公開日時: 2007年12月7日 @ 10:20
最近、やたらと大学院の肩書きの人が増えたなあ、と思ったら、世の中とんでもないことが起きていたんですね。
水月昭道『高学歴ワーキングプア 「フリーター生産工場」としての大学院』によると、1985年に約7万人だった大学院生が、たった20年余りで3倍以上の約26万人にまで増えたそうです。20年前でさえ、「オーバードクター」と陰口を叩かれ、なかなか就職口が見つからなかったのに、今の時代が、そんなに甘いわけありません。
畏れていた通り、博士号を取得しても、大学の非常勤講師だけではとても食べていけず、コンビニのアルバイトなどで月15万円の生活費を稼ぐのが精一杯。居酒屋や塾講師のバイトを掛け持ちをしたり、パチスロのプロになった博士もいるそうです。
そもそも、「大学教授」の肩書きを得るために、昔から「超狭き門」であることには今でも変わらず、嫌な教授の靴までなめなければならないと言われるほどですから、今の若者にそこまでできるかどうか。
ただ、恐ろしいことは、このような事態に陥ったのは、文科省と東大法学部が結託して、将来の少子化を見込んで、少なくなる「パイ」をめぐって、その「既得権」を失うまいと執念を燃やす彼らの秘策がこの「大学院生大量生産」の理由だった、という水月氏の指摘は妙に納得してしまいます。
水月氏は、昔、オーバードクターと言っていた彼ら彼女らのことを「野良博士」と命名しています。「おだてられながら学費を払わされ続けてきた院生は、期限が来ると、ペットの犬が捨てられるように放り出される。野良になるしかない」というのです。
確かに企業側も「頭でっかち」の人間を採るより、上司の言うことを「ハイハイ」と言って、言うことをきく人間の方が使いやすいし、そういう人間を積極的に採用することでしょう。
野良博士は、おだてられて二階に昇ったら梯子を外されていたという感覚なんでしょうね。全く、やる気もなく、学業も職業訓練も放棄したNEETと野良博士が結局は、同じ境遇だとしたら何と世の中皮肉なんでしょう。