも、社内のパワハラ上司とウマが合わず、思い切って退職しましたが、次の転職先がなかなか見つかりません。3カ月もの就職浪人の末、結局、マンション掃除人のパートがやっと決まりました。応募が殺到していて、3倍の難関を突破して採用されたといいます。募集元は、テレビでもよく宣伝する有名な不動産仲介管理会社です。
散々苦労してやっと決まったので、彼はかなりのプライドを持って真面目に仕事に取り組んでいます。「掃除人だと人は皆、馬鹿にするけど、なくてはならない仕事ですよ。俺たちがいなくなったらどうなると思いますか? 俺たちは縁の下の力持ちというか、政治家さんよりも余程偉いと思っていますよ」と言うのが彼の口癖です。確かにその通りです。
彼が担当しているのは某駅から数分の一等地に建つマンションですが、ワンルーム・マンションなので、全員独身者です。それなのに、ある日、小学校4年生ぐらいの女の子がマンションの住民用のゴミ置き場にゴミを捨てに来ました。そう言えば、ここ半年以上、「ゴミの日」ではないのに、ゴミが置いてあったり、キチンと分別しないで、そのまま乱雑に捨てられたゴミを目にするようになり、気になっていました。駅近の高級マンションなので家賃も高く、居住者は一流企業にお勤めの富裕層とみられ、ゴミのルールは守る人ばかりだったので、不審に思っていたところでした。仕事はパートの午前中だけなので、それまで怪しい人物と出食わすことがなかったのです。
遠藤さんは、その女の子を捕まえて、「ここは、ここに住んでいる人だけだから、駄目だよ。ここに捨てろと言ったのは誰なの? えっ? お母さん? それなら、今日だけは許してあげるけど、今度から受け付けないからね。帰ったらお母さんに言っておいてね。ここは監視カメラが付いているから、隠れて捨てても駄目だからね」
彼としては、優しく、かんで含めて、説諭したつもりでしたが、それから5分も経たぬうちに、女の子の母親らしき女が血相を変えて、まくし立ててきたというのです。
「あんた、ウチの子に何言ったのよ。泣きじゃくって、帰ってきたじゃない。怖いおじさんに怒られたって! ウチはね、前からここに捨てて良い、とC(例の有名な不動産仲介管理会社)から言われているのよ。娘を脅迫するつもり? こっちは間違ったことなんかしていないのに、あんた何様なのよ、一体。冗談じゃないわよ。たかが、掃除人のくせに。あんた、名前何て言うの? Cに言って、やめさせてもらうわよ」
「全く、取り付く島もない、とはこのこと」と遠藤さんは後から振り返って言いました。彼の説明によると、女の住む低層集合住宅の1~2階は保育園になっていて、3階に居住している住民は3軒だけ。集合住宅のゴミ捨て場は、保育園専用になっていて、居住している3軒は、自治会にも入っていないので、そこには捨てられない。そこで、不動産仲介管理会社は、そこから50メートルも離れた遠藤さんが掃除を担当しているマンションのゴミ捨て場にゴミを捨ててもいいよ、と居住している3軒の住人に許可していたというのです。保育園とマンションの土地(建物)のオーナーは、同一人物だったからです。
しかし、不動産仲介管理会社は、遠藤さんに一言もその「事実」を知らせていませんでした。1年前からそういう状態になっているにも関わらずです。一言あれば、「ああ、また、あの3軒の住人の誰かがが来たのか。ゴミ分別もしないけど、仕方ないな」と彼も納得したといいます。
心優しい遠藤さんは、散々、モンスターペアレントみたいな女にこっぴどくどやされて、落ち込んでしまい、その日は夜も眠れなかったといます。
悪いのは、連絡怠慢の大手の不動産仲介管理会社ですが、謝罪もなく、孫請けの人材派遣会社の担当者から遠藤さんに電話で一言、「それは大変でしたねえ」と慰めの言葉があっただけだったそうです。
【追記】
町内会や自治会に入会する義務はありませんが、デメリットとして、町内会や自治会が管理するゴミ捨て場にはゴミは出せないといいます。不動産仲介会社ならそれぐらいの法律は知っているはず。遠藤さんが担当するゴミ捨て場は、マンションの住人が自治会費を支払って設けられたものだからです。となると、遠藤さんは、自治会費を払っているマンションの住人のためにゴミ捨て場を掃除し、その見返りに給料をもらっているようなものです。テレビで宣伝する有名不動産仲介管理業者も酷い会社だなあ。違法スレスレじゃないのかなあ。。。その後、遠藤さんは例のモンスター女と会ったのかどうかは、聞いていません。